新シリーズの幕開けにふさわしい面白さ「X-MEN ファーストジェネレーション」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:8/10
一言感想:やたらめったら面白い、アメコミ新シリーズの誕生だ!
あらすじ
エリック(ミヒャエル・ファスベンダー)は自分たちを迫害し、母を殺した男への復讐を狙っていた。
科学者のモイラ(ローズ・バーン)は謎の集団「ヘルファイアークラブ」を追い、ミュータントの能力を使う彼らを目撃する。
彼女は、頼れる「専門家」としてチャールズ(ジェームズ・マカヴォイ)と接触するのだが・・・
そして、ヘルファイアークラブの目論見が判明する。
彼らはアメリカとソ連の軍隊を利用し、人間同士の大戦を勃発させようとたくらんでいたのだ。
X-MEN創設と、「プロフェッサーX」と「マグニートー」の誕生に迫る、シリーズの前日譚。
はいもうすんげー面白かったです!
人気アメコミヒーローシリーズの、エピソードゼロとなるのが本作。
正義と悪が「何故」生まれたのか。
そこに迫る心理描写、数多いキャラクターが織り成すストーリーは魅力的、アクションも(ちょっと量は少ないけど)迫力満点と隙のない作りに感服しました。
大傑作「キックアス」を撮った、マシュー・ヴォーン監督のサービス精神は今回も健在なのです。
X-MENシリーズを観ていない?内容を忘れてしまった?
いえいえ、今までの作品を観ていなくても楽しめる作品ですよ、これ。
もちろん過去作を観ているほうが楽しめる部分もあるのですが、それは「どちらが先か」だけの違いです。
これを観た後は、シリーズをさらに面白く観れるでしょう。
X-MENシリーズは「ヒーローもの」でありながら、現実の差別や迫害を象徴している作品です。
エリック(マグニートー)の憎しみは「迫害されたから」であり、迫害をした相手はナチスです。
彼は暗喩どころか、まさにユダヤ人そのものとして描かれています。
そして彼は、人間に復讐を誓います。
対して、チャールズ(プロフェッサーX)は、彼とは逆に共存の道を選びます。
彼らの対比が面白く、かつ現実の社会問題でも通ずるテーマも内包しているのです。
それがX-MENが支持される理由のひとつでしょう。
本作はその起源に迫る物語。
登場人物が色濃く描かれたことにより、現実の社会問題に即し、彼らが何を思っていたのかをより知ることができるのです。
また映画はソビエト連邦が存在し、キューバ危機が起きようとしていた時代が舞台になっています。
当時の情勢を知っておくと、さらに楽しめるでしょう。
本作は新3部作の1作目になる予定だそうです。
これはスターウォーズシリーズを彷彿とさせます。
さらにマシュー・ヴォーン監督はこう語っています。(以下Wkipediaから引用)
マシュー・ヴォーン監督は続編について、「『ファースト・ジェネレーション』は『バットマン ビギンズ』に近く、キャラクターを紹介し、それを知る楽しみがあるが、それには時間がかかる。しかし、2作目はすぐに入り込んで、めちゃくちゃ楽しい時間を過ごせる。それが『ビギンズ』と『ダークナイト』の間の主な違いだ。」と語った
いやあもう期待に胸が高まります。
1作目でこの面白さで、続編が「ダークナイト」のような内容だとしたら・・・ワクワクが止まらない!
取り止めがなくなってきたのでまとめます。
「アメコミはスパイダーマンしか知らない」なんて人にもお薦めしたい、エンターテイメントとテーマ性ががっちりとつなぎ合わされた素晴らしい作品です。
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こちらはコミック版。表紙の絵でちょっと笑っちゃう。
*純粋な原作本というわけではないようです。要注意。
世界情勢などの話が小難しい&舞台があっちこっち飛ぶ&登場人物が多い(特にこれはシリーズ通しての欠点かも)のでお子様には向きませんが、大人であれば確実に楽しめるでしょう。
とにかく映画館へ!
以下はネタバレです。未見の方は読まないで↓特に今までのシリーズのネタバレはありません。
さて今作は「エリック」と「チャールズ」の友情を色濃く描いています。
チャールズはエリックを助け、チャールズはエリックの「一番楽しかった思い出」をも思い出させてくれました。
「やってもらったこと」はチャールズ→エリックへと一方通行です。
さらにエリックは憎しみを隠しきれない人間でした。
「エマ・フロスト」の首を絞めようとしたり、「平和には興味がない」と言ったり・・・そして、復讐相手の「ショウ」を殺してしまうエリック。
彼は、チャールズの意思を聞きませんでした。
さらにミサイルを止め、人間に跳ね返そうとするエリック。
また、彼を止めようとするチャールズ。
とことん、エリックは自分の復讐のために行動しようとした。
チャールズは、親友のことを「心を読んでわかった」上で止めようとした。
この2人の関係が切なく、ほろ苦いものとして描かれています。
そんなエリックも、ステルス機が島に墜落したときは、磁力の力でチャールズをかばったように見えました。
彼らの友情はもう戻ることはないのでしょうか。
続編に、それをも望んでしまいます。
女性化学者のモイラがエリックに放った流れ弾があたり、チャールズは下半身不随になってしまいます。
エリックが彼女を責め、殺そうとします。
しかし、チャールズは「やったのは君だ」とエリックに言います。
殺すのをやめたエリックは
チャールズが何回も、何回も行動を止めようとしたこと、
親友に責められたこと、
それに思うことがあったのでしょう。
また、中盤には
「ショウ」の資料を持って去ろうとするエリックに対して、チャールズは「自分の力だったら君を止めれるけど、止めない」と言うシーンがありました。
エリックを身を制してでも止めようとしたチャールズですが、本心では「エリック自身が道を決めてほしかった」のでしょう。
その性格は、最後にエリックについていく「レイブン(ミスティーク)」に、「決めるのは君自身だ」と言うシーンにも生きているのです。
~他ちょっと補足~
・仲間探しのときに、ちょっとだけ登場した「ウルヴァリン」ことヒュー・ジャックマンに笑いました。
帰れって言われただけでさっさと帰るし(笑)
・レイブンが、エリックの前で変身した「大人の姿」
「子どもは帰りなさい」と言われて彼女が変身したのは、シリーズでこの役(ミスティーク)を演じていたレベッカ・ローミンです。
ファンサービスとして嬉しいですよね。あとこの映画に登場する彼女(演じているのはジェニファー・ローレンス)はめちゃくちゃ可愛いと思った。
・「プロフェッサーX」「マグニートー」のコードネーム
まさか「若者たちが名前をつけあったから、ついで」みたいに描かれるとは思わなかった(笑)
あとエリックが「将来ハゲるかも」とか言っていたのも笑った。その後は言わずもがな・・です。
・メンバーの訓練シーン
画面を分割して見せてくれるので楽しくて仕方がない。「バンジー」の飛行シーンも素敵です。
・ラストバトル
人間たち&ヘルファイアグループ&X-MENたち(このとき名前はまだついていなかったけど)と、3すくみの戦いなんですが、まったく混乱せずに大興奮して観ることができました。
あとチャールズの能力によって、ミサイルのスイッチを入れたロシア側のおっさんが可哀想。
・「ミュータントは、誇りよ」
Mutant is pround.
チャールズは左右の目が違う女性を「イカした突然変異」だとも言いました。
レイブンはそのことばを気に入りました。
「人間たちは、僕たちの姿を美しいとは言わない」と言い、さらに姿が変わってしまった「ハンク(ビースト)」にも、さらにレイブンはそのことばを伝えました。
この「突然変異」は「障がい」や、人の悩みの種になる「コンプレックス」、「人種」などにも当てはまります。
それを肯定するこの作品は、たとえようもない優しさに満ちています。
その後、テレビで第1作を見て、ビックリ。
あの冒頭の部分。ポーランドの収容所で、親子が別れ別れになるシーン。
あのシーンが、第1作と同じものだとは、思いもしませんでした。
今作では、ミュータントとしての能力に開花する場面が続く訳です。
この辺は、アメリカ映画界の原作を読み解く力に、感服です。
テレビで第1作を久し振りに見た時、「エッ、今、公開の映画をモウ流しているの?」とビックリしました。
私の友人は、逆で、テレビで第1作を見てから、映画館に行って「デジャビ」経験。
「俺は、超能力があるのか!!」と彼も、ビックりしたとのこと。
ストーリーは昔懐かしい「キューバ危機」を取り上げていたので、あの時代を懐かしく思いました。
>あの冒頭の部分。ポーランドの収容所で、親子が別れ別れになるシーン。
>あのシーンが、第1作と同じものだとは、思いもしませんでした。
そう、一作目でもそのシーンがあったんですよね。
今作でさらに色濃く描いているので、ファンにはたまらないと思います。
>ストーリーは昔懐かしい「キューバ危機」を取り上げていたので、あの時代を懐かしく思いました。
自分はソ連があった時代もよく知りませんでした。確実に現実の時代を知っていた方が楽しめる映画ですね。