きっと変わるから 映画「それでも夜は明ける」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
今日の映画感想は「それでも夜は明ける」(原題:12 Years a Slave)です。
個人的お気に入り度:8/10
一言感想:みんな、我が身が可愛いのかな
あらすじ
1841年のニューヨーク。
家族と一緒に幸せに暮らしていた音楽家のソロモン(キウェテル・イジョフォー)は、突如誘拐され奴隷となってしまう。
自由黒人であることを必死で訴えるソロモンであったが、その声は聞き入れてもらえない。彼は本当の名前を呼ばれることもなくなり、非人道的な扱いをされ続けるが、それでも生きることを諦めなかった。
「SHAME -シェイム-」のスティーヴ・マックイーン監督の最新作です。
本作は実話をもととした映画であり、1968年に発表された伝記を原作としています。
物語のはじまりである1841年は南北戦争が勃発する8年前であり、奴隷制度が廃止されていない時代です。
主人公・ソロモンはニューヨーク(北部)で自由黒人としての暮らしを送っていたのですが、突如誘拐され、黒人への差別が激しいジョージア州(南部)へと送られてしまいます。
当時、黒人を誘拐して売り飛ばすという犯罪は多発しており、ソロモンもその犯罪に巻き込まれたにすぎなかったのです。
そのために失った時間は、原題にあるように12年という途方も無い月日です。
彼はどれほどの苦汁をなめ、耐え、そして家族に再び会うことを願ったでしょうか。
この映画の素晴らしさは、巧みな演出や役者の演技により、主人公の気持ちに寄り添えることにあります。
主人公や周りの黒人たちの「苦しみ」「狂気」をこれでもかと描き、あるときは画面に映らないようにして観客に想像をさせ、あるときは目を背けたくなるほどの光景を映し出します。
表情のみで心情を語るキウェテル・イジョフォー、情を持っている白人を演じたベネディクト・カンバーバッチ、観ているだけでぶん殴りたくなるイヤな役のマイケル・ファスベンダーは文句のつけようのない名演を披露してくれました。
女性奴隷を演じたルピタ・ニョンゴは新人であるとのことですが、名優を前に負けてはいません。「生きるか死ぬか」を感じさせるほどの表情を見せてくれました。
この作品で描かれている「人間への迫害」は、決して人ごとではないと思います。
大多数に迎合するために弱者を救えない社会。
能力よりも学歴や肩書きが重視される社会。
若者を食い物にして、経営者のみが肥え太る社会。
そうした、現代にも通ずるものがあるのではないでしょうか。
この映画では「(社会が)おかしいと思っても、それを行動にできない」人が出てきます。
その原因のほとんどは「我が身可愛さ」です。
可哀想だとは思う、助けてあげたいとも思う、でもやっぱり自分が一番大切なのです。
人は善と悪で完全に二分することはできません。
悪行を行わざるを得ない人、矛盾した行動を取る人もいます。
この映画は、そうした人間の本質をも描ききっていました。
この作品がアカデミー賞作品賞を受賞したのは、映画としての完成度はもちろん、そうした現代にも通ずるテーマ性があり、複雑な人間の心理を描いたためでもあるのでしょう。
最近では「42 世界を変えた男」「ヘルプ ~心がつなぐストーリー~」など、黒人を主人公とした完成度の高いドラマが数多く世に出ています。
これらの映画は、その昔に黒人として迫害をされた方のみを対象としているわけではありません。
苦しい状況の中で強くなり、勝利のために努力する姿は多くの方の共感を産みます。
迫害の歴史を知らない方にも、このような歴史を二度と繰り返してはならない、と強く思うことができるでしょう。
苦しい歴史を経て今があるなら、この先もよりよい未来を築かなければなりません。
これらの映画には、それをひとりひとりが思うことができるほどの力があります。
映画は娯楽ですが、人を動かすこともできるはずです。
コメディ要素はほぼ皆無で、観ていてとても気が滅入る映画です。
「ショーシャンクの空に」のような爽快感もありませんし、物語の面白さを期待すると裏切られるかもしれません。
PG12指定ではやや甘いと思われる残酷な描写もありますので、決して万人向けではないでしょう。
しかし、本作は人間の心理を描いた作品としても、主人公の辛い気持ちに同調できる作品としても最高峰です。
心に残る作品に触れたい方、今辛い思いをしている方に、この映画をおすすめします。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓
個人的お気に入り度:8/10
一言感想:みんな、我が身が可愛いのかな
あらすじ
1841年のニューヨーク。
家族と一緒に幸せに暮らしていた音楽家のソロモン(キウェテル・イジョフォー)は、突如誘拐され奴隷となってしまう。
自由黒人であることを必死で訴えるソロモンであったが、その声は聞き入れてもらえない。彼は本当の名前を呼ばれることもなくなり、非人道的な扱いをされ続けるが、それでも生きることを諦めなかった。
「SHAME -シェイム-」のスティーヴ・マックイーン監督の最新作です。
本作は実話をもととした映画であり、1968年に発表された伝記を原作としています。
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物語のはじまりである1841年は南北戦争が勃発する8年前であり、奴隷制度が廃止されていない時代です。
主人公・ソロモンはニューヨーク(北部)で自由黒人としての暮らしを送っていたのですが、突如誘拐され、黒人への差別が激しいジョージア州(南部)へと送られてしまいます。
当時、黒人を誘拐して売り飛ばすという犯罪は多発しており、ソロモンもその犯罪に巻き込まれたにすぎなかったのです。
そのために失った時間は、原題にあるように12年という途方も無い月日です。
彼はどれほどの苦汁をなめ、耐え、そして家族に再び会うことを願ったでしょうか。
この映画の素晴らしさは、巧みな演出や役者の演技により、主人公の気持ちに寄り添えることにあります。
主人公や周りの黒人たちの「苦しみ」「狂気」をこれでもかと描き、あるときは画面に映らないようにして観客に想像をさせ、あるときは目を背けたくなるほどの光景を映し出します。
表情のみで心情を語るキウェテル・イジョフォー、情を持っている白人を演じたベネディクト・カンバーバッチ、観ているだけでぶん殴りたくなるイヤな役のマイケル・ファスベンダーは文句のつけようのない名演を披露してくれました。
女性奴隷を演じたルピタ・ニョンゴは新人であるとのことですが、名優を前に負けてはいません。「生きるか死ぬか」を感じさせるほどの表情を見せてくれました。
この作品で描かれている「人間への迫害」は、決して人ごとではないと思います。
大多数に迎合するために弱者を救えない社会。
能力よりも学歴や肩書きが重視される社会。
若者を食い物にして、経営者のみが肥え太る社会。
そうした、現代にも通ずるものがあるのではないでしょうか。
この映画では「(社会が)おかしいと思っても、それを行動にできない」人が出てきます。
その原因のほとんどは「我が身可愛さ」です。
可哀想だとは思う、助けてあげたいとも思う、でもやっぱり自分が一番大切なのです。
人は善と悪で完全に二分することはできません。
悪行を行わざるを得ない人、矛盾した行動を取る人もいます。
この映画は、そうした人間の本質をも描ききっていました。
この作品がアカデミー賞作品賞を受賞したのは、映画としての完成度はもちろん、そうした現代にも通ずるテーマ性があり、複雑な人間の心理を描いたためでもあるのでしょう。
最近では「42 世界を変えた男」「ヘルプ ~心がつなぐストーリー~」など、黒人を主人公とした完成度の高いドラマが数多く世に出ています。
これらの映画は、その昔に黒人として迫害をされた方のみを対象としているわけではありません。
苦しい状況の中で強くなり、勝利のために努力する姿は多くの方の共感を産みます。
迫害の歴史を知らない方にも、このような歴史を二度と繰り返してはならない、と強く思うことができるでしょう。
苦しい歴史を経て今があるなら、この先もよりよい未来を築かなければなりません。
これらの映画には、それをひとりひとりが思うことができるほどの力があります。
映画は娯楽ですが、人を動かすこともできるはずです。
コメディ要素はほぼ皆無で、観ていてとても気が滅入る映画です。
「ショーシャンクの空に」のような爽快感もありませんし、物語の面白さを期待すると裏切られるかもしれません。
PG12指定ではやや甘いと思われる残酷な描写もありますので、決して万人向けではないでしょう。
しかし、本作は人間の心理を描いた作品としても、主人公の辛い気持ちに同調できる作品としても最高峰です。
心に残る作品に触れたい方、今辛い思いをしている方に、この映画をおすすめします。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓
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All Aboutにて「最低映画を決める"ラジー賞"受賞作のここがヤバい!」の記事をあげました
All About(オールアバウト)にて記事を執筆しました。
以下のリンクからどうぞ。
<最低映画を決める"ラジー賞"受賞作のここがヤバい!>
あえてアカデミー賞をテーマとしていないのは自分の天の邪鬼さのせいです。
読んでいただいたらわかる通り、4位と3位はわりと好きな映画ですよ。
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<最低映画を決める"ラジー賞"受賞作のここがヤバい!>
あえてアカデミー賞をテーマとしていないのは自分の天の邪鬼さのせいです。
読んでいただいたらわかる通り、4位と3位はわりと好きな映画ですよ。