未来に必要なドキュメンタリー映画「100000年後の安全」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:7/10
一言感想:未来人に伝えたい放射能物質廃棄場のメッセージ
あらすじ
フィンランドのオルキルオト処分場、通称オンカロは原子力発電から生じた放射性廃棄物の埋蔵場所だった。
放射性物質は100000年が経過しないと無害にならない。
果たして、そのときまで無事に埋蔵できるものなのだろうか。
監督は、研究者たちのインタビューを交えながら語りかける。
はじめに言っておくと、これは原子力発電を批判している内容ではありません。
映画の主題は
放射能物質を埋蔵しておく廃棄場を作りました
↓
100000年たたないと、無害になりません
↓
この場所を掘り返したりしたら大変だから、なんとか未来人にメッセージを残してやれないか?
というシンプルなもの。
内容は学のない自分でも分かりやすかったです。
マイケル・マドセン監督(同姓同名の俳優とは無関係)は、これを「未来の君」に伝えようとしています。
放射能廃棄物が、いかに危険で、何故10万年も埋蔵しなければならないのか。
それを淡々とした口調で、関係者のインタビューを交えながら語ります。
議論の中心は、未来の人間に「放射能物質は危険だから、掘り返そうとするなよ」ということををどう伝えればいいのか、ということ。
いろいろなものを引き合い出し、それを真剣に論議されている内容は正直滑稽さを感じてしまうくらいのものです。
しかし、それは本当に必要なこと。
チェルノブイリで、日本で原発事故が起こった今の時代では、皆がその危機感を持たなければいけないことです。
ドキュメンタリーを映画館で観る意味ってあるの?と考えている人もいると思いますが、自分はこれは是非映画館で体験するべき作品だと思います。
何故なら画がものすごく美しいから。
主な映像が建造物やトンネルの中なのですが、さながらSF映画のようにも感じます。
音楽もエレクトロニカ風のものからクラシックまで、シーンにものすごくマッチしています。
ドキュメンタリーなのに映像で魅せる、という映画は自分にとっては斬新でした。
6月からは福島でも上映を開始します。
<上映劇場情報>
いま、放射能の被害を受けている方々はこれをどう感じるのでしょうか。
世界の誰よりも、この問題に対して真摯に考えるべきなのは、今の日本人でしょう。
これから公開される劇場も多いので、堅いお勉強映画と思わずに、もっと多くの人に観てほしい映画です。
ps:原子力発電を題材とした映画に「チャイナ・シンドローム」があります。
![]() | ジェーン・フォンダ 881円 評価平均: ![]() powered by yasuikamo |
![]() ![]() ![]() |
これも評価が高い一本。
↑には福島原発事故が起きた後に書かれたユーザーレビューもありますよ。
以下、内容がネタバレしていますので注意↓
ちょっと気になったのは、「未来の君に送る」という監督の言い方に窮屈さを感じてしまうこと。
それだけならまだ良いのですが、「ここに来てはいけない」と散々言っておきながら、放射能施設を駆け巡ったあとに「奥まで来てしまったね、君はもう被爆している」とまで言うのはシンドサを感じます。
主題は前述のとおりシンプルですが、映画のほとんどがコレなため、冗長さもあります。
しかし、それを帳消しにするほどの映像美がそこにはあります。
雪の中の風景は、やがて来る「氷河期」を映し出しているかのようでした。
ショックだったのが、「今から100000年前といえばヨーロッパにネアンデルタール人がいた時代だ」と言うシーンでした。
ピラミッドでも、ルーン石碑でも、いまだわからないことが多いのに、さらに遠い10万年先にメッセージを残すということが、どれほど難しいものかを思い知りました。
未来人にメッセージを送る場間で、「幸運を」と言うシーンがあります。
作中散々言われているとおり「未来のことは誰にもわからない」のです。
そのメッセージに行き着いてしまうのも、無理はないのではないのでしょうか。
どうしようもない無力さを感じました。
作中では「不確実下の意思決定」という言葉がありました。
それでも、決定しなければならないことなのです。
議論されたのは
放射能埋蔵施設にメッセージを残し、掘るなと伝えるか?
それとも誰にも見つからないようにするほうがよいのか?
ということ。
監督が残したメッセージは「忘れ去ることを忘れるな」でした。
それを後世に伝えるのは、私たちです。