『ウォークラフト』日本人には楽しむことが難しい?(映画ネタバレなし感想)
今日の映画感想は『ウォークラフト』です。
個人的お気に入り度:5/10
一言感想:日本じゃマーケティングがきびしいよなあ……
あらすじ
オークたちは新たな定住地を手に入れるために、人間たちが住む王国アゼロスに来襲しようとしていた。
人間たちはオークたちとの全面戦争を決意するが、オークの中で信頼を置かれている青年のアンドゥイン(トラヴィス・フィメル)は、人間たちとある交渉をしようとする。
一方、オークに属する女性のガローナ(ポーラ・パットン)は人間に囚われてしまっていたのだが……。
本作は『バイオハザード』や『トゥームレイダー』と同じくゲームを映画化した作品なのですが、ウォークラフトって名前のゲームなんて知らねえよ!と思った方も多いんじゃないでしょうか。
それもそのはず。『World of Warcraft』は、プレイヤー数が1000万人を突破してギネス記録に認定されるほどの超人気シリーズですが、日本語版は展開されていないのです。
(ちなみに今回の映画はシリーズ第1作である『Warcraft: Orcs & Humans』が原作)
※輸入版しかございません。
ゲームのジャンルとしてはRTS(リアルタイムストラテジー)で、日本で言えば『伝説のオウガバトル』や『ナポレオン』がこれに当てはまります。
(『World of Warcraft』はMMORPG(多人数参加型オンラインRPG)でもあります)
今回の映画でおもしろいのは、俯瞰して大局的に戦場を見る画が、まさにRTS(リアルタイムストラテジー)であるゲームそのままに見えること。
<大迫力!
※原作ゲームの動画
そのほかにも、キャラクターの造形や魔法のエフェクトを超ハイクオリティで再現していたりと、原作ファンからは大絶賛を持って迎えられている要素が多数あるよう。ゲームの実写映画化作品としては、確かな原作へのリスペクトがある映画なのです。
しかし……映画としては問題も多い作品です。
まっさきに思い浮かぶのは、固有名詞や世界観の設定や登場人物が多めなこと。
ゲームを遊んでいない自分は、映画を観ながら「えーとこの用語がこういう意味で……」「この名前がこのキャラで」と把握するのが大変で、作品において用語を理解する過程っておもしろくもなんともないことに改めて気付きました。
少なくとも、以下の固有名詞を把握しておくといいでしょう。
オーク……人間と対立する種族
フェル……闇の力を持つ、強力な魔法
ガーディアン……組織の中で高い地位にいる魔法使い
アゼロス……人間などが暮らす中世ヨーロッパ風の王国
そのほかのカタカナはキャラの名前という感じ。
原作ゲームからだいぶ種族の名前が省略され、予備知識がなくてもまあまあ理解はできるようになっていました。『ガルム・ウォーズ』に比べればかなり工夫されています。
それでもきびしいのは、人間たちとオークたちというふたつの種族による描写が交互に展開されるうえ、会話劇がかなり退屈であること。
相手の種族側の人物の名前がたびたび口に出るのですが、なかなか両者が交わるまでに時間がかかるので、もどかしいったらありゃしません。
説明に始終するあまり、キャラクター描写が薄めなのも難点ですね。
記号的でステレオタイプなキャラばかりで、あまり好感を持てなかったというのが正直なところです。
さらに残念だったのは、オークの集団がポータル(扉)を通って人間の世界に侵略に来たとき、「リーダー格の青年は、なぜ赤ちゃんがお腹にいる妻を連れてきたのか(もとの世界に置いてくればよかったのに)?」という説明がされていないこと。
このせいで青年のことを理解しにくく、感情移入が拒まれてしまいます。
そのほかにも、飲み込みづらい強引な展開が少なからずありました。
<このオークの青年に感情移入したかったんだけど……。
それでも本作がおもしろいのは、ふたつの種族における対立と内乱が描かれているから。
オークの中には強力な魔力を持つ独裁者がおり、革新派の青年がほかの種族(人間)と競合してクーデターを企てる、という一連の流れが丁寧に描かれています。
これはゲームのみならず、世界でもありふれていること。現実の問題と照らし合わせる方は多いでしょう。
人間に囚われの身となる女性キャラ「ガローナ」の心理描写もじつにおもしろいですね。
彼女の決断はまさに「苦渋」のものですが、納得できる方は多いでしょう。
そして、CGやエフェクトが惜しげもなく投入された画は迫力満点。
世界の広がり、ファンタジー大作映画としての醍醐味は十分に味わえます。
<こういう画はやはりワクワクする!
なお、本作の監督・脚本は、映画ファンを唸らせた『月に囚われた男』『ミッション:8ミニッツ』のダンカン・ジョーンズです。
本作『ウォークラフト』では、ホラーっぽい演出にジョーンズ監督らしさを感じることができました。
でも、『月に~』『ミッション~』のどちらも登場人物が少なく、舞台もごく限定された作品だったんですよね(そうであるからこそおもしろい映画になっていた)。
ジョーンズ監督はこうした作品のほうがマッチしており、本作のようなキャラや設定の多い大作にはやや不向きだったのではないか……ともちょっと思いました。
そもそも原作ゲームの日本語版が展開されていないため、日本人には原作の再現度を楽しめないという欠点があるのは残念です。
日本の宣伝担当の方は、本作のマーケティングに苦労されたことでしょう。
上映館は40数館と少なめ、興行収入が12位スタートという現状も、納得できてしまいました。
それでも、原作ゲームをまったく知らなくても、政治色の強いファンタジー作品を求める人には、十分すぎるほど楽しめるはずです。
公式サイトなどで、いろいろとキャラや世界観を予習しておくのもいいでしょう。
可もなく不可もなく、そこそこな感じでオススメしておきます。
おすすめ記事↓
ファンタジー戦争映画「ウォークラフト」を見る前に知っておくべきこと|ギズモード・ジャパン
映画『ウォークラフト』のダンカン・ジョーンズ監督を直撃! ゲームの世界観を忠実に再現して人間とオークのどちらにも共感できる視点で描いた - ファミ通.com
(C)2016 legendary and universal studios
個人的お気に入り度:5/10
一言感想:日本じゃマーケティングがきびしいよなあ……
あらすじ
オークたちは新たな定住地を手に入れるために、人間たちが住む王国アゼロスに来襲しようとしていた。
人間たちはオークたちとの全面戦争を決意するが、オークの中で信頼を置かれている青年のアンドゥイン(トラヴィス・フィメル)は、人間たちとある交渉をしようとする。
一方、オークに属する女性のガローナ(ポーラ・パットン)は人間に囚われてしまっていたのだが……。
本作は『バイオハザード』や『トゥームレイダー』と同じくゲームを映画化した作品なのですが、ウォークラフトって名前のゲームなんて知らねえよ!と思った方も多いんじゃないでしょうか。
それもそのはず。『World of Warcraft』は、プレイヤー数が1000万人を突破してギネス記録に認定されるほどの超人気シリーズですが、日本語版は展開されていないのです。
(ちなみに今回の映画はシリーズ第1作である『Warcraft: Orcs & Humans』が原作)
World of Warcraft (輸入版)
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Blizzard Entertainment (2004-11-23)
売り上げランキング: 8,825
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ゲームのジャンルとしてはRTS(リアルタイムストラテジー)で、日本で言えば『伝説のオウガバトル』や『ナポレオン』がこれに当てはまります。
(『World of Warcraft』はMMORPG(多人数参加型オンラインRPG)でもあります)
※『ナポレオン』は知名度が低いけど、個人的にはやたらハマりました。
今回の映画でおもしろいのは、俯瞰して大局的に戦場を見る画が、まさにRTS(リアルタイムストラテジー)であるゲームそのままに見えること。

※原作ゲームの動画
そのほかにも、キャラクターの造形や魔法のエフェクトを超ハイクオリティで再現していたりと、原作ファンからは大絶賛を持って迎えられている要素が多数あるよう。ゲームの実写映画化作品としては、確かな原作へのリスペクトがある映画なのです。
しかし……映画としては問題も多い作品です。
まっさきに思い浮かぶのは、固有名詞や世界観の設定や登場人物が多めなこと。
ゲームを遊んでいない自分は、映画を観ながら「えーとこの用語がこういう意味で……」「この名前がこのキャラで」と把握するのが大変で、作品において用語を理解する過程っておもしろくもなんともないことに改めて気付きました。
少なくとも、以下の固有名詞を把握しておくといいでしょう。
オーク……人間と対立する種族
フェル……闇の力を持つ、強力な魔法
ガーディアン……組織の中で高い地位にいる魔法使い
アゼロス……人間などが暮らす中世ヨーロッパ風の王国
そのほかのカタカナはキャラの名前という感じ。
原作ゲームからだいぶ種族の名前が省略され、予備知識がなくてもまあまあ理解はできるようになっていました。『ガルム・ウォーズ』に比べればかなり工夫されています。
それでもきびしいのは、人間たちとオークたちというふたつの種族による描写が交互に展開されるうえ、会話劇がかなり退屈であること。
相手の種族側の人物の名前がたびたび口に出るのですが、なかなか両者が交わるまでに時間がかかるので、もどかしいったらありゃしません。
説明に始終するあまり、キャラクター描写が薄めなのも難点ですね。
記号的でステレオタイプなキャラばかりで、あまり好感を持てなかったというのが正直なところです。
さらに残念だったのは、オークの集団がポータル(扉)を通って人間の世界に侵略に来たとき、「リーダー格の青年は、なぜ赤ちゃんがお腹にいる妻を連れてきたのか(もとの世界に置いてくればよかったのに)?」という説明がされていないこと。
このせいで青年のことを理解しにくく、感情移入が拒まれてしまいます。
そのほかにも、飲み込みづらい強引な展開が少なからずありました。

それでも本作がおもしろいのは、ふたつの種族における対立と内乱が描かれているから。
オークの中には強力な魔力を持つ独裁者がおり、革新派の青年がほかの種族(人間)と競合してクーデターを企てる、という一連の流れが丁寧に描かれています。
これはゲームのみならず、世界でもありふれていること。現実の問題と照らし合わせる方は多いでしょう。
人間に囚われの身となる女性キャラ「ガローナ」の心理描写もじつにおもしろいですね。
彼女の決断はまさに「苦渋」のものですが、納得できる方は多いでしょう。
そして、CGやエフェクトが惜しげもなく投入された画は迫力満点。
世界の広がり、ファンタジー大作映画としての醍醐味は十分に味わえます。

なお、本作の監督・脚本は、映画ファンを唸らせた『月に囚われた男』『ミッション:8ミニッツ』のダンカン・ジョーンズです。
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本作『ウォークラフト』では、ホラーっぽい演出にジョーンズ監督らしさを感じることができました。
でも、『月に~』『ミッション~』のどちらも登場人物が少なく、舞台もごく限定された作品だったんですよね(そうであるからこそおもしろい映画になっていた)。
ジョーンズ監督はこうした作品のほうがマッチしており、本作のようなキャラや設定の多い大作にはやや不向きだったのではないか……ともちょっと思いました。
そもそも原作ゲームの日本語版が展開されていないため、日本人には原作の再現度を楽しめないという欠点があるのは残念です。
日本の宣伝担当の方は、本作のマーケティングに苦労されたことでしょう。
上映館は40数館と少なめ、興行収入が12位スタートという現状も、納得できてしまいました。
それでも、原作ゲームをまったく知らなくても、政治色の強いファンタジー作品を求める人には、十分すぎるほど楽しめるはずです。
公式サイトなどで、いろいろとキャラや世界観を予習しておくのもいいでしょう。
可もなく不可もなく、そこそこな感じでオススメしておきます。
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trackback
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2016-07-10 22:37 :
哲学はなぜ間違うのか
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No title
ファンタジー大作としてそこそこなんですが、細かい不満点を指摘したくなる作品でしたね。
>相手の種族側の人物の名前がたびたび口に出るのですが、なかなか両者が交わるまでに時間がかかるので、もどかしいったらありゃしません。
自分も同感です。しかも交わって共闘するのかと思いきやそれには失敗してるし。
というかこの作品、全体的に失敗が多くて正統派なカタルシスがないんですよね。「ミッション:8ミニッツ」とかも失敗を繰り返して最適解を見つけるエンターテイメントでしたが、この作品は最適解を見つける手前の段階で終わってしまうため、未消化感が否めない。トリロジーとかを見越した作りなんでしょうかね?
>そのほかにも、飲み込みづらい強引な展開が少なからずありました。
自分もいくつかあって、
・人間とオークが戦うシーンでローサーが「頭を使って戦え」とか言うんだけど、どう「頭を使う」のか具体的に言ってくんないから、何か面白みがない。
・ヒューマン同盟なのにドワーフとエルフは書き割り的。特にエルフは何をする人たちなのか、よくわからない。一緒に戦うとかはしないんだ・・・。
・移動描写が少ないので、場所の位置関係や距離感がわからない。よって壮大なスケール感もなく、爽快感もない。特にワープ魔法はインチキにしか感じない。
・決闘シーンがあっけない。西部劇を基にしたと映画秘宝のインタビューに書いてあったので、一瞬で終わるということを表現したかったのかもしれないけど、単に敵が弱いようにしか見えない。
全部些末なことなのかもしれませんが、積み重なるとすごい気になりました。
オークが乗る狼はもふもふしてて可愛かったですね。
>相手の種族側の人物の名前がたびたび口に出るのですが、なかなか両者が交わるまでに時間がかかるので、もどかしいったらありゃしません。
自分も同感です。しかも交わって共闘するのかと思いきやそれには失敗してるし。
というかこの作品、全体的に失敗が多くて正統派なカタルシスがないんですよね。「ミッション:8ミニッツ」とかも失敗を繰り返して最適解を見つけるエンターテイメントでしたが、この作品は最適解を見つける手前の段階で終わってしまうため、未消化感が否めない。トリロジーとかを見越した作りなんでしょうかね?
>そのほかにも、飲み込みづらい強引な展開が少なからずありました。
自分もいくつかあって、
・人間とオークが戦うシーンでローサーが「頭を使って戦え」とか言うんだけど、どう「頭を使う」のか具体的に言ってくんないから、何か面白みがない。
・ヒューマン同盟なのにドワーフとエルフは書き割り的。特にエルフは何をする人たちなのか、よくわからない。一緒に戦うとかはしないんだ・・・。
・移動描写が少ないので、場所の位置関係や距離感がわからない。よって壮大なスケール感もなく、爽快感もない。特にワープ魔法はインチキにしか感じない。
・決闘シーンがあっけない。西部劇を基にしたと映画秘宝のインタビューに書いてあったので、一瞬で終わるということを表現したかったのかもしれないけど、単に敵が弱いようにしか見えない。
全部些末なことなのかもしれませんが、積み重なるとすごい気になりました。
オークが乗る狼はもふもふしてて可愛かったですね。
2016-07-05 22:28 :
蝮のゼンゾウ URL :
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この作品は既に物語の歴史をゲームで知っている人向けなのでしょうね。あらすじも結末も知っていて見る大河ドラマのように。今から3の公開が楽しみです(笑)
2016-07-10 22:02 :
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