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吃音者の王様が勇気をくれる「英国王のスピーチ」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー

今日の映画感想は英国王のスピーチです。


個人的お気に入り度:8/10

一言感想:地味でほのぼのとした人間描写、それが心に響く作品。


あらすじ


ヨーク公(コリン・ファース)には悩みがあった。
それは人前で上手く話すことのできない吃音(きつおん)という障害。
治療のため、夫人(ヘレナ・ボナム・カーター)とともに診療室を渡り歩くが、一向に改善は見られない。
そんな中、言語聴覚士のライオネル・ローグ(ジェフリー・ラッシュ)と出会う。
彼はユニークな方法でヨーク公の治療をはじめるのだが・・





う~ん素晴らしい!
役者の演技と、堅実な構成が見事。
言語聴覚士や、実際に障害のある方が勇気をもらえることも間違いないでしょう。

主演のコリン・ファースの吃音者の演技も上手いのですが、自分はジェフリー・ラッシュからあふれ出る人柄の良さが大好きです。

大筋は↑のあらすじのように、主人公が吃音の改善をはかるために奮闘する物語なのですが、
王室内での兄との確執、
治療を行う側の人間描写、
主人公の家族の描写
などが脱線しない程度に盛り込まれています。

先日にアカデミー賞4冠を受賞し、この先も注目をあつめるでしょう。
そうなると「どんな名作なんだろう?」と期待値があがってしまうのが世の常だと思いますが、この映画はひたすらに地味で、展開も王道と言えるものです。刺激的な展開を期待すると肩すかしかもしれません。

しかし映画は「大号泣の感動!」などではない、じんわりと心に響く感動を提供してくれます。
先入観を持たずに人間ドラマを楽しむと、心地よい満足感が得られると思います。

ほのぼのとした、可愛らしい作品です。
老若男女におすすめします。



Ps.日本版の広告にある「英国史上、最も内気な王」というのはちょっと違うと思います
内気と吃音障害は全くもって別のものですし、映画を観ると主人公は内気でないばかりか、むしろ感情を抑えきれない激情の人物です。
それとは関係はありませんが、他にも「自閉症」という言葉もよく「ひきこもり」と勘違いされるケースが多くありました。
広く宣伝をする方たちが、誤解を与えるような表記をするのは止めてほしいものです。


Ps2.言語聴覚士の仕事は吃音だけでなく、失語症や呑み込みが上手くできない障害の治療など多岐にわたっています
他にも言語聴覚士が登場する映画として「潜水服は蝶の夢を見る」があります。

こちらも素晴らしい作品なので、言語聴覚士に興味を持った方は是非ご覧になってほしいです。
また本でしたら<こちら>(「発達障害」がテーマ)がおすすめです。


以下、ネタバレです。結末に触れています!↓















~ライオネル側の描写~

・彼は役者のオーディションを受け続けていた。
このことを後半にバーティ(あえてこの呼び名にします)が罵ってしまうのが切ない。
治療をする側の描写もしっかりしていのが印象的でした。

・ライオネルは資格を持たない言語聴覚の専門家で、経験は戦争時代に積んだものだった。
表札に「ドクター」の表記がない、という伏線も上手く感じました。
今のような資格が重要視される世の中だと、彼の言う「経験」こそが財産であると、より感じます。

・「彼は王になる資質があるのに・・」というライオネルに対して、彼の妻は「あなたがそう望んでいるだけ」と言う。
このシーンも上手い。これがあってこそ、後にあるバーティの泣く姿に共感を覚えます。

・ライオネルは王座に座り「こんなものはただのイスだ」と言う。
このシーンも大好き。
「私は王だぞ!」と癇癪を起こすバーティに対して「あなたは誰よりも忍耐強く勇敢だ」と言う。冷静かつ、相手のことを思いやる腰の据わった人間です。
この映画で一番好きになれたのは、間違いなくこのライオネルでした。



~バーティの娘たち~

・王に即位した父に対して、抱擁ではなく、おじぎをする。
これが一番印象に残ったシーンでした。それでもバーティは娘にちょっと手を伸ばそうとしていました。細かい心理描写に妥協がありません。



~ヨーク夫人~

・前述の「ぼくは王じゃない」と嘆くバーティに対しての言葉。
夫人は「王族の暮らしはいやだったの、自分の時間が持てなくなりそうで。でもあなたと会って思ったわ。すてきな吃音、幸せになれそうって
もうこのシーンが素敵すぎてもう一度観たくなってしまいます。



~兄・デイビッド~

・周りが望んでいない結婚をし、王位を弟のバーティに渡す。
バーティの吃音を真似してからかうような人間ですが、Wikipediaによると実際よりもよりバーティに敵対する人物として描かれているらしいです。
彼なりに葛藤する場面もありましたし、そんなシーンがあっても自分にはあまり悪いような人間には思えませんでした。



~バーティの治療~

・音楽を聴きながらしゃべると、どもっていない。
他にも拳を打ちながら口を震わせたり、転がったりするユニークな治療法を見ているだけでも楽しい。
彼がレコードにとった自分の声を聞くシーン(それを夫人が見ている)はカタルシスがあります。

・さらに激昂していると、汚い言葉をしゃべっていると、歌を取り入れると吃音が改善されている!
下品な言葉をしゃべりまくってるライオネルとバーティに対して、ライオネルの息子が「何事なの?」と聞くのには笑いました。

・生まれつき吃音の者はいないと語るライオネル。
吃音は幼少時に発生することが多いそうです。また、幼少時にどもるからといって無理をさせすぎないほうがよいようです。
彼は「右利きから左利きに修正された」「X脚を強制された」こともありました。
幼少時の過度のストレスも、彼の吃音障害を助長させていたのです。
幼い子を持つ親御さんは、吃音について理解を深めておく必要があると思います。



~ラストの演説~

・カメラワーク
面白かったのがこれ。
カメラがスピーチに向かうバーティを追うときは、いかにも彼の背中が頼りなさそうに見えるのですが、スピーチ後にまたカメラは彼を追います。そのとき、さっきとは打って変わって背中に自信が感じられるようになっているのです。

・演説後「素晴らしかった、でも『W』で詰まったな」というライオネルに対して「あれは私だとわかるように、わざとだ」と答えるバーティ。
わりと見栄っ張りなバーティなので嘘だったんじゃないかと勘ぐってしまいますw

・バーティはライオネルを「友よ」と呼ぶ。一方ライオネルは彼を「バーティ」ではなく「陛下」と呼ぶ。
これはもう治療が終わったことを示していると思います。
正直この呼び名になったことに少し寂しさを感じてしまったのですが、その後に「スピーチには必ずライオネルが付き添った」「2人は生涯にわたり、良き友だった」ということがわかって本当によかったです。



~ちょっと残念だったこと~

・ティモシー・スポール演じるチャーチルさんが「舌癒着症」だったと告げるシーンがあるのですが、ただ言うだけで終わってしまったこと。
あまりエピソードがありすぎると散漫になってしまうので、ただの贅沢なのですが、もうちょっとサブキャラクターの内面を知りたいと思ってしまうのです。






最後に一つ。

吃音の方は、「どもらないようにとあせる」「失敗しないようにと緊張する」ことが、さらなるどもりを生むケースが多いようです。
バーティが吃音を克服できたのは、ライオネルの治療が優れていたこともあるでしょうが、気兼ねなく、緊張せずに話せる相手がすぐそばにいたことが大きかったのだと思います。

バーティは兄に反論できず、父にはスピーチを強要されていた。
そんな環境で、本音をぶつけることのできる「親友」はかけがえのないものだったのでしょう。
実際に吃音で悩んでいる方に必要なものも、単なる治療だけではなく、こういった話し相手なのかもしれません。

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

2011-03-02 : 映画感想 : コメント : 2 : トラックバック : 0
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非公開コメント

こんにちは。
レミゼラブルの記事から来たので、ちょっとコメントを。

私は吃音症ではありませんが、かなり子どもの頃、音読が苦手でした。
文章の何が重要で、どこを強調して読めば良いのかわからず、かなり棒読みのクセに単語の途中でも気にせず息継ぎしちゃう読みかたが原因だったので、すぐ治りましたけど(笑)
ただ、そういった経験もあり、作中の悩みにすんなり感情移入でき、自分の事のように不安になりながら楽しめました。

>Ps.日本版の広告にある「英国史上、最も内気な王」というのはちょっと違うと思います。
これは作中の発言にならって「最も厳粛な王」と書いた方が良かったかもしれませんね。
2012-12-26 17:07 : ハマの三文芝居 URL : 編集
Re: こんにちは。

> これは作中の発言にならって「最も厳粛な王」と書いた方が良かったかもしれませんね。

そういう台詞もありましたね。
自分も国王に感情移入しっぱなしでした。
2012-12-27 23:35 : ヒナタカ URL : 編集
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『横道世之介』
『脳男』
『ライフ・オブ・パイ』

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『レ・ミゼラブル』
『悪の教典』
『バイオハザードV』
『るろうに剣心』
『プロメテウス』
『桐島、部活やめるってよ』
『アナザー Another』
『ヘルタースケルター』

<2012年上半期公開>
『スノーホワイト』
『ファイナル・ジャッジメント』
『メン・イン・ブラック3』
『貞子3D』
『TIME/タイム』
『ドラゴンタトゥーの女』

<2011年下半期公開>
『ミッション:インポッシブル4』
『アントキノイノチ』
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