『ジャングル・ブック(2016)』変わっていく価値観(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
今日の映画感想は『ジャングル・ブック(2016)』です。
個人的お気に入り度:8/10
一言感想:超優等生だな!×モフモフかわいい!
あらすじ
少年モーグリ(ニール・セディ)は、黒ヒョウのバギーラから自然の厳しさと生き抜くための知恵を教わり、母オオカミのラクシャから惜しみない愛を注がれ、たくましくジャングルで生きていた。
しかし、人間への復讐心に燃える恐ろしいトラのシア・カーンは「人間はジャングルの敵だ!」と主張したため、オオカミたちのコミュニティに大きな動揺をもたらした。
バギーラはモーグリを人間の村まで導こうとするが……。
『アイアンマン』『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』のジョン・ファヴロー監督最新作にして、ラドヤード・キップリングの小説を映画化した作品です。
同作はディズニーアニメ版が有名で、タイトルを聞いてこちらを連想する方も多いのではないでしょうか。
今回の2016年版『ジャングル・ブック』はこちらのような完全なアニメーションではなく、主人公の少年だけが本物で、残りのジャングルの風景や動物はすべてCGで表現しています。
<スタジオ内ですべて作っております。
はい、とんでもないですね。
特筆すべきは動物たちの質感で、歩くたびに光の当たり方が変わったり、水に濡れた後の毛並みなど、マジで本物としか思えません。
最近では『ファインディング・ドリー』や『ペット』など、デフォルメされた動物たちによる可愛いアニメ映画が生まれていましたが、本作はその真逆を突っ走っています。
それでいて、出てくるリアル動物たちが可愛いの!モッフモフなの!
とくにクマのバルーのお腹に乗っかりながら、川を下っていくモーグリには「お前ちょっとその場所代われ!」と言いたくてしかたがない。
ディズニーアニメ版でもたいがいうらやましかったんですが、リアルになることでこんなにも妬ましくなるなんて!
<BEFORE
<AFTER
『パディントン』と同じく、リアル系のクマに萌えたい方はもう必見なのではないでしょうか。
で、物語のほうなんですが、これがもう全方位的によくできていて、もはや脚本の優等生ぶりが鼻に付く勢いですよ!(『シンデレラ』もそんな感じだった)
「コミュニティの形成」「価値観の変化」について過不足なく描かれ、しかもメッセージが一元化しておらず、多様な価値観を持って描かれるんですよね。
しかも複雑で、世界中にあふれている問題を子どもにもわかりやすく伝えているんだわ。『ズートピア』の再来か!
メッセージがやや一元化していた『ファインディング・ドリー』、設定やメッセージを全部吹っ飛ばして「ドタバタやってりゃそれでいいんじゃね?」な『ペット』とは対照的だなあ。
このへんは以前にも紹介した以下の記事で書いています↓
<『ジャングル・ブック』を観る前に知ってほしい10のこと!これは新たなディズニーの傑作だ! | シネマズ by 松竹>
あと、ディズニー映画版は物語の展開と帰着が「人種差別的である」と批判を浴びていたんですね(個人的にはそうは思わないけど)。
でも今回の映画では微塵もそういう批判が思いつかない。ポリティカル・コレクトネス的に完全に正しいことも、本作の美点でしょう。
そうそう、字幕版と吹き替え版(MX4D版)で2回観たのですが、どっちも最高だったということを強く言っておきたいです。
このへんのことや、悪役のトラのシア・カーンの魅力については人間映画Wikipediaとも語りました。
※音量バランスミスっててごめんなさい。
※ラジオの後半は激しくネタバレです。
※人間映画Wikipediaは「吹き替え版でキング・ルイを演じた石原慎一さんがいかにすごい人かを知れ!アニメ『レッドバロン』の主題歌の『戦え!レッドバロン』を聴け!このボケが!」と暑苦しく語っておりました。
しかも字幕版ではコビトイノシシ役を監督のジョン・ファブロー、インドオオリス役をなぜかサム・ライミが演じていることも聞き逃せませんね。
ともかくよくできた映画であり、老若男女に分け隔てなくオススメできます。
3D効果はそこそこレベルなので、今回は2Dでも十分でしょう(4D演出はなかなか効果的)。
ぜひぜひ、家族でご覧ください。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓
個人的お気に入り度:8/10
一言感想:超優等生だな!×モフモフかわいい!
あらすじ
少年モーグリ(ニール・セディ)は、黒ヒョウのバギーラから自然の厳しさと生き抜くための知恵を教わり、母オオカミのラクシャから惜しみない愛を注がれ、たくましくジャングルで生きていた。
しかし、人間への復讐心に燃える恐ろしいトラのシア・カーンは「人間はジャングルの敵だ!」と主張したため、オオカミたちのコミュニティに大きな動揺をもたらした。
バギーラはモーグリを人間の村まで導こうとするが……。
『アイアンマン』『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』のジョン・ファヴロー監督最新作にして、ラドヤード・キップリングの小説を映画化した作品です。
同作はディズニーアニメ版が有名で、タイトルを聞いてこちらを連想する方も多いのではないでしょうか。
ジャングル・ブック (新潮文庫)
posted with amazlet at 16.08.17
ラドヤード キプリング
新潮社 (2016-06-26)
売り上げランキング: 4,255
新潮社 (2016-06-26)
売り上げランキング: 4,255
ジャングル・ブック ダイヤモンド・コレクション MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray]
posted with amazlet at 16.08.17
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 (2014-03-19)
売り上げランキング: 1,015
売り上げランキング: 1,015
今回の2016年版『ジャングル・ブック』はこちらのような完全なアニメーションではなく、主人公の少年だけが本物で、残りのジャングルの風景や動物はすべてCGで表現しています。

はい、とんでもないですね。
特筆すべきは動物たちの質感で、歩くたびに光の当たり方が変わったり、水に濡れた後の毛並みなど、マジで本物としか思えません。
最近では『ファインディング・ドリー』や『ペット』など、デフォルメされた動物たちによる可愛いアニメ映画が生まれていましたが、本作はその真逆を突っ走っています。
それでいて、出てくるリアル動物たちが可愛いの!モッフモフなの!
とくにクマのバルーのお腹に乗っかりながら、川を下っていくモーグリには「お前ちょっとその場所代われ!」と言いたくてしかたがない。
ディズニーアニメ版でもたいがいうらやましかったんですが、リアルになることでこんなにも妬ましくなるなんて!


『パディントン』と同じく、リアル系のクマに萌えたい方はもう必見なのではないでしょうか。
で、物語のほうなんですが、これがもう全方位的によくできていて、もはや脚本の優等生ぶりが鼻に付く勢いですよ!(『シンデレラ』もそんな感じだった)
「コミュニティの形成」「価値観の変化」について過不足なく描かれ、しかもメッセージが一元化しておらず、多様な価値観を持って描かれるんですよね。
しかも複雑で、世界中にあふれている問題を子どもにもわかりやすく伝えているんだわ。『ズートピア』の再来か!
メッセージがやや一元化していた『ファインディング・ドリー』、設定やメッセージを全部吹っ飛ばして「ドタバタやってりゃそれでいいんじゃね?」な『ペット』とは対照的だなあ。
このへんは以前にも紹介した以下の記事で書いています↓
<『ジャングル・ブック』を観る前に知ってほしい10のこと!これは新たなディズニーの傑作だ! | シネマズ by 松竹>
あと、ディズニー映画版は物語の展開と帰着が「人種差別的である」と批判を浴びていたんですね(個人的にはそうは思わないけど)。
でも今回の映画では微塵もそういう批判が思いつかない。ポリティカル・コレクトネス的に完全に正しいことも、本作の美点でしょう。
そうそう、字幕版と吹き替え版(MX4D版)で2回観たのですが、どっちも最高だったということを強く言っておきたいです。
このへんのことや、悪役のトラのシア・カーンの魅力については人間映画Wikipediaとも語りました。
※音量バランスミスっててごめんなさい。
※ラジオの後半は激しくネタバレです。
※人間映画Wikipediaは「吹き替え版でキング・ルイを演じた石原慎一さんがいかにすごい人かを知れ!アニメ『レッドバロン』の主題歌の『戦え!レッドバロン』を聴け!このボケが!」と暑苦しく語っておりました。
しかも字幕版ではコビトイノシシ役を監督のジョン・ファブロー、インドオオリス役をなぜかサム・ライミが演じていることも聞き逃せませんね。
ともかくよくできた映画であり、老若男女に分け隔てなくオススメできます。
3D効果はそこそこレベルなので、今回は2Dでも十分でしょう(4D演出はなかなか効果的)。
ぜひぜひ、家族でご覧ください。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓
『X-MEN:アポカリプス』神ではない存在(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
今日の映画感想は『X-MEN:アポカリプス』です。
個人的お気に入り度:5/10
一言感想:いつも通りで、集大成
あらすじ
1983年、ミュータントの始祖でもあるアポカリプス(オスカー・アイザック)が、突如として長い眠りから復活した。
アポカリプスはマグニートー(マイケル・ファスベンダー)をはじめとした4人のミュータントを率いて世界の破壊と創造に臨む。
一方、アポカリプスの存在と考えを知ったプロフェッサーX(ジェームズ・マカヴォイ)は、ミスティーク(ジェニファー・ローレンス)たちとともにその野望を阻止しようと奔走する。
新生した『X-MEN』シリーズ、『ファーストジェネレーション』『フューチャー&パスト』に続く新3部作の完結編(?)です。
<新3部作のうちふたつ
<旧3部作(時系列としては後)
<こっちも一応関わってきます。
ブログで書いていたレビュー↓
新シリーズの幕開けにふさわしい面白さ「X-MEN ファーストジェネレーション」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
過ぎ去りし過去 映画「X-MEN: フューチャー&パスト」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
ウルヴァリンは二度死ぬ?「ウルヴァリン:SAMURAI」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
新3部作と言っても、『アメイジング・スパイダーマン』のような「はじめから仕切り直し」にしているわけではなく、旧3部作と地続きの「過去」を描くようになっています。
『スター・ウォーズ』シリーズで先にエピソード4から描き、後にエピソード1が公開されたのと似ていますね。
それだけだったら単純なんだけど、『フューチャー&パスト』ではタイムパラドックスっていうか、作中で「過去のリセット」が行われているので、非常にややこしいことになっています。
このあたりは深く考えると頭が痛くなるし、なんか矛盾が見つかりそうなので、あまり触れないほうが幸せになれそうですね(もちろん深く考える楽しみもありそうだけど)。
さてさて、本国ではそこそこに賛否両論が聞こえてきた本作、結論から言えば個人的にはちょっとイマイチでした。
恒例の箇条書きをします。
(1)各キャラクターの掘り下げが浅い
限られた上映時間ではしょうがないことでもあるのですが、キャラクターが多すぎるためにそれぞれの描写が少なくなってしまっています。
味方サイドは十分によかったのですが、敵サイドの3人の手下は「洗脳されてついてきたの?」というくらいの印象しかない。これはモヤっとします。
(個人的には問題なかったのですが、4つくらいの視点が並行して展開する序盤は人によっては受け入れにくいかも)
(2)マグニートー(敵)の境遇がちょっと納得いかない。
前作のマグニートーは破壊しまくり、人類に宣戦布告したに等しいのに、また同じようなことで葛藤しなくても……と思ってしまいます。
しかも、今回のマグニートーは「えっ?」と驚く姿で登場します。いや、これは同情するんだけど、前作の展開からすると納得ができない……。
それだけだったらまだいいんだけど、後半のあの「事実」は序盤のこの描写を台無しにしちゃっていると思う。
(3)既視感が強い
メインのふたりである、プロフェッサーXとマグニートーの行動と関係が「またかよ」という感じで、少しがっかりしてしまいました。
いや、このふたりの関係こそがこのシリーズのミソであり、これがあってこそ大好きだったのですが……前作で存分に描かれてきたので、今回は違う切り口を期待してしまったのです。※もうこの2人のケンカとイチャイチャを楽しむシリーズかと開き直ったらいいじゃんという大納得の意見をいただきました。
それ以外にも、世界の建物が浮いて壊されるという画は『アベンジャーズ』『インデペンデンスデイ・リサージェンス』で観たばかりなんですよね。
序盤の森の中などのパーソナルな場面での画は洗練されているので、余計にもったいないです。
<ハリウッド映画でもう100回は観た光景
(4)バトルのカタルシスに乏しい
序盤から圧倒的な力をアポカリプスが見せつける……のはいいのですが、バトルに入るとその攻撃は意外と地味です。
もうちょっとだけでも、ラスボスの派手な見せ場がほしかったですね。
(5)あの人のあの扱い
もうネタバレだからいっさい書けないけど、笑っていいのか対応に困るシーンがあります(悪い意味で)。
この扱いはあのキャラが好きな人ほど納得ができなさそうだな。
おもしろいのは、1983年という時代背景を生かしていること。
『ファーストジェネレーション』でも1964年にキューバ危機が起きようとしていたことが物語と密接に絡んでいましたが、今回は各国が核兵器を保持していた時代ということがけっこうミソになっています。
また、役者の演技も、ここに来て完成されつつあります。
とくにマイケル・ファスベンダーとジェームズ・マカヴォイという主演ふたりはさらに圧巻の演技、この『X-MEN』というサーガの中で際立ったキャラクター性を見せています。
キャラとしては、「ナイトクローラー」が超魅力的でした。
<これはなんかちょっと違うけど。
なんていうか、純朴な青年でカワイイんですよね。『X-MEN2』でもこのキャラが出ていたのですが、今回はさらに萌えられました。
ちなみにナイトクローラーを演じたコディ・スミット=マクフィーは、『ぼくのエリ 200歳の少女』のリメイク、『モールス』でこれまた純粋な少年を演じていたりもします。
今回のボスキャラ、アポカリプスの思想、キャラクター性も奥深いですね。
<これもなんかちょっと違う
彼はミュータントたちを「息子」などと呼び、慈愛に満ちているように見える反面、劣っている人間たち(ミュータント以外)を根絶やしにしようとする「適者生存」「選民思想」的な考えの持ち主です。
アポカリプスは、その名が示すとおり終末預言という意味での「黙示録」を擬人化したような悪なのでしょう。
また、本作の日本のキャッチコピーは「最後の敵は、神」になっていますが、アポカリプスを客観的に見れば、決して神と呼べる人物ではないような気がします(一応神として崇められている描写はあるのですが)
本国のキャッチコピーは「ONLY THE STRONG WILL SURVIVE(強き者だけが生き残る)」。こちらのほうが、アポカリプスの選民思想が出ているものになっていますね。
ちなみに、アポカリプスを演じたのは『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のポー・ダメロンや『エクス・マキナ』のメガネハゲヒゲを演じていたオスカー・アイザック。相変わらずのカメレオンっぷりがすげえよ(まああのメイクなら誰でも変わるけど)
しかも奥さん(主婦層にアピール)、吹き替え版でアポカリプスを演じるのは松平健なんですって!
以下の動画でも暴れん坊将軍の声が合いすぎていることがよくわかりますねえ。
そうそう、『フューチャー&パスト』で大活躍だったクイックシルバーが今回も最高でしたね!
もう中盤の彼のあのシーンだけで大満足できるってもんです。
<コスプレもできます。
なお、メインのストーリーラインはシリーズ未見でも楽しめますが、細かいキャラの心理は『ファーストジェネレーション』『フューチャー&パスト』を観ておかないとさっぱりわかりません。
自分は両作品の記憶がだいぶ薄れていたので、「これ誰だっけ?」な戸惑いも少なからずありました(ファンの方、ごめんなさい)。
なるべく、両作品を直前に復習したほうがよいでしょう。
ちなみに、先着入場者30万人限定で『フューチャー&パスト』 が見られるプレミアム・カードがプレゼントされているようなので、先に本作を観てから『フューチャー&パスト』を振り返るのもいいかもしれませんね。
いままでの映画『X-MEN』シリーズにあった「偏見や迫害をされるミュータントたち」「理念と理念のぶつかり合い」を描く、尊い精神性が存分にあらわれている作品です。
このシリーズの集大成的な作品として、ファンであれば大いに満足できるでしょう。
2Dで観ましたが、いままでのシリーズに比べれば3D映えしそうな画がいくつかあったので、3Dでもいいでしょう。
エンドロール後に恒例のおまけがあるので、最後まで観ましょう!
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓
個人的お気に入り度:5/10
一言感想:いつも通りで、集大成
あらすじ
1983年、ミュータントの始祖でもあるアポカリプス(オスカー・アイザック)が、突如として長い眠りから復活した。
アポカリプスはマグニートー(マイケル・ファスベンダー)をはじめとした4人のミュータントを率いて世界の破壊と創造に臨む。
一方、アポカリプスの存在と考えを知ったプロフェッサーX(ジェームズ・マカヴォイ)は、ミスティーク(ジェニファー・ローレンス)たちとともにその野望を阻止しようと奔走する。
新生した『X-MEN』シリーズ、『ファーストジェネレーション』『フューチャー&パスト』に続く新3部作の完結編(?)です。
![X-MEN:ファースト・ジェネレーション [Blu-ray]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51%2B5H-ub6OL._SL160_.jpg)
![X-MEN:フューチャー&パスト ローグ・エディション(2枚組) [Blu-ray]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51mBM8poN0L._SL160_.jpg)
![X-MEN <特別編> [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51ZRMSC11BL._SL160_.jpg)

![X-MEN:ファイナルディシジョン [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51Fuwc8v9bL._SL160_.jpg)
![ウルヴァリン:X-MEN ZERO [Blu-ray]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51KkS4LhV6L._SL160_.jpg)
![ウルヴァリン:SAMURAI [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51k7OQutbRL._SL160_.jpg)
ブログで書いていたレビュー↓
新シリーズの幕開けにふさわしい面白さ「X-MEN ファーストジェネレーション」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
過ぎ去りし過去 映画「X-MEN: フューチャー&パスト」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
ウルヴァリンは二度死ぬ?「ウルヴァリン:SAMURAI」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
新3部作と言っても、『アメイジング・スパイダーマン』のような「はじめから仕切り直し」にしているわけではなく、旧3部作と地続きの「過去」を描くようになっています。
『スター・ウォーズ』シリーズで先にエピソード4から描き、後にエピソード1が公開されたのと似ていますね。
それだけだったら単純なんだけど、『フューチャー&パスト』ではタイムパラドックスっていうか、作中で「過去のリセット」が行われているので、非常にややこしいことになっています。
このあたりは深く考えると頭が痛くなるし、なんか矛盾が見つかりそうなので、あまり触れないほうが幸せになれそうですね(もちろん深く考える楽しみもありそうだけど)。
「マカヴォイ?スチュワート?ちょっと時系列が。。。」
— 川原瑞丸 (@Mizmaru) 2016年6月9日
デッドプールもこんがらがっていた『X-MEN』シリーズの時系列をおさらい。
→https://t.co/xVpD24enSy pic.twitter.com/CQadTHYSdB
さてさて、本国ではそこそこに賛否両論が聞こえてきた本作、結論から言えば個人的にはちょっとイマイチでした。
恒例の箇条書きをします。
(1)各キャラクターの掘り下げが浅い
限られた上映時間ではしょうがないことでもあるのですが、キャラクターが多すぎるためにそれぞれの描写が少なくなってしまっています。
味方サイドは十分によかったのですが、敵サイドの3人の手下は「洗脳されてついてきたの?」というくらいの印象しかない。これはモヤっとします。
(個人的には問題なかったのですが、4つくらいの視点が並行して展開する序盤は人によっては受け入れにくいかも)
(2)マグニートー(敵)の境遇がちょっと納得いかない。
前作のマグニートーは破壊しまくり、人類に宣戦布告したに等しいのに、また同じようなことで葛藤しなくても……と思ってしまいます。
しかも、今回のマグニートーは「えっ?」と驚く姿で登場します。いや、これは同情するんだけど、前作の展開からすると納得ができない……。
それだけだったらまだいいんだけど、後半のあの「事実」は序盤のこの描写を台無しにしちゃっていると思う。
(3)既視感が強い
メインのふたりである、プロフェッサーXとマグニートーの行動と関係が「またかよ」という感じで、少しがっかりしてしまいました。
いや、このふたりの関係こそがこのシリーズのミソであり、これがあってこそ大好きだったのですが……前作で存分に描かれてきたので、今回は違う切り口を期待してしまったのです。※もうこの2人のケンカとイチャイチャを楽しむシリーズかと開き直ったらいいじゃんという大納得の意見をいただきました。
それ以外にも、世界の建物が浮いて壊されるという画は『アベンジャーズ』『インデペンデンスデイ・リサージェンス』で観たばかりなんですよね。
序盤の森の中などのパーソナルな場面での画は洗練されているので、余計にもったいないです。

(4)バトルのカタルシスに乏しい
序盤から圧倒的な力をアポカリプスが見せつける……のはいいのですが、バトルに入るとその攻撃は意外と地味です。
もうちょっとだけでも、ラスボスの派手な見せ場がほしかったですね。
(5)あの人のあの扱い
もうネタバレだからいっさい書けないけど、笑っていいのか対応に困るシーンがあります(悪い意味で)。
この扱いはあのキャラが好きな人ほど納得ができなさそうだな。
おもしろいのは、1983年という時代背景を生かしていること。
『ファーストジェネレーション』でも1964年にキューバ危機が起きようとしていたことが物語と密接に絡んでいましたが、今回は各国が核兵器を保持していた時代ということがけっこうミソになっています。
また、役者の演技も、ここに来て完成されつつあります。
とくにマイケル・ファスベンダーとジェームズ・マカヴォイという主演ふたりはさらに圧巻の演技、この『X-MEN』というサーガの中で際立ったキャラクター性を見せています。
キャラとしては、「ナイトクローラー」が超魅力的でした。

なんていうか、純朴な青年でカワイイんですよね。『X-MEN2』でもこのキャラが出ていたのですが、今回はさらに萌えられました。
ちなみにナイトクローラーを演じたコディ・スミット=マクフィーは、『ぼくのエリ 200歳の少女』のリメイク、『モールス』でこれまた純粋な少年を演じていたりもします。
今回のボスキャラ、アポカリプスの思想、キャラクター性も奥深いですね。

彼はミュータントたちを「息子」などと呼び、慈愛に満ちているように見える反面、劣っている人間たち(ミュータント以外)を根絶やしにしようとする「適者生存」「選民思想」的な考えの持ち主です。
アポカリプスは、その名が示すとおり終末預言という意味での「黙示録」を擬人化したような悪なのでしょう。
また、本作の日本のキャッチコピーは「最後の敵は、神」になっていますが、アポカリプスを客観的に見れば、決して神と呼べる人物ではないような気がします(一応神として崇められている描写はあるのですが)
本国のキャッチコピーは「ONLY THE STRONG WILL SURVIVE(強き者だけが生き残る)」。こちらのほうが、アポカリプスの選民思想が出ているものになっていますね。
ちなみに、アポカリプスを演じたのは『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のポー・ダメロンや『エクス・マキナ』のメガネハゲヒゲを演じていたオスカー・アイザック。相変わらずのカメレオンっぷりがすげえよ(まああのメイクなら誰でも変わるけど)
しかも奥さん(主婦層にアピール)、吹き替え版でアポカリプスを演じるのは松平健なんですって!
以下の動画でも暴れん坊将軍の声が合いすぎていることがよくわかりますねえ。
そうそう、『フューチャー&パスト』で大活躍だったクイックシルバーが今回も最高でしたね!
もう中盤の彼のあのシーンだけで大満足できるってもんです。

なお、メインのストーリーラインはシリーズ未見でも楽しめますが、細かいキャラの心理は『ファーストジェネレーション』『フューチャー&パスト』を観ておかないとさっぱりわかりません。
自分は両作品の記憶がだいぶ薄れていたので、「これ誰だっけ?」な戸惑いも少なからずありました(ファンの方、ごめんなさい)。
なるべく、両作品を直前に復習したほうがよいでしょう。
ちなみに、先着入場者30万人限定で『フューチャー&パスト』 が見られるプレミアム・カードがプレゼントされているようなので、先に本作を観てから『フューチャー&パスト』を振り返るのもいいかもしれませんね。
いままでの映画『X-MEN』シリーズにあった「偏見や迫害をされるミュータントたち」「理念と理念のぶつかり合い」を描く、尊い精神性が存分にあらわれている作品です。
このシリーズの集大成的な作品として、ファンであれば大いに満足できるでしょう。
2Dで観ましたが、いままでのシリーズに比べれば3D映えしそうな画がいくつかあったので、3Dでもいいでしょう。
エンドロール後に恒例のおまけがあるので、最後まで観ましょう!
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓
『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』超万人向けの家族の物語だった!(ネタバレなし感想+B級映画愛に溢れたシーン)
今日の映画感想は『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』です。
個人的お気に入り度:8/10
一言感想:A級&B級映画好きでよかった!
あらすじ
着実に脚本家としてのキャリアを積んできたダルトン・トランボ(ブライアン・クランストン)は、第2次世界大戦後の冷戦下に起きた「赤狩り」の標的となり、下院非米活動委員会への協力を拒否したことで投獄されてしまう。
釈放後、彼は偽名で執筆を続け『ローマの休日』をはじめ数々の傑作を世に送り出す。
『オースティン・パワーズ』『ミート・ザ・ペアレンツ』のジェイ・ローチ監督最新作です。
本作は「第2次世界大戦後の冷戦下でのハリウッド内幕もの」という、現代人からすればちょっとなじみのないものです。
主人公のダルトン・トランボという名前も、よほどの映画通でないと知らないでしょう。
トランボがどういう人物であるかを簡単に説明すると、
・あの超名作『ローマの休日』の脚本家
・そうにも関わらず、共産主義者を糾弾する「赤狩り」に巻きこまれた
・以後、ずっと偽名を使ってコソコソと仕事をするしかなかった
というお方です。
本作がうまいのは、「ぜんぜん知らない時代のぜんぜん知らない人物の伝記もの」でありながら、予備知識がなくてもわかりやすい、お堅い内容ではないということ。
映画に詳しくなくても問題なく理解できるうえ、当時の映画を観ておくとさらにオイシイという素敵なバランスなのです。
なぜなら、登場人物がきちんと整理されていることはもちろん、主人公の家族の物語に的を絞っているからなんですね。
この家族の物語がどういうものかと言いますと、「パパがいつも仕事ばかりで構ってくれない!」「ていうか仕事を家に持ち込みすぎ!」「私たちの生活をないがしろしすぎ!」という「父親が責められるあるある」なんです。
家族で本気の喧嘩をしてしまうなどの辛いこともあるけど、それ以上にその生活は愉快。「(トランボという名前を隠すために)こんなことしていたのかよ!」などといった驚きもあって、なんとも楽しい。
そんなわけで、本作はクスクス笑えるコメディーシーンも満載なのです。
そうそう、共産主義者への迫害という出来事は、いまの日本人には理解しにくいところがありますが、本作ではそこを「なんで共産党が恨まれたの?」「共産党ってなに?」という疑問に、劇中で「幼い子どもに教えてあげる」ことでわかりやすく答えているのもじつにうまいですね。
観客も、大人が子どもにわかりやすく教えるという形で、当時のことをすんなり飲み込めるのです。
もちろん家族の物語だけでなく、主人公トランボのプライドや、友人との和解や衝突といったドラマも過不足なく込められています。
本作は、観る人によって共感できるところがけっこう異なるのかもしれませんね。
また、ポスターは偏屈なおっさんの画ということで華なんていっさいないですが、娘役のエル・ファニングちゃんがとにかくかわいい、目に入れても痛くないほどにかわいい、世界一かわいい、宇宙一かわいい、娘にほしいということは言わずに入られませんね。
<KAWAII!
<ちょっとそこ代われ
そのほかのキャストでは、ヘレン・ミレン様がくっそイヤな女性記者を演じているのがたまりません。
<超性格悪いです
主人公を演じるブライアン・クランストンとの、還暦越えのベテラン俳優同士の演技合戦もたまんないものがありますね。
さてさて、本作は予備知識なく楽しめる、「ハリウッド内幕もの」の初心者にも超オススメの作品なのですが、それでもつぎの人物を知っておくといいでしょう。
カーク・ダグラス……歴史大作『スパルタカス』の主演・製作総指揮を務めた映画プロデューサーにして俳優。じつはマイケル・ダグラスのお父さん。
ロナルド・レーガン……元アメリカ合衆国大統領。じつは俳優としての活動も有名。
ジョン・ウェイン……『駅馬車』などで知られる、西部劇や戦争映画で大活躍した大スター。戦争映画で主演を務めていたことが多かったものの、戦争には行ってない。
あとは、同じく当時のハリウッド事情と『スパルタカス』を茶化しまくったコメディ『ヘイル、シーザー』を観ておくとさらに飲み込みやすいでしょう。
というよりも、何度も書いたように『トランボ』はかなりわかりやすい内容なので、ぜひ『トランボ』→『ヘイル、シーザー!』という順番で見てほしいですね。
本作『トランボ』を観ておくと、いかに『ヘイル~』が皮肉に満ちたコメディーであったかに気づけるでしょう。
個人的に、本作にもっとも近いと感じたのが、『ウォルト・ディズニーの約束』です。
こちらもちょっとマニアックな映画の裏話が展開しながらも、そのじつ偏屈な人間たちのドラマを愛おしく描いた秀作でした。
そうそう、本作はぜひB級映画ファンにもオススメしたいですね。
これがなぜかは若干のネタバレになるので下に書きますが、もう嬉しいというかゲラゲラ笑いました。
世にいるB級映画ファンは「よく言ってくれた!」と思うことでしょう。
そしてねえ……この映画、エンドロールが超必見なんですよ。
帰る人はいないとは思いますが、最後までじっくりと観ることをおすすめします。
そしてそして、本作はIMDbで7.5点、Rotten Tomatoesで75%と、本国で十分に高評価だったのですが……公開されたばかりでの日本での評価も並々ならぬものになっています。
(以下、25日21:00ごろの記録)
・Yahoo!映画レビュー:4.3点
・ぴあ映画初日満足度ランキング:第3位(91.7)
・Filmarks:3.9点(5点満点中)
・coco映画レビュー:100%
しかもTOHOシネマズ シャンテでは、客席数がもっとも多い劇場で、土日全8回中6回が満席となるほどの賑わいを見せているのだとか。
同じくハリウッド内幕ものだった『ヘイル~』が、やんわりと不評だったことを踏まえると、この数字は驚異的です。
極めて万人が楽しめた映画と言っていいのではないでしょうか。
難点を挙げるなら、序盤が当時のハリウッドの「大人の事情」を細かく描いているため、人によってはやや退屈に感じるかもしれないこと。個人的には、ここはもう少しカットしてもよかったですね。
最大の難点は、公開館が現在20しかなく、時期がバラバラだということかな。
これはミニシアター系での公開ということが本気で惜しい、多くの人が楽しめる作品なんですから。わかったら、ほら近くに劇場がある人はほら行った!
以下、B級映画愛に溢れたシーンだけネタバレで書きます↓ まだ公開館数が少ないので今回はここだけ。これを読むと興味が出てくるかもしれないけど、なるべく読まずに映画館に行ったほうがいいと思うよ!
個人的お気に入り度:8/10
一言感想:A級&B級映画好きでよかった!
あらすじ
着実に脚本家としてのキャリアを積んできたダルトン・トランボ(ブライアン・クランストン)は、第2次世界大戦後の冷戦下に起きた「赤狩り」の標的となり、下院非米活動委員会への協力を拒否したことで投獄されてしまう。
釈放後、彼は偽名で執筆を続け『ローマの休日』をはじめ数々の傑作を世に送り出す。
『オースティン・パワーズ』『ミート・ザ・ペアレンツ』のジェイ・ローチ監督最新作です。
本作は「第2次世界大戦後の冷戦下でのハリウッド内幕もの」という、現代人からすればちょっとなじみのないものです。
主人公のダルトン・トランボという名前も、よほどの映画通でないと知らないでしょう。
トランボ ハリウッドに最も嫌われた男 ハリウッド映画の名作を残した脚本家の伝記小説
posted with amazlet at 16.07.22
ブルース・クック
世界文化社
売り上げランキング: 119,059
世界文化社
売り上げランキング: 119,059
ダルトン・トランボ: ハリウッドのブラックリストに挙げられた男
posted with amazlet at 16.07.22
ジェニファー・ワーナー
七つ森書館
売り上げランキング: 197,762
七つ森書館
売り上げランキング: 197,762
トランボがどういう人物であるかを簡単に説明すると、
・あの超名作『ローマの休日』の脚本家
・そうにも関わらず、共産主義者を糾弾する「赤狩り」に巻きこまれた
・以後、ずっと偽名を使ってコソコソと仕事をするしかなかった
というお方です。
本作がうまいのは、「ぜんぜん知らない時代のぜんぜん知らない人物の伝記もの」でありながら、予備知識がなくてもわかりやすい、お堅い内容ではないということ。
映画に詳しくなくても問題なく理解できるうえ、当時の映画を観ておくとさらにオイシイという素敵なバランスなのです。
なぜなら、登場人物がきちんと整理されていることはもちろん、主人公の家族の物語に的を絞っているからなんですね。
この家族の物語がどういうものかと言いますと、「パパがいつも仕事ばかりで構ってくれない!」「ていうか仕事を家に持ち込みすぎ!」「私たちの生活をないがしろしすぎ!」という「父親が責められるあるある」なんです。
家族で本気の喧嘩をしてしまうなどの辛いこともあるけど、それ以上にその生活は愉快。「(トランボという名前を隠すために)こんなことしていたのかよ!」などといった驚きもあって、なんとも楽しい。
そんなわけで、本作はクスクス笑えるコメディーシーンも満載なのです。
そうそう、共産主義者への迫害という出来事は、いまの日本人には理解しにくいところがありますが、本作ではそこを「なんで共産党が恨まれたの?」「共産党ってなに?」という疑問に、劇中で「幼い子どもに教えてあげる」ことでわかりやすく答えているのもじつにうまいですね。
観客も、大人が子どもにわかりやすく教えるという形で、当時のことをすんなり飲み込めるのです。
もちろん家族の物語だけでなく、主人公トランボのプライドや、友人との和解や衝突といったドラマも過不足なく込められています。
本作は、観る人によって共感できるところがけっこう異なるのかもしれませんね。
また、ポスターは偏屈なおっさんの画ということで華なんていっさいないですが、娘役のエル・ファニングちゃんがとにかくかわいい、目に入れても痛くないほどにかわいい、世界一かわいい、宇宙一かわいい、娘にほしいということは言わずに入られませんね。


そのほかのキャストでは、ヘレン・ミレン様がくっそイヤな女性記者を演じているのがたまりません。

主人公を演じるブライアン・クランストンとの、還暦越えのベテラン俳優同士の演技合戦もたまんないものがありますね。
さてさて、本作は予備知識なく楽しめる、「ハリウッド内幕もの」の初心者にも超オススメの作品なのですが、それでもつぎの人物を知っておくといいでしょう。
カーク・ダグラス……歴史大作『スパルタカス』の主演・製作総指揮を務めた映画プロデューサーにして俳優。じつはマイケル・ダグラスのお父さん。
ロナルド・レーガン……元アメリカ合衆国大統領。じつは俳優としての活動も有名。
ジョン・ウェイン……『駅馬車』などで知られる、西部劇や戦争映画で大活躍した大スター。戦争映画で主演を務めていたことが多かったものの、戦争には行ってない。
あとは、同じく当時のハリウッド事情と『スパルタカス』を茶化しまくったコメディ『ヘイル、シーザー』を観ておくとさらに飲み込みやすいでしょう。
ヘイル,シーザー! ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]
posted with amazlet at 16.07.22
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン (2016-10-05)
売り上げランキング: 325
売り上げランキング: 325
というよりも、何度も書いたように『トランボ』はかなりわかりやすい内容なので、ぜひ『トランボ』→『ヘイル、シーザー!』という順番で見てほしいですね。
本作『トランボ』を観ておくと、いかに『ヘイル~』が皮肉に満ちたコメディーであったかに気づけるでしょう。
個人的に、本作にもっとも近いと感じたのが、『ウォルト・ディズニーの約束』です。
ウォルト・ディズニーの約束 MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray]
posted with amazlet at 16.07.25
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 (2014-08-06)
売り上げランキング: 6,923
売り上げランキング: 6,923
こちらもちょっとマニアックな映画の裏話が展開しながらも、そのじつ偏屈な人間たちのドラマを愛おしく描いた秀作でした。
そうそう、本作はぜひB級映画ファンにもオススメしたいですね。
これがなぜかは若干のネタバレになるので下に書きますが、もう嬉しいというかゲラゲラ笑いました。
世にいるB級映画ファンは「よく言ってくれた!」と思うことでしょう。
そしてねえ……この映画、エンドロールが超必見なんですよ。
帰る人はいないとは思いますが、最後までじっくりと観ることをおすすめします。
そしてそして、本作はIMDbで7.5点、Rotten Tomatoesで75%と、本国で十分に高評価だったのですが……公開されたばかりでの日本での評価も並々ならぬものになっています。
(以下、25日21:00ごろの記録)
・Yahoo!映画レビュー:4.3点
・ぴあ映画初日満足度ランキング:第3位(91.7)
・Filmarks:3.9点(5点満点中)
・coco映画レビュー:100%
しかもTOHOシネマズ シャンテでは、客席数がもっとも多い劇場で、土日全8回中6回が満席となるほどの賑わいを見せているのだとか。
同じくハリウッド内幕ものだった『ヘイル~』が、やんわりと不評だったことを踏まえると、この数字は驚異的です。
極めて万人が楽しめた映画と言っていいのではないでしょうか。
難点を挙げるなら、序盤が当時のハリウッドの「大人の事情」を細かく描いているため、人によってはやや退屈に感じるかもしれないこと。個人的には、ここはもう少しカットしてもよかったですね。
最大の難点は、公開館が現在20しかなく、時期がバラバラだということかな。
これはミニシアター系での公開ということが本気で惜しい、多くの人が楽しめる作品なんですから。わかったら、ほら近くに劇場がある人はほら行った!
以下、B級映画愛に溢れたシーンだけネタバレで書きます↓ まだ公開館数が少ないので今回はここだけ。これを読むと興味が出てくるかもしれないけど、なるべく読まずに映画館に行ったほうがいいと思うよ!
『人生は狂詩曲(ラプソディ)』イギリスのEU離脱が話題のいま観るべき映画!(ネタバレなし感想)
今日の映画感想は『人生は狂詩曲(ラプソディ)』です。
個人的お気に入り度:7/10
一言感想:お国柄があらわすぎな超楽しいミュージカル
あらすじ
吹奏楽団〈サン・セシリア〉は、見事欧州決勝コンクール進出にこぎつけるが、チームの要であるトランペット奏者のウィリーが演奏直後に舞台上で突然死してしまう。
メンバーたちはエースを失ってしまうが、彼の死を無駄にしないためにもメンバーたちはある作戦を思いつく。それは、ライバルチーム〈アンナバン〉の天才トランペット奏者、ユーグをチームにスカウトし、勝ち上がることだった。
ベルギーを舞台にした音楽映画です。
観る前に知っておくといいのは、ベルギーでは北部がオランダ語、南部はフランス語と、国を分断する形でふたつの言語が存在していることです。
この南北で使用言語が違うことは、そのまま地元愛の強さとなり、相手が乗っている車種や仕事のやる気など、些細なことまでいちいち小競り合う原因にもなっているのだとか。
本作『人生は狂詩曲』では、この言語が違う地域での小競り合い(ときどき仲がいい)の構造を、そのまま吹奏楽チームの対立として描いています。
何せ、吹奏楽のライバルチームどうしが、妙なプライドを持って腹の探り合いをしたり、天才トランペット奏者を引き抜こうと画策したり、いい意味でセコいお話なのですから。
お国柄をそのまま物語の発端に絡めている、このアイデアがまず秀逸ですね。
しかもねえ……この天才トランペット奏者が鼻持ちならないというか、そんなにいいやつじゃない、それどころか「自分の作った曲じゃないと出場してやらない!」とほざく超迷惑なやつなんですね。
<天才だけど超迷惑です。
まあはっきり言えば主人公のクセにムカつくわけですが、彼には彼なりの矜持があり、憎めないようなキャラにしているのがうまいですね。
あんまり性格がよくないやつが主人公というのも、まわりまわって本作の魅力になっています。
本作はイギリスのEU離脱が話題になっているいまに観るといいのではないでしょうか。
映画の舞台となるベルギーは、言語対立により国家分裂の危機にたびたびさらされてきました。
近年ではようやく政府や学校が言語ごとに分かれる仕組みが整えられ、その対立は緩和され、ベルギー人は地元に深く思い入れを示すようになったのです。
こうして対立があったものの、妥協や和解により連邦国家となったベルギーは、さまざまな国の共同体となったEUの縮図のようです。
(しかも、ベルギーの首都ブルッセルにはEU本部が置かれていたりもします)
この映画で描かれている対立も、そのままEUのことにも置き換えられそうです。
しかも、この映画では「小さいことで言い争ったりするのはバカバカしくね?」という、客観的な目線での「問題の見かた」も提示されています。
いまのイギリスのEU離脱騒動も、何も知らなかった民衆が「この政治家は信用ならねーから、言っていることの反対の離脱のほうに投票しよー」→マジで離脱の投票が過半数を超えた→民衆「え?EU離脱ってそんなにヤベーことなの?」っていう理由で起こった(注:管理人の見識です)んですから。同じくらいバカバカしいです(起こっていることは本気でシャレにならないけど……)
また、移民問題を皮肉っているように思えるのがおもしろいですね。
なにせ、物語は吹奏楽団のエースが突然死して、代わりに来たライバルチームの天才が超迷惑な奴だったというもの。
イギリスがEU離脱をしようとしているのは、同じく「迷惑な移民に来られてしまうと困る!」というのも理由のひとつみたいだしね(もちろん移民はそういう人ばかりじゃないですし、根本的な問題は福祉や政治体制なのですが)。
そして、そんなお国柄やEUの皮肉はどうこう抜きに、本作は超楽しいです。
吹奏楽シーンだけが音楽の魅力と思うことなかれ、本作は『レ・ミゼラブル(2011)』『シェルブールの雨傘』『TOKYO TRIBE』のように、登場人物の会話がミュージカルになっているのです。
とはいえ、『レ・ミゼラブル』『シェルブールの雨傘』『TOKYO TRIBE』の「会話のミュージカル率」がそれぞれ95%、100%、85%だったのに対して、『人生は狂詩曲』は60%くらいの塩梅になっています。個人的にはこれくらいが見易くてちょうどいいですね。
そしてねえ、そのミュージカルシーンのだいたいが幸せいっぱいなんですよ!
なにせ、主人公が「愛している!」と歌いながら歩くと、周りの人たちがそれを祝福するためにまた歌う、というシーンがあるくらいなんですから。
このミュージカルでみんなが歌う!踊る!楽しい!という感覚は、『(500)日のサマー』の1シーンを超えていました。
そんな幸せいっぱいのミュージカルシーンに、兄弟の確執や違う価値観を持つ者たちの和解のドラマ、コミカルでクスクス笑えるシーンが合わさり、そしてラストシーンは超爽快!というエンタメとして理想的な作品に仕上がっていました。
上映館はシネマート新宿、シネマート心斎橋、シネマスコーレ(名古屋、7月23日より)のみ3館と超少ないですが、『シング・ストリート 未来へのうた』に引き続き、優れた音楽映画を観たい方はぜひ。オススメです。
個人的お気に入り度:7/10
一言感想:お国柄があらわすぎな超楽しいミュージカル
あらすじ
吹奏楽団〈サン・セシリア〉は、見事欧州決勝コンクール進出にこぎつけるが、チームの要であるトランペット奏者のウィリーが演奏直後に舞台上で突然死してしまう。
メンバーたちはエースを失ってしまうが、彼の死を無駄にしないためにもメンバーたちはある作戦を思いつく。それは、ライバルチーム〈アンナバン〉の天才トランペット奏者、ユーグをチームにスカウトし、勝ち上がることだった。
ベルギーを舞台にした音楽映画です。
観る前に知っておくといいのは、ベルギーでは北部がオランダ語、南部はフランス語と、国を分断する形でふたつの言語が存在していることです。
7.16(土)公開『人生は狂詩曲(ラプソディ)』ベルギーは使用言語が主に北と南で別れている世界でも珍しい国です。本作はそんなベルギーの北部と南部の吹奏楽団のお話しです。#ベルギー #吹奏楽団 #映画 pic.twitter.com/yf7IqCVKK3
— 映画『人生は狂詩曲(ラプソディ)』公式 (@belgianrhapsody) 2016年6月22日
この南北で使用言語が違うことは、そのまま地元愛の強さとなり、相手が乗っている車種や仕事のやる気など、些細なことまでいちいち小競り合う原因にもなっているのだとか。
本作『人生は狂詩曲』では、この言語が違う地域での小競り合い(ときどき仲がいい)の構造を、そのまま吹奏楽チームの対立として描いています。
何せ、吹奏楽のライバルチームどうしが、妙なプライドを持って腹の探り合いをしたり、天才トランペット奏者を引き抜こうと画策したり、いい意味でセコいお話なのですから。
お国柄をそのまま物語の発端に絡めている、このアイデアがまず秀逸ですね。
しかもねえ……この天才トランペット奏者が鼻持ちならないというか、そんなにいいやつじゃない、それどころか「自分の作った曲じゃないと出場してやらない!」とほざく超迷惑なやつなんですね。

まあはっきり言えば主人公のクセにムカつくわけですが、彼には彼なりの矜持があり、憎めないようなキャラにしているのがうまいですね。
あんまり性格がよくないやつが主人公というのも、まわりまわって本作の魅力になっています。
本作はイギリスのEU離脱が話題になっているいまに観るといいのではないでしょうか。
映画の舞台となるベルギーは、言語対立により国家分裂の危機にたびたびさらされてきました。
近年ではようやく政府や学校が言語ごとに分かれる仕組みが整えられ、その対立は緩和され、ベルギー人は地元に深く思い入れを示すようになったのです。
こうして対立があったものの、妥協や和解により連邦国家となったベルギーは、さまざまな国の共同体となったEUの縮図のようです。
(しかも、ベルギーの首都ブルッセルにはEU本部が置かれていたりもします)
この映画で描かれている対立も、そのままEUのことにも置き換えられそうです。
しかも、この映画では「小さいことで言い争ったりするのはバカバカしくね?」という、客観的な目線での「問題の見かた」も提示されています。
いまのイギリスのEU離脱騒動も、何も知らなかった民衆が「この政治家は信用ならねーから、言っていることの反対の離脱のほうに投票しよー」→マジで離脱の投票が過半数を超えた→民衆「え?EU離脱ってそんなにヤベーことなの?」っていう理由で起こった(注:管理人の見識です)んですから。同じくらいバカバカしいです(起こっていることは本気でシャレにならないけど……)
また、移民問題を皮肉っているように思えるのがおもしろいですね。
なにせ、物語は吹奏楽団のエースが突然死して、代わりに来たライバルチームの天才が超迷惑な奴だったというもの。
イギリスがEU離脱をしようとしているのは、同じく「迷惑な移民に来られてしまうと困る!」というのも理由のひとつみたいだしね(もちろん移民はそういう人ばかりじゃないですし、根本的な問題は福祉や政治体制なのですが)。
そして、そんなお国柄やEUの皮肉はどうこう抜きに、本作は超楽しいです。
吹奏楽シーンだけが音楽の魅力と思うことなかれ、本作は『レ・ミゼラブル(2011)』『シェルブールの雨傘』『TOKYO TRIBE』のように、登場人物の会話がミュージカルになっているのです。
シェルブールの雨傘 デジタルリマスター版(2枚組) [DVD]
posted with amazlet at 16.07.19
Happinet(SB)(D) (2009-07-17)
売り上げランキング: 10,958
売り上げランキング: 10,958
TOKYO TRIBE/トーキョー・トライブ [DVD]
posted with amazlet at 16.07.19
Happinet(SB)(D) (2015-01-06)
売り上げランキング: 3,663
売り上げランキング: 3,663
とはいえ、『レ・ミゼラブル』『シェルブールの雨傘』『TOKYO TRIBE』の「会話のミュージカル率」がそれぞれ95%、100%、85%だったのに対して、『人生は狂詩曲』は60%くらいの塩梅になっています。個人的にはこれくらいが見易くてちょうどいいですね。
そしてねえ、そのミュージカルシーンのだいたいが幸せいっぱいなんですよ!
なにせ、主人公が「愛している!」と歌いながら歩くと、周りの人たちがそれを祝福するためにまた歌う、というシーンがあるくらいなんですから。
このミュージカルでみんなが歌う!踊る!楽しい!という感覚は、『(500)日のサマー』の1シーンを超えていました。
※ちなみに『モテキ』では、『(500)日のサマー』をいい意味でパクったシーンがあります。
そんな幸せいっぱいのミュージカルシーンに、兄弟の確執や違う価値観を持つ者たちの和解のドラマ、コミカルでクスクス笑えるシーンが合わさり、そしてラストシーンは超爽快!というエンタメとして理想的な作品に仕上がっていました。
上映館はシネマート新宿、シネマート心斎橋、シネマスコーレ(名古屋、7月23日より)のみ3館と超少ないですが、『シング・ストリート 未来へのうた』に引き続き、優れた音楽映画を観たい方はぜひ。オススメです。
『死霊館 エンフィールド事件』常識を超えて(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
今日の映画感想は『死霊館 エンフィールド事件』(原題:The Conjuring 2)です。
個人的お気に入り度:7/10
一言感想:じつは万人向けホラー
あらすじ
1977年、ロンドン北部に位置するエンフィールド。
4人の子どもとシングルマザーによるホジソン一家は、数々の霊現象に悩まされていた。
助けを求められた心霊研究家のエド(パトリック・ウィルソン)とロレイン(ヴェラ・ファーミガ)は、一家を苦しめる恐怖の元凶を探るため彼らの家に向かう。
家では、次女のジャネット(マディソン・ウルフ)がさらなる不穏な現象に気づき……
『ソウ』『ワイルド・スピード SKY MISSION』のジェームズ・ワン監督によるホラー『死霊館』の、3年ぶりの続編です。
本作の魅力のひとつとなっているのは、心霊現象を扱った映画でありながら、実話をもととしていること。
幽霊ハンターor霊能研究家であるエド&ロレイン・ウォーレン夫妻は実在していますし、起きたポルターガイスト現象はしっかりと記録に残っているのです。
※参考→エンフィールドのポルターガイスト - Wikipedia
前作でも今作でも素晴らしいのは、超常現象、幽霊、悪魔というザ・非科学的なものを扱いながらもリアリティーがあること。
「幽霊を信じない立場から」の意見が存分に込められていることはもちろん、前作には幽霊ハンターのふたりのほうが「幽霊でもなんでもない現象であることを証明する」シーンがあったりするんです。
「幽霊なんているわけないじゃん」という多くの人が持つ認識を踏まえておくことで、作中のさまざまな現象が「ありえるかもしれない」というほうに意識を持って行かせているというわけ。
しかも、今回はこの「ありえないことを信じるか」と問いに、ある素晴らしいメッセージを絡めています。
本作がホラー映画でありながら、単に怖がらせるだけは終わらない格調高さを感じる理由は、ここにあるのでしょう。
ホラーとしての怖がらせ方もじつにいいですね。
「幽霊がどこかにいるかも」というおどかせ方に、多種多様なアイデアが込められており、飽きさせません。
ここまで来ると、怖いというよりも「その手があったか!」と感心できます(これはある意味で欠点?)
「来るぞ来るぞ!」と思わせておいて、タイミングをワンテンポずらすという意地の悪さは、一周回ってうれしくてしょうがなくなります。
個人的にアイデアがおもしろすぎて笑ってしまったのは、「肖像画」を使ったあのシーンですね。
演出もじつにうまく、カメラワークは洗練され、1970年代のロンドンやガジェットを再現した美術も秀逸。
「謎」が小出しされるミステリー要素のおかけで、結末までグイグイ引っ張ってくれており、エンターテインメントとしても存分に優れた作品になっていました。
あ、そうそう本作は子役の女の子が超絶ウルトラかわいいことを触れずには入られませんね。

※画像出展はこちら
マディソン・ウルフちゃん(13歳)はオーディションで見つかった新星とのことですが、かわいいだけでなくその演技力も並外れたものがあります。もうキュートな女の子が好きならそれだけで観たらいいんじゃないの?(雑だけどわかりやすい勧め方)
難点は後半の展開にやや強引さを感じたこと、上映時間が2時間14分とホラーとしてはかなり長いことでしょうか。
観客にいい意味でストレスを与える展開が多いため、かなり疲れてしまいます。
しかし、観終わってみればこの尺は必要と思えるものでしたし、演出もテンポよく、無駄を感じさせません。
この上映時間は欠点ではなく、格調高いホラー作品に仕上げるための必要不可欠なもの、と捉えたほうがいいかもしれませんね。
なお、前作を観ていなくても問題なく楽しめます。
話し手となるエドとロレインの活躍を前作で知っていたほうがより飲み込みやすいでしょうが、物語は独立しているので、話がわからなくなることはまずないでしょう。
本作は、怖さはほどよく、登場人物に感情移入しやすく、話もわかりやすいと、ホラー初心者にもかなりオススメできます。
10歳前後の子どもも登場することですし、個人的には家族でも観て欲しいと思ったくらいです(もちろん、あんまり小さい子だと怖すぎるでしょうが)。
直接的な残虐シーンはほとんどありません。PG12指定なのは子どもの喫煙シーンがある、という程度。
極めて万人向けなので、デートにももってこいでしょう。
作品としてのクオリティーが高いことは間違いないので、ホラー映画好きは迷わず劇場へ。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓
個人的お気に入り度:7/10
一言感想:じつは万人向けホラー
あらすじ
1977年、ロンドン北部に位置するエンフィールド。
4人の子どもとシングルマザーによるホジソン一家は、数々の霊現象に悩まされていた。
助けを求められた心霊研究家のエド(パトリック・ウィルソン)とロレイン(ヴェラ・ファーミガ)は、一家を苦しめる恐怖の元凶を探るため彼らの家に向かう。
家では、次女のジャネット(マディソン・ウルフ)がさらなる不穏な現象に気づき……
『ソウ』『ワイルド・スピード SKY MISSION』のジェームズ・ワン監督によるホラー『死霊館』の、3年ぶりの続編です。
※スピンオフ作品に『アナベル 死霊館の人形』があります。
本作の魅力のひとつとなっているのは、心霊現象を扱った映画でありながら、実話をもととしていること。
幽霊ハンターor霊能研究家であるエド&ロレイン・ウォーレン夫妻は実在していますし、起きたポルターガイスト現象はしっかりと記録に残っているのです。
※参考→エンフィールドのポルターガイスト - Wikipedia
前作でも今作でも素晴らしいのは、超常現象、幽霊、悪魔というザ・非科学的なものを扱いながらもリアリティーがあること。
「幽霊を信じない立場から」の意見が存分に込められていることはもちろん、前作には幽霊ハンターのふたりのほうが「幽霊でもなんでもない現象であることを証明する」シーンがあったりするんです。
「幽霊なんているわけないじゃん」という多くの人が持つ認識を踏まえておくことで、作中のさまざまな現象が「ありえるかもしれない」というほうに意識を持って行かせているというわけ。
しかも、今回はこの「ありえないことを信じるか」と問いに、ある素晴らしいメッセージを絡めています。
本作がホラー映画でありながら、単に怖がらせるだけは終わらない格調高さを感じる理由は、ここにあるのでしょう。
ホラーとしての怖がらせ方もじつにいいですね。
「幽霊がどこかにいるかも」というおどかせ方に、多種多様なアイデアが込められており、飽きさせません。
ここまで来ると、怖いというよりも「その手があったか!」と感心できます(これはある意味で欠点?)
「来るぞ来るぞ!」と思わせておいて、タイミングをワンテンポずらすという意地の悪さは、一周回ってうれしくてしょうがなくなります。
個人的にアイデアがおもしろすぎて笑ってしまったのは、「肖像画」を使ったあのシーンですね。
演出もじつにうまく、カメラワークは洗練され、1970年代のロンドンやガジェットを再現した美術も秀逸。
「謎」が小出しされるミステリー要素のおかけで、結末までグイグイ引っ張ってくれており、エンターテインメントとしても存分に優れた作品になっていました。
あ、そうそう本作は子役の女の子が超絶ウルトラかわいいことを触れずには入られませんね。

※画像出展はこちら
マディソン・ウルフちゃん(13歳)はオーディションで見つかった新星とのことですが、かわいいだけでなくその演技力も並外れたものがあります。もうキュートな女の子が好きならそれだけで観たらいいんじゃないの?(雑だけどわかりやすい勧め方)
難点は後半の展開にやや強引さを感じたこと、上映時間が2時間14分とホラーとしてはかなり長いことでしょうか。
観客にいい意味でストレスを与える展開が多いため、かなり疲れてしまいます。
しかし、観終わってみればこの尺は必要と思えるものでしたし、演出もテンポよく、無駄を感じさせません。
この上映時間は欠点ではなく、格調高いホラー作品に仕上げるための必要不可欠なもの、と捉えたほうがいいかもしれませんね。
なお、前作を観ていなくても問題なく楽しめます。
話し手となるエドとロレインの活躍を前作で知っていたほうがより飲み込みやすいでしょうが、物語は独立しているので、話がわからなくなることはまずないでしょう。
本作は、怖さはほどよく、登場人物に感情移入しやすく、話もわかりやすいと、ホラー初心者にもかなりオススメできます。
10歳前後の子どもも登場することですし、個人的には家族でも観て欲しいと思ったくらいです(もちろん、あんまり小さい子だと怖すぎるでしょうが)。
直接的な残虐シーンはほとんどありません。PG12指定なのは子どもの喫煙シーンがある、という程度。
極めて万人向けなので、デートにももってこいでしょう。
作品としてのクオリティーが高いことは間違いないので、ホラー映画好きは迷わず劇場へ。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓
『シング・ストリート 未来へのうた』解放の物語(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
今日の映画感想は『シング・ストリート 未来へのうた』です。
個人的お気に入り度:6/10
一言感想:自分が超少数派であることはわかっています!
あらすじ
1985年のアイルランド、ダブリン。
両親の離婚、学校でのいじめで暗い日々を過ごすコナー(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)は、ラフィナ(ルーシー・ボーイントン)という美少女に一目惚れをする。
コナーは彼女にバンドのミュージックビデオに出ないかと提案するのだが……
自分がどうこう語る前に、まずは本作の世間的な評価を紹介します。
(以下、数字は2016年7月中旬のもの)
<海外>
IMDb:8.2点
Rotten Tomatoes:97%
<日本>
Filmarks:4.4点(5点満点)
Yahoo!映画:4.32点(5点満点)
coco 映画レビュー:97%
いやもうこれは大・大・大絶賛されていると言い切っていいでしょう。
平均点だけを考えれば、あの『ズートピア』をも超えているレベル。
ミニシアター系では、映画ファンからいまもっとも注目を集めている作品なのです。
でも……ごめんなさい、自分は少し物語にひっかかるところがあって、この大絶賛のビッグウェーブに乗れなかったのです。
とくに、主人公以外のバンドメンバーのエピソードが少なめであったことに物足りなさを覚えました。
これは本作を絶賛する方にも同意していただけると思うのですが、こいつらみんな出てきた瞬間から好きになれるくらい魅力的なんですよ!
<こいつらみんな大好き
これはすごいことですよ。役者そのものが持つオーラのおかげもあるのでしょうが、ほんの2、3の会話で彼らがどういう生活を送っているか、どういう性格であるかがわかるんです。
キャラの魅力が描かれているからそれで充分という意見もあるでしょうが、ここまで魅力的だったら「その先」も描いてよ!と自分は思ってしまうのです。
(106分というコンパクトな上映時間で、それを望むのは贅沢だとわかっているのですが)
※以下の意見をいただきました。
視点があくまで主人公コナーに絞ってあるだけで、僕は他のメンバーが影薄いとは思いませんでした。
そして、細かいエピソードや、提言された問題の解決方法に、どうしても気になるところというか、しこりが残ってしまったのです。
具体的な不満点は何を言ってもネタバレになるので↓に書きますが、メインとなるメッセージ性が素晴らしいだけに、ここを流すことができなかったのです。
ちなみに本作はジョン・カーニー監督の半自伝的作品です。インタビューで監督は「基本的に、僕が主人公の年頃にやりたかったけれどできなかったすべてのことを、映画の中で実現した願望充足の映画なんだ」と答えています。
本作が幅広く絶賛を集めた理由のひとつは、監督が自分の願望を充足する映画を作った結果、まだ高校生の主人公たちによる、戻ることはできない青春の日々を追体験できることにあるでしょう。
とはいえ、本作はただただ楽しい青春を描くだけではなく、閉鎖的な場所だからでこその苦しみも描かれています。
この物語はその苦しみを「ある価値観」へと昇華させるのですが、その過程が堅実に組み立てられているため、とてつもない開放感に溢れています。
これは青春映画として理想的です。
10代のよいところも悪いところも含めた出来事の数々を描き、明確なメッセージを掲げ、そして悩みから解放される……。その構成のうまさには唸らされました。
そして触れなければいけないのは、音楽映画としての素晴らしさですね。
デュラン・デュランやモーターヘッドなどの1980年代のイギリスのロック音楽が登場することはもちろん、ミソは作中でMTV(ミュージックテレビジョン)のブームが起こっていること。
ミュージックビデオがテレビで放送されるようになり、音楽と映像を合わせるという新しいエンターテイメントが世に広まった時代に、主人公たちが自分でミュージックビデオを作るというのがたまんねえのですよ。
<ちょっと「スリラー」風
このときに映像がVHS(ビデオ)時代ならではの荒さなのがまた素敵。
ミュージックビデオがただ懐かしさを強調するもの、音楽を見せるものではなく、しっかり主人公の心理描写とも交錯しているのも最高でした。
本作は『ONCE』『はじまりのうた』で築かれたジョン・カーニー作品の集大成と言えるまでに、その特徴と精神性が現れています。

・メインのストーリーラインに乗せて、主人公たちの葛藤や性格をほんの少しの描写で示す
・音楽により前進する人たちを描く
・尊いメッセージを送る(しかし説教臭くはない)
こう作品が観たいと思うのであれば、もう女房を質に入れてでも劇場に足を運びましょう。
これだけ自分が本作の素晴らしい点を挙げながらも、乗り切れないところはあるのは、おそらく自分が青春時代にバンドを組んだことがなく、音楽にも強い興味がなかったことも理由であると思います。
逆に言えば、音楽に青春を捧げた方であれば、かつて(もしくはいま、これから)の自分に、主人公たちを重ねあわせることができるはずです。
以下は音楽に思い入れがありまくる方の素晴らしい感想です。映画は自分の人生に重ねあわせるとより素晴らしい宝物になるのですね。
映画「シングストリート 未来へのうた」感想 解説 ロックンロール イズ ア リスク!灰色の空に虹をかけた少年。 - モンキー的映画のススメ
ああ、ちくしょう、うらやましいな!
自分もバンドを組んだりして、この映画のよさをさらに味わいたかったなあ……(音感なかったんだよ!)
そういえば、30年ほど年代のズレがあるものの、アイルランドから都会への旅立ちを目指す、という物語は現在公開中の映画『ブルックリン』と共通していますね。
こちらは『ズートピア』『魔女の宅急便』のような「少女が都会に出て世間の波にのまれてしまう」という物語。親元を離れてきたばかりの方に、ぜひこちらもオススメしたいです↓
<『ブルックリン』はまるで実写版『ズートピア』のようだった | シネマズ by 松竹>
そんなわけで自分は気になることが多かったわけですが、最初に書いたように本作は世間的には大・大・大絶賛なのですから、自分の10点中6点なんて点数は気にしなくていいでしょう。
青春、音楽、美少年、爽快感、そうした要素を期待して観に行けば、間違いのない1本です。
PG12指定なのは未成年の喫煙シーンがあるからという程度なので、主人公と同世代の少年少女にもぜひ観て欲しいですね。オススメします。
<上映劇場>
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓ 気に入らなかったところをたっぷりと書いています。好きな方にはごめんなさい!
個人的お気に入り度:6/10
一言感想:自分が超少数派であることはわかっています!
あらすじ
1985年のアイルランド、ダブリン。
両親の離婚、学校でのいじめで暗い日々を過ごすコナー(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)は、ラフィナ(ルーシー・ボーイントン)という美少女に一目惚れをする。
コナーは彼女にバンドのミュージックビデオに出ないかと提案するのだが……
自分がどうこう語る前に、まずは本作の世間的な評価を紹介します。
(以下、数字は2016年7月中旬のもの)
<海外>
IMDb:8.2点
Rotten Tomatoes:97%
<日本>
Filmarks:4.4点(5点満点)
Yahoo!映画:4.32点(5点満点)
coco 映画レビュー:97%
いやもうこれは大・大・大絶賛されていると言い切っていいでしょう。
平均点だけを考えれば、あの『ズートピア』をも超えているレベル。
ミニシアター系では、映画ファンからいまもっとも注目を集めている作品なのです。
でも……ごめんなさい、自分は少し物語にひっかかるところがあって、この大絶賛のビッグウェーブに乗れなかったのです。
とくに、主人公以外のバンドメンバーのエピソードが少なめであったことに物足りなさを覚えました。
これは本作を絶賛する方にも同意していただけると思うのですが、こいつらみんな出てきた瞬間から好きになれるくらい魅力的なんですよ!

これはすごいことですよ。役者そのものが持つオーラのおかげもあるのでしょうが、ほんの2、3の会話で彼らがどういう生活を送っているか、どういう性格であるかがわかるんです。
キャラの魅力が描かれているからそれで充分という意見もあるでしょうが、ここまで魅力的だったら「その先」も描いてよ!と自分は思ってしまうのです。
(106分というコンパクトな上映時間で、それを望むのは贅沢だとわかっているのですが)
※以下の意見をいただきました。
視点があくまで主人公コナーに絞ってあるだけで、僕は他のメンバーが影薄いとは思いませんでした。
そして、細かいエピソードや、提言された問題の解決方法に、どうしても気になるところというか、しこりが残ってしまったのです。
具体的な不満点は何を言ってもネタバレになるので↓に書きますが、メインとなるメッセージ性が素晴らしいだけに、ここを流すことができなかったのです。
ちなみに本作はジョン・カーニー監督の半自伝的作品です。インタビューで監督は「基本的に、僕が主人公の年頃にやりたかったけれどできなかったすべてのことを、映画の中で実現した願望充足の映画なんだ」と答えています。
本作が幅広く絶賛を集めた理由のひとつは、監督が自分の願望を充足する映画を作った結果、まだ高校生の主人公たちによる、戻ることはできない青春の日々を追体験できることにあるでしょう。
とはいえ、本作はただただ楽しい青春を描くだけではなく、閉鎖的な場所だからでこその苦しみも描かれています。
この物語はその苦しみを「ある価値観」へと昇華させるのですが、その過程が堅実に組み立てられているため、とてつもない開放感に溢れています。
これは青春映画として理想的です。
10代のよいところも悪いところも含めた出来事の数々を描き、明確なメッセージを掲げ、そして悩みから解放される……。その構成のうまさには唸らされました。
そして触れなければいけないのは、音楽映画としての素晴らしさですね。
デュラン・デュランやモーターヘッドなどの1980年代のイギリスのロック音楽が登場することはもちろん、ミソは作中でMTV(ミュージックテレビジョン)のブームが起こっていること。
ミュージックビデオがテレビで放送されるようになり、音楽と映像を合わせるという新しいエンターテイメントが世に広まった時代に、主人公たちが自分でミュージックビデオを作るというのがたまんねえのですよ。

このときに映像がVHS(ビデオ)時代ならではの荒さなのがまた素敵。
ミュージックビデオがただ懐かしさを強調するもの、音楽を見せるものではなく、しっかり主人公の心理描写とも交錯しているのも最高でした。
本作は『ONCE』『はじまりのうた』で築かれたジョン・カーニー作品の集大成と言えるまでに、その特徴と精神性が現れています。
![ONCE ダブリンの街角で [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51cD-rL-FAL._SL160_.jpg)

・メインのストーリーラインに乗せて、主人公たちの葛藤や性格をほんの少しの描写で示す
・音楽により前進する人たちを描く
・尊いメッセージを送る(しかし説教臭くはない)
こう作品が観たいと思うのであれば、もう女房を質に入れてでも劇場に足を運びましょう。
これだけ自分が本作の素晴らしい点を挙げながらも、乗り切れないところはあるのは、おそらく自分が青春時代にバンドを組んだことがなく、音楽にも強い興味がなかったことも理由であると思います。
逆に言えば、音楽に青春を捧げた方であれば、かつて(もしくはいま、これから)の自分に、主人公たちを重ねあわせることができるはずです。
以下は音楽に思い入れがありまくる方の素晴らしい感想です。映画は自分の人生に重ねあわせるとより素晴らしい宝物になるのですね。
映画「シングストリート 未来へのうた」感想 解説 ロックンロール イズ ア リスク!灰色の空に虹をかけた少年。 - モンキー的映画のススメ
ああ、ちくしょう、うらやましいな!
自分もバンドを組んだりして、この映画のよさをさらに味わいたかったなあ……(音感なかったんだよ!)
そういえば、30年ほど年代のズレがあるものの、アイルランドから都会への旅立ちを目指す、という物語は現在公開中の映画『ブルックリン』と共通していますね。
こちらは『ズートピア』『魔女の宅急便』のような「少女が都会に出て世間の波にのまれてしまう」という物語。親元を離れてきたばかりの方に、ぜひこちらもオススメしたいです↓
<『ブルックリン』はまるで実写版『ズートピア』のようだった | シネマズ by 松竹>
そんなわけで自分は気になることが多かったわけですが、最初に書いたように本作は世間的には大・大・大絶賛なのですから、自分の10点中6点なんて点数は気にしなくていいでしょう。
青春、音楽、美少年、爽快感、そうした要素を期待して観に行けば、間違いのない1本です。
PG12指定なのは未成年の喫煙シーンがあるからという程度なので、主人公と同世代の少年少女にもぜひ観て欲しいですね。オススメします。
<上映劇場>
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓ 気に入らなかったところをたっぷりと書いています。好きな方にはごめんなさい!
『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』変えられることもある(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
今日の映画感想は『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』(原題: Alice Through the Looking Glass)です。
個人的お気に入り度:6/10
一言感想:前作と違うテーマがあってよかった!
あらすじ
3年に及ぶ船旅からロンドンに帰郷した後、アリス(ミア・ワシコウスカ)は再びワンダーランドへと迷い込む。
マッドハッター(ジョニー・デップ)はかつて亡くなった家族の帰りを待っていたが、アリス彼に死んだ者は蘇らない、帰ってくることは不可能だと告げてしまう。
しかし、白の女王(アン・ハサウェイ)によると、時間の番人タイム(サシャ・バロン・コーエン)の持つ“クロノスフィア”には、時間を遡る能力があるらしく……。
『不思議の国のアリス』を実写映画化し、日本でも歴代17位というメガヒットを記録した『アリス・イン・ワンダーランド』の6年ぶりの続編となる作品です。
前作のティム・バートン監督は製作に回り、監督は『ザ・マペッツ』のジェームズ・ボビンにバトンタッチ。
それでも変人を愛するティムらしさ、きらびやかでカラフルな美術は健在なので、前作が好きだった方は抵抗なく観られるでしょう。
本作の直接的な原作は、原題が示す通り『鏡の国のアリス』になるわけですが、物語はほぼオリジナルと言ってさしつかえありません。
本作については、ネタバレも含めて以下に全部書いたので、ぜひお読みください↓
<『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』物語を読み解く10の盲点 | シネマズ by 松竹>
※1ページ目にはネタバレなし、2ページ目には盛大なネタバレがあります。
さてさて、こちらの記事で存分に褒めたので、ここでは残念だったところを書いていきます。
いちばんに思い浮かぶ欠点は、『不思議の国のアリス』としても、タイムトラベルものとしても、コレジャナイ感があることでしょうか。
前作で3度目のアカデミー技術デザイン賞に輝いたコリーン・アトウッドの衣装、原作のジョン・テニエルの挿絵にあるようなヴィクトリア王朝的な要素は目を引きます。
しかし、暗くて機械的なビジュアルの「永遠の城」や、後半に登場する街にはあまり『アリス』らしさを感じられないのです。
個人的には、永遠の城は『パシフィック・リム』や『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』のギレルモ・デル・トロっぽさが感じられて大・大・大好きなのですが、ちょっと閉鎖的な空間になっていることも含めて賛否があるでしょう。
<大好きなビジュアルですけどね
本作は果敢にも『アリス』という題材にタイムトラベルの要素を入れているのですが、奥深いSF的パラドックスを期待すると、少々期待外れになってしまうかもしれません。
これは作品のメッセージにも絡んでいるのでむやみに否定はしたくはないのですが、このジャンルに詳しければ詳しいほど「もうちょっと捻って欲しかった!」と不満が出てくるのかもしれません。
強引な展開が多かったのも残念ですね。
もう少し工夫するだけでカタルシスは増したはずなのに……爪の甘さを感じざるを得ません。
本作は、世界的に興行成績は期待外れと、ほうぼうに語られています。
日本では何とか初登場1位を記録したものの、前作と比べて初動興収比で約32%という状況になりました。
(しかし、前作の大ヒットが異様すぎたというだけで、日本の興行収入は興収12億を超えており、大コケというほどでもありません)
前作の評判がよいとは言えなかったこと、6年も経っての続編というタイミングが悪かったのかもしれませんが……もうちょっとヒットしてもいいのになあ。
(そういえば『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』は20年ぶりの続編で同じく期待はずれの結果でしたね。『ファインディング・ドリー』は13年ぶりの続編ながら全米で特大ヒットをしているけど)
吹き替え版と字幕版で2回観ましたが、吹き替え版は深田恭子や滝藤賢一も含めて問題なし(むしろめっちゃうまい)、字幕版は言葉遊びが楽しめるので、お好みで選びましょう。
3D効果もそこそこ以上にあるので、それを選択する意義も十分です。
前作の「大人になったアリスがワンダーランドで大切なことを知り成長する」というフォーマットはそのままながら、新たなメッセージとテーマがあるという作風は、多くの人に受け入れられるのではないでしょうか。
メッセージそのものもとても尊く、多くの方に観て欲しいと思えるものになっていました。
個人的には、お話のほうがスカスカ気味だった前作よりもはるかに好きです。
できれば前作を観てからのほうが楽しめますが、物語は独立しているので本作から観ても問題はありません。
圧倒的なビジュアルはサービス精神満載、大盤振る舞いですので、観る人を選ばないでしょう。オススメします。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓ 上の記事で書いたので今回は短め。
個人的お気に入り度:6/10
一言感想:前作と違うテーマがあってよかった!
あらすじ
3年に及ぶ船旅からロンドンに帰郷した後、アリス(ミア・ワシコウスカ)は再びワンダーランドへと迷い込む。
マッドハッター(ジョニー・デップ)はかつて亡くなった家族の帰りを待っていたが、アリス彼に死んだ者は蘇らない、帰ってくることは不可能だと告げてしまう。
しかし、白の女王(アン・ハサウェイ)によると、時間の番人タイム(サシャ・バロン・コーエン)の持つ“クロノスフィア”には、時間を遡る能力があるらしく……。
『不思議の国のアリス』を実写映画化し、日本でも歴代17位というメガヒットを記録した『アリス・イン・ワンダーランド』の6年ぶりの続編となる作品です。
アリス・イン・ワンダーランド ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]
posted with amazlet at 16.07.12
ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン (2010-08-04)
売り上げランキング: 1,817
売り上げランキング: 1,817
前作のティム・バートン監督は製作に回り、監督は『ザ・マペッツ』のジェームズ・ボビンにバトンタッチ。
それでも変人を愛するティムらしさ、きらびやかでカラフルな美術は健在なので、前作が好きだった方は抵抗なく観られるでしょう。
本作の直接的な原作は、原題が示す通り『鏡の国のアリス』になるわけですが、物語はほぼオリジナルと言ってさしつかえありません。
鏡の国のアリス (角川文庫)
posted with amazlet at 16.07.12
ルイス・キャロル
角川書店(角川グループパブリッシング)
売り上げランキング: 1,891
角川書店(角川グループパブリッシング)
売り上げランキング: 1,891
本作については、ネタバレも含めて以下に全部書いたので、ぜひお読みください↓
<『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』物語を読み解く10の盲点 | シネマズ by 松竹>
※1ページ目にはネタバレなし、2ページ目には盛大なネタバレがあります。
さてさて、こちらの記事で存分に褒めたので、ここでは残念だったところを書いていきます。
いちばんに思い浮かぶ欠点は、『不思議の国のアリス』としても、タイムトラベルものとしても、コレジャナイ感があることでしょうか。
前作で3度目のアカデミー技術デザイン賞に輝いたコリーン・アトウッドの衣装、原作のジョン・テニエルの挿絵にあるようなヴィクトリア王朝的な要素は目を引きます。
しかし、暗くて機械的なビジュアルの「永遠の城」や、後半に登場する街にはあまり『アリス』らしさを感じられないのです。
個人的には、永遠の城は『パシフィック・リム』や『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』のギレルモ・デル・トロっぽさが感じられて大・大・大好きなのですが、ちょっと閉鎖的な空間になっていることも含めて賛否があるでしょう。

本作は果敢にも『アリス』という題材にタイムトラベルの要素を入れているのですが、奥深いSF的パラドックスを期待すると、少々期待外れになってしまうかもしれません。
これは作品のメッセージにも絡んでいるのでむやみに否定はしたくはないのですが、このジャンルに詳しければ詳しいほど「もうちょっと捻って欲しかった!」と不満が出てくるのかもしれません。
強引な展開が多かったのも残念ですね。
もう少し工夫するだけでカタルシスは増したはずなのに……爪の甘さを感じざるを得ません。
本作は、世界的に興行成績は期待外れと、ほうぼうに語られています。
日本では何とか初登場1位を記録したものの、前作と比べて初動興収比で約32%という状況になりました。
(しかし、前作の大ヒットが異様すぎたというだけで、日本の興行収入は興収12億を超えており、大コケというほどでもありません)
前作の評判がよいとは言えなかったこと、6年も経っての続編というタイミングが悪かったのかもしれませんが……もうちょっとヒットしてもいいのになあ。
(そういえば『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』は20年ぶりの続編で同じく期待はずれの結果でしたね。『ファインディング・ドリー』は13年ぶりの続編ながら全米で特大ヒットをしているけど)
吹き替え版と字幕版で2回観ましたが、吹き替え版は深田恭子や滝藤賢一も含めて問題なし(むしろめっちゃうまい)、字幕版は言葉遊びが楽しめるので、お好みで選びましょう。
3D効果もそこそこ以上にあるので、それを選択する意義も十分です。
前作の「大人になったアリスがワンダーランドで大切なことを知り成長する」というフォーマットはそのままながら、新たなメッセージとテーマがあるという作風は、多くの人に受け入れられるのではないでしょうか。
メッセージそのものもとても尊く、多くの方に観て欲しいと思えるものになっていました。
個人的には、お話のほうがスカスカ気味だった前作よりもはるかに好きです。
できれば前作を観てからのほうが楽しめますが、物語は独立しているので本作から観ても問題はありません。
圧倒的なビジュアルはサービス精神満載、大盤振る舞いですので、観る人を選ばないでしょう。オススメします。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓ 上の記事で書いたので今回は短め。
『日本で一番悪い奴ら』組織の問題を描いた映画なのか?(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
今日の映画感想は『日本で一番悪い奴ら』です。
個人的お気に入り度:6/10
一言感想:警察はク◯だな!
あらすじ
大学時代に鍛えた柔道の腕前を買われ、北海道警察の刑事となった諸星要一(綾野剛)は、先輩刑事の村井(ピエール瀧)から「裏社会に飛び込み『S』(スパイ)を作れ」と教えられる。
諸星は暴力団と関係を築き上げ、上司からの難題を次々と解決していくが、やがて悪事に手を染めていくようになり……。
『凶悪』で数々の映画賞を総なめした白石和彌監督の最新作です。
本作がモチーフとしているのは、日本警察史上最大の不祥事が明るみになった稲葉事件。「主犯」である稲葉圭昭によるノンフィクション本を原作としています。
映画はあくまでも「事実をもとにしたフィクション」ということで、実際の事件とはだいぶ差異があるようです。
でも、Wikipediaなどで事件の背景を見ると、わりと映画そのまんまの悪事ばっかり。この映画のようなことをマジでやってんのか!と驚けるでしょう。
もう劇中ではカネ、女、ドラッグ、チャカ(銃)が飛び交いまくるというゴージャスさ。
主演の綾野剛がラリパッパなひどい(褒め言葉)顔で、ヘラヘラ笑うヘラクズ野郎を演じているので愉快で仕方がないですね。
多くの人が思うでしょうが、この印象はまさに日本版『ウルフ・オブ・ウォールストリート』な感じです。
※自分は観ていないけど、ドラマ『ブレイキング・バッド』にも似ているらしいよ!
警察の職権乱用、違法行為もヤリまくりという、ある意味で倫理的に最低な作品ですが、ここまで来るといっそスガスガしいというもの。
というか本作は行動がヒドすぎてブラックコメディみたいになっていきます。

※「銃器根絶」と掲げながら銃を買い付けているのも高度なギャグです。絵に描いたようなマッチポンプ!
自分が観た回でも、年齢高めの紳士淑女の方々がゲラゲラ笑っていて非常に楽しい環境でした。
とくにミーティングで「こいつら何言ってんの?」という空気になるシーンは爆笑もん。インモラルな笑いを期待する方は是が非でも観ましょう。
個人的に残念だったのは、そのラリパッパっぷりが『ウルフ・オブ~』ほど突き抜けてはおらず、湿っぽい雰囲気になってしまうこと。
シリアスとコメディのバランスが少々悪く、「これは笑ってもいいの?」「いやこれはマジだから笑えないよな」と迷ってしまうシーンもありました。
悪事がどんどんエスカレートしていくのではなく、ときどき正気に戻ったり、同じような悪事を繰り返していたりもします。
これはもはや作品の目指している方向の違い、好き嫌いのレベルなので書くのも野暮なのですが、個人的には「俺たち最強!最強!」→「一気に転落!ざまあみやがれ!」と勢い良くクズを地獄に落としてほしかったのです(笑顔)。
2時間15分という長めの上映時間も手伝って、ちょっとダレてしまったというのが正直なところですね。
また、本作では警察という「組織」そのものへの批判も込められているのですが、それよりも主人公が単独でムチャクチャやっている描写のほうが多すぎるため、結果的に説得力に欠けてしまっています。
たとえば『スポットライト』では性的虐待をしているク◯神父「個人」ではなく、それを隠蔽していた教会「組織」を弾圧するようになっていたことに意義を感じられたのですが……。
白石監督自身も「実録警察モノだからといっても、警察はこんな悪い奴らなんですよ、って事を描きたいのではなくて、一人の男の人生を描きたかった」と語っており、そもそも組織についてどうこうは描きたくはなかったのでしょう。
白石和彌監督は、始終シリアスで笑いがなかった『凶悪』にはバッチリハマっていたけど、今回のようなブラックコメディとはちょっと相性が悪かったかな、とも思いました。
池上純哉さんが脚本を手がけた『任侠ヘルパー』も湿っぽさがある、あまりスッキリしない作品だったので、今回もよくも悪くもその作家性が表れていました。
少なくとも、東京スカパラダイス・オーケストラによる主題歌のような軽快さを求めないほうがよいでしょう(歌詞は作品にマッチしまくっているけど)。
そうそう、綾野剛の演技は本当に素晴らしいんですが、とくにヤクをやったときの「あんた本当にやったことあるよね」としか思えない表情が最高でしたね。
このシーンもシリアスなので本来笑えないはずなんだけど、笑うしかありませんでした(そして怖い)。
『パルプ・フィクション』『ウルフ・オブ~』『だがしかし(少年誌掲載の漫画)』など、ヤク中描写で笑える作品には傑作が多いですね。
(ちなみに駄菓子をクスリのように吸う話は清原逮捕直後にアニメ版が放送され、『だがしかし』は今週の少年サンデーでもドラッグをネタにしています)
お笑い芸人・デニスのスーパーマリオのほう(植野行雄)もじつにいい役をもらっていますね。
中村獅童やピエール瀧など、脇を固める役者もこれ以上のないキャスティングだと思います。
そんなわけで、突き抜けたブラックコメディを期待していた自分としてはやや期待はずれ感もあったのですが、『凶悪』にやられた映画ファン、警察が嫌いな方には大プッシュでおすすめします。
観た後には、さらに心地よく警察が嫌いになれるでしょう。ただし世の中の警察はこんなんばっかりでないので偏見のなきように!(当たり前)
言うまでもなく、R15+指定納得のエロ、ドラッグ描写があるのでお気をつけて。
あ、そうそう、昔の喫茶店でスペースインベーダーの音がしていたのがポイント高かったですね。そういうディテール好きよ。
<こんなんが昔の喫茶店にはあったんですよ。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓ 今回は短め。
個人的お気に入り度:6/10
一言感想:警察はク◯だな!
あらすじ
大学時代に鍛えた柔道の腕前を買われ、北海道警察の刑事となった諸星要一(綾野剛)は、先輩刑事の村井(ピエール瀧)から「裏社会に飛び込み『S』(スパイ)を作れ」と教えられる。
諸星は暴力団と関係を築き上げ、上司からの難題を次々と解決していくが、やがて悪事に手を染めていくようになり……。
『凶悪』で数々の映画賞を総なめした白石和彌監督の最新作です。
本作がモチーフとしているのは、日本警察史上最大の不祥事が明るみになった稲葉事件。「主犯」である稲葉圭昭によるノンフィクション本を原作としています。
恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白 (講談社文庫)
posted with amazlet at 16.07.05
講談社 (2016-02-12)
売り上げランキング: 191
売り上げランキング: 191
映画はあくまでも「事実をもとにしたフィクション」ということで、実際の事件とはだいぶ差異があるようです。
でも、Wikipediaなどで事件の背景を見ると、わりと映画そのまんまの悪事ばっかり。この映画のようなことをマジでやってんのか!と驚けるでしょう。
もう劇中ではカネ、女、ドラッグ、チャカ(銃)が飛び交いまくるというゴージャスさ。
主演の綾野剛がラリパッパなひどい(褒め言葉)顔で、ヘラヘラ笑うヘラクズ野郎を演じているので愉快で仕方がないですね。
多くの人が思うでしょうが、この印象はまさに日本版『ウルフ・オブ・ウォールストリート』な感じです。
ウルフ・オブ・ウォールストリート (字幕版)
posted with amazlet at 16.07.05
(2014-05-14)
売り上げランキング: 1,406
売り上げランキング: 1,406
警察の職権乱用、違法行為もヤリまくりという、ある意味で倫理的に最低な作品ですが、ここまで来るといっそスガスガしいというもの。
というか本作は行動がヒドすぎてブラックコメディみたいになっていきます。

※「銃器根絶」と掲げながら銃を買い付けているのも高度なギャグです。絵に描いたようなマッチポンプ!
自分が観た回でも、年齢高めの紳士淑女の方々がゲラゲラ笑っていて非常に楽しい環境でした。
とくにミーティングで「こいつら何言ってんの?」という空気になるシーンは爆笑もん。インモラルな笑いを期待する方は是が非でも観ましょう。
個人的に残念だったのは、そのラリパッパっぷりが『ウルフ・オブ~』ほど突き抜けてはおらず、湿っぽい雰囲気になってしまうこと。
シリアスとコメディのバランスが少々悪く、「これは笑ってもいいの?」「いやこれはマジだから笑えないよな」と迷ってしまうシーンもありました。
悪事がどんどんエスカレートしていくのではなく、ときどき正気に戻ったり、同じような悪事を繰り返していたりもします。
これはもはや作品の目指している方向の違い、好き嫌いのレベルなので書くのも野暮なのですが、個人的には「俺たち最強!最強!」→「一気に転落!ざまあみやがれ!」と勢い良くクズを地獄に落としてほしかったのです(笑顔)。
2時間15分という長めの上映時間も手伝って、ちょっとダレてしまったというのが正直なところですね。
また、本作では警察という「組織」そのものへの批判も込められているのですが、それよりも主人公が単独でムチャクチャやっている描写のほうが多すぎるため、結果的に説得力に欠けてしまっています。
たとえば『スポットライト』では性的虐待をしているク◯神父「個人」ではなく、それを隠蔽していた教会「組織」を弾圧するようになっていたことに意義を感じられたのですが……。
白石監督自身も「実録警察モノだからといっても、警察はこんな悪い奴らなんですよ、って事を描きたいのではなくて、一人の男の人生を描きたかった」と語っており、そもそも組織についてどうこうは描きたくはなかったのでしょう。
白石和彌監督は、始終シリアスで笑いがなかった『凶悪』にはバッチリハマっていたけど、今回のようなブラックコメディとはちょっと相性が悪かったかな、とも思いました。
池上純哉さんが脚本を手がけた『任侠ヘルパー』も湿っぽさがある、あまりスッキリしない作品だったので、今回もよくも悪くもその作家性が表れていました。
少なくとも、東京スカパラダイス・オーケストラによる主題歌のような軽快さを求めないほうがよいでしょう(歌詞は作品にマッチしまくっているけど)。
道なき道、反骨の。(CD+DVD)
posted with amazlet at 16.07.08
東京スカパラダイスオーケストラ feat. Ken Yokoyama
AMC (2016-06-22)
売り上げランキング: 331
AMC (2016-06-22)
売り上げランキング: 331
そうそう、綾野剛の演技は本当に素晴らしいんですが、とくにヤクをやったときの「あんた本当にやったことあるよね」としか思えない表情が最高でしたね。
このシーンもシリアスなので本来笑えないはずなんだけど、笑うしかありませんでした(そして怖い)。
『パルプ・フィクション』『ウルフ・オブ~』『だがしかし(少年誌掲載の漫画)』など、ヤク中描写で笑える作品には傑作が多いですね。
(ちなみに駄菓子をクスリのように吸う話は清原逮捕直後にアニメ版が放送され、『だがしかし』は今週の少年サンデーでもドラッグをネタにしています)
お笑い芸人・デニスのスーパーマリオのほう(植野行雄)もじつにいい役をもらっていますね。
中村獅童やピエール瀧など、脇を固める役者もこれ以上のないキャスティングだと思います。
そんなわけで、突き抜けたブラックコメディを期待していた自分としてはやや期待はずれ感もあったのですが、『凶悪』にやられた映画ファン、警察が嫌いな方には大プッシュでおすすめします。
観た後には、さらに心地よく警察が嫌いになれるでしょう。ただし世の中の警察はこんなんばっかりでないので偏見のなきように!(当たり前)
言うまでもなく、R15+指定納得のエロ、ドラッグ描写があるのでお気をつけて。
あ、そうそう、昔の喫茶店でスペースインベーダーの音がしていたのがポイント高かったですね。そういうディテール好きよ。

以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓ 今回は短め。
『ウォークラフト』日本人には楽しむことが難しい?(映画ネタバレなし感想)
今日の映画感想は『ウォークラフト』です。
個人的お気に入り度:5/10
一言感想:日本じゃマーケティングがきびしいよなあ……
あらすじ
オークたちは新たな定住地を手に入れるために、人間たちが住む王国アゼロスに来襲しようとしていた。
人間たちはオークたちとの全面戦争を決意するが、オークの中で信頼を置かれている青年のアンドゥイン(トラヴィス・フィメル)は、人間たちとある交渉をしようとする。
一方、オークに属する女性のガローナ(ポーラ・パットン)は人間に囚われてしまっていたのだが……。
本作は『バイオハザード』や『トゥームレイダー』と同じくゲームを映画化した作品なのですが、ウォークラフトって名前のゲームなんて知らねえよ!と思った方も多いんじゃないでしょうか。
それもそのはず。『World of Warcraft』は、プレイヤー数が1000万人を突破してギネス記録に認定されるほどの超人気シリーズですが、日本語版は展開されていないのです。
(ちなみに今回の映画はシリーズ第1作である『Warcraft: Orcs & Humans』が原作)
※輸入版しかございません。
ゲームのジャンルとしてはRTS(リアルタイムストラテジー)で、日本で言えば『伝説のオウガバトル』や『ナポレオン』がこれに当てはまります。
(『World of Warcraft』はMMORPG(多人数参加型オンラインRPG)でもあります)
今回の映画でおもしろいのは、俯瞰して大局的に戦場を見る画が、まさにRTS(リアルタイムストラテジー)であるゲームそのままに見えること。
<大迫力!
※原作ゲームの動画
そのほかにも、キャラクターの造形や魔法のエフェクトを超ハイクオリティで再現していたりと、原作ファンからは大絶賛を持って迎えられている要素が多数あるよう。ゲームの実写映画化作品としては、確かな原作へのリスペクトがある映画なのです。
しかし……映画としては問題も多い作品です。
まっさきに思い浮かぶのは、固有名詞や世界観の設定や登場人物が多めなこと。
ゲームを遊んでいない自分は、映画を観ながら「えーとこの用語がこういう意味で……」「この名前がこのキャラで」と把握するのが大変で、作品において用語を理解する過程っておもしろくもなんともないことに改めて気付きました。
少なくとも、以下の固有名詞を把握しておくといいでしょう。
オーク……人間と対立する種族
フェル……闇の力を持つ、強力な魔法
ガーディアン……組織の中で高い地位にいる魔法使い
アゼロス……人間などが暮らす中世ヨーロッパ風の王国
そのほかのカタカナはキャラの名前という感じ。
原作ゲームからだいぶ種族の名前が省略され、予備知識がなくてもまあまあ理解はできるようになっていました。『ガルム・ウォーズ』に比べればかなり工夫されています。
それでもきびしいのは、人間たちとオークたちというふたつの種族による描写が交互に展開されるうえ、会話劇がかなり退屈であること。
相手の種族側の人物の名前がたびたび口に出るのですが、なかなか両者が交わるまでに時間がかかるので、もどかしいったらありゃしません。
説明に始終するあまり、キャラクター描写が薄めなのも難点ですね。
記号的でステレオタイプなキャラばかりで、あまり好感を持てなかったというのが正直なところです。
さらに残念だったのは、オークの集団がポータル(扉)を通って人間の世界に侵略に来たとき、「リーダー格の青年は、なぜ赤ちゃんがお腹にいる妻を連れてきたのか(もとの世界に置いてくればよかったのに)?」という説明がされていないこと。
このせいで青年のことを理解しにくく、感情移入が拒まれてしまいます。
そのほかにも、飲み込みづらい強引な展開が少なからずありました。
<このオークの青年に感情移入したかったんだけど……。
それでも本作がおもしろいのは、ふたつの種族における対立と内乱が描かれているから。
オークの中には強力な魔力を持つ独裁者がおり、革新派の青年がほかの種族(人間)と競合してクーデターを企てる、という一連の流れが丁寧に描かれています。
これはゲームのみならず、世界でもありふれていること。現実の問題と照らし合わせる方は多いでしょう。
人間に囚われの身となる女性キャラ「ガローナ」の心理描写もじつにおもしろいですね。
彼女の決断はまさに「苦渋」のものですが、納得できる方は多いでしょう。
そして、CGやエフェクトが惜しげもなく投入された画は迫力満点。
世界の広がり、ファンタジー大作映画としての醍醐味は十分に味わえます。
<こういう画はやはりワクワクする!
なお、本作の監督・脚本は、映画ファンを唸らせた『月に囚われた男』『ミッション:8ミニッツ』のダンカン・ジョーンズです。
本作『ウォークラフト』では、ホラーっぽい演出にジョーンズ監督らしさを感じることができました。
でも、『月に~』『ミッション~』のどちらも登場人物が少なく、舞台もごく限定された作品だったんですよね(そうであるからこそおもしろい映画になっていた)。
ジョーンズ監督はこうした作品のほうがマッチしており、本作のようなキャラや設定の多い大作にはやや不向きだったのではないか……ともちょっと思いました。
そもそも原作ゲームの日本語版が展開されていないため、日本人には原作の再現度を楽しめないという欠点があるのは残念です。
日本の宣伝担当の方は、本作のマーケティングに苦労されたことでしょう。
上映館は40数館と少なめ、興行収入が12位スタートという現状も、納得できてしまいました。
それでも、原作ゲームをまったく知らなくても、政治色の強いファンタジー作品を求める人には、十分すぎるほど楽しめるはずです。
公式サイトなどで、いろいろとキャラや世界観を予習しておくのもいいでしょう。
可もなく不可もなく、そこそこな感じでオススメしておきます。
おすすめ記事↓
ファンタジー戦争映画「ウォークラフト」を見る前に知っておくべきこと|ギズモード・ジャパン
映画『ウォークラフト』のダンカン・ジョーンズ監督を直撃! ゲームの世界観を忠実に再現して人間とオークのどちらにも共感できる視点で描いた - ファミ通.com
(C)2016 legendary and universal studios
個人的お気に入り度:5/10
一言感想:日本じゃマーケティングがきびしいよなあ……
あらすじ
オークたちは新たな定住地を手に入れるために、人間たちが住む王国アゼロスに来襲しようとしていた。
人間たちはオークたちとの全面戦争を決意するが、オークの中で信頼を置かれている青年のアンドゥイン(トラヴィス・フィメル)は、人間たちとある交渉をしようとする。
一方、オークに属する女性のガローナ(ポーラ・パットン)は人間に囚われてしまっていたのだが……。
本作は『バイオハザード』や『トゥームレイダー』と同じくゲームを映画化した作品なのですが、ウォークラフトって名前のゲームなんて知らねえよ!と思った方も多いんじゃないでしょうか。
それもそのはず。『World of Warcraft』は、プレイヤー数が1000万人を突破してギネス記録に認定されるほどの超人気シリーズですが、日本語版は展開されていないのです。
(ちなみに今回の映画はシリーズ第1作である『Warcraft: Orcs & Humans』が原作)
World of Warcraft (輸入版)
posted with amazlet at 16.07.05
Blizzard Entertainment (2004-11-23)
売り上げランキング: 8,825
売り上げランキング: 8,825
ゲームのジャンルとしてはRTS(リアルタイムストラテジー)で、日本で言えば『伝説のオウガバトル』や『ナポレオン』がこれに当てはまります。
(『World of Warcraft』はMMORPG(多人数参加型オンラインRPG)でもあります)
※『ナポレオン』は知名度が低いけど、個人的にはやたらハマりました。
今回の映画でおもしろいのは、俯瞰して大局的に戦場を見る画が、まさにRTS(リアルタイムストラテジー)であるゲームそのままに見えること。

※原作ゲームの動画
そのほかにも、キャラクターの造形や魔法のエフェクトを超ハイクオリティで再現していたりと、原作ファンからは大絶賛を持って迎えられている要素が多数あるよう。ゲームの実写映画化作品としては、確かな原作へのリスペクトがある映画なのです。
しかし……映画としては問題も多い作品です。
まっさきに思い浮かぶのは、固有名詞や世界観の設定や登場人物が多めなこと。
ゲームを遊んでいない自分は、映画を観ながら「えーとこの用語がこういう意味で……」「この名前がこのキャラで」と把握するのが大変で、作品において用語を理解する過程っておもしろくもなんともないことに改めて気付きました。
少なくとも、以下の固有名詞を把握しておくといいでしょう。
オーク……人間と対立する種族
フェル……闇の力を持つ、強力な魔法
ガーディアン……組織の中で高い地位にいる魔法使い
アゼロス……人間などが暮らす中世ヨーロッパ風の王国
そのほかのカタカナはキャラの名前という感じ。
原作ゲームからだいぶ種族の名前が省略され、予備知識がなくてもまあまあ理解はできるようになっていました。『ガルム・ウォーズ』に比べればかなり工夫されています。
それでもきびしいのは、人間たちとオークたちというふたつの種族による描写が交互に展開されるうえ、会話劇がかなり退屈であること。
相手の種族側の人物の名前がたびたび口に出るのですが、なかなか両者が交わるまでに時間がかかるので、もどかしいったらありゃしません。
説明に始終するあまり、キャラクター描写が薄めなのも難点ですね。
記号的でステレオタイプなキャラばかりで、あまり好感を持てなかったというのが正直なところです。
さらに残念だったのは、オークの集団がポータル(扉)を通って人間の世界に侵略に来たとき、「リーダー格の青年は、なぜ赤ちゃんがお腹にいる妻を連れてきたのか(もとの世界に置いてくればよかったのに)?」という説明がされていないこと。
このせいで青年のことを理解しにくく、感情移入が拒まれてしまいます。
そのほかにも、飲み込みづらい強引な展開が少なからずありました。

それでも本作がおもしろいのは、ふたつの種族における対立と内乱が描かれているから。
オークの中には強力な魔力を持つ独裁者がおり、革新派の青年がほかの種族(人間)と競合してクーデターを企てる、という一連の流れが丁寧に描かれています。
これはゲームのみならず、世界でもありふれていること。現実の問題と照らし合わせる方は多いでしょう。
人間に囚われの身となる女性キャラ「ガローナ」の心理描写もじつにおもしろいですね。
彼女の決断はまさに「苦渋」のものですが、納得できる方は多いでしょう。
そして、CGやエフェクトが惜しげもなく投入された画は迫力満点。
世界の広がり、ファンタジー大作映画としての醍醐味は十分に味わえます。

なお、本作の監督・脚本は、映画ファンを唸らせた『月に囚われた男』『ミッション:8ミニッツ』のダンカン・ジョーンズです。
月に囚(とら)われた男 [SPE BEST] [Blu-ray]
posted with amazlet at 16.07.05
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント (2015-12-25)
売り上げランキング: 6,287
売り上げランキング: 6,287
ミッション:8ミニッツ [Blu-ray]
posted with amazlet at 16.07.05
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 (2013-01-23)
売り上げランキング: 23,649
売り上げランキング: 23,649
本作『ウォークラフト』では、ホラーっぽい演出にジョーンズ監督らしさを感じることができました。
でも、『月に~』『ミッション~』のどちらも登場人物が少なく、舞台もごく限定された作品だったんですよね(そうであるからこそおもしろい映画になっていた)。
ジョーンズ監督はこうした作品のほうがマッチしており、本作のようなキャラや設定の多い大作にはやや不向きだったのではないか……ともちょっと思いました。
そもそも原作ゲームの日本語版が展開されていないため、日本人には原作の再現度を楽しめないという欠点があるのは残念です。
日本の宣伝担当の方は、本作のマーケティングに苦労されたことでしょう。
上映館は40数館と少なめ、興行収入が12位スタートという現状も、納得できてしまいました。
それでも、原作ゲームをまったく知らなくても、政治色の強いファンタジー作品を求める人には、十分すぎるほど楽しめるはずです。
公式サイトなどで、いろいろとキャラや世界観を予習しておくのもいいでしょう。
可もなく不可もなく、そこそこな感じでオススメしておきます。
おすすめ記事↓
ファンタジー戦争映画「ウォークラフト」を見る前に知っておくべきこと|ギズモード・ジャパン
映画『ウォークラフト』のダンカン・ジョーンズ監督を直撃! ゲームの世界観を忠実に再現して人間とオークのどちらにも共感できる視点で描いた - ファミ通.com
クリスティ・ゴールデン Christie Golden
SBクリエイティブ
売り上げランキング: 17,319
SBクリエイティブ
売り上げランキング: 17,319
Warcraft (The art of Warcraft (ウォークラフト設定資料集))
posted with amazlet at 16.07.05
ダニエル・ウォレス
ボーンデジタル
売り上げランキング: 10,881
ボーンデジタル
売り上げランキング: 10,881
『10 クローバーフィールド・レーン』いかにネタバレで台無しになったかを全力でキレる(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
今日の映画感想は『10 クローバーフィールド・レーン』です。
↑公式サイトをクリックすると即ネタバレ注意!
※劇中の太った男・ハワードについておもしろい説をいただきました。ぜひネタバレをお読みください。
個人的お気に入り度:6/10(日本の宣伝はマイナス100億点)
一言感想:広報担当者はもげろ☆
あらすじ
ミシェル(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)は目覚めると、自分がシェルター内に拘束されていることに気づく。
彼女を助けたと主張する太った中年のハワード(ジョン・グッドマン)と、気の良さそうな青年のエメット(ジョン・ギャラガー・Jr)との共同生活が始まるのだが……。
こんな「ネタバレあり」で解説するブログを運営しておいて何ですが、自分は観る前のネタバレというものは大嫌いです。
で、本作『10 クローバーフィールド・レーン』は公式Twiiter、キャッチコピー、ポスター、TVスポットまでもれなく盛大なネタバレがありました。
TVスポットが流れたらすぐチャンネルを変えて、映画館ではポスターを視界に入れないようにしよう!
自分は前情報のおかげで劇場の予告で目をつぶるという手段に出れたのですが、公式サイトを開いただけで即ネタバレしたのは避けられませんでした。
実際に映画を観ると、その「ネタバレしたらいけない映画じゃん」という印象はさらに強まりました。
だってね、明らかに「その後の展開を知らないからこそおもしろいセリフ」がてんこ盛りなんだもん。
会話のほとんどがミステリーになっているのに、予告ではその結末を思い切り教えてくれました。
推理小説で言えば、「犯人は◯◯です」といきなり書いてあるようなもんだよ!
だいたい、本作は全米で予告編、宣伝展開、公開直前まで全てをベールに包み隠したために話題になった作品なのです。
情報を提示しすぎないことが集客につながったというのに、日本では肝心なところをネタばらしってどういうことだよ。
日本でも、情報をひた隠しにするジブリ映画や、ほとんど内容を知らせない宣伝戦略をした小説『1Q84』は大ヒットをしています。
ただ映画の魅力を削いだだけでなく、自身たちがもっとも目指しているであろう集客にとってもマイナスになることを、広報担当者はわかっているのでしょうか?(わかっていないんだろうな)
少なくとも、自分はネタバレされたおかげでマジで観に行く気を無くしたんですけど……(だから観るのが遅かった)。
ここまで書いておいて何ですが、日本の広報担当者ばかりを責められないところもあります。
なぜなら、日本語に翻訳する前の、インターナショナル版の予告とポスターの時点で超ネタバレしているから!
調べてみると、海外のメディアはこれを重大なネタバレであると非難していました。
このバッシングを日本の広報が知っていれば、こんなことにならなかったのに……。
※以下、まるでネタバレがないヴィジュアルをご覧ください。

<始めは日本の広報もちゃんとした仕事をしていたじゃん……。
さてさて、本作は何を言ってもネタバレなので非常に紹介しにくいですね。
それでも何とか例をあげるのであれば……本作は『SAW』や『CUBE』や『リミット』のようなソリッド・シチュエーションスリラーを期待するととても楽しいのではないでしょうか。
<似ているかも
何せ、あらすじは「目覚めたら、いきなりシェルターの中」というド・シンプル。
一癖も二癖もありそうな男たちと共同生活をするしていくうちに、会話の端々に違和感を覚え、やがて外の世界を見にこうとする、「脱出もの」でもあるのですから。
本作の監督はこれが長編映画のデビュー作とのこと(製作はJ.J. エイブラムス)ですが、そのサスペンスの作り方、画作りはかなり洗練されています。
「あえて見せない」という演出も見事で、妥協のない仕事ぶりが見て取れることでしょう。
うーん、どうしよう、ネタバレなしでほかに言うことがない。
あとは「ジョン・グッドマンの演技がヤバイ!」「ホラー映画によく出ているメアリー・エリザベス・ウィンステッドがかわいい!」「けっこう怖い!」という小並感(小学生並みの感想)ばっかりになってきますね。
残念だったのは、終盤の展開がやや雑に感じてしまったことかな。
ここまで会話劇で丁寧に伏線を張っていたのに、やや爪の甘さを感じます。
音楽がややうるさすぎる印象があるかも。
重圧な音楽は、ここぞというときに使ったほうが効果的なはずです。
結論としては、「何が起こるかわからない」ドキドキが味わえる作品としておすすめ。なかなかデート向きでもあるでしょう。
でも広報のおかげで「何が起こるかわからない」ドキドキが全部台無しになっているんだがな!
ネタバレされてしまった方は、オチに至るまでの茶番劇として楽しみましょう。いや楽しめるわけねーだろこのダボハゼ(怒り狂っております)。
<公式サイトを観ずに、こちらの劇場情報だけを確認しましょう>
※以下の好意的な意見もありますよ。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓
↑公式サイトをクリックすると即ネタバレ注意!
※劇中の太った男・ハワードについておもしろい説をいただきました。ぜひネタバレをお読みください。
個人的お気に入り度:6/10(日本の宣伝はマイナス100億点)
一言感想:広報担当者はもげろ☆
あらすじ
ミシェル(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)は目覚めると、自分がシェルター内に拘束されていることに気づく。
彼女を助けたと主張する太った中年のハワード(ジョン・グッドマン)と、気の良さそうな青年のエメット(ジョン・ギャラガー・Jr)との共同生活が始まるのだが……。
こんな「ネタバレあり」で解説するブログを運営しておいて何ですが、自分は観る前のネタバレというものは大嫌いです。
で、本作『10 クローバーフィールド・レーン』は公式Twiiter、キャッチコピー、ポスター、TVスポットまでもれなく盛大なネタバレがありました。
TVスポットが流れたらすぐチャンネルを変えて、映画館ではポスターを視界に入れないようにしよう!
自分は前情報のおかげで劇場の予告で目をつぶるという手段に出れたのですが、公式サイトを開いただけで即ネタバレしたのは避けられませんでした。
実際に映画を観ると、その「ネタバレしたらいけない映画じゃん」という印象はさらに強まりました。
だってね、明らかに「その後の展開を知らないからこそおもしろいセリフ」がてんこ盛りなんだもん。
会話のほとんどがミステリーになっているのに、予告ではその結末を思い切り教えてくれました。
推理小説で言えば、「犯人は◯◯です」といきなり書いてあるようなもんだよ!
だいたい、本作は全米で予告編、宣伝展開、公開直前まで全てをベールに包み隠したために話題になった作品なのです。
情報を提示しすぎないことが集客につながったというのに、日本では肝心なところをネタばらしってどういうことだよ。
日本でも、情報をひた隠しにするジブリ映画や、ほとんど内容を知らせない宣伝戦略をした小説『1Q84』は大ヒットをしています。
ただ映画の魅力を削いだだけでなく、自身たちがもっとも目指しているであろう集客にとってもマイナスになることを、広報担当者はわかっているのでしょうか?(わかっていないんだろうな)
少なくとも、自分はネタバレされたおかげでマジで観に行く気を無くしたんですけど……(だから観るのが遅かった)。
ここまで書いておいて何ですが、日本の広報担当者ばかりを責められないところもあります。
なぜなら、日本語に翻訳する前の、インターナショナル版の予告とポスターの時点で超ネタバレしているから!
調べてみると、海外のメディアはこれを重大なネタバレであると非難していました。
このバッシングを日本の広報が知っていれば、こんなことにならなかったのに……。
※以下、まるでネタバレがないヴィジュアルをご覧ください。




さてさて、本作は何を言ってもネタバレなので非常に紹介しにくいですね。
それでも何とか例をあげるのであれば……本作は『SAW』や『CUBE』や『リミット』のようなソリッド・シチュエーションスリラーを期待するととても楽しいのではないでしょうか。


![[リミット] (字幕版)](http://ecx.images-amazon.com/images/I/415L0Dt17PL._SL160_.jpg)
何せ、あらすじは「目覚めたら、いきなりシェルターの中」というド・シンプル。
一癖も二癖もありそうな男たちと共同生活をするしていくうちに、会話の端々に違和感を覚え、やがて外の世界を見にこうとする、「脱出もの」でもあるのですから。
本作の監督はこれが長編映画のデビュー作とのこと(製作はJ.J. エイブラムス)ですが、そのサスペンスの作り方、画作りはかなり洗練されています。
「あえて見せない」という演出も見事で、妥協のない仕事ぶりが見て取れることでしょう。
うーん、どうしよう、ネタバレなしでほかに言うことがない。
あとは「ジョン・グッドマンの演技がヤバイ!」「ホラー映画によく出ているメアリー・エリザベス・ウィンステッドがかわいい!」「けっこう怖い!」という小並感(小学生並みの感想)ばっかりになってきますね。
残念だったのは、終盤の展開がやや雑に感じてしまったことかな。
ここまで会話劇で丁寧に伏線を張っていたのに、やや爪の甘さを感じます。
音楽がややうるさすぎる印象があるかも。
重圧な音楽は、ここぞというときに使ったほうが効果的なはずです。
結論としては、「何が起こるかわからない」ドキドキが味わえる作品としておすすめ。なかなかデート向きでもあるでしょう。
でも広報のおかげで「何が起こるかわからない」ドキドキが全部台無しになっているんだがな!
ネタバレされてしまった方は、オチに至るまでの茶番劇として楽しみましょう。いや楽しめるわけねーだろこのダボハゼ(怒り狂っております)。
<公式サイトを観ずに、こちらの劇場情報だけを確認しましょう>
※以下の好意的な意見もありますよ。
@HinatakaJeF でも日本人って7割がネタバレされても作品を楽しめるって言われてますし、むしろオチを知った事で観に行く層がかなりの程度でいるぐらいですから
— にとり (@islul) 2016年6月24日
(実際非映画ファンと映画の話になるとネタバレ盛り込む方が観てくれる)
自分は日本の戦略にどうこう言うつもりはないです
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓