『人生は狂詩曲(ラプソディ)』イギリスのEU離脱が話題のいま観るべき映画!(ネタバレなし感想)
今日の映画感想は『人生は狂詩曲(ラプソディ)』です。
個人的お気に入り度:7/10
一言感想:お国柄があらわすぎな超楽しいミュージカル
あらすじ
吹奏楽団〈サン・セシリア〉は、見事欧州決勝コンクール進出にこぎつけるが、チームの要であるトランペット奏者のウィリーが演奏直後に舞台上で突然死してしまう。
メンバーたちはエースを失ってしまうが、彼の死を無駄にしないためにもメンバーたちはある作戦を思いつく。それは、ライバルチーム〈アンナバン〉の天才トランペット奏者、ユーグをチームにスカウトし、勝ち上がることだった。
ベルギーを舞台にした音楽映画です。
観る前に知っておくといいのは、ベルギーでは北部がオランダ語、南部はフランス語と、国を分断する形でふたつの言語が存在していることです。
この南北で使用言語が違うことは、そのまま地元愛の強さとなり、相手が乗っている車種や仕事のやる気など、些細なことまでいちいち小競り合う原因にもなっているのだとか。
本作『人生は狂詩曲』では、この言語が違う地域での小競り合い(ときどき仲がいい)の構造を、そのまま吹奏楽チームの対立として描いています。
何せ、吹奏楽のライバルチームどうしが、妙なプライドを持って腹の探り合いをしたり、天才トランペット奏者を引き抜こうと画策したり、いい意味でセコいお話なのですから。
お国柄をそのまま物語の発端に絡めている、このアイデアがまず秀逸ですね。
しかもねえ……この天才トランペット奏者が鼻持ちならないというか、そんなにいいやつじゃない、それどころか「自分の作った曲じゃないと出場してやらない!」とほざく超迷惑なやつなんですね。
<天才だけど超迷惑です。
まあはっきり言えば主人公のクセにムカつくわけですが、彼には彼なりの矜持があり、憎めないようなキャラにしているのがうまいですね。
あんまり性格がよくないやつが主人公というのも、まわりまわって本作の魅力になっています。
本作はイギリスのEU離脱が話題になっているいまに観るといいのではないでしょうか。
映画の舞台となるベルギーは、言語対立により国家分裂の危機にたびたびさらされてきました。
近年ではようやく政府や学校が言語ごとに分かれる仕組みが整えられ、その対立は緩和され、ベルギー人は地元に深く思い入れを示すようになったのです。
こうして対立があったものの、妥協や和解により連邦国家となったベルギーは、さまざまな国の共同体となったEUの縮図のようです。
(しかも、ベルギーの首都ブルッセルにはEU本部が置かれていたりもします)
この映画で描かれている対立も、そのままEUのことにも置き換えられそうです。
しかも、この映画では「小さいことで言い争ったりするのはバカバカしくね?」という、客観的な目線での「問題の見かた」も提示されています。
いまのイギリスのEU離脱騒動も、何も知らなかった民衆が「この政治家は信用ならねーから、言っていることの反対の離脱のほうに投票しよー」→マジで離脱の投票が過半数を超えた→民衆「え?EU離脱ってそんなにヤベーことなの?」っていう理由で起こった(注:管理人の見識です)んですから。同じくらいバカバカしいです(起こっていることは本気でシャレにならないけど……)
また、移民問題を皮肉っているように思えるのがおもしろいですね。
なにせ、物語は吹奏楽団のエースが突然死して、代わりに来たライバルチームの天才が超迷惑な奴だったというもの。
イギリスがEU離脱をしようとしているのは、同じく「迷惑な移民に来られてしまうと困る!」というのも理由のひとつみたいだしね(もちろん移民はそういう人ばかりじゃないですし、根本的な問題は福祉や政治体制なのですが)。
そして、そんなお国柄やEUの皮肉はどうこう抜きに、本作は超楽しいです。
吹奏楽シーンだけが音楽の魅力と思うことなかれ、本作は『レ・ミゼラブル(2011)』『シェルブールの雨傘』『TOKYO TRIBE』のように、登場人物の会話がミュージカルになっているのです。
とはいえ、『レ・ミゼラブル』『シェルブールの雨傘』『TOKYO TRIBE』の「会話のミュージカル率」がそれぞれ95%、100%、85%だったのに対して、『人生は狂詩曲』は60%くらいの塩梅になっています。個人的にはこれくらいが見易くてちょうどいいですね。
そしてねえ、そのミュージカルシーンのだいたいが幸せいっぱいなんですよ!
なにせ、主人公が「愛している!」と歌いながら歩くと、周りの人たちがそれを祝福するためにまた歌う、というシーンがあるくらいなんですから。
このミュージカルでみんなが歌う!踊る!楽しい!という感覚は、『(500)日のサマー』の1シーンを超えていました。
そんな幸せいっぱいのミュージカルシーンに、兄弟の確執や違う価値観を持つ者たちの和解のドラマ、コミカルでクスクス笑えるシーンが合わさり、そしてラストシーンは超爽快!というエンタメとして理想的な作品に仕上がっていました。
上映館はシネマート新宿、シネマート心斎橋、シネマスコーレ(名古屋、7月23日より)のみ3館と超少ないですが、『シング・ストリート 未来へのうた』に引き続き、優れた音楽映画を観たい方はぜひ。オススメです。
個人的お気に入り度:7/10
一言感想:お国柄があらわすぎな超楽しいミュージカル
あらすじ
吹奏楽団〈サン・セシリア〉は、見事欧州決勝コンクール進出にこぎつけるが、チームの要であるトランペット奏者のウィリーが演奏直後に舞台上で突然死してしまう。
メンバーたちはエースを失ってしまうが、彼の死を無駄にしないためにもメンバーたちはある作戦を思いつく。それは、ライバルチーム〈アンナバン〉の天才トランペット奏者、ユーグをチームにスカウトし、勝ち上がることだった。
ベルギーを舞台にした音楽映画です。
観る前に知っておくといいのは、ベルギーでは北部がオランダ語、南部はフランス語と、国を分断する形でふたつの言語が存在していることです。
7.16(土)公開『人生は狂詩曲(ラプソディ)』ベルギーは使用言語が主に北と南で別れている世界でも珍しい国です。本作はそんなベルギーの北部と南部の吹奏楽団のお話しです。#ベルギー #吹奏楽団 #映画 pic.twitter.com/yf7IqCVKK3
— 映画『人生は狂詩曲(ラプソディ)』公式 (@belgianrhapsody) 2016年6月22日
この南北で使用言語が違うことは、そのまま地元愛の強さとなり、相手が乗っている車種や仕事のやる気など、些細なことまでいちいち小競り合う原因にもなっているのだとか。
本作『人生は狂詩曲』では、この言語が違う地域での小競り合い(ときどき仲がいい)の構造を、そのまま吹奏楽チームの対立として描いています。
何せ、吹奏楽のライバルチームどうしが、妙なプライドを持って腹の探り合いをしたり、天才トランペット奏者を引き抜こうと画策したり、いい意味でセコいお話なのですから。
お国柄をそのまま物語の発端に絡めている、このアイデアがまず秀逸ですね。
しかもねえ……この天才トランペット奏者が鼻持ちならないというか、そんなにいいやつじゃない、それどころか「自分の作った曲じゃないと出場してやらない!」とほざく超迷惑なやつなんですね。

まあはっきり言えば主人公のクセにムカつくわけですが、彼には彼なりの矜持があり、憎めないようなキャラにしているのがうまいですね。
あんまり性格がよくないやつが主人公というのも、まわりまわって本作の魅力になっています。
本作はイギリスのEU離脱が話題になっているいまに観るといいのではないでしょうか。
映画の舞台となるベルギーは、言語対立により国家分裂の危機にたびたびさらされてきました。
近年ではようやく政府や学校が言語ごとに分かれる仕組みが整えられ、その対立は緩和され、ベルギー人は地元に深く思い入れを示すようになったのです。
こうして対立があったものの、妥協や和解により連邦国家となったベルギーは、さまざまな国の共同体となったEUの縮図のようです。
(しかも、ベルギーの首都ブルッセルにはEU本部が置かれていたりもします)
この映画で描かれている対立も、そのままEUのことにも置き換えられそうです。
しかも、この映画では「小さいことで言い争ったりするのはバカバカしくね?」という、客観的な目線での「問題の見かた」も提示されています。
いまのイギリスのEU離脱騒動も、何も知らなかった民衆が「この政治家は信用ならねーから、言っていることの反対の離脱のほうに投票しよー」→マジで離脱の投票が過半数を超えた→民衆「え?EU離脱ってそんなにヤベーことなの?」っていう理由で起こった(注:管理人の見識です)んですから。同じくらいバカバカしいです(起こっていることは本気でシャレにならないけど……)
また、移民問題を皮肉っているように思えるのがおもしろいですね。
なにせ、物語は吹奏楽団のエースが突然死して、代わりに来たライバルチームの天才が超迷惑な奴だったというもの。
イギリスがEU離脱をしようとしているのは、同じく「迷惑な移民に来られてしまうと困る!」というのも理由のひとつみたいだしね(もちろん移民はそういう人ばかりじゃないですし、根本的な問題は福祉や政治体制なのですが)。
そして、そんなお国柄やEUの皮肉はどうこう抜きに、本作は超楽しいです。
吹奏楽シーンだけが音楽の魅力と思うことなかれ、本作は『レ・ミゼラブル(2011)』『シェルブールの雨傘』『TOKYO TRIBE』のように、登場人物の会話がミュージカルになっているのです。
シェルブールの雨傘 デジタルリマスター版(2枚組) [DVD]
posted with amazlet at 16.07.19
Happinet(SB)(D) (2009-07-17)
売り上げランキング: 10,958
売り上げランキング: 10,958
TOKYO TRIBE/トーキョー・トライブ [DVD]
posted with amazlet at 16.07.19
Happinet(SB)(D) (2015-01-06)
売り上げランキング: 3,663
売り上げランキング: 3,663
とはいえ、『レ・ミゼラブル』『シェルブールの雨傘』『TOKYO TRIBE』の「会話のミュージカル率」がそれぞれ95%、100%、85%だったのに対して、『人生は狂詩曲』は60%くらいの塩梅になっています。個人的にはこれくらいが見易くてちょうどいいですね。
そしてねえ、そのミュージカルシーンのだいたいが幸せいっぱいなんですよ!
なにせ、主人公が「愛している!」と歌いながら歩くと、周りの人たちがそれを祝福するためにまた歌う、というシーンがあるくらいなんですから。
このミュージカルでみんなが歌う!踊る!楽しい!という感覚は、『(500)日のサマー』の1シーンを超えていました。
※ちなみに『モテキ』では、『(500)日のサマー』をいい意味でパクったシーンがあります。
そんな幸せいっぱいのミュージカルシーンに、兄弟の確執や違う価値観を持つ者たちの和解のドラマ、コミカルでクスクス笑えるシーンが合わさり、そしてラストシーンは超爽快!というエンタメとして理想的な作品に仕上がっていました。
上映館はシネマート新宿、シネマート心斎橋、シネマスコーレ(名古屋、7月23日より)のみ3館と超少ないですが、『シング・ストリート 未来へのうた』に引き続き、優れた音楽映画を観たい方はぜひ。オススメです。
『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』超万人向けの家族の物語だった!(ネタバレなし感想+B級映画愛に溢れたシーン) « ホーム
» 『死霊館 エンフィールド事件』常識を超えて(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
trackback