怒りの理由 映画「ジャンゴ 繋がれざるもの」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー

個人的お気に入り度:8/10
一言感想:会話しているだけですげー面白い
あらすじ
南北戦争の2年前、旅の歯医者キング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)は奴隷として捕らえられていた黒人ジャンゴ(ジェイミー・フォックス)を救う。
シュルツはある兄弟を探すことを手伝ってほしいことを告げ、ジャンゴは奴隷商人に捕らえられた妻ブルームヒルダ(ケーリー・ワシントン)を救い出したいと言う。
2人はやがて大農場を経営する極悪人カルビン・キャンディ(レオナルド・ディカプリオ)と出会う。シュルツとジャンゴは、無事にキャンディからブルームヒルダを救い出せるのか。
毎回独創的な作品を世に送り出すクエンティン・タランティーノ(以下タラ)監督最新作です。
いやー観るのが遅くて悔しかったのですが、とにかく面白いこと面白いこと。
齢50になるタラ監督ですが、その手腕は全く衰えを見せません。
タラ作品の特徴を知らない方に言うと、とにかく無駄とも思えるくらいに会話が多いこと。しかも実際に話に関係ないマジで無駄な話も多いのです。
そう言うとつまんないと思われるかもしれませんが、人によってはわりとその通りです。肌に合わない方もいるでしょう。
でもこの「ジャンゴ」は別格です。
会話は無駄ではなく、しっかりとラストのカタルシスにつなげています。いや無駄なのもあるけど(悪党どもが頭に被っている袋の穴を気にするくだりとか)(それはそれで好きだし)。
そしてすごいのは会話劇に張りつめられた緊張感です。
憎たらしい言動をする敵に対して主人公が怒りをかみ殺し、いつ攻撃をするのか、はたまたしないのかがわからない、そんな1秒先の出来事が読めない面白さがあるのです。
そんな会話ばかりのため、本作の上映時間は2時間45分にもなりました。
でも観終わってみるとそこまで長さを感じません。
役者も素晴らしくて、特にディカプリオは最高でした。あのヤニ臭そうな歯を見せる笑い方は本物の極悪人にしか見えません。
音楽のセンスもたまらない!
![]() | Soundtrack 1083円 powered by yasuikamo |
個人的にはテーマ曲と、リック・ロスによる楽曲「100基の黒い棺」にシビレました。
<DJANGO UNCHAINED - MAIN THEME - Django - YouTube>
<Django Unchained OST - Track 12 - RICK ROSS - 100 BLACK COFFINS - YouTube>
また、西部劇のオマージュがあって、西部劇ファンにもたまらないものです。
たとえば主人公の名前「DJANGO」は「続・荒野の用心棒」の原題と同じだったりします。
![]() | フランコ・ネロ 3047円 powered by yasuikamo |
ちなみに「続」というタイトルはついていますが、実は「荒野の用心棒」とは関係のない作品です。邦題詐欺ですね。
「ジャンゴ 繋がれざるもの」は元ネタのこの作品に、きっちりとリスペクトを捧げています。
ほかにも元ネタの一つである「マンディンゴ」を観ているとより楽しめるでしょう。
参考→<タランティーノ『ジャンゴ~』の前に『マンディンゴ』 : シネマ・クチュール>
マンディゴとは作中にも登場する格闘用に仕立てられた黒人奴隷のこと。この作品を知っておくとより彼らの置かれた状況がより鮮明になると思います。
R15+指定だけあってバイオレンス描写は盛りだくさんであるし、独特のケレン味は好き嫌いが分かれるでしょう。
しかし、映画らしい面白さを堪能できる本作はかなりのおすすめです。
4月6日から上映がはじまった地域の方はぜひ劇場へ。3月1日から上映がはじまった地域の方は終了しないまでにお早めに。
思えばタラ監督ってすごく幸せな人ですよね。
好きな映画を作って好き放題やって、それが固定ファンを生み出して世界的に大ヒットって、すごくうらやましいと思います。
そんな楽しそうに映画を撮り、オタク魂全開なタラ監督をもっと追いかけたくなりました。
以下、短いですが思い切りネタバレ 未見の方はお控えください↓
~シュルツが「エリーゼのために」と「三銃士」で怒った理由~
この映画で好きだったのは、終盤の歯医者のシュルツの行動でした。
・シュルツがハープで「エリーゼのために」が奏でられるのを聞いて「やめてくれ」と声を荒げる
・シュルツがキャンディに「三銃士」が好きであることを聞き、キャンディは好きだと答える
「エリーゼのために」の作曲者ベートーヴェンは、シュルツと同じくドイツの人間です。
「三銃士」の作者デュマは、黒人奴隷の子孫として人種差別を受け、自由主義の立場に立ち、社会改革を行った人です。
シュルツは目の前のクズ野郎・キャンディが、自国の音楽を、そして正義を貫いた作者の作品を、好んでいることを嫌ったのです。
このときシュルツは、犬に喰い殺されてしまった奴隷のことを思い出していました。
今までなんとか怒りを抑えていたシュルツですが、最後のキャンディに求められた「握手」で怒りが爆発してしまいます。
シュルツの怒りが現れたのは、強要された握手のためだけではありません。
それはこれまでの「積み重ね」のためであり、握手はその怒りの沸点を超える「ひとつまみ」の刺激でしかありません。
そのことが会話の端々に見える・・・・これがタラ監督の上手さなのだと思います。
ちなみにタラ監督は2011年のベストムービーの11位に「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」を選んでいます。監督自身も好きなんですね。
~シュルツのキャラクター~
思えばシュルツは、『冷酷な役を演じている』ジャンゴが黒人奴隷に対してひどい扱いをしているのを咎めていました。
さらに、犬に喰い殺されそうになった奴隷を1万2000ドルで買い取ろうとしていました。
しかしこの後ジャンゴの「そんなクズに金は払わない」という一言で、シュルツは「その通りだ」とあっさり退いています。
シュルツの過去は本編では明かされることはなく、彼の真意はわかりません。
シュルツは子どもがいるターゲットの男をジャンゴに殺させたり、悪に対しては容赦のないこともあったかもしれません。
しかし、自分はシュルツは本心では犬に喰い殺される前に奴隷を救いたかったと、虐げられた人を救いたいと願う、やさしい人間だったように思うのです。
舞い戻ってきたジャンゴが、死んだシュルツに「また会おう」を意味するドイツ語「auf Wiedersehen」を言ってくれて嬉しかったです。
~DJANGO~
実は中盤にジャンゴとシュルツがカルビン・キャンディと出会ったとき、そこにいる農園主を演じたのは「続・荒野の用心棒」で主演を務めたフランコ・ネロです。
さらに農園主(フランコ・ネロ)はジャンゴに名前の綴りを聞き、ジャンゴは「綴りはD・J・A・N・G・Oだ、Dは発音しない」と返し、農園主は「知ってるよ」と答えるのです。
このジャンゴの台詞も続・荒野の用心棒のものです。
フランコ・ネロ自身がDJANGOだったからでこその「知っているよ」なのですね。
~ジークフリート~
シュルツがジャンゴに中盤に告げたジークフリートの伝説は、そのままジャンゴのことをあらわしています。
妻の名前がブルームヒルダ(ドイツ読みはブリュンヒルデ)なのもそうだし、最後に伝説通りに彼は愛する妻を手に入れるのです。
またラストの超バイオレンスは「黒人が憎き白人たちをぶち殺しまくる」という内容です。
本作はそんな史実なんて知るか!な作風であり、黒人たちに非人道的な迫害していた白人たちが盛大にしっぺ返しをくらうという、この上のないカタルシスを感じる映画なのです。
あとジャンゴがキャンディの姉を撃ったとき、ありえない方向に飛んでいったのは気のせい?
タラ監督が好きなものにリスペクトを捧げ、そして正義が悪をくじく物語が、自分はたまらなく大好きでした。
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そういえば、先週末に死霊のはらわたのリメイクを観たのですが、あれは相当ヤバイです。。。普段大げさにビックリするアメリカ人ですら固まってましたから(^^) もし観に行かれる予定なら、事前に予告編を観ちゃだめです。観た側から言わせてもらえば、あの予告編はネタバレのオンパレードみたいなもんですよ。
私のお気に入りのキャラクターはシュルツです。特に握手を嫌い、ディカプリオ扮する悪徳農園主を殺す瞬間は素晴らしかった!
また管理人さんにシュルツの心情を語られて「なるほど」と納得しました。
私は黒人女性を思ってもいなかった大金で買い、今までの憎しみ全てを呑み込むことができても、悪党と握手をすることだけは許容できない。そんなシュルツはこの映画の主人公と言ってもいいのではないか?
なんて思ってしまいます。
私のお気に入りのキャラクターはシュルツです。特に握手を嫌い、ディカプリオ扮する悪徳農園主を殺す瞬間は素晴らしかった!
また管理人さんにシュルツの心情を語られて「なるほど」と納得しました。
私は黒人女性を思ってもいなかった大金で買い、今までの憎しみ全てを呑み込むことができても、悪党と握手をすることだけは許容できない。そんなシュルツはこの映画の主人公と言ってもいいのではないか?
なんて思ってしまいます。
いやー今回は観るのが遅れたのであまり展開は書いていません。ごめんなさい。
でも感謝感激雨あられです。
> そういえば、先週末に死霊のはらわたのリメイクを観たのですが、あれは相当ヤバイです。。。普段大げさにビックリするアメリカ人ですら固まってましたから(^^) もし観に行かれる予定なら、事前に予告編を観ちゃだめです。観た側から言わせてもらえば、あの予告編はネタバレのオンパレードみたいなもんですよ。
残念ながら予告観てしまいました&自分の住む地域では上映していない罠(泣)
R18+指定であるあたり興味津津なのですが・・・・観たいなあ。
日本公開って5月3日ですよね。是非劇場でご覧ください。DVDでは魅力半減ですから。この映画のヤバイところは、ビックリする恐怖よりも理性のリミッターが壊されていくような感覚になる恐怖だと思いますよ。
安い奴隷に大金を払うことを認めても、犬に喰い殺される奴隷を後悔と共に見捨ても。悪党との握手だけは認められなかった、最後の一線。
上映時間は長かったですが、素晴らしい時間をすごせました。
そのシーンとタランティーノ監督が盛大に散るシーンは劇場でかなり笑いが起こってました。
…人が死ぬシーンで笑うってどないやねん、って感じですけどね笑
「あれ、若い方は気が付かないかな?」と思うほど意外な配役でした。
確かに上映時間は長いですが、しっかりした構成だったので、楽しさのみが残りました。
アクションシーンは、タラちゃん風味満載でした。
あの監督自らの誘爆シーンは、懺悔シーンかなと思って見てました(殺される側の描写は、凄かったですからネ)
白人のカウボーイ・チームに女性が一人いて、何故か「マスク美人状態」だったので、素顔を拝見したかったです。
主演の2人は、良かったですね。
あのオネーさんの射殺姿は、あれで良いと思います(ちょっと、オーバーなような、引っ張られ方でしたが)
取り分け、黒人(俳優)の方々には、ハッピーな映画でしたね。
面白かったです、本当に!
おっしゃるとおり、本当、凄い人。そして羨ましい限りの人です、タランティーノ監督。
そして毎回毎回、ずば抜けて恰好いいサントラ。これにはやはりヤラレテしまいました。