幸せになるように 映画「くちづけ(2013)」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
今日の映画感想は「くちづけ」です。
個人的お気に入り度:5/10
一言感想:やっぱり堤幸彦監督作品だったなあ・・・
あらすじ
漫画家の愛情いっぽん(竹中直人)は知的障害をもつ娘マコ(貫地谷しほり)をつれてグループホームにやってきた。
彼女が好きで結婚したいと宣ううーやん(宅間孝行)、その妹の智子(田畑智子)、たびたび住居者の面倒をみている高校生のはるか(橋本愛)などの愛すべき人に囲まれたマコは、幸せな日々を送っていた。
しかし、その年の冬にマコは死んでしまった。
なぜ、彼女は死ななければならかったのだろうかー
「明日の記憶」「自虐の詩」の堤幸彦監督祭最新作です。
原作は東京セレソンデラックスによる同名の舞台劇で、舞台も今回の映画版も宅間孝行が脚本を担当しています。
脚本は知的障害者へ対する視線、人間描写の面白さが細やかに描かれており、舞台版の人気の理由がわかるものでした。
そして今回の映画版も、徹頭徹尾「舞台」のような画づくりになっています。
登場人物の会話を中心に話が進んでいます。
作中ではグループホームというひとつの舞台で、登場人物が立ち替わり登場していきます。
台詞も日常で言うような自然なものではなく、とにかくみんな大声をあげて自分の主張を示しています。
これら全てが「スクリーンで舞台を観ている」印象でした。
「原作である舞台を忠実に映画化した」と好意的に受け取るか、「映画ならではの工夫がない」と否定的にとるかは人によると思います。
個人的にはどちらかというと後者でした。もう少し映画ならではの魅せ方も、あってもよかったと思います(終盤にはちゃんと映画ならではのシーンもあります)。
さて、映画ファンにとって懸念材料なのが、不評を浴びがちがな堤幸彦監督作品であることでしょう。
「破壊屋」さんのゼロ年代のワースト映画では、堤監督の「20世紀少年」「劇場版スシ王子」「サイレン FORBIDDEN SIREN」などがなかなかの高順位にあります。
観る前から不安で仕方がなかったのですが、残念ながらその不安は当たっていました。
気になったのはステレオタイプなキャラクターと、オーバーアクト気味な役者の演技です。
現実にはいそうにないキャラクターがいて、常にハイテンションで喜怒哀楽を表現するのです。
もとが舞台作品なのである程度は仕方がないですし、このおかげで作品のメッセージは明確になっているので一概に批判するものではないのですが、自分は映画ならではの自然な台詞、リアルな登場人物、繊細な演技指導がされた作品のほうが好きです。
大仰な演出、ハズしているギャグシーン、独特のアクの強さもあるので、堤幸彦監督が嫌い、または苦手な方にはとうていおすすめできるものではありませんでした。
また「泣ける映画」という触れ込みで宣伝がされていますが、自分はそれもあまり好きではないです。
さらに作品そのものも明らかに「泣かせ」に走っており、「誘い泣き」を狙うかのように登場人物がワンワンと泣いてしまいます。
そんな演出をしなくても、十分にエモショーナルな作品なのに・・・自分はそのせいか、この映画では泣きませんでした。
思えば「舞台そのまま」の印象であることも、堤監督が「完コピ」をモットーとしているためなのでしょう。
そのまま映像化することだけが映画の役割ではないと思うのだけど・・・
それでも、本作にはいいところがたくさんあります。
そのひとつが、障害を持った方だけでなく、その家族を取り巻く環境への問題提起をしていることです。
主に描かれるのはグループホームで暮らす知的障害者の生活ですが、知的障害者を身内に持つ家族の問題もしっかりと提言されます。
ここで描かれる状況は、現実にあることです。
障害者にかかわった人だけでなく、障害者のことをよく知らない方にとっても思うことのある描写でしょう。
また、本作は一人の知的障害を持った女性の死からはじまる物語です。
はじめに登場人物の死を知らせ、そこから時間をさかのぼって見せる映画には「市民ケーン」「嫌われ松子の一生」もありました。
「死」から描くことは、サスペンス性を高めるだけでなく、より悲劇的な面が見えて確かな効果を持っていると言えます。
浮かび上がった真実を前にして、私たちはどうすればいいのか、どうしたらよかったのか、知的障害のある方だけでなく、みんながもっと幸せに人生を送るためにはどうすればよいのか・・・
本作には、それをしっかりと考えさせる力を持っているのです。
そして役者たちもみんな素晴らしかったです。
知的障害者を演じた貫地谷しほり、娘に愛情を注ぐ父親を演じた竹中直人も本当によかった。
竹中直人はスベリ気味なギャグキャラを演じることが多いと思っていたので、もう少しこういうシリアスな役を演じてもいいのになあ・・・と思いました。
ちなみに2人は「僕らのワンダフルデイズ」でも父娘を演じていました。
個人的には堤幸彦監督が好きではないのでノレない部分もありましたが、そのほかは多くの方に観てほしいと思えることばかりです。
コメディシーンが多いので、障害をテーマとした作品としては敷居は低いと思います。
障害者を家族に持つ方には辛い描写もあるとは思いますので、積極的にはすすめません。
しかし、知的障害者のことについて知りたい方、将来福祉の仕事に携わりたい方ににはぜひ劇場へ足を運んでみてください。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓
個人的お気に入り度:5/10
一言感想:やっぱり堤幸彦監督作品だったなあ・・・
あらすじ
漫画家の愛情いっぽん(竹中直人)は知的障害をもつ娘マコ(貫地谷しほり)をつれてグループホームにやってきた。
彼女が好きで結婚したいと宣ううーやん(宅間孝行)、その妹の智子(田畑智子)、たびたび住居者の面倒をみている高校生のはるか(橋本愛)などの愛すべき人に囲まれたマコは、幸せな日々を送っていた。
しかし、その年の冬にマコは死んでしまった。
なぜ、彼女は死ななければならかったのだろうかー
「明日の記憶」「自虐の詩」の堤幸彦監督祭最新作です。
原作は東京セレソンデラックスによる同名の舞台劇で、舞台も今回の映画版も宅間孝行が脚本を担当しています。
脚本は知的障害者へ対する視線、人間描写の面白さが細やかに描かれており、舞台版の人気の理由がわかるものでした。
そして今回の映画版も、徹頭徹尾「舞台」のような画づくりになっています。
登場人物の会話を中心に話が進んでいます。
作中ではグループホームというひとつの舞台で、登場人物が立ち替わり登場していきます。
台詞も日常で言うような自然なものではなく、とにかくみんな大声をあげて自分の主張を示しています。
これら全てが「スクリーンで舞台を観ている」印象でした。
「原作である舞台を忠実に映画化した」と好意的に受け取るか、「映画ならではの工夫がない」と否定的にとるかは人によると思います。
個人的にはどちらかというと後者でした。もう少し映画ならではの魅せ方も、あってもよかったと思います(終盤にはちゃんと映画ならではのシーンもあります)。
さて、映画ファンにとって懸念材料なのが、不評を浴びがちがな堤幸彦監督作品であることでしょう。
「破壊屋」さんのゼロ年代のワースト映画では、堤監督の「20世紀少年」「劇場版スシ王子」「サイレン FORBIDDEN SIREN」などがなかなかの高順位にあります。
観る前から不安で仕方がなかったのですが、残念ながらその不安は当たっていました。
気になったのはステレオタイプなキャラクターと、オーバーアクト気味な役者の演技です。
現実にはいそうにないキャラクターがいて、常にハイテンションで喜怒哀楽を表現するのです。
もとが舞台作品なのである程度は仕方がないですし、このおかげで作品のメッセージは明確になっているので一概に批判するものではないのですが、自分は映画ならではの自然な台詞、リアルな登場人物、繊細な演技指導がされた作品のほうが好きです。
大仰な演出、ハズしているギャグシーン、独特のアクの強さもあるので、堤幸彦監督が嫌い、または苦手な方にはとうていおすすめできるものではありませんでした。
また「泣ける映画」という触れ込みで宣伝がされていますが、自分はそれもあまり好きではないです。
さらに作品そのものも明らかに「泣かせ」に走っており、「誘い泣き」を狙うかのように登場人物がワンワンと泣いてしまいます。
そんな演出をしなくても、十分にエモショーナルな作品なのに・・・自分はそのせいか、この映画では泣きませんでした。
思えば「舞台そのまま」の印象であることも、堤監督が「完コピ」をモットーとしているためなのでしょう。
そのまま映像化することだけが映画の役割ではないと思うのだけど・・・
それでも、本作にはいいところがたくさんあります。
そのひとつが、障害を持った方だけでなく、その家族を取り巻く環境への問題提起をしていることです。
主に描かれるのはグループホームで暮らす知的障害者の生活ですが、知的障害者を身内に持つ家族の問題もしっかりと提言されます。
ここで描かれる状況は、現実にあることです。
障害者にかかわった人だけでなく、障害者のことをよく知らない方にとっても思うことのある描写でしょう。
また、本作は一人の知的障害を持った女性の死からはじまる物語です。
はじめに登場人物の死を知らせ、そこから時間をさかのぼって見せる映画には「市民ケーン」「嫌われ松子の一生」もありました。
「死」から描くことは、サスペンス性を高めるだけでなく、より悲劇的な面が見えて確かな効果を持っていると言えます。
浮かび上がった真実を前にして、私たちはどうすればいいのか、どうしたらよかったのか、知的障害のある方だけでなく、みんながもっと幸せに人生を送るためにはどうすればよいのか・・・
本作には、それをしっかりと考えさせる力を持っているのです。
そして役者たちもみんな素晴らしかったです。
知的障害者を演じた貫地谷しほり、娘に愛情を注ぐ父親を演じた竹中直人も本当によかった。
竹中直人は
ちなみに2人は「僕らのワンダフルデイズ」でも父娘を演じていました。
個人的には堤幸彦監督が好きではないのでノレない部分もありましたが、そのほかは多くの方に観てほしいと思えることばかりです。
コメディシーンが多いので、障害をテーマとした作品としては敷居は低いと思います。
障害者を家族に持つ方には辛い描写もあるとは思いますので、積極的にはすすめません。
しかし、知的障害者のことについて知りたい方、将来福祉の仕事に携わりたい方ににはぜひ劇場へ足を運んでみてください。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓
スポンサーサイト