後ろにいた者「ジャックと天空の巨人」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
ニコラス・ホルト 2791円 powered by yasuikamo |
個人的お気に入り度:6/10
一言感想:めっちゃ人死ぬやん・・・
あらすじ
ジャック(ニコラス・ホルト)は、王国で修道士からとある「豆」を預かる。
それは天空の巨人のところまで通じる魔法の豆だった。
ジャックの住まいにイザベル姫(エレノア・トムリンソン)が訪れるが、ジャックが誤って落としてしまった豆が雨に濡れ、イザベル姫は巨大なツタに天空へと押し上げられてしまう。
ジャックは王国の兵士エルモント(ユアン・マクレガー)やクロウ(エディ・マーサン)とともに、イザベル姫の救出に向かう。
その裏で、ロデリック卿(スタンリー・トゥッチ)は不敵な笑みを浮かべていた。
「ユージュアル・サスペクツ」「X-MEN」のブライアン・シンガー監督最新作です。
本作は超有名な童話「ジャックと豆の木」を元とした作品であることは明確ですが、実はもうひとつ民話である「巨人退治のジャック」がミックスされた映画になっています。
原題が童話の「Jack and the Beanstalk」でなく、「Jack the Giant Slayer」になっているのもそのためなのです。
さらにもともとの原題は「Jack the Giant Killer」でした。
「巨人殺し」というタイトルであった時点で、あまり和やかな雰囲気でないことは予想できるでしょう。
この映画、ファミリー映画とは思えないほど人も巨人もバンバン死んでいくのです。
もちろん血は一滴も出ませんし、直接的なグロ描写はほとんどありません。
しかしこの映画を小さい子どもに見せると、怖くて泣き出してしまうんじゃないでしょうか。
子どもに見せてはいけないというほどの残酷描写はないとはいえども、へたすれば子どもにトラウマを残してしまうでしょう。
でも個人的には、子どもにこういう「怖い映画」を見せるのは悪いことではないと思います。
自分も「劇場版ドラえもん」のホラー描写はとても印象に残っていますし、そういう恐怖が後の成長にも役立つように思えるのです。
ついでにかわいいマスコットキャラもいませんし、巨人の見た目もきちゃないです。
そんな「あんまり子ども向けじゃない気がするけど、ちょっと子どもに観せたい(どっちやねん)」な映画だと思います。
子どもに楽しい映画を観せたい親御さんは、素直に「ドラえもん」「シュガーラッシュ」「プリキュア」「劇場版ミッフィー」をチョイスしてください。
さて肝心の映画の内容はというと、手堅く面白い作品にまとまっているという印象です。
まず思うのはテンポがいいこと。
よく言えば飽きずに観られるけど、悪く言うなら底の浅いライトなノリです。
巨額の制作費をかけたと思えるスケール感はありません。
あまり深く考えずに楽しめるので気軽に観るにはもってこいですが、胸躍る冒険を期待する人には少々肩すかしかもしれません。
目新しさもそれほどないですし、ちょっと地味な印象が否めないのも本作の弱点でしょう。
物語には気の利いた伏線があるものの、全体的には魅力をあまり感じられませんでした。
吹き替え版で観たのですが、これも悪くなかったです。
映画ファンから嫌われている「芸人起用」がありますが、台詞も少ないのでそこまで気になりません(「千原せいじ」の関西弁にはイラッとしたけど)。
主要キャストの「ウエンツ瑛士」「平愛梨」「ゴリ (お笑い芸人)」もとっても上手いです。
3Dで観たのですが、これは個人的には可もなく不可もないという程度。
天空から地上への高低差を表現する画を期待していたのですが、それほどアピールされていませんでした。
世間では3Dを推す声が多いのですが、自分は2Dでもよいと思います。
ちなみに本作は全米で初登場1位を記録したものの、その1週間後に公開された「オズ」に蹴落とされ、莫大な制作費が回収されないのではないかと見込まれています。
ファンタジーというジャンルがモロ被りしているので、公開時期をずらしたほうがよかったんじゃ・・・日本でも「オズ」の2週間後に本作が公開されているし・・・ちょっと気の毒ではあります。
また主演のニコラス・ホルトは「アバウト・ア・ボーイ」の男の子を演じていました。
美青年に育っており、今後の活躍にも期待が持てると思います。
公式ページの「全国巨人盛り選手権」というキャンペーンも楽しいですし、なんとなく宣伝したくなる作品です。
「気軽に見れるけど、ちょっと怖い」ファンタジーアクション映画としてオススメします。
ラストバトルは大迫力なので、劇場で観る価値は十分ですよ。
最後にちょっと余談。
この映画とは関係ないですが、日本の漫画「進撃の巨人」の実写映画化の企画はどうなったんだろう?
映画用の公式ページは存在するのですが、中島哲也監督が降板したあとも頓挫寸前と言われており、嫌な予感しかしません。
本作にグロ要素をたんまりプラスすれば、十分「進撃の巨人」の実写版になると思えたので、なんとでしてでも完成してほしいところです。
※追記樋口真嗣 監督で、2015年8月と9月に2部作で公開予定です。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓
~ジャックがことの発端に~
ちょっとひっかかるのは、そもそも「ジャックの失敗」によって物語が動き出したこと。
ジャックは豆を自分の家に持ち帰りますが、修道士に頼まれた「渡してくれ」という依頼は遂行されません。
そしてジャックが豆を家の下に落としてしまったことにより、イザベル姫は天空に追いやられてしまうのです。
作中にイザベル姫が「私のせいで」と巨人に捕まったことを自責するシーンがありましたが、ジャックにも同様に「自分を責める」描写がほしかったです。
もうひとつ野暮なつっこみをするならば、魔法の豆、いらなくね?
作中では申し訳程度に「金の卵」が出てきてジャックがそれを持ち帰りますが、それ以外に天空にお宝があるような描写もなく、魔法の豆を保存しておく必要性が見当たらないのです。
王とともに埋葬するんじゃなく、潰して捨てたほうが安全だと思うよ。水にぬれただけで巨人来ちゃうんだからさ。
~対になった描写~
脚本で上手いのは、作中で3回「対(または同じ境遇)になる描写」があることです。
・ジャックとイザベル姫
映画の冒頭、幼いジャックは今は父に、幼いイザベル姫は母に「巨人の物語」を教わります。
ジャックとイザベルは大人になったときに、それぞれその父と母を亡くしていました。
さらにジャックはおじに、イザベルは父である国王に生き方を咎められています。
両者ともが現状に不満を持ち、ここから抜け出したい、冒険をしたいと願っているのです。
2人のカットを交互に見せる演出も含めて、上手い見せ方でした。
・ジャックとエルモント
ジャックはその前に巨人をナイフで殺し、エルモントとイザベルを助けました。
ジャックが「(見張りをしている)巨人を起こそう」と提案したとき、エルモントは「悪い考えだ」と言い、ジャックは「巨人を殺したことがあるの?」と返します。
その後エルモントが「天空に残り、ロデリック卿を倒す」とジャックに告げたときには、エルモントは「人を殺したことがあるのか?」と問います。
ジャックは「1回きりの戦い」だけで巨人を殺したことを引き合いに出しますが、エルモントは騎士団での「長い経験」をもって相手をたしなめるのです。
・後ろに誰かいる?
ジャックは序盤に、イザベルに目をつけたチンピラに食ってかかります。
ジャックは後ろにいた騎士団に気づかず、ひざまずく人々を見て「後ろに誰かいるの?」と言います。
終盤、エルモントの目の前にはおびただしい数の巨人が迫っていました。
絶体絶命かと思いきや、巨人たちはひざまずきます。
エルモントは「後ろに誰かいるのか?」と言います。
そこには、巨人が奪っていた王冠を手にしたジャックがいました。
ジャックとエルモント、双方の立場が逆転した痛快なシーンでした。
~ロデリック卿~
ロデリック卿は目的のためなら手段を選ばない悪党です。
巨人を操ることのできる王冠を使い、隣国ともども支配していようとしたのです。
部下のウィックもクズ野郎であり、ツタを登っていた部下をロープを切って殺し、あまつさえ「ボールド」という部下も突き落としてしまいます。突き落とす理由なんてないじゃん・・・
ウィックが「なんで人間って死ぬとき叫ぶんだろうね、あっはっは~」と言ったあと、即効で巨人に捕まって食い殺されるのはちょっぴり痛快でした。
エルモントはロデリック卿と1対1で戦います。
エルモントが「俺は確かに主役じゃないかもしれん、だが生き残ってみせる!」という台詞はメタフィクションっぽいですね。
ロデリック卿は王冠を奪われ、あまつさえ巨人に踏んづけられても、巨人の誰にも気づかれません。
悪党に相応しいラストです。
~VS巨人たち~
序盤に巨人たちが「クロウ」をあっさり食べてしまう描写はすごく怖かった・・・
「鎧だけ残される」というのは、ある意味直接的に見せるより恐怖を煽ります。
エルモントが巨人に料理されそうになるとき、豚と一緒に春巻きにされていたのには笑いました。
<豚めっちゃ笑顔
ジャックは巨人をナイフで刺し、そのナイフは壁に押し付けられて巨人は倒されます。
無事にイザベル姫を奪還した後、ジャックは蜂の巣を巨人の兜に忍ばせるのでした。けっこう酷いことするなあ。
ジャックとイザベルが命からがら戻り、一件落着かと思われたそのとき、巨人たちはロデリック卿の持っていた豆を見つけ、地上侵略へと乗り出します。
<わりと絶望的な画
巨人たちはハンマーで人間を叩く、風車を投げて当てるなど、殺戮しまくります。
城の人間たちも負けておらず、油を流した掘りに火を放ち、フックで跳ね橋を戻そうとする巨人と綱引きで戦ったりと善戦。
そして「スコーピオン」と呼ばれる、矢をマシンガンのように放つ装置で反撃します。
ジャックとイザベルは巨人の首領と戦い、ジャックとイザベルは掴まれてしまいます。
彼はペンダントに隠してあった魔法の豆を巨人の口めがけて投げ込みました。
結果、ツタは巨人の体から出ていき、そして潰してしまうのでした。
ちなみにこの巨人の首領は「2つ頭」で、片方の頭はこれまで全く喋らなかったのに、断末魔が「いやぁ~ん、ダメ!」でした。
なんでやねん。原語ではなんて言ったんや。ていうか目玉が飛んだりでふつうにグロいです。
~ラスト~
最後にジャックとイザベルは結婚し、子どもたちにお話を聞かせます。
そしてどんどん月日が流れます。
このとき話にどんどん「尾ひれ」がついていきます。
そして現代。
ジャックがいた王国の冠がロンドン塔に寄贈されており、見学に訪れた生徒がそれを見ていました。
カメラが上空へと舞い上がり、天空を見せたところで映画は終わります。
ジャックの伝説は、現代に伝わる「おとぎ話」となりました。
しかし、ほんとうにおとぎ話なのか?巨人なんていないのか?
最後には、そのことにちょっとだけ「くすぐり」を入れるのです。
ですがマナー広告の体裁をした予告編(?)がとても面白かった。
> ドラえもんのホラー描写
ホラーに限らず、ドラえもんには意外とシビアな描写が多いです。絵柄がいかにもファミリー向けなのでオブラート化されていますが、多くの映画で「生か死か」という場面があったりします。
http://blog.hangame.co.jp/agc_tailltea/article/39634555/
> 素直に「ドラえもん」か「シュガーラッシュ」をチョイス
プリキュアやミッフィーのことも思い出してあげてくだちい。
ちなみに幼児向け映画、映画館デビュー用映画としてミッフィーは大変良作でした。
個人的にはドラとかプリキュアとかいーからミッフィー観せに連れてってやれという感じ。
http://blog.hangame.co.jp/agc_tailltea/article/40597895/
> 断末魔が「いやぁ~ん、ダメ!」
昔、『ダンジョンマスター』というリアルタイムRPGがありまして、戦士の攻撃声がどう聴いてもオカマの「イヤーン」だったのを思い出しました。
案外原語でも「イヤーン」なんじゃないかと…。
劇場版があるのにびっくりしましたが、幼稚園くらいのお子さんには確かに見せたいかも。
原語でなんて言っていたか、ぜひ確認お願いします^^)
物凄く写実的なシーンがあったり、CGでなければいけないシーンがあったりして、不思議な映画でした。
特に、篭城戦での戦いでの兵器の出現は、CG多様といえども久し振りに本格的な感じがしたので面白かったです。
ただ、主演のジャックさんが、どの場面でも”こぎれいな"感じだったので、主役ってそういうもんかと思いつつ、少し不満。
ロデック卿の???と云う役者さんは、すごく器用な役者さんのようで、同じような役を繰り返してしません。
> 物凄く写実的なシーンがあったり、CGでなければいけないシーンがあったりして、不思議な映画でした。
> 特に、篭城戦での戦いでの兵器の出現は、CG多様といえども久し振りに本格的な感じがしたので面白かったです。
終盤の大虐殺とバトルは圧巻でしたね。
> ただ、主演のジャックさんが、どの場面でも”こぎれいな"感じだったので、主役ってそういうもんかと思いつつ、少し不満。
そういや泥にまみれたりしていましたねwそこは主人公パワーです。
残念ながら吹き替え版しかありませんでした。
でもって、家族向けにはゲイリー・J・タニクリフ監督の『ジャックと天空の巨人(原題:Jack and the Beanstalk)』をどーぞってことで。
…というか、この邦題はどう考えても便乗でしょう。
(何せ「ジャックと天空の巨人」でググると両方ヒットするのですから!)
おそらく断末魔は英語では「OH MY・・」とかなんでしょうね。
> でもって、家族向けにはゲイリー・J・タニクリフ監督の『ジャックと天空の巨人(原題:Jack and the Beanstalk)』をどーぞってことで。
> …というか、この邦題はどう考えても便乗でしょう。
> (何せ「ジャックと天空の巨人」でググると両方ヒットするのですから!)
同じタイトルの映画があるとは知りませんでした・・・
そっちは「巨人殺し」じゃないんですね。