『ブラック・スキャンダル』ジョニデ様が恐怖の3連コンボをする映画(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
※(1月30日、ネタバレを追記しました)
個人的お気に入り度:7/10
一言感想:ジョニデ様、怖っ
あらすじ
1975年、南ボストンでアメリカの正義の根幹を揺るがす、史上最悪の汚職事件が起きた。
マフィア浄化に取り組むFBI捜査官のコノリー(ジョエル・エドガートン)は、ギャングのボスであるバルジャー(ジョニー・デップ)に情報を売るよう話を持ちかける。
バルジャーはFBIに情報を提供し、コノリーはそのおかげで出世街道を歩み、バルジャーの弟である政治家のビリー(ベネディクト・カンバーバッチ)も権力の座を駆け上がっていく――。
まあ内容がどうこうの前に、ジョニー・デップ様のハゲ具合が気になってしょうがないですよね(史上最悪の書き出し)
※頭頂部が気になるのは必然
ハゲです。圧倒的なハゲヅラです。
そりゃハゲネタで人気のお笑い芸人トレンディエンジェルが映画にちなんだギャグも披露しますよ(宣伝です)。
本作は実際の犯罪をもとに作られたノンフィクション。本物のジェームズ・ジョセフ・バルジャーは以下のような見た目です。
※出展はこちら
うん、わりと似ているね。
ていうか、女性に大人気のジョニデ様にハゲ散らかした大犯罪者を演じさせていいんでしょうか。
いやもう個人的には大成功なんですけどね。
あらゆるメディアで今回のジョニデ様の演技は絶賛されており、端的に言えば史上もっとも怖いジョニデ様が見られるのですから。
ぶっちゃけると、本作はジョニデ様がおうちの秘密のレシピを聞くだけで怖い映画なんですよ。
以下の動画でもそれは見られます。
※微ネタバレ注意
まあこの動画単体だけだとそうでもないかもだけど、この前後にはさらに死ぬほど怖いシーンが挟まれますからね。
いわば怖いジョニデ様3連コンボですよ。
<ブラック・スキャンダルにみるジョニデ様3連コンボ>
(1)ジョニデ様が?????? 怖さレベル:9
(2)ジョニデ様がおうちのレシピを聞く 怖さレベル:9
(3)ジョニデ様が?????? 怖さレベル:MAX
もうね、とにかく(3)がヤバイの。
これはね、それだけ切り取って客観的にみると、ジョニデ様がやさしいことをしているように見えるんだけど、めっちゃ怖いの。
しかもこのジョニデ様、初登場時に超神経質な性格であることをイヤってほど見せるんですよね。
初めて見た瞬間に「お近づきになりたくない」と思える感じは、『フォックスキャッチャー』のおぼっちゃまを彷彿とさせました。
<この真ん中の人もぜったいに仲良くなりたくない。
いいんでしょうか、世界一の人気者のジョニデ樣にこんなんを演じさせていいんでしょうか(2回目)。
実際のジェームズ・ジョセフ・バルジャーはもう少し親しみやすい人物だったそうで、本物を知る方からは「あんな不気味なヤツはバルジャーじゃないよ!」と総スカンを浴びたらしいしなあ。
ともかく、まとめるといままでにないジョニデ様の怖さを堪能したい人は必見だとということです。
『チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密』では「ジョニー・デップのニューキャラクター誕生!」って言っていましたけど、本当におニューなのはこっちですよ。
この普段のイメージとのギャップは『凶悪』のピエール瀧、『悪の教典』の伊藤英明に匹敵します。
さてさて、ジョニデ様だけで長くなりましたが本題。
本作は南ボストンを舞台としています。
じつはボストンを舞台とした映画作品は多いんですよね。
しかも『ミスティック・リバー』『処刑人』『ザ・タウン』などの犯罪映画が多め。
実際のボストンはいまではむしろ犯罪の少ない地域になっているんですが、経済・文化の中心地のような場所で、多数の「成りあがり者」のドラマが生まれた場所。映画の舞台としてはうってつけなのでしょう。
物語は、その場所でのFBIとギャングの癒着、ギャングとマフィアの抗争を同時並行して描くというもの。
おもしろいのは、FBIの男はギャングと取引をしたおかげでラクに出世していくのだけど、そのことにズブズブハマってクズになっていく様子が描かれていること。
この小物すぎるFBI捜査官を演じたジョエル・エドガートンの演技は、ジョニデ様に負けず劣らずの存在感を見せています。
彼は根っからのクズではなく、手柄を簡単に手に入れたことに味をしめて戻れなくなる、実際にいそうな(本当にいるんだけど)リアルなクズなんですよね。
その描写を挟みつつ、ときどき血みどろの銃撃戦も行われます。
銃殺シーンはかなり直接的に描かれているので、R15+指定は妥当でしょう(ちなみにエロはほとんどありません)。
なお、ギャング映画なので裏の取引や駆け引きといった娯楽性を期待する方も多いでしょうが、実際はその要素は少なめです。
おもとなるのは「悪となった人間の内面を追う」「人間が悪に染まっていく」過程なのです。
これこそが映画の魅力なのですが、敷居の高さがあることは否めません。
また、登場人物が多めで把握がしにくいことも欠点でしょう。
多数の「部下」が登場しますし、話の中でしか語られない個人名までもが登場します。
(視点がコロコロと変わることもあり、物語を追うこと自体が大変かも)
それでも、以下の主要の3人を押さえておけば問題はなく観られるでしょう。
・ちょいクズのFBI・コノリー(ジョエル・エドガートン)(左)
・ギャングのボスであるバルジャー(ジョニー・デップ)(中央)
・バルジャーの弟である政治家のビリー(ベネディクト・カンバーバッチ)(右)
なお、ケヴィン・ベーコンもそれなりに重要な役で登場しますので、ファンはぜひ楽しみにしましょう。
単純明快な娯楽作ではなく、犯罪を中心に多数の人間ドラマが描かれる骨太な作品です。
ひとつひとつのセリフに注目して観ると、さらに奥深さを感じられるでしょう。
役者のファンの方に、とくにおすすめします。
↓以下、結末も含めてネタバレです。鑑賞後にご覧ください。
〜バルジャーは超神経質〜
バルジャーは初登場時、ナッツをつまんでいるおっさんに「その口に入れた汚ねえ指で、またナッツをつまむのか。みんなが食うんだぞ」と言っていました。
ここからバルジャーは「公の場所でのマナーやルールを破ること」を何よりも嫌っていることがわかります。
〜バルジャー流の子育て〜
笑っちゃったのは、バルジャーが息子に「相手を殴ったことは悪くない、それをみんなが見ているところでやったことだ。今度から見られていないところで殴れ」と言ったこと。
バルジャーは(アルトカラズに捕まったことはあったけど)ずっと法の目を逃れてきました。
彼は犯罪者ながら「それが知られなければ悪くない」「バレなきゃ犯罪じゃないんですよ」と思っているんですよね。ふつうの人間とはじぇんじぇん考え方が違うのです(だからでこそ、怖いのですが)。
その後……息子は脳死状態となり、バルジャーの奥さんは「私が生命維持装置のプラグを抜くわ」と告げます。
しかし、バルジャーは「そんなことは許さん、俺の息子だ」と譲りません。
バルジャーは犯罪者ながら、「和」「ルール」を尊重しており、自分の考えを必ず押し通そうとしていました。
そんな彼が、法というルールを破りまくりなのは、ある意味で皮肉なんでしょうね。
〜バルジャー恐怖の3連コンボ〜
(1)ジョニデ様が頭の悪そうな売春婦にキレ気味
警察署から出てきた売春婦が「言ったのはふつうのことよ〜」と言って、バルジャーが「ふつうって何だ?俺にはわからねえな」とスゴむのがマジで怖い。
その後は「いいところに連れて行ってやるよ」と言って、周りに誰もいなさそうな家の中でチョークスリーパーをかけて売春婦を殺すんですから……。
(2)ジョニデ様がおうちのレシピを聞く
「そんなふうに(おうちのレシピという)秘密を話してしまうのか、ああそうか」みたいな脅しが怖すぎます。
(それにしてもおろしニンニク×醤油って、そりゃおいしいに決まっているよね)
(3)ジョニデ様が奥さんのお熱を測る
部屋に閉じこもっていた(このことにバルジャーがキレた)コノリーの奥さんに「熱はなさそうだな?」「大丈夫か」とおでこに手をあてるバルジャー。しかしその両手は奥さんの首に回っていく……というのが怖すぎます。
<その手はやがて首に……。
(1)で「いつバルジャーは人を殺してもおかしくない」ことを見せておいて、
(2)でフツフツと沸く怒りを見せておいて、
(3)でバルジャーは「お熱はあるかな?」と言いながら(売春婦のときと同じように)手をかける……
この流れは下手なホラー映画よりも、よっぽど恐ろしいものでした。
あと、バルジャーは近所のおばあちゃんに気さくに話していたりもするんですよねえ……。
そうした親しみやすさも見せるから、この豹変がさらに恐ろしく思えます。
〜コノリー墜落の3連コンボ〜
コノリーは、警察に匿ってくれと頼んできたマフィアの下っ端を突っぱね、そのおかげで下っ端はバルジャーに無残にも殺されました。
その責任を追及されたコノリーは「俺が悪いのか?ああ」と逆ギレしました。
この時点でクズなコノリーは、「バルジャーがマフィアのすげえ情報を持っていたぞ!すげえだろ!」とアピールしまくって大出世!
あー早く地獄に落ちろーと思っていたら、
(1)新赴任してきた新人に「バルジャーはなぜ捕まらないんだ!おかしいだろ!」とツッこまれて調査される。
(2)コノリーの奥さんは、バルジャーに「お熱があるの?」と超トラウマ級の脅しをされたので、夫を家から締め出す。
(3)コノリーは別の家にひとりで住む、そしてあっけなく捕まる。
と、こっちも墜落の3連コンボを決めてくれました。さすがにちょっと同情するなあ。
〜ビリーが電話をかけただけで……〜
ビリーは、兄のバルジャーの犯罪行為や、コノリーの汚職に関与していません。
悪く言えば放任主義、よく言えば「陰から見守る立場」でした。
それはビリーがマサチューセッツ州の上院議長という社会的な権力を得ており、犯罪に加担すればその地位を失ってしまうことも理由だったのでしょう。
しかし、ビリーはどこかに逃げていくバルジャーに、ただ電話をかけたことで失脚をしてしまいます。
それは、ただ兄のことを心配してこそ、ただ話かったからでこその電話だったと思うのですが……。
〜友だちだったのに〜
バルジャー、ビリー、コノリーはもともと幼馴染どうしで、ときどき子どものころの仲のよさを語っていました。
しかし……それぞれは「悪(犯罪)」というものに手を染めたために、大切なこの関係を失ってしまいました。
冒頭でコノリーが、ビリーに「友だちはやっぱり必要だよな!」と話していたことも皮肉的ですね。
そのビリーは、(元)友だちのせいで、地獄に堕ちたのですから。
〜原題「黒ミサ」の意味〜
原題の「(Black Mass)黒ミサ」とは別名サバト。それは悪魔を崇拝する集会であり、神を冒涜することを旨とした儀式です。
本作における悪魔とは、ほかならぬバルジャーです。
バルジャーとコノリーが豪華なディナーを楽しんでいた光景も、黒ミサそのもののようです。
本作は、悪である人物を尊敬し、そのために徒党を組んだ者たち(黒ミサに入った者たち)が堕ちてゆく物語ともいえるでしょう。
最後にバルジャーが2013年に捕まったとき、彼は81歳の老人になっていました。
あらゆる犯罪に手を染めつつも、他人の信頼を得て生き延びてきたバルジャー。彼は本当に、悪魔と呼べる存在だったのでしょう。
↓予告編で流れていたカッチョいい曲、本編でも聴きたかったですね。
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ヒナタカさんの仰るステーキのソースの下りは勿論
息子を巡っての恋人(実質嫁さんみたいなもんですが)との凍り付くようなやり取りが最高でした。
あとヒナタカさんが戦慄MAXなシーンは恐らくあのシーンだと思いますが
あそことか最高でしたね(マジキチスマイル)
それに序盤の仲直りの握手した瞬間ズドン‼も戦慄でした。
「凶悪」でピエール瀧氏が演じた須藤もそうですけど
サイコな人らって結構分かりやすいんですよね。
「味方は何があろうと絶対守る。だが裏切ったらただの他人(モノ以下)」
この鉄の掟に従って行動してるからこそステーキや恋人、あとあの人とのとの戦慄のシーンが生きるんですよね。
勿論実話ですし実際に被害に遭われた方を考えたら素直に面白い!…と言ってはいけないんだと思いますが
それでも染み出る狂気、悪党達のやりたい放題はやっぱ楽しかったと言わざるを得ません。
野暮な不満点を挙げるなら弟役のカンバーさんが意外と蚊帳の外だったなあ…と言うとこと
(パレードのとこは流石でしたがw)
我らがケヴィン・ベーコン氏が何か普通の男過ぎて勿体なかったなあ…後輩に遠慮したんでしょうか?
とにかく自分としては現状今年最高です。間違いなく何回も見ると思います。
> (パレードのとこは流石でしたがw)
> 我らがケヴィン・ベーコン氏が何か普通の男過ぎて勿体なかったなあ…後輩に遠慮したんでしょうか?
自分はビリーがあんまり表に出なかった=放任していた=電話をかけただけで失脚
というのも重要だったのだと思います。
ベーコンさんは確かに物足りなかったですがw
復活!復活!カメレオン俳優ジョニデ様復活!
得意のコメディは不振続き、「トランセンデンス」はジョニデ様の超越存在化=人間性喪失の演技は良かったのですが、それよりも恐いってかキモい環境保護団体と無能な政府と阿呆な科学者陣しか印象に残らなかったので、これは恐怖に震えつつ歓喜するというドM体験をさせていただきました!
>※出展はこちら
一見、人の良さそうなおじちゃんですが、“目”がやっぱり違いますね・・・。
>ジョニデ様がおうちの秘密のレシピを聞くだけで怖い映画
こんな人と会食なんて嫌!感が半端なかったです!どこに地雷があるか分かったもんじゃない!!
>実際のジェームズ・ジョセフ・バルジャーはもう少し親しみやすい人物だったそうで、
劇中でも冒頭でおばあさんの荷物を持ってあげたり、地元愛に溢れる侠客って感じでしたね。
>実際のボストンはいまではむしろ犯罪の少ない地域になっているんですが、
もしかして映画でやたらこんな扱いをされるので、地域の人たちが躍起になって治安を良くしていたりしたら良いのですけど。
>~バルジャー流の子育て~
マフィアの一家は子どもに家業が知られないようにして、成人と共に家業を明かし「マフィアかカタギか選べ」と聞くそうですが、英才教育ですね。
ジミー「俺の夢は、結婚して子どもを育てて、サイコなギャングにすることだよ」
>(1)ジョニデ様が頭の悪そうな売春婦にキレ気味
この売春婦ちゃんが、野ら犬狩りやってるサイコ野郎に懐く子犬のように哀れ過ぎて、ずっと「逃げろ!逃げろ!」と呟いてました。
>(2)ジョニデ様がおうちのレシピを聞く
>おろしニンニク×醤油
ソース界のベストカップルですよ!
>(3)ジョニデ様が奥さんのお熱を測る
いつ「コキャ!」となるかと肝を冷やしました。でもアニキ。ダチの奥さんにベタベタ触るのも失礼だと思うんですけど・・・と本人の前ではとても言えない。
>~ビリーが電話をかけただけで……~
実質一連の犯行には一切関わってないんですよね。でも兄への絆は凄く大事にしていて「普通に良い人じゃん・・・。そりゃ議員にも成るよ!」だっただけに気の毒でした。それにしても、アメリカでは親族に前科持ちの暴力団がいても本人の人柄だけで評価されて議員になれるのですね。
日本では絶対公務員にはなれないそうですけど。
ただその二人は最後まで仲間を売ってなかったですし法を破ってでも絆に関する掟を守ってる(作中でも「絆>法」の旨を述べてた記憶がありますし)のは初志貫徹してたなあ、と感じます。
あとその点が本質というわけではないでしょうが「目につかなければ罪に問われない」「口は禍の門」って感じで悪い意味の教訓になる、って思ってしまいました。
3連コンポは自分も恐怖を覚えました。おうちのレシピはジョークと言ってましたが「いや絶対これジョークで言ってねえだろ…」としか思えなかったですしお熱を測ってたのも自分も「殺しかねないな」って思えたほどですから。
しかも淡々とやってるから拍車がかかってるように思えてしまいます。
コノリーに関してはある意味でバルジャーよりも下衆で愚かに思えるのである意味自業自得ですがそれでも若干不憫さは感じましたねえ…。それに40年の求刑を減刑されると言われてもなおバルジャーに関する情報を吐かなかったのですから(勿論それを是という気はないですが友を売らなかった点では個人的に見上げたことです)。
ビリーに関しては兄を心配して電話をかけただけだろうから不憫な気はしますが知ってて黙認してたのはある意味同罪ですからねえ。
それでも直接関与してないしなあ…。
とはいえ議員辞職後大学総長になり電話がきっかけで追われた後も「議員さん」と慕われてたりするので人柄が評価されてるんだな、と思います。
ジミーも親しみやすく周りから慕われてたみたいですし、もし息子や母親を喪っていなければ済んでのところで止まってたのかなあ…と思わないでもないです。
あとは他の方が仰るとおりかなと。