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彼が見せてくれた世界 映画「グランド・ブダペスト・ホテル」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー

今日の映画感想はグランド・ブダペスト・ホテルです。


個人的お気に入り度:7/10

一言感想:お菓子のような映画かと思いきや、毒入り



あらすじ


1932年、ズブロフカ共和国にあるグランド・ブダペスト・ホテルを仕切るコンシェルジュのグスタヴ(レイフ・ファインズ)は、多数の“おばさま”を中心とした客たちをもてなしていた。
しかし、常連客のマダム(ティルダ・スウィントン)が亡くなったことにより、グスタヴは殺人容疑者となってしまう。グスタヴはベルボーイのゼロ(トニー・レヴォロリ)とともに、真犯人を見つけだし、己の威厳を取り戻そうとするのだが……




ファンタスティックMr.FOX」「ムーンライズ・キングダム」のウェス・アンダーソン監督最新作です。

本作は、非常に特徴的な映画です。

その理由のひとつが、シュテファン・ツヴァイクの人生をもとに作られた映画であること。
ツヴァイクは現在ほとんどの人が存在すら知りませんが、1930年代は著名だった作家であり、著名人とのネットワークを持ち、戦争を反対していた人物だったのだとか。
本作の主人公・グスタヴの姿はツヴァイクそのもの。多数の著名人との交流を持つことはもちろん、その生きざまには多くの共通点がありました。

物語は、ツヴァイクの著作「昨日の世界」ををもととしている部分もあります。

シュテファン ツヴァイク
3456円
powered by yasuikamo

ほかにも「心の焦躁」「変身の魅惑」という著作も参考にしているのだとか。
本作はフィクションでありながらも、ウェス監督が敬愛する作家の人生を投影した作品でもあるのです。

映画には史実をもととしたメタファーが出てきます。
たとえば、タイトルにあるブダペストは言わずもがなハンガリーの首都です。
ハンガリーは多民族国家としても有名であり、そのまま多種多様な人間が集まるホテルのことを示しています。

さらにさらに、ハンナ・アーレントの著作「イェルサレムのアイヒマン 悪の陳腐さについての報告」や、イレーヌ・ネミロフスキーの「フランス組曲」をナチスへの反応について参考にしているのだとか。

このあたりは、<町山智浩が語る『グランド・ブダペスト・ホテル』の元ネタとテーマ>を聴くとすごくわかりやすいです。
本作が海外の批評家から大絶賛を受けているのは、そうしたフィクションとは思えないほどの、当時の世界情勢がリサーチがなされていたためでもあるのでしょう。


さて、そんな世界情勢やら知られざる作家やらの情報が詰め込まれているので、難解な堅っ苦しい映画かと思われるかもしれませんが、ぜんぜんそんなことはありません。
↑のような情報をまったく知らなくても(知ったほうがより楽しめるけど)映画はおもしろく観れるはず。
とにかくテンポがよく、娯楽性抜群。決して「れきしのおべんきょう」には傾くことなく、妙ちきりんな人物ばかりを描く群像劇的として楽しく仕上げられていました。

物語で見逃せないのは、偏屈なコンシェルジュのグスダヴと、もうひとりの主人公とも言えるロビーボーイのゼロとの交流を描いていること。
ウェス監督は「東欧を背景としたことに歴史的、社会的な意図はなくて、ツヴァイクの個人的な思い入れが大きかった」とインタビューで語っています。
ゼロは監督自身が投影されたキャラクターであり、憧れの人物であるグスダヴと仲よくなりたい(=モデルとなった人物であるツヴァイクと語らいたい)という想いのあらわれのようにも感じました。

登場人物が非常に多い作品なので、観る前は覚えきれるかなとか、混乱しないだろうかと心配もしましたが、それも無問題でした。だって、誰ひとりかぶらないほどキャラが濃いのですから

それを演じる豪華過ぎるキャストも魅力のひとつ。ハーヴェイ・カイテルエイドリアン・ブロディウィレム・デフォージュード・ロウビル・マーレイエドワード・ノートンとベテランが勢揃いしています。
たとえばティルダ・スウィントンは「スノーピアサー」で出っ歯のオバちゃんを演じていましたが、今作は80歳オーバーのおばあちゃんを演じていたりします。最近変な役ばかりですね。
正直出番が少なすぎて印象に残らないキャラも多いのですが、「この人がこんな役で?」っていう印象まで楽しんでしまうのが吉です。


そして、画づくりに触れないわけにはいけません。
色とりどりの美術はもちろん、とことん「正面」「真横」からとらえた画、シンメトリー(左右対称)な構図など、一目見ただけで「あ、ウェス・アンダーソン監督だ」と思える要素ばかりです。
ロケ地であるドイツのゲルリッツの町並みもとっても魅力的。観ているだけで楽しくなります。

さらに今作では、作中で描かれる時間軸によってアスペクト比(画面比率)を変えるという試みもされています。
メインで描かれるのは1932年の物語で、そのときの画面比率は1.33:1。カラー作品ではありますが、「アーティスト」のような昔の映画へのリスペクトにも感じました。

音楽の魅力も忘れてはいけません。

Various Artists
942円
powered by yasuikamo

どこかロシア民謡を思わせる曲調と楽しさで、本作のかわいらしい印象に一役買っています。

また、本作には唐突な残酷描写があります。前知識なく観るとギョッとすることは間違いないでしょう。
なぜか日本ではG(全年齢)指定ですが、子どもが観るとトラウマになりかねません。多少下ネタも含まれていることですし、PG12指定と思って観ることをおすすめします。


はっきり言って、ものすごく好き嫌いがわかれる映画です。
作風はブラックよりのコメディなので笑えない人には笑えないでしょうし、色彩感覚も観る人によっては気持ち悪いと感じるかもしれないですし、なんとなくポスターを観て「おしゃれでかわいいかも〜」とお菓子のような映画を期待するとちょっと血の味がするじゃねえかってツッコミたくなるかもしれません。

しかし、この“毒々しさ”もこの映画の魅力のひとつ。
ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」や「スナッチ」のような群像劇が好きな人も、きっと気に入るでしょう。
甘々なお菓子だけじゃもの足りない、ビターな苦みを期待する人におすすめします。

そうそう、エンドロールは最後まで観ましょう。そうすると、ちょっと幸せになれるかもしれませんよ。

以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓

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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

2014-06-11 : 映画感想 : コメント : 3 : トラックバック : 0
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<2014年下半期>
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『るろうに剣心 伝説の最期編』
『複製された男』
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『箱入り息子の恋』
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『横道世之介』
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『ライフ・オブ・パイ』

<2012年下半期公開>
『レ・ミゼラブル』
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『バイオハザードV』
『るろうに剣心』
『プロメテウス』
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『アナザー Another』
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<2012年上半期公開>
『スノーホワイト』
『ファイナル・ジャッジメント』
『メン・イン・ブラック3』
『貞子3D』
『TIME/タイム』
『ドラゴンタトゥーの女』

<2011年下半期公開>
『ミッション:インポッシブル4』
『アントキノイノチ』
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<そのほか>
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