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見えないからこそ 映画『百日紅~Miss HOKUSAI~』ネタバレなし感想+ネタバレレビュー

今日の映画感想は百日紅~Miss HOKUSAI~です。


個人的お気に入り度:8/10

一言感想:原恵一監督らしさ、満開


あらすじ


江戸時代、葛飾北斎は浮世絵師として名を馳せ、その娘の娘のお栄(後の葛飾応為)も父ともに浮世絵を描き続けていた。
お栄には生まれつき目の見えない妹のお猶がおり、お猶は自身が親孝行できそうにもないこと、父の北斎に迷惑をかけているのではないかと気に病んでいたのだが・・・




映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』『河童のクゥと夏休み』の原恵一監督最新作にして、故・杉浦日向子による漫画『百日紅』を原作とした作品です。

杉浦 日向子
734円
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原恵一監督は、今回の映画をきっかけに、杉浦日向子さんと『百日紅』がいまの人に知ってもらえることを望んでいたそうです。
実写映画『はじまりのみち』でも「木下恵介監督のことを知ってほしい」という想いを溢れさせまくっていましたし、原監督は映画を使って、自分が知っている素晴らしい作品を世の中に伝えることができるという、うらやましい方なのでしょう。
映画ファンの自分も、「◯◯という作品は本当に素晴らしいのに、みんなが知らないないなんてもったいないよ!」と思うことがたくさんありますから。たとえばこれとかこれとか。


本作は、原作の『百日紅』を知らずに観に行く方がほとんどだと思います。
そこで注意していただきたいのは、主人公である葛飾北斎やその娘の葛飾応為のリアルな浮世絵師の姿を映した作品ではないということです。

舞台となる江戸にはところどころに「妖怪」の影をちらつかせており(はっきりと妖怪が登場するわけではない)、どこかファンタジーめいた描写がたっぷりあります
これは、「葛飾応為ってどんな人だったんだろう?」「浮世絵師の人生について丸ごと知りたい!」と思っている方にとっては、ちょっと期待ハズレに感じてしまうのかもしれません。
(葛飾北斎が幾度となく引越しをしていたことなど、史実を反映させた描写もあります)。

各エピソードはすっきりはっきりとしていなく、「この話の意味はどういうことなんだろう?」「このオチはどういうことを示しているんだろう?」と思わせます。
わかりやすいストレートな作品を求めている人にとっては、モヤっとしてしまうのかもしれません。


でも、自分はこの『百日紅』という作品が大好きです。
なぜなら、その「ちょっと不思議」な物語の数々、普段は知り得ない江戸の風景、人物描写がたまらなく魅力的であるからです。

映画ではその点をすべて拾い上げるばかりか、映画ならではの描写もしっかりプラスしています。
とくに目立つのは、(アニメなのに!)リアルな江戸の情景と、盲目の末娘・お猶のエピソードでしょう。
原作では、お猶はたった1話しか登場していないのですから

素晴らしいのは、お猶の「目が見えない」がゆえの描写の数々です。
彼女が盲目であることは、言葉にせずとも十分にわかるように演出がなされています。

そして、アニメーションという表現を使って、目が見えない彼女の想像力を「見せる」ような演出がたっぷりあります
観客の目の前には、美しいアニメーションの絵が広がっています。その中には、目が見えないお猶が「頭の中でそのように想像している」かのように感じるシーンがたくさんあるのです。

自分は、この『百日紅』がアニメーションという媒体でよみがえって本当によかった、原監督にこの映画を作ってもらって本当によかったと感じました。
アニメでしかできない表現と、原監督ならではの繊細な描写が組み合わさり、原作の魅力をもしっかりと表現している作品なのですから。


また、声を担当した俳優陣もすばらしかったですね。
お栄役のと葛飾北斎役の松重豊はまさにハマり役。さらに高良健吾濱田岳麻生久美子など、豪華すぎる配役。違和感を覚えた声はひとつとしてありませんでした。
また、矢島晶子藤原啓治というクレヨンしんちゃんの親子役の声優がしれっと登場しているのも見逃せません。


本作の欠点は、原作が短編集ということもあり、劇場映画ならではの盛り上がりを期待すると少し物足りなく感じてしまうことです。
しかし、この弱点は作り手側も理解しているようで、前述のようなお猶のエピソードをふくまらせて展開にダイナミズムを作っています。

また、映画では原作のエピソードをうまく取捨選択して(主人公のお栄の話に絞って)います。
原作では、女好きの善次郎(後の渓斎英泉)を主人公にした話も多いのですが、原監督は(泣く泣く)カットして映画をタイトに仕上げたようです。
そのために、本作の上映時間はわずか1時間30分。手軽に観るにはもってこいの作品になっているのは、本作の長所でしょう。

もうひとつ賛否両論を呼びそうなのは、江戸という舞台であるのにギターをかき鳴らすようなBGMが使われていることでしょうか。
原監督は『カラフル』でも疾走するシーンでギターメインの楽曲を使っていましたし、登場人物の「込み上げてくる」感情を示すためには重要だったのでしょう。
椎名林檎による主題歌を含め、自分はこの音楽のミスマッチ(に思えること)も好きなのですが・・・このあたりは好き嫌いの問題ですね。

250円
powered by yasuikamo

もうひとつ気をつけておきたいのは、少しだけ性的な描写があること。親子で観に来るとギョッとしてしまうかもしれません。
まあ、葛飾北斎は鉄棒ぬらぬらというペンネームで春画(エロ絵)を描いていたことは有名ですし、性描写はG(全年齢)指定でまったく問題がないくらいの軽いものなんですけどね。
ホラーっぽい演出もあることですし、ターゲットは完全にオトナということを念頭において観に行きましょう。


これから映画を観る人には、ぜひ前述の「目の見えない」描写、そして「暗闇」の描写に注目してほしいです。

その暗闇は「盲目」がゆえの描写であり、登場人物の恐怖や孤独を感じるためのものでもあります。
原恵一監督作品では暗闇の描写が『カラフル』や『エスパー魔美 星空のダンシングドール』にもありましたが、本作『百日紅~Miss HOKUSAI~』の暗闇は原作からあったものです。
原監督はこの暗闇の描写が大好きだったそうで、それを無理なく映画に落とし込んでいる(しかも+αの描写も!)ことに感動しました。


『百日紅』というタイトルについても触れておきます。
サルスベリは梅雨明けとともにわっと咲き始め、その期間は道が薄紅色になるくらいに花びらを撒き散らします。
しかし、そこで見上げると・・・どこから花びらが落ちたかわからないくらいにびっしりと花が咲いているのだそうです。
この「わさわさと散り、もりもりと咲く」という状態が100日続くからこそ「百日紅」という名前になっているわけです。

その百日紅は、少しくらいの逆境にはめげず、図太く生きる北斎やお栄のことを示しているのでしょう。
お栄の言う「親父と娘で筆二本、箸四本さえありゃあどこに転んだって食っていくさ」なんてセリフは、その図太さを体現しています。



『百日紅~Miss HOKUSAI~』は原恵一監督のファンには絶対に映画館で観てほしいです。
アニメファンや映画ファンにとっては、シーンのひとつひとつから巧みな演出を感じることができる秀作になるでしょう。

できれば、映画の後でもいいので、原作も読んでみてください。
映画にはなかった、優れたエピソードがたっぷりあります(映画のエピソードは下巻に多く収録、細かい人物の描写は上巻に多く収録)。
読めば、きっとその不思議な世界に酔いしれ、杉浦日向子という作家を追いかけたくなることでしょう。

以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓

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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

2015-05-16 : 映画感想 : コメント : 5 : トラックバック : 0
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『複製された男』
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<2013年上半期公開>
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<2012年下半期公開>
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『るろうに剣心』
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『桐島、部活やめるってよ』
『アナザー Another』
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<2012年上半期公開>
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『貞子3D』
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<2011年下半期公開>
『ミッション:インポッシブル4』
『アントキノイノチ』
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<そのほか>
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