『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』変えられることもある(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
個人的お気に入り度:6/10
一言感想:前作と違うテーマがあってよかった!
あらすじ
3年に及ぶ船旅からロンドンに帰郷した後、アリス(ミア・ワシコウスカ)は再びワンダーランドへと迷い込む。
マッドハッター(ジョニー・デップ)はかつて亡くなった家族の帰りを待っていたが、アリス彼に死んだ者は蘇らない、帰ってくることは不可能だと告げてしまう。
しかし、白の女王(アン・ハサウェイ)によると、時間の番人タイム(サシャ・バロン・コーエン)の持つ“クロノスフィア”には、時間を遡る能力があるらしく……。
『不思議の国のアリス』を実写映画化し、日本でも歴代17位というメガヒットを記録した『アリス・イン・ワンダーランド』の6年ぶりの続編となる作品です。
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前作のティム・バートン監督は製作に回り、監督は『ザ・マペッツ』のジェームズ・ボビンにバトンタッチ。
それでも変人を愛するティムらしさ、きらびやかでカラフルな美術は健在なので、前作が好きだった方は抵抗なく観られるでしょう。
本作の直接的な原作は、原題が示す通り『鏡の国のアリス』になるわけですが、物語はほぼオリジナルと言ってさしつかえありません。
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本作については、ネタバレも含めて以下に全部書いたので、ぜひお読みください↓
<『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』物語を読み解く10の盲点 | シネマズ by 松竹>
※1ページ目にはネタバレなし、2ページ目には盛大なネタバレがあります。
さてさて、こちらの記事で存分に褒めたので、ここでは残念だったところを書いていきます。
いちばんに思い浮かぶ欠点は、『不思議の国のアリス』としても、タイムトラベルものとしても、コレジャナイ感があることでしょうか。
前作で3度目のアカデミー技術デザイン賞に輝いたコリーン・アトウッドの衣装、原作のジョン・テニエルの挿絵にあるようなヴィクトリア王朝的な要素は目を引きます。
しかし、暗くて機械的なビジュアルの「永遠の城」や、後半に登場する街にはあまり『アリス』らしさを感じられないのです。
個人的には、永遠の城は『パシフィック・リム』や『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』のギレルモ・デル・トロっぽさが感じられて大・大・大好きなのですが、ちょっと閉鎖的な空間になっていることも含めて賛否があるでしょう。

本作は果敢にも『アリス』という題材にタイムトラベルの要素を入れているのですが、奥深いSF的パラドックスを期待すると、少々期待外れになってしまうかもしれません。
これは作品のメッセージにも絡んでいるのでむやみに否定はしたくはないのですが、このジャンルに詳しければ詳しいほど「もうちょっと捻って欲しかった!」と不満が出てくるのかもしれません。
強引な展開が多かったのも残念ですね。
もう少し工夫するだけでカタルシスは増したはずなのに……爪の甘さを感じざるを得ません。
本作は、世界的に興行成績は期待外れと、ほうぼうに語られています。
日本では何とか初登場1位を記録したものの、前作と比べて初動興収比で約32%という状況になりました。
(しかし、前作の大ヒットが異様すぎたというだけで、日本の興行収入は興収12億を超えており、大コケというほどでもありません)
前作の評判がよいとは言えなかったこと、6年も経っての続編というタイミングが悪かったのかもしれませんが……もうちょっとヒットしてもいいのになあ。
(そういえば『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』は20年ぶりの続編で同じく期待はずれの結果でしたね。『ファインディング・ドリー』は13年ぶりの続編ながら全米で特大ヒットをしているけど)
吹き替え版と字幕版で2回観ましたが、吹き替え版は深田恭子や滝藤賢一も含めて問題なし(むしろめっちゃうまい)、字幕版は言葉遊びが楽しめるので、お好みで選びましょう。
3D効果もそこそこ以上にあるので、それを選択する意義も十分です。
前作の「大人になったアリスがワンダーランドで大切なことを知り成長する」というフォーマットはそのままながら、新たなメッセージとテーマがあるという作風は、多くの人に受け入れられるのではないでしょうか。
メッセージそのものもとても尊く、多くの方に観て欲しいと思えるものになっていました。
個人的には、お話のほうがスカスカ気味だった前作よりもはるかに好きです。
できれば前作を観てからのほうが楽しめますが、物語は独立しているので本作から観ても問題はありません。
圧倒的なビジュアルはサービス精神満載、大盤振る舞いですので、観る人を選ばないでしょう。オススメします。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓ 上の記事で書いたので今回は短め。
〜野暮な不満点〜
いちばん残念だったのが、過去の「お茶会の時間」に閉じ込められてしまったマッドハッターや白ウサギが「そのまま」になっちゃっていること。
えー!あの時空のマッドハッターたちは一生何もできないじゃん!
まあ、前作『アリス・イン・ワンダーランド』でマッドハッターたちはちゃんとアリスを迎えられているわけで、ちゃんと解放されているとも取れますけどね。
エンドロール後でもいいから、タイムが彼らを解放するシーンがほしかったなあ。
現実の世界での脱出劇において、アリスが「船の仕事でロープを結ぶのは得意なのよ!」とわかりやすすぎる独り言を言うのもいかがなものかと。
伏線を忍ばせたりするだけでも、もしくは何も言わなくても、観客はわかってくれますよ。
クライマックスのすべてが錆(さび)になっていく退廃的な画、絶望感が大・大・大好きだったのですが、けっきょく「ギリギリで間に合った」という展開になっているのももったいないかな。
チェシャ猫たち仲間が協力するシーンがあればよかったですね。
(タイムは自分についた時計を無理やり止めて協力していましたけどね)
〜選択〜
アリスが最後に、自分の意思ではなく、母親に未来の選択を任せた、ということも大好きでした。
前作がアリス自身のアイデンテンティーを確立する物語であるなら、今回はアリスが大切な人のことを信じて前向きになるという物語になっています。
幸せのためには、自分だけでなく、周りの人を含めてバランスが取れた選択をすることも重要なのでしょう。
〜時間は誰にでも平等〜
最後の「男も女も潮時は同じ」というセリフもいいですね。
本作は女性が社会進出をする、男女平等の精神が描かれていたわけですが、それを「時間は誰にでも平等」というメッセージにつなげているのです。
そうであるなら、平等に与えられた時間は大切にしたいものですね。
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本日、鑑賞してきました。
今作はストーリーが駆け足で進んでいった感が強く、勿体ないというのが最初の感想でした。
特に感じたのは、タイムの城周りのギミックが物語と絡まなかったところ。
映像が綺麗なだけに…勿体なかった。
あと、精神病棟のシーンを入れる意味もよくわかりませんでした。
何度か見返したら、理解できるようになるのでしょうか…。ヒナタカさんの感想をお聞きしたいです。
もうひとつ。人によっては「赤の女王」の城の内部デザインや登場人物がどんどん錆びになっていくシーンが、グロテスクで嫌悪感を感じるかもしれないですね。錆びた後の形状もリアルですし。
個人的には絶望的でとても大好きなんですが(笑)
> 特に感じたのは、タイムの城周りのギミックが物語と絡まなかったところ。
> 映像が綺麗なだけに…勿体なかった。
タイムが自分の時計を止めると、歯車が止まるというのはあったのですが、もうちょっとほしかったですね。
> あと、精神病棟のシーンを入れる意味もよくわかりませんでした。
> 何度か見返したら、理解できるようになるのでしょうか…。ヒナタカさんの感想をお聞きしたいです。
正直これはとってつけた感があったなあ。
現実でも強く生きるアリスの姿を描きたかったのでしょうが。
問答無用で謎の注射をしようとする医者も意味不明でしたw
あとタイムさんめっちゃ萌え!
子どもの頃の不思議の国の仲間達もめっちゃキュート。
>~野暮な不満点~
あ!確かに。アリスが過去の悲劇を回避出来なかったので「歴史は改変出来ない」かとも思いましたが、並行世界も出来ているのでしょうか。
>えー!あの時空のマッドハッターたちは一生何もできないじゃん!
一生どころか永遠にでしょうか。まさか?G・Eレイクエムを食らったボスみたいな状態なんじゃあ・・・。
あと。ハッターとパパとのハグで『チャーリーとチョコレート工場』を思い出してしまいました。
>~選択~
アスコット家をギャフンと言わせたれ!・・・などと私が言うまでもなく衰退していくだろうなあ・・・とムカツキつつも哀れに思いました。彼らは当時の常識人なだけで、それを21世紀の日本人からとやかく言うのも傲慢かもしれませんが、皇太后との越権まで取り付けた(清王朝も衰退して行きますが、て当時のイギリスが中国にした事って・・・)アリスを袖にするとか・・・あまりに商才も先見の明も無さ過ぎです。
あと相変わらず当時の精神病院の描写が酷い。女性の精神疾患は全てヒステリー!
>~時間は誰にでも平等~
アリスとの和解がすんごくホッコリしました。アリスの「貴方は奪ってなんかいない。与えている」を自分も胸に刻んで生きて行きたいです。