大切な生きかた 映画『劇場版 ムーミン 南の海で楽しいバカンス』ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
今日の映画感想は『劇場版 ムーミン 南の海で楽しいバカンス』(英題:MOOMINS ON THE RIVIERA)です。
個人的お気に入り度:6/10
一言感想:ムーミン一家 IN 『グランド・セフト・オート』
あらすじ
ムーミンたちはあこがれのバカンス地・リヴィエラにやってくる。
ムーミンパパとフローレンスはホテルで贅沢三昧をするが、ムーミンとムーミンママはだんだんその暮らしに不満がつのってきて……
フィンランド生まれの漫画および小説『ムーミン』シリーズを原作とした作品です。
日本人にとってなじみ深いのは、1990年から放送されていた『楽しいムーミン一家』でしょう。
今回の劇場版はフィンランド制作(フランスや中国とも合作)なので、日本のアニメ版と直接の関係はありません。
しかし、日本語吹き替え版は高山みなみ、かないみか、大塚明夫など、『楽しいムーミン一家』に出演した声優たちが再集結しています。
声だけでなく、本作に登場するムーミン、フローレン、ミィなどのキャラクターの性格は日本のアニメ版そのまま。自分も子どものころに観ていたので、とても懐かしい気分で楽しむことができました。
ちなみに、ゲストキャラにはさまぁ~ずのふたりと木村カエラが配役されているのですが、文句なしのうまさ(というか気づかない)でした。
今回の劇場版はムーミンのキャラクターを借りているだけではなく、原作となるコミックも存在しています。
劇場版の冒頭には、原作にはないムーミン谷の描写が追加されています(そこで登場する海賊たちは『ムーミン、海へいく 』などにもいたキャラクター)。
このエピソードがチョイスされたのは、「ムーミンたちが異文化と交流すると話であり、ムーミンを知らない人でも親しみやすいから」というのが理由のひとつのようです。
その内容なのですが……すごくシニカルで、ブラックな笑いがあったのに驚きました。
かいつまんで言えば、ムーミン一家が犯罪者集団になるというとんでもないストーリーになっているのです。
具体的な彼らの犯罪歴(笑)はネタバレになるので↓に書きますが、軽く引くくらいにえげつないこともしていて驚きました。
これはもはや、ムーミン一家が主役になった、ゲーム『グランド・セフト・オート』のようです。
※強盗や殺人を犯しまくる18禁ゲーム
いくら劇場版だからって、本作に『クレヨンしんちゃん』のような家族愛や感動を期待しないほうがいいでしょう。
こいつらあっちこっちに勝手に行動しまくっており、家族のくせに協調性がなさすぎです。
公式ページのキャラクター紹介もネガティブな面ばかりが紹介されている始末でした(ムーミンママはマシ)。
ちなみに邦題が「南の海で楽しいバカンス」となっていますが、実際はあんまりバカンスを満喫できていません。
原題にあるRiviera(リヴィエラ)とは、フランスおよびイタリアにある実在のリゾート地のこと。
内容に合致した邦題をつけるのであれば「劇場版ムーミン リヴィエラでの生活はもうこりごり」くらいが正しいのではないでしょうか。
かわいいムーミンたちの冒険を期待して観に来たら、まさかのブラックコメディで子どもも大人も苦笑い。
そんな内容なのですが、これはこれで楽しいもの。
ブラックとはいえ子どもに観せたくないというほどでもありませんし、そんな作風を受け入られる大人にこそおすすめの映画と言えるかもしれません。
本作のテーマとなっているのは「生きかた」と「生きる場所」です。
ムーミンたちは田舎からバカンス地にやってくるのですが、いまひとつその環境になじめないでいます。
憧れである場所に行ったり、働いてはみたけど、イメージとは違っていてがっかり……そんな誰しもが体験したことのある「環境が自分に合っていない」というシチュエーションが盛りだくさんになっているのです。
このテーマも、大人こそが楽しめるものでしょう。
大笑いしたのが、『ムーミン』という作品に関連するメタ発言っぽいシーンがあったこと。
これはムーミンに思い入れがあるほどに驚けるのかもしれません。
問題は展開のダイミズムに乏しいこと。
大きな話の流れはそれほどなく、それぞれのキャラクターのドタバタ劇や小ネタまじりのエピソードが連続し、とっ散らかっている印象です。
ただただムーミン一家がバカンスに行って好き勝手に遊んでいるだけの内容(笑)ですので、退屈に感じてしまう方も少なからずいるでしょう。
原作にはない冒頭のシーンが、うまく本編の物語と絡んでいないのもやや残念です。
個人的にものすごく残念だったのが、イケメンのスナフキン(声:子安武人)の活躍が少ないこと。
原作にスナフキンは登場しなかったので、出演するだけまだましなのかもしれませんが……スナフキンファンとしては寂しく感じざるを得ません。
まあこの物語に冷静な判断力を持つスナフキンがいたら、なんでも問題を解決できてしまいそうなので、しょうがないとも思えるのですけどね。
「感動と涙のアニメーション!」みたいなのを期待すると裏切られることは間違いないですが、かわいいムーミンたちに癒されたい人、ちょっと毒っ気のあるアニメを期待する人にはおすすめします。
ちなみに2015年は原作者のトーベ・ヤンソンの出生100周年ということで、六本木ヒルズではムーミンに関連したフェアが開催。これから新潟、北九州、大阪ではトーベ・ヤンソン展が開かれます。
この機会に、『ムーミン』という作品の魅力を知ってみるのもいいと思いますよ(原作コミックとこの劇場版がブラックすぎてびっくりすると思うけど)。
※ムック本もリリース中
↓以下、結末も含めてネタバレです。観賞後にご覧ください。
個人的お気に入り度:6/10
一言感想:ムーミン一家 IN 『グランド・セフト・オート』
あらすじ
ムーミンたちはあこがれのバカンス地・リヴィエラにやってくる。
ムーミンパパとフローレンスはホテルで贅沢三昧をするが、ムーミンとムーミンママはだんだんその暮らしに不満がつのってきて……
フィンランド生まれの漫画および小説『ムーミン』シリーズを原作とした作品です。
日本人にとってなじみ深いのは、1990年から放送されていた『楽しいムーミン一家』でしょう。
![]() | 1927円 powered by yasuikamo |
今回の劇場版はフィンランド制作(フランスや中国とも合作)なので、日本のアニメ版と直接の関係はありません。
しかし、日本語吹き替え版は高山みなみ、かないみか、大塚明夫など、『楽しいムーミン一家』に出演した声優たちが再集結しています。
声だけでなく、本作に登場するムーミン、フローレン、ミィなどのキャラクターの性格は日本のアニメ版そのまま。自分も子どものころに観ていたので、とても懐かしい気分で楽しむことができました。
ちなみに、ゲストキャラにはさまぁ~ずのふたりと木村カエラが配役されているのですが、文句なしのうまさ(というか気づかない)でした。
今回の劇場版はムーミンのキャラクターを借りているだけではなく、原作となるコミックも存在しています。
![]() | トーベ ヤンソン 1296円 powered by yasuikamo |
劇場版の冒頭には、原作にはないムーミン谷の描写が追加されています(そこで登場する海賊たちは『ムーミン、海へいく 』などにもいたキャラクター)。
このエピソードがチョイスされたのは、「ムーミンたちが異文化と交流すると話であり、ムーミンを知らない人でも親しみやすいから」というのが理由のひとつのようです。
その内容なのですが……すごくシニカルで、ブラックな笑いがあったのに驚きました。
かいつまんで言えば、ムーミン一家が犯罪者集団になるというとんでもないストーリーになっているのです。
具体的な彼らの犯罪歴(笑)はネタバレになるので↓に書きますが、軽く引くくらいにえげつないこともしていて驚きました。
これはもはや、ムーミン一家が主役になった、ゲーム『グランド・セフト・オート』のようです。

いくら劇場版だからって、本作に『クレヨンしんちゃん』のような家族愛や感動を期待しないほうがいいでしょう。
こいつらあっちこっちに勝手に行動しまくっており、家族のくせに協調性がなさすぎです。
公式ページのキャラクター紹介もネガティブな面ばかりが紹介されている始末でした(ムーミンママはマシ)。
ちなみに邦題が「南の海で楽しいバカンス」となっていますが、実際はあんまりバカンスを満喫できていません。
原題にあるRiviera(リヴィエラ)とは、フランスおよびイタリアにある実在のリゾート地のこと。
内容に合致した邦題をつけるのであれば「劇場版ムーミン リヴィエラでの生活はもうこりごり」くらいが正しいのではないでしょうか。
かわいいムーミンたちの冒険を期待して観に来たら、まさかのブラックコメディで子どもも大人も苦笑い。
そんな内容なのですが、これはこれで楽しいもの。
ブラックとはいえ子どもに観せたくないというほどでもありませんし、そんな作風を受け入られる大人にこそおすすめの映画と言えるかもしれません。
本作のテーマとなっているのは「生きかた」と「生きる場所」です。
ムーミンたちは田舎からバカンス地にやってくるのですが、いまひとつその環境になじめないでいます。
憧れである場所に行ったり、働いてはみたけど、イメージとは違っていてがっかり……そんな誰しもが体験したことのある「環境が自分に合っていない」というシチュエーションが盛りだくさんになっているのです。
このテーマも、大人こそが楽しめるものでしょう。
大笑いしたのが、『ムーミン』という作品に関連するメタ発言っぽいシーンがあったこと。
これはムーミンに思い入れがあるほどに驚けるのかもしれません。
問題は展開のダイミズムに乏しいこと。
大きな話の流れはそれほどなく、それぞれのキャラクターのドタバタ劇や小ネタまじりのエピソードが連続し、とっ散らかっている印象です。
ただただムーミン一家がバカンスに行って好き勝手に遊んでいるだけの内容(笑)ですので、退屈に感じてしまう方も少なからずいるでしょう。
原作にはない冒頭のシーンが、うまく本編の物語と絡んでいないのもやや残念です。
個人的にものすごく残念だったのが、イケメンのスナフキン(声:子安武人)の活躍が少ないこと。
原作にスナフキンは登場しなかったので、出演するだけまだましなのかもしれませんが……スナフキンファンとしては寂しく感じざるを得ません。
まあこの物語に冷静な判断力を持つスナフキンがいたら、なんでも問題を解決できてしまいそうなので、しょうがないとも思えるのですけどね。
「感動と涙のアニメーション!」みたいなのを期待すると裏切られることは間違いないですが、かわいいムーミンたちに癒されたい人、ちょっと毒っ気のあるアニメを期待する人にはおすすめします。
ちなみに2015年は原作者のトーベ・ヤンソンの出生100周年ということで、六本木ヒルズではムーミンに関連したフェアが開催。これから新潟、北九州、大阪ではトーベ・ヤンソン展が開かれます。
この機会に、『ムーミン』という作品の魅力を知ってみるのもいいと思いますよ(原作コミックとこの劇場版がブラックすぎてびっくりすると思うけど)。

↓以下、結末も含めてネタバレです。観賞後にご覧ください。
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