『サブイボマスク』ファンキー加藤でなければありえない秀作だ!(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
個人的お気に入り度:8/10
一言感想:心から応援したい映画だった
あらすじ
地方都市・道半町は消滅可能性都市に認定された。
その商店街で育った春雄(ファンキー加藤)は、シャッター通りと化した商店街を盛り上げようとライブを開く。
そんな彼を応援するのは弟同然の自閉症の青年の権助(小池徹平)と、元カノのシングルマザーの雪(平愛梨)だった。
やがて春雄は、覆面レスラーだった父の形見であるマスクをかぶって謎のシンガー、サブイボマスクとして活動することになり……。
オススメです(マジ)。
もう本作『サブイボマスク』を語る前に、主演を務めたファンキー加藤によるアンタッチャブルの柴田の嫁とのW不倫報道について触れないわけにはいけないですよね。
この映画の公開日(6月11日)からわずか4日前(6月7日)に判明するというタイムリーさは、ちょっとだけ話題になりました(舞台挨拶で触れなければならないなど)。
あれから2週間が経過し、世間的には半ば忘れられている、下手すればこの映画も忘れられている予感がしたので、以下の記事を書きました。
<W不倫を知ってこそ『サブイボマスク』は秀作!アモーレ(愛する人)が満載の5つの魅力とは? | シネマズ by 松竹>
なんか触れちゃいけない黒歴史を掘り返しているようで申し訳ないのですが、マジで本作はW不倫報道を知ってこそおもしろい映画だったんだよ!
ファンキー加藤の(悪いところも含めた)人間性が凝縮されている主人公のキャラクターは、それだけで(いろんな意味で)観ていて楽しいのです。
#映画サブイボマスク シネマズby松竹さんが記事をあげて下さっていました!タイトルはあえて辛辣なユーモアですが、記事の内容は深く映画を観てくださり、ファンキー加藤さん、小池徹平さんのお芝居など評価してくださり、本当に嬉しい!感謝!!https://t.co/7W8DYDSVM1
— 一雫ライオン (@lionhitoshizuku) 2016年6月20日
※脚本家の一雫ライオンさん、なんかすみません。
でも本当、この映画はおもしろいんだ。
間抜けな人たちによるコメディとしても、逆境からの脱出を図る人間ドラマとしても、そしてボンクラでウザい主人公の成長物語としても……計算された脚本とキャストの熱演により、かなり見ごたえのある作品に仕上がっているのです。
豪華キャストのすべてがすんばらしいんですが、とくにファンキー加藤と小池徹平の演技は最高ですね。
ファンキー加藤はこんなにも「泣ける」演技ができる人だとは思っていなかったし、小池徹平は自閉症の青年を体全体を使って演じています。

この自閉症の青年は、脚本家の一雫ライオンさんの弟(実際に自閉症である)がモデルなのだとか。
キャラの描きかたはとことん愛おしく、また尊いものでした。
「過去」にあたるシーンをアニメーションで描いていたのもよかったですね。
ウザいほど明るい性格の主人公ですから、その辛い過去をみんながニコニコしているコミカルなアニメで描く、というのは「辛い思い出を明るいものに変えてしまう」という意味に感じ取れるのです。
動画共有サイトなどのネット文化を、地域復興の道具として用いているのもいい。
これにより、寂れた場所に人が集まっていくという、様子にも説得力を持たせています。
主人公がさんざん言われてしまう「どうせ(この場所を)盛り上げることなんて無理だよ」は「確かにそりゃそうだな」と思われる無理難題です。
それを主人公だけでなく、周りの協力により達成しようとする……逆境に立ち向かうこの物語は、素晴らしい精神性を持っているではありませんか!
本作の難点は、あまりにヒットしていないために、公開2週目で多くの劇場で1回きりの上映になっている、土曜日には上映終了していることですね。
ヤバい!いまから紹介しても観るのが難しいじゃん!
今週金曜日がラストチャンスかもしれない(わりとマジ)なので、ぜひ観に行こうではありませんか!
多少汚い言葉遣いはありますが、本作の物語は子どもにもわかりやすく、厳しい状況にさらされた女性の目線で語るというフェミニズムにも溢れています。
冗談抜きで、老若男女が楽しめる映画なのです!
あと、どうしても応援したくなるのは、製作会社のDLEですね。
最近では『珍遊記』『天才バカヴォン』という、同じく攻めた企画をして盛大にコケた作品があるのですから……
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あと峯岸みなみ主演の『女子高』は存在すら知らなかったよ……。
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さらに現在(6月上旬)、HIP HOPアイドルユニットのリリカルスクールが主演を務めた『リリカルスクールの未知との遭遇』が公開中です。本当に応援したくなるな!
自分はDLEの大ファンになりました(皮肉はいっさいなしで)。
W不倫のことを忘れても、いや覚えていたほうがおもしろいんですから、ぜひ劇場へどうぞ。
何より……これほど「応援したい」と思った映画はなかなかないんですから。
ほらそこ、この映画はいったい誰が観に行くんだ!?大賞の有力候補とか言わない!
以下、中盤がネタバレです↓ 観ている人が少ないと思うので、今回は結末やらは書きません。でも十分ネタバレと言えることを書いているので、なるべく未見の方はお控えください。
〜野暮な不満点〜
街をたむろしていた暴走族の問題がうやむやで解決してしまっているのが残念でした。
せっかく暴走族に憧れている(アホな)青年を配置しているのですから、彼に暴走族を追い返してやるという展開がほしかったです。
〜目標の人〜
主人公の春雄が部屋に掲げていたポスターが松岡修造だったのに爆笑しました。
<元気が出るよね
ああ、ファンキー加藤が目指しているのはこれだったんだなあ。確かにウザいという次元を超えて、とことん元気を与えてくれる人だもん。
でも不倫を本気でしちゃダメだよね(←映画と現実がごっちゃになっています)。
〜不倫はダメ、絶対〜
劇中でヒロインの雪(平愛梨)が、元夫のプロデューサーの不倫した事実を使って脅迫するシーンは大笑いしました。
なるほど、これは不倫はしていけないという抑止力になるね!
〜いとうあさこでしかなかった〜
役者の演技でもうひとつ大笑いしたのは、芸人のいとうあさこがツンデレ演技をしていることですね。
わざわざ春雄のお店に来てわざわざガムを大量に買って「歯あ折れるぞ」と言われるとか、ツンデレを指摘されて勢い余って携帯電話をへし折ったりするのは、もはやツンデレというよりはただのいとうあさこだった。彼女のファンなら必見ですね。<シングルマザーの役にもぴったりでしたよ。
〜いちばん辛いのは……〜
サブイボマスクこと春雄は、父に「人を笑顔にするっていうのは簡単じゃないぞ。まずは自分が辛い時でも笑顔じゃないといけないんだ」と教わっていました。
しかし……中盤に街ではサブイボマスクの人気に伴い、不遜な若者が跋扈しはじめ、ついには放火事件まで起きるようになります。
おかげで、サブイボマスクが歌うことを町の住人はよく思わない、それどころか役人に媚を売るからといって、白い目で見るようになるのです。
だけど、住人は一度役人からよいお知らせが来ると、まるで自分の手柄のように喜ぶのである!
この勝手な住人たちに、ヒロインの雪は激昂する!
「あいつが(放火などで住人が傷ついて)何にも思わねえわけねえだろ!あいつはみんな(町)のために、笑顔でいてやったんだぞ!」と……。
春雄はみんなに嫌われようとも(それは間違いなく春雄にとっていちばん辛いこと!)、いや、嫌われていいと思って、歌い続けた……。
それは父の「辛いときこそ笑顔でいる」という教えを守ったということでもある!これは泣けるではないですか!
〜勝手だけど……〜
もうひとつ大好きだったのは、春雄が自閉症の青年の権助を施設に預けることをよしとはせず、連れ去ってしまうシーンです。
これまで春雄は「愚直(自分の信じたことはとことんやる)」な性格を見せつけていましたし、この前に権助が町の少年にいじめられたことも知っているので、その気持ちもわかるのですが……やはりそれは勝手な行動です。
春雄は権助を連れ去ることをけっきょくはしなかった。
これは、何を言われようが自分の行動を変えなかった春雄が、大人として周りの意見を受け入れたシーンでもあるのです。
〜みんな〜
春雄がサブイボマスクとして町を盛り上げられたのは、じつは町のみんなのおかげでもある、というのもよかったですね。
雪はネットで動画を配信することを思いついて、アパレル店員(笑)はオリジナルTシャツを作って、町のおじさんはオリジナルの焼き物を作ってくれて……
それは春雄の熱い想いがみんなを変えた、ということでもあります。
また、自閉症の権助だけは、春雄の行動をずっと笑顔で見て、肯定してくれた存在でした。
春雄はとことんポジティブだけど、ときおり自分の行動に疑問を持ったりもしていました。
そんな彼にとって、権助は何よりも愛おしく、かけがえのない支えだったのでしょうね。
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(C)サブイボマスク製作委員会