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望んでいた奏者 映画『セッション』ネタバレなし感想+ネタバレレビュー

今日の映画感想はセッション(原題:Whiplash)です。


個人的お気に入り度:8/10

一言感想:ジャズやりたくねえ……


あらすじ


ニーマン(マイルズ・テラー)世界に通用するジャズドラマーになろうと決意するが、彼を待ち受けていたのは鬼教師として名をはせるフレッチャー(J・K・シモンズ)だった。
フレッチャーはひたすら罵声を浴びせ、ときには暴力も振るい、ニールマンの「完璧な演奏」を引き出そうとする。




弱冠28歳(撮影時)の新鋭監督デミアン・チャゼルによる監督・脚本による、ジャズ・ミュージシャンをテーマとした作品です。

監督は以前にも『グランドピアノ ~狙われた黒鍵~』という作品で、脚本を手掛けていました。

イライジャ・ウッド
959円
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この映画の内容は、完璧にピアノを演奏しなければ(物理的に)殺されるというたいへん愉快なもの。

本作『セッション』では超絶鬼教官と、その鬼教官から下手すれば殺されるんじゃないかと思えるほどのしごきを受け続ける青年の姿が描かれます。

音楽をやっていて命の危険があるってどういうことだよ……
監督は何か音楽に対して恨みでもあるんだろうか?と思っていたら、実際に高校時代に超厳しいジャズバンドに所属し、そのときの経験がこの『セッション』に生かされているのですね(そのときの指導教官が、作中の鬼教官のモデルになった)。人生何の経験が、どう役立つか、わからないものです。


本作には『サウンド・オブ・ミュージック』のようなハッピーな音楽映画ではなく、狂気に充ち溢れまくっている主役ふたりのドラマを堪能すべき内容です。

主人公はなぜ音楽に固執するのか?
鬼教官はなぜあそこまで完璧を求め、演奏者に罵声を浴びせるのか?
そこには単純でなさすぎる、人間としての「業」が垣間見えるのです。

その狂気を体現したような、激しいドラムが主体の音楽の数々は、ボキャブラリー不足の自分ではとても表現しきれないほど素晴らしいものでした。

Original Soundtrack
1547円
powered by yasuikamo

マイルズ・テラーJ・K・シモンズの演技もまさに圧巻。
どちらも感情移入を阻むような狂気をはらんでいながらも、ときには親しみやすい表情をも浮かべる……この感情表現のさじ加減も見事です。ていうかJ・K・シモンズは怖すぎて、とても『スパイダーマン』シリーズの器の小さい編集長と同じ人とは思えません。


ちなみに、本作はジャズ・ミュージシャンの菊地成孔さんが猛烈に酷評しており、その文がネット上で話題を呼んでいました↓
<「セッション!(正規完成稿) - naruyoshi kikuchi INTERNET TROISIEME>

こちらの町山智浩さんによる記事では、概要と解説、そして批判への真摯な意見がまとめられています(ネタバレが途中からありますが、警告文あり)↓
<菊地成孔先生の『セッション』批判について - 映画評論家町山智浩アメリカ日記>

菊地さんが書いているのは酷評ではありますが、ジャズを愛しているからでこその文であることが伝わってきます。
中でも「(黒人の音楽だった)ジャズを、白人が(スパルタ的に)教えるのはジャズ自体を衰退させるような行為」だという指摘にはうならされました。
また、「この程度の鬼バンマス(バンドマスター)は、実際の所、さほど珍しくない」と書いてある(しかも2回)ことも衝撃的でした。

余談ですが、菊地さんは映画批評本も出版されていたのですね。

菊地成孔
1944円
powered by yasuikamo

ジャン=リュック・ゴダールの作品を音楽と愛という視点から読み解き、あの超賛否両論作『大日本人』までも解説している本と聞いて俄然読みたくなってきました。

さらに余談ですが、ホラー映画『ブラック・スワン』について、バレリーナのタマラ・ロホさんがこれまた痛烈に批判していたこともありました↓
<タマラ・ロホの「ブラック・スワン」批判: la dolce vita>
『ブラック・スワン』も本作も、その仕事には絶対に就きたくなくなるという点でも共通していますね。


ジャズには門外漢の自分からすれば、本作の演奏は「とにかくすごい!」という感想しか出てきませんし、予告編でも観れる「テンポのずれ」なんてぜんぜんわかりません。
でも、そうした目線で映画を観るということで、「素人目では十分すごい演奏を、さらに完璧にまで仕上げる」ということの狂気が伝わってくるのではないでしょうか。

むしろ、音楽(ジャズ)への愛がある方ほど、主人公ふたりの屈折した心情、行き過ぎたレッスンに嫌悪感を覚えるのかもしれません
菊地さんが批判をしていることも、そういう内容だしなあ……

自分は、ジャズに興味のない、ジャズをまったく知らない人にこそ観てほしいと思いました。
「ジャズってもっと楽しくて、ゆるいもんなんじゃないの?」と思っている人(自分含む)にとってはいい刺激剤になり、ジャズに興味を持つきっかけになるのではないでしょうか。レッスンは受けたくないと思うだろうけど(鬼教官が怖すぎて)。

※実際にジャズを演奏されている民朗さんから素晴らしい意見をいただいたので、そのまま記載します。

私は個人的に趣味でですがジャズをビッグバンドでも演奏しているので、本作をとても期待しているのですが、
その反面でヒナタカさんも書かれている様に「ジャズって怖い、小難しい音楽だなー」と一般の人に思われるのがとても嫌でした
唯でさえ、ジャズというジャンルの音楽は普通の人にとっつき難いと思われている(と私は思っている)ので、それを更に助長されたら辛いなと思ったのです。
また、ジャズ好きには所謂選民思想を持った人が少なからずいてしまっているので……。

本作は菊池さんに反論している町山さんのレビュー(肯定している所は肯定している姿勢がとても素晴らしい)にある通り、監督の個人的な感情を描くために題材としてジャズを選んでいるだけだと思うので、この映画に描かれている音楽を一般的なジャズな世界だとは考えて欲しくないなぁと個人的には危惧しています。

勿論、プロは血反吐を吐こうが練習をするでしょうし、菊池さんが指摘している通り殴る蹴るで指導する鬼の様なバンマスはザラに居ます。私はそういう過程で生まれた音楽は積極的に肯定出来ませんけども。
けれども和気あいあいとセッション(少人数で集まって即興演奏する形式)する楽しさや、決まったメンバーで楽しく演奏するビッグバンドの良さも、ジャズにはあるということを知ってほしいなぁと思います。そういった意味では『スウィングガールズ』はとても良く出来た映画でした。
少なくとも、この映画を観てジャズって怖い音楽なんだって観客の方々が興味を無くされるとイチジャズ好きとして非常に複雑な気持ちになる気が致します。



本作は、「衝撃のラスト9分19秒!」というキャッチコピーがつけられていますが、それは伊達ではありません。
シーンそのものを切り取っただけでも超絶技巧の演出がなされていることがわかるのですが、これまでに積み上げられらた伏線がすべてここに集約されたようなラストなのです。
数々のドラマをおもしろく仕上げながら、ここまでラストへのカタルシスを得ることができる構成……これは賞賛するしかありません。
有村昆のコケそうな映画のサイン(キャッチコピー)はやっぱり当たっていないんじゃないかないかなあ


アカデミー賞3冠、本国でとびきりの高評価ということで期待する人も多いでしょうが、決して万人向けではないと思います

その理由のひとつが、主人公ふたりがイヤなやつすぎること。
こいつらは音楽キ○ガイと言っても過言ではなく、世間一般の人たちとは異なる価値観を持っています(そこがおもしろいところなのだけど)。
ドラムばかりの音楽も含めて、意外と『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』と似ている作品と言えるかもしれません。

少なくとも、『ブラックスワン』をバレエを習っている子どもに見せたくないことと同じく、ジャズを志す少年少女たちにはあんまり見せたくない感じです(笑)。
まあ音楽界の厳しさを知る、夢を追う覚悟を決めるには、絶好の教材なのかもしれませんけどね。

※ハッピーなジャズ映画には『グレン・ミラー物語』があると、コメントで教えていただきました。

ジェームス・スチュアート
575円
powered by yasuikamo

自分は未見でしたが、子どもやジャズを知らない方には、こういうハッピーな作品のほうを観てほしいなあ……

※さらに『ラウンド・ミッドナイト』もいいよ!と意見をいただきました。

デクスター・ゴードン
991円
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ジャズ界の巨人のひとり、デクスター・ゴードンテナー・サクソフォーン担当)が主演を務め、アカデミー賞主演男優賞候補にまでなった作品だそうです。

※さらにさらに、アニメ『坂道のアポロン』もいいよ!と意見をいただきました。

木村良平
1902円
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<坂道のアポロン-Youtube>
<原作漫画の立ち読みはこちら>
自分は原作漫画を少し読んでいたのですが、すっきりした画、登場人物の心理描写、1960年代というレトロな時代背景など、素敵な要素が満載の作品でした。


作中には以下の実在の人物・用語が出てくるので、観る前に予習してみるのがいいかもしれません。

<ジャズ・ミュージシャン>
バディ・リッチ
チャーリー・パーカー
ジョー・ジョーンズ
<ジャズ用語>
ルーディメンタルドラミング
オカズ(フィルイン)
<そのほか>
ジェイ・レノ
ビリー・ゼイン

本作の前に(後でも)観ておくといいのが、チャーリー・パーカーの生涯を描いた映画『バード』です。

フォレスト・ウィテカー
991円
powered by yasuikamo

『セッション』には、チャーリー・パーカーにまつわる有名なエピソードが出てくるので、観ておくと作品をより深く知ることができるでしょう。
そのエピソードについてはこちらで↓
<Bird Lives: 青年時代 その2>


とにかく、これはおすすめです。
これだけの人間ドラマを描きながら、上映時間は1時間47分とコンパクトなのも長所。
これほどの「演奏」は、劇場と言う場所でこそ堪能する価値があります。
映画ファンはもちろん、すさまじい人間の生きざまを観たい方は、ぜひ。

↓以下、結末も含めてネタバレです。観賞後にご覧ください。

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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

2015-04-18 : 映画感想 : コメント : 16 : トラックバック : 0
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<2015年下半期>
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』
『ハーモニー』
『ガールズ&パンツァー 劇場版』
『PAN』
『ギャラクシー街道』
『UFO学園の秘密』
『ファンタスティック・フォー』
『進撃の巨人 後編』
『キングスマン』
『リアル鬼ごっこ(2015)』
『バケモノの子』

<2015年上半期>
『極道大戦争』
『マッドマックス4』
『チャッピー』
『ワイルド・スピード7』
『バードマン』
『恋する♡ヴァンパイア』
『イミテーション・ゲーム』
『イントゥ・ザ・ウッズ』

<2014年下半期>
『ゴーン・ガール』
『寄生獣 PART1』
『紙の月』
『近キョリ恋愛』
『るろうに剣心 伝説の最期編』
『複製された男』
『思い出のマーニー』

<2014年上半期>
『渇き。』
『チョコレートドーナツ』
『LEGO® ムービー』
『LIFE!』
『アデル、ブルーは熱い色』

<2013年下半期公開>
『ゼロ・グラビティ』
『かぐや姫の物語』
『ウルヴァリン:SAMURAI』
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『ガッチャマン』
『劇場版銀魂 完結篇』
『モンスターズ・ユニバーシティ』
『サイレントヒル:リベレーション3D』

<2013年上半期公開>
『箱入り息子の恋』
『G.I.ジョー バック2リベンジ』
『藁の楯』
『クラウドアトラス』
『横道世之介』
『脳男』
『ライフ・オブ・パイ』

<2012年下半期公開>
『レ・ミゼラブル』
『悪の教典』
『バイオハザードV』
『るろうに剣心』
『プロメテウス』
『桐島、部活やめるってよ』
『アナザー Another』
『ヘルタースケルター』

<2012年上半期公開>
『スノーホワイト』
『ファイナル・ジャッジメント』
『メン・イン・ブラック3』
『貞子3D』
『TIME/タイム』
『ドラゴンタトゥーの女』

<2011年下半期公開>
『ミッション:インポッシブル4』
『アントキノイノチ』
『ミッション:8ミニッツ』
『ツレがうつになりまして』
『トランスフォーマー3』
『コクリコ坂から』


<そのほか>
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