猿たちが警告するもの「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:7/10
一言感想:猿の革命&無双
あらすじ
ある新薬が、捕獲された一匹の猿に投与された。
その猿は瞳の特徴から「ブライト・アイ」と名付けられ、めざましい知能発達を遂げていた。
ある日ブライトアイは檻から逃げ出し、その結果射殺されてしまう。
しかし、彼女は子どもを残していた。
研究社のウィルは、その猿を自宅で育てることを決める。
彼は「シーザー」と名付けられた。
「猿の惑星」シリーズの10年ぶりの新作です。
今作は「猿の惑星から着想を得た新たな物語」となっています。
「猿の惑星」の設定を借り、そこから物語を紡ぎ出した作品なのです。
また完全に新しい物語というわけではなく、その下敷きにはシリーズの4作目「猿の惑星・征服」の要素があります。
![]() | ロディ・マクドウォール 800円 評価平均: ![]() powered by yasuikamo |
ティム・バートン監督の「PLANET OF THE APES/猿の惑星」が1作目のリメイクならば、今作はこの4作目のリメイクに近い内容と言ってもよいでしょう。
猿の名前の「シーザー」が共通していますし、似通ったシーンも登場します。
肝心の内容ですが、「猿の惑星」を知らなくても、全く問題なく楽しめる映画となっています。
大筋はお子様でもわかりやすいシンプルなストーリーです。
なおかつ、登場人物の感情を深く知ることのできる細かいシーンにも妥協はありません。
主に描かれるのは、研究者の主人公と、猿のシーザーとの交流です。
ペットではなく、親子のようなその関係と生活描写が秀逸です。
アクションシーンの冴え渡りも素晴らしいクオリティ。
猿の動きを追うカメラで捉えた映像には、思わず見入ってしまいます。
*特に乱闘シーン、家の中を駆け回る(後ろからカメラで追う)シーンは本当にすごい!
そして、自分がこの映画で感動したのは、展開そのものよりも猿の表情でした。
この映画に出てくる猿たちは、全てがCGというわけではなく、その表情は俳優が演じているものです。
俳優たちの顔の上にCGを描き、細かい表情を表現させているのです。
出来上がったものは、1シーンごとに感情が痛いほど伝わる、猿たちの名演でした。
「猿にここまで人間らしい表情ができるのか!」と驚けることは間違いありません。
これだけでこの映画をスクリーンで観る価値は十分です。
この映画を観て、「猿の惑星」の世界観が失われてしまった、と嘆く人も多いと思います。
後半はスペクタクルシーンを描きたいためか勢いで乗り切った印象が否めないし、いろいろと設定につっこみたくなる点もあります
しかし、これをひとつの映画としてみるならば、娯楽性とテーマ性を兼ね備えた作品として十分にオススメできます。
是非劇場で、猿たちの演技を堪能してください。
ps・個人的に楽しかったのは「ハリー・ポッター」シリーズのドラコ・マルフォイ役のトム・フェルトンがチンケな悪役として登場していることでしょうか。
一挙一動がマルフォイにしか見えなかったよ。安定の悪役顔ですね。
ps2・エンドロールがはじまってすぐに、もう1シーンあるのですぐに席を立たないように注意!
ps3・「猿の惑星」を知らなくても楽しめるとは書きましたが、この映画の展開自体が1作目のネタバレなので、1作目のあとに鑑賞するのがよいかもしれません。まあ「1」はパッケージですでにネタバレしてるんだけど。
以下、ネタバレです。1作目のネタバレもふんだんなのでご了承ください↓
野暮ですがツッコミたかったことから少し。
~結局この薬って?~
新しく作った新薬「113」は
・チンパンジーに投与すると頭が良くなる
・でも人間に与えると死ぬ。
アルツハイマーの特効薬の「とばっちり」をこういう形で描くとは思いもよりませんでした。
「1」では「猿に支配されていた人間は、言葉も話せないほど退化していた」という設定があったので、人間たちはてっきりバカになるウィルスに感染するんだと思ってましたが、まさかの「死」。
あとフランクリン(飼育係)が、鼻血が出たという自分の症状を言わなかったのは、主人公ウィルの体裁を保つためでしょうが・・・家にアポなしで訪れる前に電話で言えよとも思います。
~檻でのシーザーと猿たち~
中盤、人間(おとなりさん)に危害を加えたシーザーは猿たちが捕獲されている施設に収容されます。
サーカスにいた「モリース」と手話で会話をするシーンも印象的でしたが、シーザーが次第に権力を得ていくのもすごく面白かった。
その手段が
①強そうなゴリラを開放して味方につける
②ボスっぽいヤツをだまし討ち(缶で殴る)して、ゴリラと挟み撃ちをして服従させる。
③ビスケットを配る
と、飴とムチを使い分けた教育法(笑)には感服しました。
そして心が揺さぶられたのは、シーザーが初めてことばをしゃべったシーン。
そのことばは「いやだ(NO)!」でした。
はっきりと人間に対して反乱を起こすことが示された台詞です。
~橋での決闘~
警察が馬で登場したのは驚いた。
まあ警察馬は別に珍しいことではないのですが、警棒で猿を攻撃するのはどうなの?
めっちゃ返り討ちにあってるやん。せめてスタンガンにしようよ。
また、意識したかどうかはさだかではありませんが、「馬と猿」には<こういった伝承もあります>
シーザーが馬を奪い反撃するシーンは、名前の由来であるガイウス・ユリウス・カエサルそのものの姿を思わせました。
その後シーザーは、死にかけている人間(ヘリから落ちそうになっているジェイコブ)を見捨ててしまいます。(その後で113を投与されていた別の猿がまた見捨てる)
檻からの脱出シーンだと、シーザーは仲間たちが看守の青年をボコボコにするのを止めており、無用な殺生をしない性格にも思えます。
しかし結局、不可抗力でシーザーは人(マルフォイ嫌な看守)を殺してしまいました。
さらにジェイコブの乗ったヘリの攻撃により、仲間を殺されてしまうのです。
シーザーが人を見捨てるという選択肢をとったのは、個人的には寂しさも感じましたが、致し方のないことだったかもしれません。
ここのベストシーンは「シーザーをかばい、ヘリにジャンプをして攻撃するゴリラの仲間」!
あれは鳥肌が立つくらい格好よかった!
あ、あと主人公の空気っぷりにも泣きそうになった。
~ラスト~
シーザーは、以前主人公たちと訪れた公園にたどり着きます。
そこに来た主人公は、
「ごめんよ、全部僕が悪い」
「ひどいのはあいつらだ」
「僕が守ってやる、帰ろう」
と、シーザーを責めませんでした(超親バカ)。
それに対するシーザーの答えは「シーザー、ここが家(Caesar's Home)」でした。
シーザーはもう主人公とは暮らせないこと、人間とは共存できないと悟っていたのでしょう。
その決意は、中盤でシーザーが自ら檻を閉めたシーンで表れていたと思います。
彼らは木に登り、人間たちの文明を眺めるシーンで映画は幕を閉じます。
この話が「1」に繋がると考えるのなら、彼らが観た人間の文明は崩れさり、猿たちが支配する世界が始まるのでしょうか。
そして主人公・ウィルは、今後社会的に生きていけるのだろうか。
「その後」が気になって仕方がありません。
~本当のラスト~
おとなりさん(職業:パイロット)が鼻血を出す。
彼はフランクリンからウィルスをうつされていた。
そして行き先は・・・・ニューヨーク。
完
う~ん期待通り「1」のラストシーンを示唆するものが出てきましたね。
その後はウィルスの繁殖経路を地図として見せてくれました。
日本も思い切り感染してたなあ。
しかし、これに至る伏線がややゴリ押しのような・・・
フランクリンが、たまたまそこに居たおとなりさんにくしゃみをする(マスクしろよ)のも無理やりなんですが、それ以上にアルツハイマーが再発した父親が車に乗ったシーンで「パイロットの俺が車に乗れなくなるだろうが!」と言ったシーンでは笑っちゃったよ。
どう考えても不自然なセリフだったのでオチが読めちゃったじゃないか!
あとおとなりさんはどう考えても被害者なんで、悪役っぽい描き方はちょっと気の毒です。
そういえば、作中「有人宇宙船が行方不明に・・・」というTVの報道がありました。
これは「1」の宇宙船だったのかもしれません。
また、シーザーが自由の女神の人形で遊んでいた描写もありました。
「1」に繋がると思われるシーンがいくつもあるのは嬉しいですね。
以下ちょっと補足
~シーザーの表情~
作中もっとも印象に残ったのは、シーザーの表情そのもの。
主人公と恋人がキスしているのを見てやきもちを焼いたり、
犬がリードにつながれているのを見て、もの寂しげになった表情は忘れられそうにありません。
シーザー役のアンディ・サーキスさんは、「ロード・オブ・ザ・リング」の2章と3章でも、人間ではないキャラクター(ゴラム)を演じていました。
~この映画のテーマ~
キャッチコピーに「これは、人類への警鐘」とあるとおり、
主人公の恋人が「(シーザーが)好きだけど、怖いわ。用心が必要よ」といったように、
この映画は「アダムとイヴ」がチエの実を食べたエピソードような、「禁忌に触れる」ことがテーマとして内在していると思います。
人間が開けてしまったのは、猿たちが人間に反乱を起こすという「パンドラの箱」。
それは現代医療や、社会に対しての警告でもあるのでしょう。
アルツハイマーの薬を新しく投与しようとした主人公に対して、やんわりと拒否する父親のシーンには、「ターミナルケア」の考えが意識されていたのかもしれません。
~一作目とは「逆」の内容~
面白いのが、この映画の展開は「1」を踏襲しているシーンが多くあること。
そして「1」とは猿と人間の立場が全く正反対なのです。
・冒頭の母猿が人間に捕えられる→人間(チャールトン・ヘストン)が猿に捕えられる
・人間が猿を支配している世界→猿が人間を支配している世界
・猿の行動に、数人の人間が協力する→人間の行動に、数匹の猿が協力する
・猿がしゃべれるのに驚く人間→人間がしゃべれるのに驚く猿
支配している・されているものが違っても、やってることは全く一緒。
「人種(というのも語弊がありますが)が変わっても、歴史は繰り返される」という皮肉なのかもしれません。
オススメレビュー↓
心のままに映画の風景 猿の惑星:創世記(ジェネシス)
Apes That Can Say .....-『猿の惑星 創世記』感想 - The Transformation of the World into Film
でも、物語的には、私は一番初めの話(C.ヘストン)に繋がるのかと思ってました。
理由は,Bright-eyes、との命名。
確か、テーラーさんは,Smart-eyes。
それと、チョット唐突でしたが、行方不明になった有人宇宙船。
これって、宇宙空間の時間の乱れに飛び込み、それが第1作に?
でも、ナンカ嫌だったのは、実際には、アメリカの製薬会社だけでなく、実際に之に似たようなことが、行われているのではと言う気がしたことです。
それと、アメリカ人のエゴイズム(会社に隠れて人体実験、チンパンジーの勝手な飼育、買収など)これも嫌でした。
それから、騎馬警官の出現は「多分、猿が馬を怖がるから」だと思います(ドッカで聞いたことがあります)
> Bright-eyes、との命名。
>
> 確か、テーラーさんは,Smart-eyes。
そう一作目で呼ばれていたのですね。
> それと、チョット唐突でしたが、行方不明になった有人宇宙船。
>
> これって、宇宙空間の時間の乱れに飛び込み、それが第1作に?
これは展開を忘れていました。追記しておきます。
> でも、ナンカ嫌だったのは、実際には、アメリカの製薬会社だけでなく、実際に之に似たようなことが、行われているのではと言う気がしたことです。
>
> それと、アメリカ人のエゴイズム(会社に隠れて人体実験、チンパンジーの勝手な飼育、買収など)これも嫌でした。
これこそが「禁忌に触れる」という描写なので、必要なものではあったと思います。
> それから、騎馬警官の出現は「多分、猿が馬を怖がるから」だと思います(ドッカで聞いたことがあります)
本当ですか!調べてみます。
私は映画を見てシーザーが大好きになりました。
確かジェイコブを助けなかったチンパンジーはシーザーではなく研究所で最初に113を投与されたチンパンジーだったと思います(名前は忘れました)。
シーザーが人間を見捨てる→別の猿(113を投与されていた)がまた見捨てるという流れだったと思います。
誤解を生む表現だったので訂正しておきます。失礼いたしました。
コイツが居なきゃ仲間のデカいゴリラ死ななかったのにって
仲間を目の前で殺され、複雑な思いの中で揺れて
でも自らは人を殺したくはないので
最終的に見捨てる結果になったのかと
> シーザーがJコブ見捨てた理由は仲間が殺されたからじゃないの?
> コイツが居なきゃ仲間のデカいゴリラ死ななかったのにって
> 仲間を目の前で殺され、複雑な思いの中で揺れて
> でも自らは人を殺したくはないので
> 最終的に見捨てる結果になったのかと
そうですね・・人間に虐げられ、さらに仲間も殺されたのであの結果になったのは納得できます。
ご指摘感謝です。追記しておきます。
第?作だったか、忘れたのですが、猿の惑星を脱出したコーネリアスでしたかの夫妻が、時空を超えて、過去のに戻る(と言っても、現代なのですが)
で、話は忘れましたが、最後に子供をサーカスに残し、そのチンパンジーの子供が何か言葉を発して、終わったように記憶してます。
ワタシャあ、この子供こそが続編のネタだと思っていたのですが。(前から、気になっていたのです)
これと、シザーが出会って、それこそ、急速に知力が発達して・・・・
妄想のセカイですね。
そこからすると、この映画は今までのシリーズとは乖離したパラレルワールドのような設定なのかもしれません。
続編は作りにくいでしょうが、このクオリティなら、是非制作して欲しいですね。