全ての母、必見「愛する人」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:7/10
一言感想:切なくも美しい母と娘の人生に、しんみり
あらすじ
介護士のカレン(アネット・ベニング)は14歳のときに子どもを産み、養子として他人に預けた過去を持っていた。
その子どものエリザベス(ナオミ・ワッツ)37歳になっており、弁護士として働いていた。
2人は37年間、一切顔を合わせたことが無かった。
一方、子どものできないルーシー(ケリー・ワシントン)とその夫ジョゼフは養子を受け入れようとする。
3人の人生が同時に描かれ、交差する。
公開開始は今年の1月15日ですが、これから公開する地域も多いので紹介します。
素晴らしい映画でした。
男の自分も「母親」と気持ちがシンクロします。
紹介として一番アピールしたいのは
「母」とはどういうものか、ということを真摯に描いている
作品だということ。
後半のメッセージや、ある母の一喝、家政婦に「あること」を訴えるシーンでは、特にそれを思います。
このシーンに打ちのめされたり、共感する女性は多いでしょう。
淡々とした地味な映画でありますし、
展開が欲張りすぎて一部に描写不足も感じます。
3つの視点が並行して描かれるのでもどかしさを感じるかもしれません(最近では「ヒアアフター」にも似た作風でした)。
それでもこれは推薦したい作品。
自分も母に親孝行したくなった。
あと孫の顔も見せたくなった。
エロティックな描写が多いので子どもには向きませんが、これは大人の男性が観てもきっと思うことのある作品だと思います。
近くで上映していたら、是非!
以下、ネタバレです↓結末に触れています!
劇中のセリフを書いていますが、間違いもあると思います。ご了承ください
この映画にはたくさんの「母」が登場します。
・カレンの母
途中で亡くなってしまいます。
生前に、家政婦のソフィアの娘に肩身のペンダントをあげていた。
ソフィアには「カレンは不幸だ」と告げて、さらに自分を責めていた。
・カレン
前述の母の言葉を知り「何故私に言ってくれなかったの」と言う。
このシーンはすごく印象的で、彼女は自分の娘と言葉を交わすことができないばかりか、母親からも心の内を話してはくれなかった。
14歳のときに子どもを手放したカレン。その彼女が号泣してしまうのも仕方がありません。悲しいシーンです。
・家政婦のソフィア
カレンと、夫になったパコと、自身の娘と共に楽しそうに過ごしている姿が描かれています。
カレンと分かち合うことができて、本当によかった。
そしてソフィアの娘からカレンへ、ペンダントは返されます。このペンダントの向かう先は・・
・エリザベス
彼女が生んだのは、肌の色から間違いなく上司のポールの子でした。浮気相手のスティーブの子どもじゃなくてよかった。
そして死んでしまうエリザベス。その子どもは、いままで交差することのなかった女性のルーシーへの元へと向かいます。
・レイ
20歳の妊婦で、子どもをルーシーに預けようとする女性。
上から目線で、厳しくルーシーを観察する彼女は、母性よりよりもむしろ冷たさを感じます。
彼女は子どもを産むが、ルーシーには結局預けませんでした。
・レイの母親
「私も子どもはいらなかった、でも今は違う。どんな瞬間でもあなたのことを思っている」と言う。
この言葉が、レイの母性を目覚めさせたのでもあるのでしょうね。
・ルーシー
子どもを結局譲らなかったレイを許す彼女。
そこで、別の子どもを養子にできることを知らされます。それはエリザベスの子ども。
しかし、育てていて「あの子を愛していない、何もかも支配されているみたい」と言ってしまいます。
・ルーシーの母
前述のルーシーの姿を見て「あきれた人ね、あなたが子どもを育てる世界初の女性なの?泣き言いうんじゃないよ、母親になるんだから」と一喝する。
この言い方が大好きでした。ルーシーの母は、今までのシーンだと結構ズケズケとものを言っちゃう性格で、あんまり好感を持てなかったのですが、ここで気持ちが変わりました。
この作品の中でも、一番強い母だったかもしれません。
そんな母親たちが織りなすドラマ。最後の結末は、こうでした。
カレンは、娘がもう1年も前に死んでいたことを知らされます。
「死んだと知らなければ、私の中でずっと生き続けていたのに!」とまで言ってしまいます。
悲劇的です。しかしこの映画には救いが用意されていました。
孫娘の、今はルーシーに預けられている「エラ」に会いに行きます。
3人で、楽しそうにしている姿。
そしてカレンはエラにペンダントをかける。
ひいおばあちゃんから、4代にわたったリレーでした。
それはまさに母親の愛を示すものでした。
カレンがギスギスしていたり、パコに気を遣わせてしまうのは、ずっと娘への思いがあったからなのでした。
娘のエリザベスが男から恐がられたり、一人でいるのが好きなのも、母への思いがあったからなのでしょう。
パコの娘はこう言っています「血のつながりより、一緒にいる時間が大事」と。
そのとおりです。家族は一緒にいる時間が長いことが、絆にもなっていると思います。
しかし、最後のエリザベスにあてた手紙にはこうあります。
「今日、エラに会った。38年間を一緒に飛ぶ鳥のようだった。彼女は心のよりどころ(Peace)だ」と。
カレンはエリザベスに会うことはできなかった。
でも彼女の生んだ命に会うことはできた。
それは38年間の悲劇を飛び越えるほどの喜びだった。
子どもって、本当にかげがえのないものです。
原題の「MOTHER AND CHILD」に込められた思いが伝わる秀作でした。
やっぱり脚本と監督さん,出演者の全ての調和がとれていて良い映画でした。後半に出てきた目の見えない少女の役割も,見事にラストシーンにつながっていました。日本の映画には時々ちょい役にも関わらず主役を張れそうな有名俳優や女優が出てきて,シナリオに書き足したような感じで,筋道に関係なく出ているときがあります。客寄せが目的なのでしょうか?あの目の見えない少女は決して付け足しじゃなかったです。
それにしても観終わったあと,ずっと心地よさが残っています。この作品の監督さんの以前の作品で「彼女を見れば分かること」も紹介されたことがあったんですが,まったく興味がなかったんですが観ようと思います。