おばあちゃんたち最強伝説「デンデラ」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:6/10
一言感想:まさかの血みどろスプラッター
あらすじ
70歳になったカユ(浅丘ルリ子)は村のしきたりにならい、雪山に捨てられてしまうが、「デンデラ」という集落に住む女たちに助けられる。
はじめにこの場所を作ったメイ(草苗光子)に話を聞くと、彼女は自分たちを捨てた村に復讐をすると告げた。
さらにデンデラにはマサリ(倍賞美津子)をはじめとする、復讐に反対する者もいた。
一時は同じく復讐に反感を示すカユだったが・・
いやーすごいわ、これ。
昭和の大女優がメイクによってさらに老け込み、血が出まくるアクションを繰り広げるとんでもない映画でした。
彼女たちは言うまでもなく老いています。
演じている女優さんたちの年齢よりも上の登場人物たちが雪山を跳ね周り、敵に立ち向かうのです。
そしてとび出る鮮血。
大ベテランがバッシャバッシャ血のりを浴び、狂気に満ちたような顔で突撃する。
これだけで観る価値は十分でしょう。
さらに彼女たちの言うギャグ(ていうか冗談)が下品きわまりないです。
今作はなぜかG(全年齢)指定なのですが、気持ちPG12指定くらいに思って観たほうがいいかと思われます。
また、今作に登場する集落「デンデラ」は、遠野物語にでてくる実在の姥捨て山の名前です。
姥捨て山は現代社会のメタファーにも思えます。
村は男尊女卑の社会で、理不尽なしきたりがまかりとおっていますし、「くさいものにはふた」という自分にとっては不利益なものを捨て、観て見ぬ振りをするような慣習は、現代にも根付いていると思えます。
この映画はフィクションですが、捨てられた者たちの描写を淡々と描くことにより、「自分のまわりでも似たようなことがあるかもしれない」と訴えかけるようなリアリティがあります。
観た後は、自分の周りの境遇と照らしてあわせて考えてみるのもいいかもしれません。
ただ、ストーリーはカタルシスに乏しいですし、そもそも展開が「え?そっちのほうにいっちゃうの?」と思う方が多いと思います。
話が別の方向に行き、そのまま収拾がつかずに突っ走ったような印象が否めないのは少し残念でした。
そんな不満も女優たちの熱演で十分すぎるほどカバーできています。
自分が観た回は見事にご年輩の方ばかりだったのですが、作中に溢れるテーマも含めて、若い人にも観てほしい映画だと思います。
![]() | 佐藤 友哉 620円 評価平均: ![]() powered by yasuikamo |
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原作本。これも賛否両論っぽいですね。
重い題材で好き嫌いが分かれる作品ですが、「あの人がこんなことを?」と思えるだけでも楽しい作品。
舞台がー10度以下の雪山なので、暑い夏にピッタリの内容です。
せっかく1000円という特別料金で鑑賞できることですし、女優のファンなら必見ですよ。
以下、ネタバレです↓結末に触れまくっているので観た方限定でどうぞ
まあ今作の不満は・・・言わずともわかるとは思いますが、
「村への復讐」がいつしか「VS熊」になっちゃうのはいかがなものか・・ということ。
でも個人的にはこれを肯定的にとらえたいです。
熊は誰でも関係なく人に不幸を与える自然災害のようにも思えます。
しかし熊はまもなく復讐を決行しようとしていた「デンデラ」の連中のみを襲いました。
彼女たちはとことん不幸です。復讐もできず、デンデラも壊滅状態になります。
カユはヒカリ(山本陽子)とともに、最後の決戦に挑みます。
ヒカリは内蔵を引きずり出され、熊はゆっくりとカユを追います。
行き着いた先は、自分たちを捨てた村。
熊は村の男たちを襲い、最後はカユに襲いかかります。
彼女はこう言いました。
「教えてくれ、どっちの負けだ?」と。
彼女のしたこと、それは「不幸のなすりつけ」のように思えて仕方がありません。
災害で傷ついた者たちが、さらなる不幸を別の場所に波及させているのです。
カユは復讐に一時は反対し、荷担すべきかどうか迷っていました。
村に復讐できたことは「勝ち」かもしれません、
しかしカユ自らの心の内では、勝ったとは到底思えなかったのでしょう。
死んだメイは「お前の気持ちなんて、復讐にはどうでもいいことだ」とカユを罵っていました。
しかし、村に息子もいたカユにとって「気持ち」こそが一番大事だったのではないでしょうか。
カユは何が正しかったのか、最後まで答えを出せなかった。
それこその「教えてくれ」だったのでしょう。
切なく、無慈悲な結末です。
災害を他人になすり付けても、そこには嬉しさなんてなく、ただむなしさがあるだけでなのではないでしょうか。
日本で災害が起きた昨今のこともあり、この描き方には何かの含みがあるように思えてならないのです。
それこそ、村という復讐の相手ではなく、「熊」という第三者を登場させた理由なのではないでしょうか。
マサリが言っていた「皆が豊かになることが、一番の敵討ちでねえですかい?」が胸に染みます。
カユは「新しい集落を作る」ことも考えていました。
カユのいなくなったデンデラの人たちは、それを達成できるのでしょうか。「その後」を否応もなく想像してしまいます。
~閑話休題~
まあそんあまじめなことを考えずとも、おばあちゃんたちがろくな武器もないのに熊に突撃したり食われたり血を浴びたりする画はすごく面白かったので、個人的にはオールオッケーです(←悪趣味)
「クラ」がまだ生きているのにおとりに使ったりする非道さも好き。
ひどいよ。
しかし、熊は作りものっぽくて(ちょっと可愛いし)シュールですよねえ・・・3回にわたるVS熊戦は怖さを通り越して笑いがでるくらい。
特に偶然小熊を刺し殺して顔にブシャッと血が飛んだり、倍賞美津子さんが腹から突撃くらったシーンでは笑顔になっていた自分がいました。我ながらひどいな。
メイが昔カユに会った日のことをことを思いだし「初めてあったころ、おめえは40くらいの小娘だったなあ」というのも好き。
しかも後半はみんなが小娘だと言われるのです。
年をとってもエネルギッシュなおばあちゃんたち。
彼女たちの境遇は不幸でしたが、それをはねのけるようなパワーを感じました。
自分もこうありたいもんです。
気になった点
①浅岡ルリ子さんは、デンデラの自然食の影響か?、白髪が無くなりましたね。
②倍賞美津子さん、片目で、弓矢の名手って設定が、ナンダカナア!
③一番、全てをぶち壊しているのが、何と云っても熊の存在なのですね。
あれだけのセットを作りながら、”どうして、あんなにチープな熊さん”をスクリーンに出したんでしょうか?
北米のグリスリー(?)サイズの熊さんでないと、何やってんの?の気持ちが出て、急に、喜劇に見えました。
割と、老人が多く見てましたが、帰りに、首を振ってました。
久しぶりに映画を見て、首が疲れてのでしょう?
>①浅岡ルリ子さんは、デンデラの自然食の影響か?、白髪が無くなりましたね。
ええー!気付かなかったです。
>②倍賞美津子さん、片目で、弓矢の名手って設定が、ナンダカナア!
遠近感つかめているんでしょうか・・・格好よかったので大好きですが。
>③一番、全てをぶち壊しているのが、何と云っても熊の存在なのですね。
>あれだけのセットを作りながら、”どうして、あんなにチープな熊さん”をスクリーンに出したんでしょうか?
熊の足がアップになった時も笑っちゃいました。
遠くから撮ればそんなにチープに見えないと思うのだけどなあ。
自分の時も、60代以上かと思われる方たちが劇場を埋めていました。
結構観終わった後は微妙な表情を浮かべていました。
村に復讐を考えるより、年寄りのノウハウを教えて共存に向かっても良かったのでは、自分たちだって若いころ年寄りを捨ててきたのにね、?
熊退治、落とし穴掘って、竹槍立てれば、殺せたのに、
折角生き延びたのに、なんて無駄死にをさせるのかと不思議でしょうがない、最後にただの追いかけっこで死んでゆくなんて、生徒死がアンバランスだと思う、ばあさんたちがあまりにもかわいそうだ。