『高慢と偏見とゾンビ』原点にリスペクトしすぎ(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
個人的お気に入り度:6/10
一言感想:マジメか!
あらすじ
18世紀のイギリス、その地では大量のゾンビがはびこっており、リジー(リリー・ジェームズ)ら5人姉妹は少林寺拳法とナイフ術を駆使してゾンビと戦う毎日を過ごしていた。
ある日、リジーは大富豪の騎士であるダーシー(サム・ライリー)と出会うが、その高慢な態度にリジーは苛立ちをつのらせる。
ジェーン・オースティンによる名著『高慢と偏見』の物語にゾンビを登場させちゃった愉快な映画です。
この1行でもう紹介を終わってもいい気がします。
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今回は、詳しい解説と見所を以下に書きました↓
<『高慢と偏見とゾンビ』をもっと楽しむための5つのポイント>
要するに、
本作はほとんど『高慢と偏見』まんまであり、
真面目な恋愛話に半ば無理やりゾンビがねじ込まれるのが楽しい、
『プライドと偏見』を観ておくとおもしろさが5割増しする
ということですよ!
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さてさて、上の記事では存分に褒めたので(そんなに褒めていない気もするけど)で、こちらではちょっと残念だったことを書きます。
何より、ゾンビ映画なのに血しぶきや臓物がほとんど出てこないんですよね。
記事に書いた通り、B吸映画にせずに格調高く仕上げたのは本作の美点なのですが、やはり自分はアホアホグログロ悪趣味B吸ゾンビ映画のほうが好きなのだと再認識しました(身も蓋もない発言)。
展開も『高慢と偏見』をなぞりすぎるがあまり、パンチ力が足りません。
ゾンビ映画だったらこれもほしいなーあれもあるといいなーという希望が、メロドラマが主体であるために叶えられないんですよね。
それでいて、せっかく張った伏線が生かされていないところもあるし……もう少しハジけてくれてもいいんだけどな。
自分がこの映画で一番好きだったのは、ゾンビそのものではなく、豪華な衣装に身を包んだ女性たちがナイフを脚に忍ばせたり、女性たちのお茶会かと思っていたらライフルを磨いていたり、会話をしながらカンフーバトルをするといった狂った(超褒めています)世界観だったりします。
オープニングでの舞台説明は頭がクラクラするくらいアホらしい(超褒めています)ので最高だったぜ!

あ、そうそう、作中では日本語を話すシーンがひとつだけあるのですが、かなり高度なヒアリング能力が問われます。
まあ字幕はあるんだけど、それがなかったらマジで何言ってんだかわかんないよ。
そんなわけで、そこそこ以上にはおすすめ。
ゾンビ好きな男の子と、ラブストーリー好きな女の子の両方の需要を満たせるので、デートにもどうぞ。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓ すぐ終わります。
〜野暮な不満点〜
片目がアイパッチで、そのゾンビへの無双っぷりが伝説化していたというオイシすぎるキャラのキャサリン夫人が、1秒たりとも戦わないのは残念だよ!
まあ彼女の部下のムキムキ男VS主人公のリジーも楽しかったんですけどね。
このバトルは、姉妹が談笑しながらカンフーの練習をしていた序盤のシーンが伏線となっています。
あと、序盤も序盤にヘッドショットでぶっ殺された女性ゾンビが何かを言おうとしていましたが、その内容もわからずじまいですよね。まあこれは「ゾンビたちがコミュニティを作っているから、共存の道を探そう」と言おうとしていたのでしょう。
※原作だとウィカムとダーシーの不都合な過去を知ってる人らしいです。
ゾンビ映画でよくある「知人や愛している人がゾンビになっちゃった!」→「殺すしか道がなくなる!」というオイシイ展開がほぼ皆無なのも残念。
オープニングおよび、中盤で馬車をひっくり返してゾンビになっていた女性は一応そういう話だけど、人間だった時の印象がほぼないんですよね。
まあ元が『高慢と偏見』で、筋をほとんど変えていないからしょうがないよね。
〜6人もいるのかよ!〜
高慢なダーシーは「多才な女性には6人しか会ったことがない」というセリフから続く、多彩な女性の条件の1つとして「京都で武術を学んだ女性」を挙げていました。19世紀のイギリスにそんな女性がいるかよ!いまでもいねえよ!(まあこのゾンビ設定だったらいそうな気もするけど)
この言葉に案の定リジーが「1人いても不思議だわ」と言っていましたけど、あんたたち姉妹も少林寺拳法を繰り出しているのでツッコミに説得力がないですね。
〜告白バトル(生死に関わる)〜
爆笑したのは、ダーシーの告白に怒ったリジーが見事な前蹴りをかまして、罵りあいながらの剣術バトルが勃発することですね。
クライマックスでリジーはダーシーに「あなたは命の恩人だわ」と言うのですけど、あんたら告白のとき殺し合いしていたやんけ。
ダーシーがリジーをなんとしてでも守るために、「教会はもう壊されている」とウソを言って、1人だけで誘拐された妹を助けに行こうとしたのはグッと来たんですけどね。
ラスト(エンドロール後すぐ)のオチは、Wカップルの結婚式場にゾンビ軍団がやってくるというものでした。
え?ここで終わるの?そこが一番観たいじゃん!(こうなると『高慢と偏見』が関係なくなります)
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自分はこの点が最大の不満要素です。元ネタへのリスペクトがあるのは結構ですが、ゾンビが出てきても結局オリジナルのストーリーラインに回帰してしまうので、企画として腰が引けてる印象しか残らなかったです。
例えばジェーンがビングリーに招かれる道中で風邪をひく件りが、ゾンビに襲われて負傷したという風に改変されていますが、ジェーンがゾンビになるわけでもなく普通に回復して家に帰ってしまう。がっかりです。
個人的にはここでジェーンがゾンビになって欲しかったですね。
そしたら「偏見」の部分を「ゾンビに対する偏見」と解釈していた中盤部分の展開を膨らませることが出来、この映画ならではの面白さを追求できたのではないかと思います。
マッシュアップで全く新しい映画になっておらず、「高慢と偏見」を軸として余計なものを接ぎ木してる印象しか残らなかったのが残念でした。
>〜野暮な不満点〜
アクション要素も正直不満だらけでしたね。
最初の5姉妹のゾンビ退治シーンは悪くなかったですが、あそこももっとゾンビの姿を映したり、俯瞰したショットにしたりして迫力ある絵にできたと思います。
エンドロール後のゾンビ大量襲来シーンも、あの後の大乱闘戦を本編でちゃんとやれよと思いました。
キャサリン夫人の件もそうですが、作り手のアクションを撮ることへの逃げの姿勢しか感じなかったです。やる気あんのかよと。
>〜告白バトル(生死に関わる)〜
このシーンはリリー・ジェームズのサービスシーンも相まって良かったですね。
ただ次のカットですぐダーシーの釈明の手紙を受け取っているのはいただけなかったです。
「プライドと偏見」だとダーシーの求婚を断ったリジーが鏡を見つめて一日を追えるシーンがちゃんとあって、彼らが結ばれたくてもそうならない悲痛さと時間の長さを表現するタメ演出が良かったと思います。じゃないと最後に結ばれるカタルシスに繋がらないような気がします。
結局オリジナルへ気を使っている割にはそういう肝の部分を外していて真面目にもバカにもなれない中途半端さにもどかしさを感じてしまいました。
これなら「プライドと偏見」と適当なゾンビ映画を小鉢で別々に味わった方が有意義だった気がします。
>一言感想:マジメか!
ヒナタカさん。一言過ぎる!ほんとコレです。冒頭の貴婦人の習い事に「戦闘技能」がある時点でもう・・・オラわくわくッスぞ!だったのに。
>原点にリスペクトしすぎ
恋愛、結婚、財産相続、身内のダメ人間による厄介事・・・と言った原作にあった人生の諸問題に「ゾンビ」が加わっただけですね。しかも皆殺しにすれば片付くゾンビが一番なんちゃない事に思えるんですけど・・・。
>~野暮な不満点~
>キャサリン夫人
本作一番のガッカリ所です!
>序盤も序盤にヘッドショットでぶっ殺された女性ゾンビが何かを言おうとしていましたが、
原作だとウィカムとダーシーの不都合な過去を知ってる人らしいですね。
>ゾンビたちがコミュニティを作っているから、共存の道を探そう
人肉でなく脳な所が『バタリアン』知性が残っていて、代替品(豚の脳)で飢餓感を我慢出来ちゃったりな所に『マーベルゾンビーズ』を思い出しますね。
>~6人もいるのかよ!~
リジー級のアマゾネスが6人も居れば全欧のゾンビを半年で殲滅させられそうな気が・・・。
つーか、そういうのが観たかったんですよォ!!
>~告白バトル(生死に関わる)~
ガチバトル過ぎて爆笑してしまいました。ちなみに、ウザカワ残念キャラのコリンズ牧師が入って来た所で他のお客さんもクスクスしてましたよ!
>ラスト(エンドロール後すぐ)のオチは、Wカップルの結婚式場にゾンビ軍団がやってくるというものでした。
ウィカムさんはあの後「夫婦初めての共同作業」になってしまったんでしょうね・・・。
だからおとなしく成仏しておけと・・・。
> ヒナタカさん。一言過ぎる!ほんとコレです。冒頭の貴婦人の習い事に「戦闘技能」がある時点でもう・・・オラわくわくッスぞ!だったのに。
やっぱりそうですよねー。
> >原点にリスペクトしすぎ
> 恋愛、結婚、財産相続、身内のダメ人間による厄介事・・・と言った原作にあった人生の諸問題に「ゾンビ」が加わっただけですね。しかも皆殺しにすれば片付くゾンビが一番なんちゃない事に思えるんですけど・・・。
> >序盤も序盤にヘッドショットでぶっ殺された女性ゾンビが何かを言おうとしていましたが、
> 原作だとウィカムとダーシーの不都合な過去を知ってる人らしいですね。
そうなんですか!ダーシーのヘッドショットは口封じだったの?w追記させてください。
> >ゾンビたちがコミュニティを作っているから、共存の道を探そう
> 人肉でなく脳な所が『バタリアン』知性が残っていて、代替品(豚の脳)で飢餓感を我慢出来ちゃったりな所に『マーベルゾンビーズ』を思い出しますね。
確かにバタリアンとマーベルゾンビだ!
> ガチバトル過ぎて爆笑してしまいました。ちなみに、ウザカワ残念キャラのコリンズ牧師が入って来た所で他のお客さんもクスクスしてましたよ!
コリンズかわいいよコリンズ
> 例えばジェーンがビングリーに招かれる道中で風邪をひく件りが、ゾンビに襲われて負傷したという風に改変されていますが、ジェーンがゾンビになるわけでもなく普通に回復して家に帰ってしまう。がっかりです。
> 個人的にはここでジェーンがゾンビになって欲しかったですね。
> そしたら「偏見」の部分を「ゾンビに対する偏見」と解釈していた中盤部分の展開を膨らませることが出来、この映画ならではの面白さを追求できたのではないかと思います。
本当だよ!
原案の8割がそのままだった原作小説から、もっと大胆にアレンジしてもよかったのにね。