最強すぎるふたり 映画『花とアリス殺人事件』ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
今日の映画感想は『花とアリス殺人事件』です。
個人的お気に入り度:9/10
一言感想:岩井俊二監督は変態です(褒め言葉)
あらすじ
石ノ森学園中学校に転校してきた中学3年生のアリスこと有栖川徹子は、自分のクラスにいたという「ユダ」のうわさを耳にする。
そのうわさによると、ユダは誰かに殺されて、4人の妻がいたのだとか……
アリスはわけのわからないうわさの真相を確かめるために、家の隣の屋敷(通称:花屋敷)に住む、ひきこもりのハナに話を聞こうとする。
『Love Letter』『リリイ・シュシュのすべて』の岩井俊二監督最新作にして、初の長編アニメ作品です。
本作は2004年に制作された『花とアリス』の前日譚になっています。
11年も経って、まさかアニメ作品が作られるとは……と驚きを隠せない岩井監督ファンは多かったようです(自分含む)。
アニメになってもキャストは当時そのまま。主演の蒼井優と鈴木杏はもちろんのこと、平泉成や木村多江が同じ役で声優を務めているというのも、ファンにはうれしいところです。
本作は実写の上から「なぞり描き」をしていくロトスコープという手法で作られており、岩井監督はこの前にも短編アニメ作品を3本手掛けています。
実写と組み合わさった画、その独特な動きには少し好ききらいが分かれるでしょう(『惡の華』はかなり賛否両論を呼びました)。
しかし、本作の水彩画のような背景の美しさは、誰にでも受け入れられるのではないでしょうか。
『言の葉の庭』と同じ美術監督が参加していることもあり、息を飲むような画の美しさがありました。
公式サイトのギャラリーページで少しでもうっとりしたのであれば、すぐにでも劇場に行きましょう。
本作で語らなければならないのは、主人公ふたりのキャラクターの魅力です。
このふたりは「史上最強の転校生」「史上最強のひきこもり」という大仰にも思えるキャッチコピーがつけられていますが、映画を観終わってみるとそれはわりと正しかったことがわかります。
端的に言えば、このふたりはすごく気が強い女の子で、男子にもケンカであっさり勝てそうなのです。
蒼井優と鈴木杏の少し鼻にかかったような声が、この極端なキャラにぴったりとハマっていました。
それだけだと「こんな女子中学生はいないよ!」と思ってしまうところですが、そんな彼女たちがときどき中学生らしい態度や行動をとるのがまたなんとも愛おしいのです。
岩井監督は少女(女性)を主人公とした作品を多く手がけており、その少女趣味の描き方は魅力的を通りこして変態チックです(褒めています)
ちなみに、岩井監督は「男性キャラを描くと自分に近いものになって、どうしても変質者や殺人者になってしまう」と告白しています。変態だって自覚しているんですね。そんな岩井監督に一生ついていきます。
また、登場人物の多くが中学生ということもあり、基本的に中二病を患っているというのも素敵でした。
もはや現実ではありえなさそうな描写になっているので人によってはドン引きしてしまうでしょうが、アリス(主人公)がツッコミを入れてくれることもあり、自分は大笑いすることができました。
「殺人事件」というぎょっとするタイトルがつけられていますが、これも映画を観てみるとわりと正しいものでした。
本作はその事件にまつわるミステリー要素があり、「事件の真相は?」「誰が犯人なのか?」「本当に殺人事件が起きたのか?」という興味でどんどん引っ張ってくれます。
本作のミソは、殺人事件によって主人公ふたりが小さな冒険をする中で、美しい青春の1シーンを切り取っていることです。
どこかしらに、「ああ、自分も中学生のころにこういう体験をしたなあ」と(たとえ体験していなくても)ノスタルジーを感じることができる、岩井監督ならではの魅力が健在でした。
また、物語はなんとなーく進んでいくようようなゆるい雰囲気で展開しますが(そこも魅力)、じつは伏線が巧みに使われていたりします。
細かい描写(たとえば、アリスの苗字について)に注目してみると、より楽しみが多くなるでしょう。
※乙一によるノベライズ本
また、映画(映像作品)によくある「画面の動き」にも注目してほしいところ。
登場人物が右に向かったり、画面中央に集まったりするのにはちゃんとした意図があるのです。
これに関しては以下のページが詳しいので、ぜひ一度読んでみてほしいです。
<映画が抱えるお約束事 - (中二のための)映画の見方>
<キャラクターの移動する方向 - アニメ・声優 | 教えて!goo>
『花とアリス』を観ていなくても十分楽しめますが、観ていると作品のオマージュ(セルフパロディ)っぽいシーンに気づいてよりおもしろく観るとことができるでしょう。
『リリィ・シュシュ』や『ヴァンパイア』のような辛辣な内容ではなく、『Love Letter』や『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? 』と似たやさしさに溢れる作品なので、岩井監督の作品の入門としても最適なのではないでしょうか。
日本映画ファンにも、アニメファンにも、女子中学生の生態を眺めたい全国のロリコンすべてにおすすめです。
↓以下、結末も含めてネタバレです。観賞後にご覧ください。
個人的お気に入り度:9/10
一言感想:岩井俊二監督は変態です(褒め言葉)
あらすじ
石ノ森学園中学校に転校してきた中学3年生のアリスこと有栖川徹子は、自分のクラスにいたという「ユダ」のうわさを耳にする。
そのうわさによると、ユダは誰かに殺されて、4人の妻がいたのだとか……
アリスはわけのわからないうわさの真相を確かめるために、家の隣の屋敷(通称:花屋敷)に住む、ひきこもりのハナに話を聞こうとする。
『Love Letter』『リリイ・シュシュのすべて』の岩井俊二監督最新作にして、初の長編アニメ作品です。
本作は2004年に制作された『花とアリス』の前日譚になっています。
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11年も経って、まさかアニメ作品が作られるとは……と驚きを隠せない岩井監督ファンは多かったようです(自分含む)。
アニメになってもキャストは当時そのまま。主演の蒼井優と鈴木杏はもちろんのこと、平泉成や木村多江が同じ役で声優を務めているというのも、ファンにはうれしいところです。
本作は実写の上から「なぞり描き」をしていくロトスコープという手法で作られており、岩井監督はこの前にも短編アニメ作品を3本手掛けています。
実写と組み合わさった画、その独特な動きには少し好ききらいが分かれるでしょう(『惡の華』はかなり賛否両論を呼びました)。
しかし、本作の水彩画のような背景の美しさは、誰にでも受け入れられるのではないでしょうか。
『言の葉の庭』と同じ美術監督が参加していることもあり、息を飲むような画の美しさがありました。
公式サイトのギャラリーページで少しでもうっとりしたのであれば、すぐにでも劇場に行きましょう。
本作で語らなければならないのは、主人公ふたりのキャラクターの魅力です。
このふたりは「史上最強の転校生」「史上最強のひきこもり」という大仰にも思えるキャッチコピーがつけられていますが、映画を観終わってみるとそれはわりと正しかったことがわかります。
端的に言えば、このふたりはすごく気が強い女の子で、男子にもケンカであっさり勝てそうなのです。
蒼井優と鈴木杏の少し鼻にかかったような声が、この極端なキャラにぴったりとハマっていました。
それだけだと「こんな女子中学生はいないよ!」と思ってしまうところですが、そんな彼女たちがときどき中学生らしい態度や行動をとるのがまたなんとも愛おしいのです。
岩井監督は少女(女性)を主人公とした作品を多く手がけており、その少女趣味の描き方は魅力的を通りこして変態チックです(褒めています)
ちなみに、岩井監督は「男性キャラを描くと自分に近いものになって、どうしても変質者や殺人者になってしまう」と告白しています。変態だって自覚しているんですね。そんな岩井監督に一生ついていきます。
また、登場人物の多くが中学生ということもあり、基本的に中二病を患っているというのも素敵でした。
もはや現実ではありえなさそうな描写になっているので人によってはドン引きしてしまうでしょうが、アリス(主人公)がツッコミを入れてくれることもあり、自分は大笑いすることができました。
「殺人事件」というぎょっとするタイトルがつけられていますが、これも映画を観てみるとわりと正しいものでした。
本作はその事件にまつわるミステリー要素があり、「事件の真相は?」「誰が犯人なのか?」「本当に殺人事件が起きたのか?」という興味でどんどん引っ張ってくれます。
本作のミソは、殺人事件によって主人公ふたりが小さな冒険をする中で、美しい青春の1シーンを切り取っていることです。
どこかしらに、「ああ、自分も中学生のころにこういう体験をしたなあ」と(たとえ体験していなくても)ノスタルジーを感じることができる、岩井監督ならではの魅力が健在でした。
また、物語はなんとなーく進んでいくようようなゆるい雰囲気で展開しますが(そこも魅力)、じつは伏線が巧みに使われていたりします。
細かい描写(たとえば、アリスの苗字について)に注目してみると、より楽しみが多くなるでしょう。
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また、映画(映像作品)によくある「画面の動き」にも注目してほしいところ。
登場人物が右に向かったり、画面中央に集まったりするのにはちゃんとした意図があるのです。
これに関しては以下のページが詳しいので、ぜひ一度読んでみてほしいです。
<映画が抱えるお約束事 - (中二のための)映画の見方>
<キャラクターの移動する方向 - アニメ・声優 | 教えて!goo>
『花とアリス』を観ていなくても十分楽しめますが、観ていると作品のオマージュ(セルフパロディ)っぽいシーンに気づいてよりおもしろく観るとことができるでしょう。
『リリィ・シュシュ』や『ヴァンパイア』のような辛辣な内容ではなく、『Love Letter』や『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? 』と似たやさしさに溢れる作品なので、岩井監督の作品の入門としても最適なのではないでしょうか。
日本映画ファンにも、アニメファンにも、女子中学生の生態を眺めたい全国のロリコンすべてにおすすめです。
↓以下、結末も含めてネタバレです。観賞後にご覧ください。