文学っぽさが映画と不釣り合い?「わが母の記」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
今日の映画感想は「わが母の記」です。
*公式ページの「物語」はネタバレがふんだんなので注意
個人的お気に入り度:6/10
一言感想:説明台詞がちょっと気になる
あらすじ
1959年。
作家の伊上洪作(役所広司)は東京で執筆活動を続けていた。
ある日洪作の父が亡くなり、伊上家は認知症をわずらう母・八重(樹木希林)の面倒をみることになる。
八重は洪作に「あの女に預けたのは一生の不覚だった」と口にする。
女とは、洪作が5歳から8年を共に過ごした曾祖父の妾・おぬいのことだった。
「魍魎の匣」「クライマーズ・ハイ」の原田眞人の監督最新作であり、文豪・井上靖の自伝的小説の映画化作品です。
原作は「わが母」の80歳を描いた「花の下」、85歳を描いた「月の光」、89歳での死去までを描いた「雪の面」の3編からなっており、映画もその時系列に即しています。
映画の内容は淡々としていています。
家族の中で、移り変わっていくひとたちの心情を描いていくのみです。
刺激的な展開はほとんどありません。
しかし、丁寧な人物描写により、味わい深い作品に仕上がっています。
この映画の魅力の筆頭は、日本が誇る俳優陣。
役所広司は、自分では「かっこういい親父」なイメージでしたが、この映画では結構偏屈で頑固でお調子者な面もある。
いぶし銀なオトナの魅力を存分に見せつけてくれました。
宮崎あおいは、なんと中学生役を演じます。
20代半ばなのに全然違和感がない。可愛すぎて辛いレベルです。
樹木希林は認知症をわずらい、さらにそれが日に日に悪化していくという難しい役どころ。
もう彼女のこの演技だけでも観る価値があります。
何をやっても面白くて、どうしてもクスクス笑ってしまいます。
それだけでなく、終盤には「症状の悪化」ということまで見事に表現しきってしまう。
見事ということばは足りない、素晴らしい名演でした。
「認知症による行動に笑う」と書くと、「障がいを持つ人を冷笑している」と誤解を生むかもしれません。
しかしそれは違います。
この面白さは、樹木希林の演技、井上靖の母というモデルがあってこそ。
彼女の行動、言動、それに対する周りの反応がとってもコミカルなのです。
自分も「大鹿村騒動記」では抵抗感を覚えていましたが、この映画では全く気になりません。
認知症を持つ方を受け入れ、時には笑って、時には行動の意味を知り、涙する。
自分も認知症を持つ方にこうしてあげたらな、と思える素敵な関係が育まれています。
反面、気になったことも多かったです。これが自分には結構ネックでした。
ひとつがとにかく説明台詞が多すぎること。
映画の設定を事細かに、物語そのものを俳優の台詞で表現しているシーンがたくさんあります。
原作を読んでいないのではっきりとしたことは言えませんが、これは井上靖の文をそのまま表現したがための弊害だと思います。
主人公の独白なら良いのですが、日常的には言うことがないようなことばで登場人物がやりとりすることに、どうしても違和感があったのです。
もう少し映画ならではの表現で、物語を伝えて欲しかったです。
もうひとつが主人公の境遇です。
映画の設定にとやかく言うのもナンセンスですが、ブルジョアすぎる環境に全く共感を得れませんでした。
作家として大成功をおさめている。
介護をするために金銭的に悩んだり、自分の仕事を省みたりする場面は一切ない。
家族に主人公の娘3人、その妻、妹2人と、母の面倒をみてくれる人物がとても多い。
しかもこれらの描写は原作にはないそうです。
もちろんこの設定が効果的に働いている部分も大いにあります。
この環境だからでこそ、「親と子」の話が際立っていますす。
しかし「いくらなんでも」な恵まれ方は、観る人を選んでしまうと思うのです。
また家族が多いので、その把握も結構大変です。
公式ページで人物相関図が公開されていますので、参考にすることをオススメします。
あまり語り口にスマートさがなかったのは残念ですが、役者の入魂の演技、その人物描写は劇場で観るべきものです。
ロケ地である静岡の風景も美しく、日本映画ならではの時間を過ごすことができました。
とにかく言えるのは宮崎あおい可愛い、樹木希林はもっと可愛い。
彼女たちのファンは必見です。
以下、ネタバレです。結末に触れています↓
*公式ページの「物語」はネタバレがふんだんなので注意
個人的お気に入り度:6/10
一言感想:説明台詞がちょっと気になる
あらすじ
1959年。
作家の伊上洪作(役所広司)は東京で執筆活動を続けていた。
ある日洪作の父が亡くなり、伊上家は認知症をわずらう母・八重(樹木希林)の面倒をみることになる。
八重は洪作に「あの女に預けたのは一生の不覚だった」と口にする。
女とは、洪作が5歳から8年を共に過ごした曾祖父の妾・おぬいのことだった。
「魍魎の匣」「クライマーズ・ハイ」の原田眞人の監督最新作であり、文豪・井上靖の自伝的小説の映画化作品です。
![]() | 井上 靖 500円 評価平均: ![]() powered by yasuikamo |
![]() ![]() ![]() |
原作は「わが母」の80歳を描いた「花の下」、85歳を描いた「月の光」、89歳での死去までを描いた「雪の面」の3編からなっており、映画もその時系列に即しています。
映画の内容は淡々としていています。
家族の中で、移り変わっていくひとたちの心情を描いていくのみです。
刺激的な展開はほとんどありません。
しかし、丁寧な人物描写により、味わい深い作品に仕上がっています。
この映画の魅力の筆頭は、日本が誇る俳優陣。
役所広司は、自分では「かっこういい親父」なイメージでしたが、この映画では結構偏屈で頑固でお調子者な面もある。
いぶし銀なオトナの魅力を存分に見せつけてくれました。
宮崎あおいは、なんと中学生役を演じます。
20代半ばなのに全然違和感がない。可愛すぎて辛いレベルです。
樹木希林は認知症をわずらい、さらにそれが日に日に悪化していくという難しい役どころ。
もう彼女のこの演技だけでも観る価値があります。
何をやっても面白くて、どうしてもクスクス笑ってしまいます。
それだけでなく、終盤には「症状の悪化」ということまで見事に表現しきってしまう。
見事ということばは足りない、素晴らしい名演でした。
「認知症による行動に笑う」と書くと、「障がいを持つ人を冷笑している」と誤解を生むかもしれません。
しかしそれは違います。
この面白さは、樹木希林の演技、井上靖の母というモデルがあってこそ。
彼女の行動、言動、それに対する周りの反応がとってもコミカルなのです。
自分も「大鹿村騒動記」では抵抗感を覚えていましたが、この映画では全く気になりません。
認知症を持つ方を受け入れ、時には笑って、時には行動の意味を知り、涙する。
自分も認知症を持つ方にこうしてあげたらな、と思える素敵な関係が育まれています。
反面、気になったことも多かったです。これが自分には結構ネックでした。
ひとつがとにかく説明台詞が多すぎること。
映画の設定を事細かに、物語そのものを俳優の台詞で表現しているシーンがたくさんあります。
原作を読んでいないのではっきりとしたことは言えませんが、これは井上靖の文をそのまま表現したがための弊害だと思います。
主人公の独白なら良いのですが、日常的には言うことがないようなことばで登場人物がやりとりすることに、どうしても違和感があったのです。
もう少し映画ならではの表現で、物語を伝えて欲しかったです。
もうひとつが主人公の境遇です。
映画の設定にとやかく言うのもナンセンスですが、ブルジョアすぎる環境に全く共感を得れませんでした。
作家として大成功をおさめている。
介護をするために金銭的に悩んだり、自分の仕事を省みたりする場面は一切ない。
家族に主人公の娘3人、その妻、妹2人と、母の面倒をみてくれる人物がとても多い。
しかもこれらの描写は原作にはないそうです。
もちろんこの設定が効果的に働いている部分も大いにあります。
この環境だからでこそ、「親と子」の話が際立っていますす。
しかし「いくらなんでも」な恵まれ方は、観る人を選んでしまうと思うのです。
また家族が多いので、その把握も結構大変です。
公式ページで人物相関図が公開されていますので、参考にすることをオススメします。
あまり語り口にスマートさがなかったのは残念ですが、役者の入魂の演技、その人物描写は劇場で観るべきものです。
ロケ地である静岡の風景も美しく、日本映画ならではの時間を過ごすことができました。
とにかく言えるのは宮崎あおい可愛い、樹木希林はもっと可愛い。
彼女たちのファンは必見です。
以下、ネタバレです。結末に触れています↓