娯楽性完全無視ゲージュツ映画「ツリーオブライフ」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:3/10
一言感想:イメージ映像を延々と見せられても・・・
あらすじ
少年ジャックは、厳格な父(ブラッド・ピット)のことを嫌っていた。
仕事に成功し、中年になったジャック(ショーン・ペン)だが、心の奥では深い喪失感を抱えていた。
彼のその意識が、少年時代のあのころへと飛んでいく・・・
「シン・レッド・ライン」「天国の日々」のテレンス・マリック監督最新作です。
万人向けじゃない映画だとは聞いていましたがここまでとは。
正直観ていて精神的につらい映画でした。
なにがいけないって、予告編やポスターの雰囲気では「人間ドラマ」系の映画を思わせるのに、実際は
宇宙とか海とかの自然映像が作中の2/5くらいを占めていることです。
確かにその画は本当に美しいんです。
ため息が出るくらいです。まあそのため息には別の意味もありますが。
いずれにせよ、父と子のドラマを期待しているのに、ネイチャードキュメンタリーのような映像を延々と流されるのを目の当たりにして、憤慨する人はとても多いと思います。
難解な映画に思われる方も多いでしょうが、映画の主題自体は単純です。
厳格な父と、それに不満が鬱積している息子の物語です。
この物語は非常に丁寧に作られています。
父を演じたブラッド・ピットや子役の演技は素晴らしいですし、何気ないしぐさや表情にも、いくつかの感情が見えるかのような撮り方は素直によかったと思います。
そして前述の自然映像なのですが、この「親子の物語」と全く合致していないと思うのです。
想像してみてください。
「父親が息子を叱る」映像の次に「銀河」の映像が映し出されるのを。
「え?」と思う方がいるのも当然だと思います(自分含む)
さらに宇宙の映像には宗教的なナレーションが挿入されます。
たとえば「神様、私は不誠実でしたか?」という具合に。
無宗教者の自分には、全く受けいれることができませんでした。
そもそも親子の物語と、自然の壮大さを対比するように見せる感性が、自分にはさっぱり理解できません。
SF映画の金字塔「2001年宇宙の旅」が引き合いに出されることが多いのですが、それとは全く別物だと思います。
![]() | キア・デュリア 991円 評価平均: ![]() powered by yasuikamo |
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これも好き嫌いの分かれる作品ですが、映像に見合うだけの壮大な物語が紡がれています。
しかし「ツリーオブライフ」では、映像は壮大なのに、話は偏屈親父と息子の物語というすさまじいギャップがあるのです。
壮大な映像は壮大な物語に使うべきであって、「親と子の確執」のような物語には似合わないのではないか、と自分は思うのです。
その試みは賞賛すべきことですが、映画として面白いかと言われると・・・ね。
それでも個人的によかったこと・・・それは役者の演技、画の美しさ、それに音楽です。
![]() | Tree of Life 1277円 評価平均: ![]() powered by yasuikamo |
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クラシック音楽と美しい映像の融合。
絶えず不安感を与えるような音の演出は素晴らしいものでした。
絶対に人には薦めない作品です。
娯楽性なんか皆無に等しく、良くも悪くも「芸術作品」という言葉がぴったりです。
少なくとも、近年の映画では最も賛否両論になることは間違いありません。
この映画が好きな方、ごめんなさい。
たぶん自分は、この監督の感性に一生ついていけません・・・。
以下、激しくネタバレです↓
~父親の描き方~
本作は「自分勝手なク○親父」の描き方が、非常に優れていると思います。
それが顕著なのは、食卓で父親が次男にキレるシーンでした。
「今から30分、大事なこと以外はしゃべるな」と言われ、反対に父親に「静かにして」と言う次男。
父は次男に食ってかかり、長男・ジャックはそんな父を見て「乱暴をするな!」と言います。
ジャックを閉じ込める父。彼は一人で食事を食べました。
母親(ジェシカ・チャステイン)が食器を洗っているシーンも上手い。動作で「怒っている」ことが完全にわかるんですよね。
父親は返事に「はい(Yes Sir)」を言うように強調したり、喧嘩の仕方を教えたりと、子どもを抑圧するような教育を試みていました。
そんな彼ですが、音楽家になれなかった自分をたしなめて、「父さんのようになるな」と口にするシーンでは、同情の余地があるように感じました。
~母親への思い~
ジャックは父親に不満が鬱積している反面、母親には思慕の情を感じていました。
それがエスカレートし、ついには母親の下着(ひょっとすると隣人の家のもの?ごめんなさい、判断がつきません)を盗んでしまうジャック。
川辺の板の下に隠そうとしますが、結局、川に流します。
近親相姦のような臭いも感じさせるシーンでしたが、下着を「隠す」のではなく、川に「捨てた」ことによって、その関係を完全に絶ったようにも思えました。
「母さんが愛しているのは僕だけだ!」と父に言ったのは、エディプスコンプレックスを体現したシーンでしたね。
母には「父さんに見下されているくせに!」と言うジャック。彼が人を傷つける姿は、見ていて非常に心苦しいものがありました。
~ジャックがしたこと~
ジャックが弟に対して、虐待とまではいわなくても、父親と同じようにひどいことをしていることも印象にのこりました。
ジャックは、兄を信じていた弟の絵をめちゃくちゃにしたり、銃口の前に指を置かせて発砲するのです。
虐待をされたものが、そのまた自分の子どもや身近な人に虐待をするケースはとても多いそうです。
さらに中年になったジャックは、父の「善人になりすぎるな」などの教えどおり、社会的には成功しました。
しかし広い家をもちながらも、奥さんとは不仲だったジャック。
性格と傾向が、結局は受け継がれてしまったのかもしれません。
~時代背景~
ジャックの少年時代は、戦時中のものとなっています。
作中ではDDTが散布されていたりもしていました。
次男の19歳での死も、戦争によるものだったのでしょう。
~ラスト~
ラストには、中年のジャックが、ついに家族と出会います。
母も、父も、弟も、当時のままの姿です。年をとっていません。
成長しているのはジャック一人だけ。
母は弟を抱きかかえますが、ジャックには、じっと見つめるだけ。
家族に出会った彼ですが、もう彼の居場所は、そこになかったのかもしれません。
その場所には、彼だけでなく、さまざまな人間が集まっていました。
人々は、枝分かれのように分化ながら、家族を形成してきたのです。
その人間たちが「戻ってきた」という描写だと思います。
それこそが「ツリーオブライフ」というタイトルの由来なのだと思います。
*旧約聖書の「生命の樹」も由来にあるようです。
・・・
あ、そういえば意味不明な映像がたくさんありましたね、本作には。
・CG感あふれる恐竜が倒れている仲間の頭を踏んづける
ジャックや父のように、家族を傷つけることの表れかも(それが太古の時代から続いていた)
・ピエロが水中芸をしている
川で子どもがおぼれて死ぬシーンがありました。ジャックはそれがこっけい(ピエロ)のようなものだと見下していたのかもしれません。
・屋根裏部屋での長身の男とジャック
成長できないジャックの心のあらわれかも。
うん・・・よくわからん・・・
美しい映像体験としては極上なのですけどね。
以下はyahooレビューからのおすすめ
<こちら>
<こちら>
<こちら>←冒頭の「ヨブ記」の意味がわかります。
映画瓦版|ツリー・オブ・ライフ
主人公が砂漠を歩くことにも、理由があったのですね。
とにかく、CGを含んだ表現が過剰で,物語の説明が不足していて、困ったもんだ!の世界でした。
自然界の場面では、美しい場面も多く、「アッ、イッテみたい」の感も。
ある意味、宗教映画のようでした。
そう、何度も神への呼びかけがありますから、キリスト教世界の方々には、ある意味理解できる問題なのでしょう。
私は、あの二匹の恐竜のシーンが印象的でした。
とは云うものの、B.ピットの映画だから、それらしいフアン層が入ってましたが、映画が終わった後、皆様一様に無口に。
アンマリ、当たらないでしょうね、この映画は。
>とにかく、CGを含んだ表現が過剰で,物語の説明が不足していて、困ったもんだ!の世界でした。
考えるな!感じろ!の世界なんですが、自分にはこれは冗長でした。
不条理な世界の映画は大好きなのですが、宗教的な面が個人的には全く受け付けませんでした。
じゃあ予告でそういうところが主だというところを見せろよ。
なにヒューマンドラマみたに編集してんだ。
ストーリーもくだらなければオチも酷い(てか無い)
いや、笑えない。詐欺映画。
これを絶賛するような人種の頭が理解できない。
何か言いたくて,このコメントに投稿させてもらいます。
米国では,進化論とキリスト教とのせめぎ合いがあり,それを下敷きに見る映画であろうと私はおもいました。
父と子というテーマも,
進化論では,自然と人類
キリスト教では,神と人間
とパラレルに言い換えられるかもしれません。
このように解釈しても,テーマ自体は手垢のついたもの。提示方法も私は陳腐だと感じました。エディプス=コンプレックスやカインの罪など西欧世界の原罪を断片的にパッチワークするのは。
役者の演技はそこそこよかったけれど,それはこの映画の主役ではないですね。ショーン・ペンなどはスクリーンに居た時間は10分くらいじゃなかったかな。セリフは10行くらい。
そこで,私が着目するのは2点,
(1)「イメージ映像」の「美しさ」
(2)「クラシック音楽」の使用
です。
(1)は,押しつけがましい環境ビデオのようでしたね。美しいけれど,過剰で冗長だと感じました。CGの恐竜は,人間くさい動きだし,背景が被子植物であるという,地質年代が混線です。生命の歴史は,植物や菌を無視して動物中心の筋書きです。Treeはどこに行った?
進化論の禁じられている州でも見せられるでしょうけれど,私はめまいを覚えました。
(2)は,(私はほぼ全ての原曲を知っていますが,それだけに)音楽に映像が負けていると感じました。イメージ映像には力がないのです。ゴダールの使い方のように音楽と映像がシンクロしているのではない。たとえばマーラーの交響曲が不自然にトリミングされ2小節がリピートされたところは,壮大な環境ビデオが音楽でぶつに切りにされた印象でした。映像も好きで音楽も好きな私は,この映画には落ち着けないのです。音源も録り下ろしではなく,ほとんどが過去のアーカイブからの借用でした。
子どもたちに見せたら,いじめはやめようというよりも強烈なメッセージになるかもしれません。美しいイメージ映像とともに,道徳感が身につくかもしれない。
以上。
> 米国では,進化論とキリスト教とのせめぎ合いがあり,それを下敷きに見る映画であろうと私はおもいました。
> 父と子というテーマも,
> 進化論では,自然と人類
> キリスト教では,神と人間
> とパラレルに言い換えられるかもしれません。
自分はこの映画を観たときは「ああ、キリスト教者のための映画なんだな」と思っていたのですが、進化論にまでは考えが及ばなかったです。
> このように解釈しても,テーマ自体は手垢のついたもの。提示方法も私は陳腐だと感じました。エディプス=コンプレックスやカインの罪など西欧世界の原罪を断片的にパッチワークするのは。
スケールの違う2者をつなぎ合わせる試みは賞賛すべきことだと思いますが・・・まったく面白いと感じるものではなくって・・・
> 役者の演技はそこそこよかったけれど,それはこの映画の主役ではないですね。ショーン・ペンなどはスクリーンに居た時間は10分くらいじゃなかったかな。セリフは10行くらい。
ショーンペンのファンはがっかりするかもしれませんね。砂漠を歩いている映像のほうが多かった気が。
> そこで,私が着目するのは2点,
> (1)「イメージ映像」の「美しさ」
> (2)「クラシック音楽」の使用
> です。
> (1)は,押しつけがましい環境ビデオのようでしたね。美しいけれど,過剰で冗長だと感じました。CGの恐竜は,人間くさい動きだし,背景が被子植物であるという,地質年代が混線です。生命の歴史は,植物や菌を無視して動物中心の筋書きです。Treeはどこに行った?
自分もTreeどころかSpaceを見せられるとは思わなんだです(笑)CGの恐竜が出たときは目を疑いました。
タイトルどおり、一本の樹、くらいにイメージ映像をとどめてほしかった気もします。
> 進化論の禁じられている州でも見せられるでしょうけれど,私はめまいを覚えました。
> (2)は,(私はほぼ全ての原曲を知っていますが,それだけに)音楽に映像が負けていると感じました。イメージ映像には力がないのです。ゴダールの使い方のように音楽と映像がシンクロしているのではない。たとえばマーラーの交響曲が不自然にトリミングされ2小節がリピートされたところは,壮大な環境ビデオが音楽でぶつに切りにされた印象でした。映像も好きで音楽も好きな私は,この映画には落ち着けないのです。音源も録り下ろしではなく,ほとんどが過去のアーカイブからの借用でした。
音源は新規に録音したものではないのですね・・・クラシックと映像の融合事体は見事だと思ったのですが、確かに「音楽に合わせての編集」ということははあまり感じなかったように思います。
> 子どもたちに見せたら,いじめはやめようというよりも強烈なメッセージになるかもしれません。美しいイメージ映像とともに,道徳感が身につくかもしれない。
子どもに見せたら退屈すぎて途中で逃げ出すと思います・・・とにかく困った映画でした。
個人的に「R-100」と並ぶ位…酷かったです(笑)