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『怒り』疑うことと、信じること(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

今日の映画感想怒りです。


個人的お気に入り度:8/10

一言感想:信じるって難しい(いや、簡単かも)

あらすじ


東京・八王子で凄惨な殺人事件が起き、その現場には「怒」の血文字が残されていた。
その事件から1年、千葉の漁港に住む洋平(渡辺謙)の娘である愛子(宮崎あおい)は、田代(松山ケンイチ)と名乗る青年と恋仲になる。
時を同じくして、東京、沖縄でも、「殺人犯と疑わしき男」がフラッと現れるのだが……。




本作は、BL(ボーイズラブ)な要素があるため、SNS上で大いに話題を集めています。

Twiiterの検索候補には「怒り BL」とか「綾野剛 受け」とか出てきますからね。どんな形でも映画が話題になるのはいいことです(たぶん)。

このあたりのBL要素、本作のテーマ、役者などの魅力、ネタバレなしの原作小説との違いについては以下にも書きました↓
<『怒り』BL全開な綾野剛に萌えた理由と、“信じる”難しさを描いた傑作であった5つの理由 | シネマズ by 松竹>

まあなんつーか、綾野剛が可愛すぎて新しい扉を開いてしまいそうなんですよ(自分はたぶんノーマルです)。

ベストカップル綾野剛と妻夫木聡<ベストカップル

そんなわけで、綾野剛と妻夫木聡のカップリングに期待する人は絶対に観に行きましょう。


(読者がどん引いたところで閑話休題)


さてさて、本作は吉田修一の同名小説の映画化作品であり、監督は『フラガール』『許されざる者』の李相日(り そうじつ)です。

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この原作者と監督のタッグは、興行収入20億円近いヒットを記録した『悪人』以来6年ぶりとなります。

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この機会に『悪人』を観てみたのですが……好きな人にはごめんなさい、これはあまり肯定できる内容ではなかったです。
なぜなら、人を殺した主人公(妻夫木聡)を善、大学生(岡田将生)と殺された女性(満島ひかり)を超クズに描くという、「観客に想像の余地を残さない」作風だったからです。
これは「本当の悪人は誰か」(を観客に考えてもらう)というテーマとも矛盾していないでしょうか。
自分の不満は、以下の論理的かつ明確な記事でもよくわかるので、ぜひ読んでみてください(ネタバレ全開)
<悪人 [映画感想] | にわか映画ファンの駄目な日常>

しかし、今回の『怒り』はこの不満が完全に解消されていました。
終盤ギリギリまで「信じた人が殺人犯か否か」ということが明確にされないため、ずーっと「この人を信じていいのか」という疑心暗鬼に追い込んでくれるからです

これは、推理小説によくある「犯人が誰かを当てる」という要素と同じようで、ちょっと違います。
観客はほんのちょっとだけの「情報」や、登場人物の「些細な言動やしぐさや特徴」をもとに、その人物を信じるかどうかに迫られるのです。

この疑心暗鬼に陥ることが、まさに「この人は殺人犯なのか」と考える登場人物にシンクロしていきます。
「感情移入をする」「登場人物と自分を同調させる」という映画の醍醐味を、存分に味わうことができるでしょう。

この親子共演怒り<この親子関係も身につまされるなあ……。

PG12指定ではやや甘い性的なシーンもありますが、それは作品に必要なものです。

3つの物語を(ほぼ)同時並行で描くという構成、編集も見事に成功しています。

撮影と照明は「極上」と呼んでもいいほどの美しさがありました。

坂本龍一のピアノ主体の音楽は、『レヴェナント』以上に心をかき乱してくれます。

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2時間22分という上映時間ですが、その長さを感じさせません。
豪華すぎる俳優陣の演技を期待する人、重圧な映画を求める方に、ぜひおすすめします。

以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓









〜野暮な不満点〜

映画の序盤、沖縄の昼→千葉の夜→沖縄の昼(同じ)という、明らかに時間軸が前後している編集があったことは気になりました。そこは同時並行の物語であることを強調してほしかったです。

※以下の意見をいただきました。
自分はこの編集のおかげで実は3人が同一人物で、同時並行の物語ではなく、山神(殺人犯)が順番に顔を整形して各地を渡り歩いているのかなとミスリードさせられましたw 東京→千葉→沖縄を転々としてるみたいな。
そういうミスリードのためと思えば個人的には好きな編集でした。


また、愛子が田代のことを警察に聞く瞬間、「無音(警察官の声が聞こえない)」→同じシーンを「音声あり」で繰り返す、という編集もありました。
これは観客の気持ちを昂ぶらせるために存在する編集ですね。ちょっと禁じ手のように思えてしまいました。

そのほか、東京のエピソードで、直人(綾野剛)が「心臓の病を持っていた」ことにまったく伏線がないのはかなり気になりました(原作でも同様)。


〜青と紫の光の画〜

本作は画作りが恐ろしく上手いのですが、優馬(妻夫木聡)が直人(綾野剛)を無理やり犯すハッテン場と、泉(広瀬すず)がレイプされてしまう沖縄の裏通りのどちらもが青や紫に薄気味悪く光っている画になっているんですよ。

この画だけで起こることがわかるので、まさか……やめてくれ……という気持ちでいっぱいになりました。
(沖縄では実際に米兵によるレイプ事件が頻発していることも知っていたので)

わずか17歳の広瀬すずがこの演技をやり遂げたというのもすさまじいですね。
しかもオーディションでこの役を射止めたというのですから、その女優魂、恐れ入ります。


〜萌える綾野剛〜

綾野剛がハッテン場で体育座りをしていたり、妻夫木聡と「俺は別にいっしょの墓に入っていいけど?」な会話をしているのがたまらんですね。もう新しい扉に飛び込んでもいいや。

※以下の意見をいただきました。
綾野剛が弁当の傾きを直すシーンが特にお気に入りで、自分はこのしぐさで直人を信じてしまいましたw
上手く言えないのですが、安くて大盛りの弁当を買ってそこに思いれを置く直人の姿は経済的困窮に苦しめられた哀愁のようなものを感じてしまい、BL好きな方々が発狂するのも納得してしまいましたw これで直人が山神(殺人犯)だったら自分はどうなっていたんだろうw



〜東京の物語〜

優馬(妻夫木聡)は、警察の電話で「大西直人さんをご存知ですか?」と聞いて、殺人犯と断定されたと勘違いしてしまい、「知りません」と電話を切ってしまいます。
本当は、警察は直人が公園で亡くなっていることを知らせようとしただけなのに……。
(ここで、沖縄の田中(森山未來)がカバンを放り投げている画を挟むのがうまい。優馬が直人の持ち物を投げまくったのかと、いい意味で勘違いしてしまいます)

けっきょく、優馬は直人を信じることができず、彼の死に目に会うことができませんでした。
少し前にも、母の最期を看取ることができなかったのに……。

また、直人が優馬の母親の看病についていこうとしたのは、施設出身であり親のことを知らなかったからなのでしょう。
彼は「大切なものは増えるのではなく減っていく」「優馬は大切なものが多すぎるよ」と言っていたけど、優馬はいちばん大切な親が初めからいなかったのですね。

ちなみに、優馬が意味ありげに部屋の中にあったオレンジを掴むシーンは、原作小説において「オレンジが存在しているかどうかも自分の認識しだい」ということが示されていました。
直人を信じるかどうかも同様、優馬の言うように自分次第だったのですね。


〜千葉の物語〜

愛子(宮崎あおい)は、「田代君(松山ケンイチ)は悪くないんだよ、親の借金を背負わされて逃げてきたんだよ」と父の洋介(渡辺謙)に訴えていたはずなのに……消えてしまった田代を警察に通報したのは、ほかならぬ愛子でした。

彼女は田代君のすべてを肯定していたけど、それは「知ろうとしていたかった」ということでもあります。
だから、彼が「戻ってこなかった」という事実だけでも、彼のことを信じられなくなったのでしょう。

また、洋介は田代のことをいぶかしく思うだけでなく、いとこの明日香(池脇千鶴)から「おじさんは愛子が幸せになれないって思っているんじゃないでしょうね?」と見抜かれると、素性の知れない田代と、軽い知的障害を持つ愛子に、偏見を持っていたようでした。
その偏見と、思い込みが、回り回って愛子に通報をさせてしまった……とは、洋介は思いもしなかったでしょう。

最後に、洋介が「お前は何も悪くなかった」「これまで一人でがんばってきた」と田代に言ってくれて本当によかったです。
この悲しい出来事を得て、愛子と田代は、お互いをよく知ろうとするのでしょう。その幸せを祈りたくなりました。

ちなみに、原作小説では、愛子が殺人犯に殺された被害女性が「幼稚園の先生」だったために、殺人犯を許せなかったと語る場面もありました。ここはぜひ読んでみてほしいです。


〜沖縄の物語〜

辰哉(佐久本宝)は、「俺はいつでもお前の味方になってやるからな」と言ってくれた田中(森山未來)を信じていました。
しかし辰哉は、本性を剥き出しにした田中を殺してしまいます。
田中は壁に醜悪な文まで残していて、それを辰哉は必死に消そうとしていました。

辰哉がこうなったのは、泉(広瀬すず)がレイプされた現場で何もできなかった、恥ずべき自分の味方になってくれると、「まったく疑っていなかったから」です。
それはただの言葉。どこにも、根拠なんてなかったのに……。

広瀬すずは信じていた?<泉も、田中のことを信じていたかも……


〜信じる〜

東京の物語において、優馬(妻夫木聡)が「俺、お前のことを全然信用していないからな。物が無くなったりしたらすぐに警察に通報するし」などと言っていたことに対して、直人(綾野剛)は「何か言ってほしいんだろ?ありがとう、信じてくれて」と返していました。

「信じていない」と言ったことに対して「信じてくれてありがとう」と返すなんて、ちぐはぐのように思えますが、じつはそうではありません。

なぜなら、優馬は直人を疑おうとしていた、転じて「知ろうとしていた」のですから。
何も考えたり聞いたりもせずに信じるというのは、知る努力をしないということ、ある意味では信じていないのと同義です。

信じるためには、疑う必要があるのでしょう。
沖縄の物語で、辰哉が田中を知ろうとしていれば、疑おうとしていれば、この悲劇は起きなかったのかもしれないのに……。


〜怒り〜

本作のタイトル「怒り」は、以下の登場人物の感情を表していると考えられます。
それはすべて、自分への怒りなのです。

人を信じることができなかった自分への怒り:東京の優馬、千葉の愛子と洋介
簡単に人を信じてしまった自分への怒り:沖縄の辰哉
殺人衝動や破壊願望を抑えられない自分への怒り:沖縄の田中
何もできない自分への怒り:沖縄の泉

しかし、泉は最後に沖縄の海に向かって、怒りの感情をあらわにして、叫びます。
その声は誰にも届かず、無意味な行動のようでしたが……怒りを放った泉は走り出し、どこか開放されたようにも見えました

沖縄でのシュプレヒコール(デモ)のように、怒りの感情は何も変えられない、ひょっとすると価値のないものかもしれません。
しかし、そうした怒りが、救いをもたらすきっかけになるかもしれない……そうした希望をも感じられました。

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(C)2016映画「怒り」製作委員会

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

2016-09-27 : 映画感想 : コメント : 12 : トラックバック : 0
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No title
いつもご苦労様です。
最近良い映画がやりすぎているので記事の更新が大変じゃないですか?
無理せずのんびり待っていますので体に気を付けてください。俺はお前の味方にだったらいつでもなるからな。


>映画の序盤、沖縄の昼→千葉の夜→沖縄の昼(同じ)という、明らかに時間軸が前後している編集があったことは気になりました。
自分はこの編集のおかげで実は3人が同一人物で、同時並行の物語ではなく、山神が順番に顔を整形してるのかなとミスリードさせられましたw 東京→千葉→沖縄を転々としてるみたいな。
そういうミスリードのためと思えば個人的には好きな編集でした。

>わずか17歳の広瀬すずがこの演技をやり遂げたというのもすさまじいですね。
自分の周りが「すずちゃんにこんな役させるなんて許せん!」みたいなやつが居て微笑ましかったですw
自分は女優としての彼女にとってプラスだったと思います。新境地を開かないといつまでも「四月は君の嘘」みたいな役ばっかじゃもったいないですしね。

>〜東京の物語〜
>観客はほんのちょっとだけの「情報」や、登場人物の「些細な言動やしぐさや特徴」をもとに、その人物を信じるかどうかに迫られるのです。
個人的に一番好きなのは東京ですね。綾野剛が弁当の傾きを直すシーンが特にお気に入りで、自分はこのしぐさで直人を信じてしまいましたw
上手く言えないのですが、安くて大盛りの弁当を買ってそこに思いれを置く直人の姿は経済的困窮に苦しめられた哀愁のようなものを感じてしまい、BL好きな方々が発狂するのも納得してしまいましたw これで直人が山神だったら自分はどうなっていたんだろうw

>この悲しい出来事を得て、愛子と田代は、お互いをよく知ろうとするのでしょう。その幸せを祈りたくなりました。
この映画の憎いところは救いの余地も残してくれるところですよね。人は簡単に信じたり裏切ったりしてしまうけど、後悔しやり直せるかもしれない。ただ重いだけじゃないところが良かったです。

>〜沖縄の物語〜
佐久本宝君めちゃめちゃ良かったですね。何気ない存在感だった彼が残酷な色に染められていくのは圧巻でした。ポスターに載せてあげて・・・。

>〜怒り〜
この映画の怒りは全て自分に向けられているんですよね。憎しみや恨みではない怒り。自分に向けられるからやり場がない。
その感情の波に耐えきれなくなる演技を役者陣が見事に体現していましたね。
そうして感情を押し出したあとに、少しだけポジティブなものを残してくれる。自分も泣いたあと、何故か力強いものを感じ劇場を後にしました。
今年の邦画のレベルの高さをまたしても裏付ける素晴らしい作品でした。
2016-09-28 00:29 : 蝮のゼンゾウ URL : 編集
Re: No title
> 俺はお前の味方にだったらいつでもなるからな。

やめてよ!疑うでしょうが!(笑)

> >映画の序盤、沖縄の昼→千葉の夜→沖縄の昼(同じ)という、明らかに時間軸が前後している編集があったことは気になりました。
> 自分はこの編集のおかげで実は3人が同一人物で、同時並行の物語ではなく、山神が順番に顔を整形してるのかなとミスリードさせられましたw 東京→千葉→沖縄を転々としてるみたいな。
> そういうミスリードのためと思えば個人的には好きな編集でした。

その発想はなかった!

> >〜東京の物語〜
> >観客はほんのちょっとだけの「情報」や、登場人物の「些細な言動やしぐさや特徴」をもとに、その人物を信じるかどうかに迫られるのです。
> 個人的に一番好きなのは東京ですね。綾野剛が弁当の傾きを直すシーンが特にお気に入りで、自分はこのしぐさで直人を信じてしまいましたw
> 上手く言えないのですが、安くて大盛りの弁当を買ってそこに思いれを置く直人の姿は経済的困窮に苦しめられた哀愁のようなものを感じてしまい、BL好きな方々が発狂するのも納得してしまいましたw これで直人が山神だったら自分はどうなっていたんだろうw

そうそう、そのシーンも萌え〜でした。


> >〜沖縄の物語〜
> 佐久本宝君めちゃめちゃ良かったですね。何気ない存在感だった彼が残酷な色に染められていくのは圧巻でした。ポスターに載せてあげて・・・。

ひとりだけ新人の子なのですが、おっしゃる通りで・・・彼の存在感が本当に宝でした(この名前だけに)
ポスターで「これ誰だろう」というのも興味を引くとおもうんですけどね。

> >〜怒り〜
> この映画の怒りは全て自分に向けられているんですよね。憎しみや恨みではない怒り。自分に向けられるからやり場がない。
> その感情の波に耐えきれなくなる演技を役者陣が見事に体現していましたね。

そうそう、自分自身への怒りなんですよね。ちょっとだけ追記をさせてください。

2016-09-28 00:36 : ヒナタカ URL : 編集
No title
8日に試写会で観てその後原作を読んでる途中です(読んでから書こうと思いましたがどれぐらい鮮明に覚えてるかにもよるので…)。
>信じるって難しい(いや、簡単かも)
>>まさにそれですよね…。千葉・東京の「疑わしいけどそれでも信じたい、けど信じ切れなかった。そんな自分に対しての『怒り』なんだ」もですが沖縄の「最後まで信じていた、けどそれを悉く打ち砕いてしまった田中に対する『怒り』なんだ」と自分は解釈していました。
それだけに辰哉が抱いていた怒りは盲目的に信じてしまった自分自身に向けられていたのかもしれない、と聞いた時に「しまったそういうことだったのか…!」ってなったとともに泉の無力な自分に対する怒りと田中の衝動を抑えきれない自分への怒りは「何で気づかなかったんだろう」って思いました。
で、それを聞いたときにパンフレットで森山未來さんと佐久本宝君のコメントを思い出して「田中は止めてほしかったんだろうなあ…。衝動を止められない怒りを孕んでいる自分を」と思いました(森山さん曰く「泉の強姦の時点で何かが崩壊してしまったのかもしれない」、佐久本君曰く「田中は言いながら自分自身の言葉に怯えていたのかもしれない」「刺殺したけどそれでもなお田中を嫌いになっていないのかもしれない」とのこと)。
>本作は、BL(ボーイズラブ)な要素で大いにSNS上で話題を集めているようです。
>>3つあるうちの1つということもあり他と比べて飛び抜けて印象に残ってるというわけではないにせよ、予告編の時点で「BL要素あるのね」ってなった(別に悪い意味でではありません)ので「あ、やはりあれは話題になるんだね」って思いました。
>この機会に『悪人』を観てみたのですが……好きな人にはごめんなさい、これはあまり肯定できる内容ではなかったです。
>>『悪人』は観たいと思いつつ結局観られなかった想い出があるのですが、公開当時に新聞記事で簡単な作品解説があってそれを見た時「これって加害者である主人公が善で被害者が悪という感じで描かれそうだなあ」と感じていたのでヒナタカさんの短い感想を聞いたときに「あの時の推測は当たってたのかもしれないなあ」と思いました。
とはいえ実際に観ない事には何とも言えないので機会を見つけて観賞してそれから判断したいものです。
>終盤ギリギリまで「信じた人が殺人犯か否か」ということが明確にされないため、ずーっと「この人を信じていいのか」という疑心暗鬼に追い込んでくれるからです。
これは、推理小説によくある「犯人が誰かを当てる」という要素と同じようで、ちょっと違います。
観客はほんのちょっとだけの「情報」や、登場人物の「些細な言動やしぐさや特徴」をもとに、その人物を信じるかどうかに迫られるのです。
>>原作未読ということもあってなのかは定かではないですが、3人とも怪しくて「いったい誰が真犯人なんだ?」「真犯人以外の二人の疑念はどう昇華されるんだ?」ってなったのが未だに記憶にあります(しかも最終的に「田中っぽいけど田代だろうなあ」と予想してしまっていたので…)。
>東京のエピソードで、直人(綾野剛)が「心臓の病を持っていた」ことにまったく伏線がないのはかなり気になりました
>>あまり気にしてなかったですが確かに唐突ですよね…。あと論点はずれてるでしょうが、何かしら明かしたくない理由はあったのだろうけど明かした方がよかったんじゃないかなあと思います。
>本作は画作りが恐ろしく上手いのですが、優馬(妻夫木聡)が直人(綾野剛)を無理やり犯すハッテン場と、泉(広瀬すず)がレイプされてしまう沖縄の裏通りのどちらもが青や紫に薄気味悪く光っている画になっているんですよ。
この画だけで起こることがわかるので、まさか……やめてくれ……という気持ちでいっぱいになりました。
(沖縄では実際に米兵のレイプ事件が頻発していることも知っていたので)
>>そうかそれが理由だったんですね。なんとなく後がどうなるかが想像できたものの何故想像できたのか自分でもわからなかったので。
沖縄の強姦に関しては現実でも起きてるだけに「マジでやめてくれ…」ってなりましたが演じた広瀬すずさんもすげえな…ってなります(監督も述べてるように正解が分からないだけに彼女なりにいろいろ考えたんだろうことは間違いないかと)。
>優馬(妻夫木聡)は、警察の電話で「大西直人さんをご存知ですか?」と聞いて、殺人犯と断定されたと勘違いしてしまい、「知りません」と電話を切ってしまいます。
本当は、警察は直人が公園で亡くなっていることを知らせようとしただけなのに……。
(ここで、沖縄の田中(森山未來)がカバンを放り投げている画を挟むのがうまい。優馬が直人の持ち物を投げまくったのかと、いい意味で勘違いしてしまいます)
>>相手を信じたいからこそ「知りません」と切ったけどそれは信じ切れてなかったから…。しかも相手が「お前を疑ってる」という旨を述べてもなお「疑ってるんじゃなくて信じてるんだろ」「信じてくれてありがとう」と自分のことを信じていただけになおの事信じ切れなかった自分がさぞ悔しかっただろうなあ…。
何とも哀しいです。
あと田中が鞄を放り投げるシーンは自分も同じことを感じました。
>何も考えたり聞いたりもせずに信じるというのは、知る努力をしないということ、ある意味では信じていないのと同義です。
信じるためには、疑う必要があるのでしょう。
沖縄の物語で、辰哉が田中を知ろうとしていれば、疑おうとしていれば、この悲劇は起きなかったのかもしれないのに……。
>>後の祭りだけどホントにそうですよね…。
盲目的に信じるというのは一見いいことのようにも見えてその実愚かで怖い、と漠然と思ったことはありますがこうやって見ると漠然とではない形で見せつけられた感じがします。
その意味では「盲目的に信じてしまった自分への怒り」は「相手を信じてなかった自分への怒り」「愚かな自分への怒り」ってことなんだなあ…。
>辰哉(佐久本宝)は、「俺はいつでもお前の味方になってやるからな」と言ってくれた田中(森山未來)を信じていました。
しかし、辰哉は、本性を剥き出しにしたうえ、壁に醜悪な文を書いていた田中を許すことができず、殺してしまいます。
>>これに関しては自分も観たとき「田中ぇ…」ってなったのですが森山さんと佐久本くんのコメを聞く限り「もしかしたら『味方になってやる』というのは建前だけでなく本音の部分ももしかしたらあったのかもしれない、田中は信じてほしいと思っていたところも多少あったのかもしれない」とふと思いました。
尤も、明確に描かれてるわけではないので自分の単なる憶測にすぎませんしやはり辰哉と泉に対しては本性ではなく堪えられてた建前で接してたのでしょうけど。その建前も泉の強姦で崩壊したから客の鞄を投げるわ旅館で物壊しまくるわ…ってことなのでしょうかね。
>愛子(宮崎あおい)は、「田代君(松山ケンイチ)は悪くないんだよ、親の借金を背負わされて逃げてきたんだよ」と父の洋介(渡辺謙)に訴えていたはずなのに……消えてしまった田代を警察に通報したのは、ほかならぬ愛子でした。
彼女は田代君のすべてを肯定していたけど、それは「知ろうとしていたかった」ということでもあります。
だから、彼が「戻ってこなかった」という事実だけでも、彼のことを信じられなくなったのでしょう。
>>辰哉と違って受動的・盲目的ではなかったからこそ…ってところですかね。
>最後に、洋介が「お前は何も悪くなかった」「これまで一人でがんばってきた」と田代に言ってくれて本当によかったです。
この悲しい出来事を得て、愛子と田代は、お互いをよく知ろうとするのでしょう。その幸せを祈りたくなりました。
>>あの二人に関しては明確に希望が見えてただけに「よかったなあ…」と思います。
あとは東京・沖縄の方も何処か後味が悪く見えてその実この先はよくなるかもしれない余地が残ってるのがまさに救いです。

なんか被ってしまった感はありますが以上が自分の想いです。
2016-09-28 01:29 : いいこま URL : 編集
原作未読で観賞しましたが、重たい映画でしたし、苦しかったです。
個人的に印象的だったのは千葉パートでの愛子が父親に田代の素性を話したあとに「泣いても誰も助けてくれないんだよ」という台詞(記憶違いだったらすみません)が、沖縄パートの泉の状況とリンクしているように感じ心に刺さりました。
不満点とするなら、綾野剛パートの急な展開と、渡辺謙がどう見ても漁港勤めの親父に見えないところですかね。
2016-09-28 02:32 : オープンリーチ URL : 編集
No title
李相日(りさんいる)では?
2016-09-28 23:02 : 若家陸 URL : 編集
撮影+照明
私も映像が素晴らしいと思いました。
これはおそらく、李組初参加の照明技師・中村裕樹氏の力が大きいように思いました。本作も光源を取り入れたカットなど印象に残りました。

勝手な印象ですが、中村氏は岩井俊二監督のフィルム時代の作品の照明をされていますが、「君の名は。」は多分にこの頃の岩井作品の映像のルックに影響を受けているのか、「君の名は。」と「怒り」の映像の中に近い雰囲気を感じました。(たまたま両作をハシゴしたので…)
2016-10-02 16:16 : にんべん URL : 編集
No title
心にはまる解説、ありがとうございました。
この文章を読んで、映画怒りが私の中で一段と深く大切な作品になりました。
疑うことは、知る努力…。
このひと言も、誰かの口を通して世の中に出してもらえるのを待っていたことでしょう。
2016-10-02 17:11 : URL : 編集
辰哉が田中を刺すシーンですが、壁の文を見て許せず刺したのではなく、刺した後に壁の文を見つけていたと思います。
信じていたのにこれまでの話(公園での実際の田中の行動、心情等)を聞いて田中を許せなかった。そして泉の為にしてあげられる事がないとずっと悩んでいた辰哉にとって、田中に対して刃を向ける事が唯一の報いかのように思ったのではないかと感じました。刺した後に壁の文を見て、泉の名前が書かれていた訳ではないものの、誰にも彼女の出来事を何一つ知られない為に必死に消そうと隠そうとする彼がとても印象的でした。そして、警察でも辰哉は田中を殺した動機について、「事件の事は知らなかった。信じていたのに許せなかった。」とだけ話していました。最後まで彼は泉の出来事を隠そうとし、守れなかったけれど彼女を守ろうとしていたと…。
警察からの電話で優馬は直人を守ろうと彼の物を全て処分し、大切な遺品を全て失いました。
洋平は愛子を守ろうと田代を疑う事で、彼女は彼を通報してしまい結果的に愛子と田代を追い込んでしまいます。
"信じるとは"という事ともう一つ、"大切な人を守るとは"そんな事も考えさせられました。信じきれないけれど信じたい。守れないけれど守りたい。

長文失礼致しました。
2016-10-03 23:51 : まりも URL : 編集
Re: タイトルなし
> 辰哉が田中を刺すシーンですが、壁の文を見て許せず刺したのではなく、刺した後に壁の文を見つけていたと思います。

その通りですね、修正いたします。
守れなかったけど彼女を守ろうとしていた・・・おっしゃるとおりで、 辰哉の感情が痛いほど伝わってきました。
2016-10-04 00:26 : ヒナタカ URL : 編集
度々失礼致します
すみません…ヒナタカさんに無理難題なお願いがあるのですが…。
鑑賞後のこの心のずどーんという重みと向き合う、消化するアイディアを追記して頂けると…幸いです…。
田中と米兵を殴りに行きたい…。

坂本龍一が教授と呼ばれる所以がわかった気がします…。理論の音楽…。
2016-10-04 01:31 : まりも URL : 編集
No title
直人が優馬の母に会いたがったのは、死を宣告された者どうしのシンパシーからでは?
あと、田中のバックパックを泉が背負う場面では、「オレの人生重いぜ。無邪気なお前に背負えるか?」と言っているように感じました。
2016-10-09 10:26 : 本屋にいるゾンビ URL : 編集
No title
いつもレビュー楽しみにしてます。
「怒り」のレビューも、そうだなあ、なるほどなあと興味深く読みました。

一つ知っておいていただけたら嬉しいことがあります。
BLと同性愛は違う、ということを。
BLというのは「腐女子(や腐男子)が考えた同性愛の物語」であり、リアルの同性愛やゲイの方たちとは存在や意味合いが違います。
ゲイの方の中には「BLなんかと一緒くたにしないでほしい」と思う方もいますし、腐女子の中にも「リアルとフィクションは違うから一緒にしないでほしい」と思っている者もいます。
俳優の演技に萌えることはどちらなのかというのは難しい問題ですが、腐女子である自分からすると「怒り」の二人の関係を「BL」と称されることには違和感があります。
(少女漫画的な描き方であったという意味で、BL的であったことには同意します)

だからどうこうしろ、ということではありません。
ただ「BL」という言葉一つにも、そのような背景があることを知っていただければ嬉しいです。
2016-10-11 00:05 : 通りすがりの腐女子 URL : 編集
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<2016年下半期>
『聲(こえ)の形』
『スーサイド・スクワッド』
『キング・オブ・エジプト』(吹き替え版)
『君の名は。』
『ゴーストバスターズ(2016)』
『シン・ゴジラ』
『ファインディング・ドリー』

<2016年上半期>
『葛城事件』
『TOO YOUNG TO DIE!』
『貞子 vs 伽椰子』
『ヒメアノ~ル』
『デッドプール』
『アイアムアヒーロー』
『ズートピア』
『クレしん ユメミーワールド』
『バットマン vs スーパーマン』
『ドラえもん 新・日本誕生』
『X-ミッション』
『オデッセイ』

<2015年下半期>
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』
『ハーモニー』
『ガールズ&パンツァー 劇場版』
『PAN』
『ギャラクシー街道』
『UFO学園の秘密』
『ファンタスティック・フォー』
『進撃の巨人 後編』
『キングスマン』
『リアル鬼ごっこ(2015)』
『バケモノの子』

<2015年上半期>
『極道大戦争』
『マッドマックス4』
『チャッピー』
『ワイルド・スピード7』
『バードマン』
『恋する♡ヴァンパイア』
『イミテーション・ゲーム』
『イントゥ・ザ・ウッズ』
『アメリカン・スナイパー』

<2014年下半期>
『ベイマックス』
『ゴーン・ガール』
『寄生獣 PART1』
『紙の月』
『近キョリ恋愛』
『るろうに剣心 伝説の最期編』
『複製された男』
『思い出のマーニー』

<2014年上半期>
『渇き。』
『MONSTERZ』
『チョコレートドーナツ』
『LEGO® ムービー』
『LIFE!』
『アデル、ブルーは熱い色』

<2013年下半期公開>
『ゼロ・グラビティ』
『かぐや姫の物語』
『ウルヴァリン:SAMURAI』
『貞子3D2』
『ガッチャマン』
『劇場版銀魂 完結篇』
『モンスターズ・ユニバーシティ』
『サイレントヒル:リベレーション3D』

<2013年上半期公開>
『箱入り息子の恋』
『G.I.ジョー バック2リベンジ』
『藁の楯』
『クラウドアトラス』
『横道世之介』
『脳男』
『ライフ・オブ・パイ』

<2012年下半期公開>
『レ・ミゼラブル』
『悪の教典』
『バイオハザードV』
『るろうに剣心』
『プロメテウス』
『桐島、部活やめるってよ』
『アナザー Another』
『ヘルタースケルター』

<2012年上半期公開>
『スノーホワイト』
『ファイナル・ジャッジメント』
『メン・イン・ブラック3』
『貞子3D』
『TIME/タイム』
『ドラゴンタトゥーの女』

<2011年下半期公開>
『ミッション:インポッシブル4』
『アントキノイノチ』
『ミッション:8ミニッツ』
『ツレがうつになりまして』
『トランスフォーマー3』
『コクリコ坂から』

<2011年上半期公開>
『ブラック・スワン』
『八日目の蝉』
『手塚治虫のブッダ』
『わたしを離さないで』
『パラノーマル・アクティビティ2』

<2010年公開作品>
『ソウ ザ・ファイナル3D』
『リミット』

<そのほか>
漫画『花のズボラ飯』全話レビュー

守銭奴すぎるバンナムの課金ゲーム

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