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『Mommy/マミー』ラストの選択は愛か希望か? 2通りの考察(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

遅ればせながら、現在DVD/Blu-rayが発売中のMommy/マミーの感想です。

Mommy/マミー [DVD]
個人的お気に入り度:8/10

一言感想:この法律がなくてよかった・・・のかも

あらすじ


とある架空のカナダで―
発達障がい児の親が、経済的困窮や、身体的、精神的な危機に陥った場合は、法的手続きを経ずに養育を放棄し、施設に入院させる権利を保障したスキャンダラスな法律「S-14法」案が可決された。

シングルマザーのダイアン(アンヌ・ドルヴァル)は、注意欠陥多動性障害(ADHD)の息子・スティーヴ(アントワーヌ・オリヴィエ・ピロン)とふたりで生活していた。
ダイアンは勝手なスティーブの行動に振り回されてばかり。
そんな折、ふたりはとなりに住む高校教師・カイラ(スザンヌ・クレマン)と知り合う。




本作の監督はグザヴィエ・ドランという、まだ26歳の超・俊英です。
自分は監督の過去作(『マイ・マザー』『わたしはロランス』『トム・アット・ザ・ファーム』)を観ておらず、今回が初ドランだったわけですが、これを本当に26歳(撮影時は25歳)が撮ったのかよと疑わざるを得ないです。

その画作り、話運びは洗練されており、巨匠のジャン=リュック・ゴダールにも例えられています(ちなみにドラン監督自身はそこまでゴダール作品に詳しくなく、ヌーヴェルヴァーグもそれほど観ていないらしい)。
じっくりと登場人物の心理をみせるその作風は、テレビで気軽に観られるようなドラマとはまったく違う、まさしく「映画」と呼べる重圧さがありました。


本作『Mommy』で特徴的なのは、画面が真四角であることです。

画面が真四角1<マジでこういう画面構成です。

テレビはだいたい横:縦=4:3、映画はだいたい1.33:1ですが、本作は完全に1:1。目の錯覚で、少し縦のほうが長く見えるでしょう。
これがどう映画に影響するかと問われれば・・・第一印象はすげえ窮屈でした。

このおかげで画は登場人物の顔のアップばかり。
物語が「シングルマザーの母親が、ひどい行動をしてばかりの息子に苦しめられる」ということもあり、観ていてけっこうシンドイものがありました。

しかし、この画面構成にも確かな意図が感じられます。
それは、登場人物の「どこへも行けない」ような閉塞感を表しているかのよう。
顔のアップの画があることで、より表情の変化に注目して観ることができるでしょう。

ドラン監督はこの画作りを「肖像画(ポートレイト)」に例えていました。
肖像画には、「その人」を感じさせる何かのパワーを感じますよね・・・。じっくりと「見つめて」映画を観ることをおすすめします。


映画本編は、本当にツライ(褒め言葉)内容でした。
息子は注意欠陥多動性障害(ADHD)で、常識はずれのこと、相手の気持ちを考えない行動をしてばかり。
母親はそれでも息子を愛している・・・のだけど、ただ困らされるだけでなく、ときには命の危険をも感じるシーンがあるんですよね。

その鬱屈した環境で・・・「発達障がい児の親が本当に困った状況になったら、法的手続きをせずにその子どもを施設に放り込んでもいいよ」とする、架空の法律が可決されます
母親は、この法律に則り、息子を入院させるか、それとも愛を持って育てるか、の選択をせまられるわけです。

世間一般的には、母親が育児を放棄するなんて、とんでもないことでしょう。
しかしこの映画では、障がい者との生活は、綺麗事や努力だけではどうにもならない、甘いものではないということをこれでもかと教えてくれます。

この映画の息子の行動は、限りなく母親を追い詰めます。
「これなら息子を入院させたくなっても、仕方がないな」と納得できるように、とことん母親をいじめ抜いている作品と言い換えてもいいでしょう。

この映画で思い出したのは、知的障がい児との鬱積した生活を描いた名作『ギルバート・グレイプ』でした。

ギルバート・グレイプ [DVD]
角川書店 (2012-07-20)
売り上げランキング: 5,379

この映画では、ずっと知的障がい児の面倒を見てきた優しい兄が、ついに暴力を振るってしまうというシーンがあります。
そのシーンはあまりにも悲しいけど、その後の映画の展開を観れば、知的障がいの身内を持つ家族へのやさしいメッセージを感じられるのかもしれません。

本作『Mommy』もそれと同様。あえて辛い障がい児との生活を描くことで、世の中の障がい児を持つ親にエールを贈っているように思えるのです。



また、(映画の良し悪しとは関係ないことですが)本作でADHDが誤解されてしまう可能性があります
本作に登場する息子は傍若無人、自分勝手で暴力的という性格ですが・・・これのみがADHDの症状というわけではありません。

ADHDとされるのは、物を片付けることができなかったり、物事の優先順位がつけられなかったり、たまに素っ頓狂な行動をしたりといったことで、その症状の重さもさまざま。
ADHDの人の中には温和な方もいますし、むしろ誰しもがADHDに関わる(そうなっているかもしれない)要素を持っていると言っても過言ではありません。
現に、大人になってからADHDと認定される、いままで気づかなかったという方も多いのですから。

告白すると、自分もADHDの症状を持っています。
忘れ物は多いし、部屋はなかなか片付けられないし、注意力は散漫だし、優先順位をつけるのなんか下手くそ中の下手くそです。
だけどこの映画の息子のように、人を殴ったりなんかしません。

この映画のADHDも間違いというわけでもないのですが、「こんな暴力的になるのがADHDの症状なんだ」「怖いな」と思ってほしくはないのです。
症状に苦しみ、なんとか社会生活で生きていこうと頑張っている方もいるのですから。

↓ADHDについて知りたい方は、以下のサイトをおすすめします。
<ADHDとは?|どんな症状なの?|大人のためのADHD情報サイト>



本作はとても好き嫌いの分かれる内容だと思います。
「親と子のかけがないのない愛!」なんてハートフルな映画ではありません。
楽しい映画を期待する人にはもちろん向かないし、息子だけでなく母親の行動にも不快感を覚える人も少なくないでしょう。

それでも自分は、本作を発達障がい者が身内にいる家族に観て欲しいです。
結末も含めて賛否両論ではありますが、このラストだからでこそ見えてくるものがあるはずです。

なお、はじめに26歳の俊英監督!と書いてしまいましたが、ドラン監督は「“若手”という形容によってイメージが限定されてしまうのは嫌なんだ」とインタビューで答えています。
本作は一切の先入観なしに、純粋な「母と子のドラマ」に期待して観るのがいいのかもしれません。

「涙のクライマックスが2回来る」という触れ込みは伊達ではありません。
辛いけれど、心に響く映画を観たい方におすすめします。

以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓ ちょっと性的なことも書いているのでご注意を。










本作のラストで・・・母親は息子を施設に無理やり入れて、「その選択肢をしただけ」「希望があったからそうしたの」と答えました。

けっきょく息子を施設に入院させたのだったら、それこそ希望はないのではないか?と、母親のことばに矛盾を感じた方も多いのではないでしょうか。

自分は、この母親のことばに、以下の解釈を得ました。
(1)母親は希望がないことを知っていたけど、うそで「希望がある」と答えた。
(2)母親は希望が本当にあると思っていた。

それぞれについて書いてみます。


〜解釈その(1)母親は希望はないと思っていた?〜

この映画では、1:1の画が通常の映画と同じワイドスクリーンになるシーンが劇中で2度あります。

1回目は、息子がスケートボードに乗って楽しそうに道を駆けるシーン(しかし、放火の訴訟の紙が届けられたときに、もとの画面に戻る)。
2回目は、母親と息子と高校教師のカイラが旅に出かけ、そして母親が「息子が立派に成長して結婚もした」という夢を見たときです。

このワイド画面のシーンは、(母親にとっての)希望に溢れてたと言っていいでしょう。
しかし、この後はワイド画面になることはなく、映画は1:1の画面のまま終わりを迎えます。

しかも、母親は「希望があったの」と言って、カイラが去ってしまうことを強がって祝福するも・・・ベッドに座り、さめざめと泣いてしまいました。

この「希望があった」は、母親の弱々しく、勝手な自己肯定であるとも考えられます。


〜解釈その(2)希望はある〜

母親は、本当にしっかりとした希望があって、息子を入院させたとも考えられます。

なぜなら、母親は息子に殺されてもおかしくないほどの暴力を振るわれていたから。
そして、息子は母親がすぐそばにいる場所(スーパーマーケット)でも、自殺をしようとしていたから。

この希望とは「生きていることができるから」なのではないでしょうか
施設では監視も行き届いていますし、母親のことばに息子が憤ることもないでしょう。

また、劇中では、母親が息子の「使用済み」のティッシュを片付けたり、口に手を当ててキスの真似をしようとしているシーンがありました。

キスはしない<もう少しでキスを・・・

さらには、母親が全裸の息子を観て、その股間のほうをチラッと見るシーンもありました(おそらく、勃起していたのでしょう)。
ここから察するに、息子は母親に近親相姦的な欲望をいだいていたのではないか、とも考えられます。

息子が施設に入れば、そのような過ちもなく・・・希望は生まれるでしょう。


〜カイラの立ち位置〜

吃音を持つカイラも映画に重要な存在でした。
彼女はうまくことばを伝えることは苦手だけど、不遜な行動をしてばかりの息子を押し倒し、小便をもらさせてしまうほどに怒鳴りつけていました。
息子の行動でどれほどほかの人が不愉快になるか・・・ことばを「暴力」に変換すれば、それほどのことなのでしょう。

彼女は3人で旅に出る前に、夫に「晩御飯はとっておいて」と言っていました。
だけど母親と息子には、そうして家で待ってくれる父親はいなんですよね・・・。

はみ出し者どうしで馬があったところもある3人でしたが、「父親の不在」はあまりに大きな違いだったのかもしれません。


〜選択肢がなくてよかった〜

映画の最初には、「ダイアン・デュプレ(母親)の運命は、この法律により、大きく左右されることになる」とテロップがでていました。
結末を思えば、母親にとって、息子を施設に預けてしまうという「選択肢」があったことが悲劇だったのでしょう。

世の中にいる、知的障がい児を持つ母親は、簡単には息子を施設に預けることはできません。その選択肢がないのです。
だけどその選択肢がもし存在したら・・・?

子どもを施設に預けてしまうことのほうが、悲劇かもしれない。
選択肢がなかったからでこそ、愛情を持って、自分の手で子どもを育てることができるんだ・・・そう映画は教えてくれるような気がするのです。
(母親は、施設に連れて行かれる息子を観て、「入院を取り消す!」と泣き叫んでいました)


〜解釈その(3)希望はやはりある?〜

この映画のラストカットは、息子が脱獄を図って走り出すというシーンでした。

彼はこの直前に、母親の留守番電話に「ママを苦しめたことを思うと胸が痛む」と、反省したメッセージを送っていました。

このメッセージを母親が聞くことはありませんでしたが・・・
もしこの後に息子が脱獄に成功し、母親の目の前で、このメッセージを直に伝えることができたのなら・・・それはやはり希望になるのかもしれません。
母親と息子が再開したとき、1:1の画面が、またワイド画面になる未来を想像してしまいます。

おすすめ↓
<映画「Mommy/マミー』あらすじ 若きカリスマの現在地を見逃すな>

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Photo credit : Shayne Laverdiere
(C)2014 une filiale de Metafilms inc.

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2015-12-13 : 旧作映画紹介 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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