笑顔になれない 映画「エスケイプ・フロム・トゥモロー」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:5/10
一言感想:ハハッ(ひき笑い)
あらすじ
家族とともに“夢の国”のテーマパークに訪れたジムは、電話で前ぶれなく会社からクビを宣告されてしまう。
ジムはその後から美女ふたりを追いかけ、ときおり奇妙な妄想を見るようになるのだが……
※某企業がとっても怖いので伏せ字満載でお届けします。
この映画は世界一有名なテーマパーク・ディズ○ーランドでゲリラ(無許可)撮影をして完成した作品です。
某D社が著作権に厳しいことは周知のとおり。
ニコニコ動画でD社に関係した動画が投稿されると「うp主は削除されました。」「夢の国チキンレース」「手の込んだ自殺」というタグがつけられるくらい、ケンカを売るのはヤバい行為なのです。
製作者は命が惜しくないのか、ポスターから挑発している始末でした。

ついでに本国の公式サイトでは“訴えられてない日数カウンター”を設置していました。

公式Twitterもあのネズミの「ハハッ」という笑い声をふつうに使っていたりと危険なかほり。ムダに心配になりますね。

映画の出来や志はともかく、そのチャレンジ精神は認めるべきところでしょう。
撮影中はそれなり苦労したそうで、同じ場所を何度も出入りしていたら怪しまれたりもしたのだとか。まあそのくらいですんでよかったよね。
さて、肝心の映画の内容なのですが……予告編を観て、幻想的で、ダークな美しさを感じられる作品を期待する方はとりあえず観るなと言っておきます。
恐ろしいことに、作中の6割くらいがおっさんが夢の国でスケベな妄想をするシーンです。前半話進まねえし。
しかも、ゲ○やう○こが笑いどころとして出てきてすげえ汚いです。笑えねえし。
そりゃ100点満点で5点つける人(←ネタバレ注意)だっていますよ。
R15+指定は当然。良い子はおとなしく「マレフィセント」をチョイスしましょう。
そんな文字通りク○な内容なのですが、個人的にはこれがけっこう楽しめてしまいました。
なぜかと言うと、単純にモノクロの画で本国のディ○ニーランドを探検するだけでけっこうおもしろいから。
「あ、ここ日本と同じだ」と気づいたり、モノクロならではのいつもとは違った雰囲気があったり、家族で遊園地を訪れたときの“あるある”もあったりするので、展開がダラダラしていても意外と退屈しないのです。
本国の夢の国を知っていると、より楽しめるのかもしれません。
<本国のディズ○ーランドをよく知る人のとても参考になる感想はコチラ>(ほんの少しだけネタバレ注意)
正直、この映画はディズ○ーランドを舞台にしていなかったら、観れたもんじゃなかったでしょう
伏線もそれなりに張っており、撮影や編集や演出にも安っぽさを感じません(一部合成っぽいところもあったけど)
テーマも明確で、しっかり製作者のメッセージは伝わってきました(そのメッセージがいいものかどうかは別の問題)。
本作が描いているのは「裏の顔」です。
夢の国であっても○ィズニーにまつわる都市伝説はいろいろとありますし、事故だって起こりますし、数日前に本国では小児性愛者のキャストが逮捕されたりもします。
本作ではそうした“一見美しいものの裏側の醜さ”をただただ描きたかったのでしょう。
音楽もよかったですね(むしろ音楽でごかましているとも言う)。どこか本家を思わせるものでありながら、ギリギリの線でパクっていない絶妙さがありました。
![]() | 1350円 powered by yasuikamo |
まれに見る低評価を見てむしろわくわくしていたのですが、ク○映画好きとしてはまだまだこんなもんじゃ満足できませんね(どうかしている発言)。
そんなわけでそこそこ誉められるポイントもあるのですが、この映画の最大の問題は主演のおっさんの魅力のなさだと思います。
おっさんが美女ふたりを追い回すくだりは心底どうでもいいし、胸毛がぼーぼーで絵ヅラがすげー悪いし、性格もただのダメオヤジで威厳のかけらもないです。
観ているこっちはモノクロの美しいディズニーランドを冒険したいのに、こいつの妄想でむしろジャマされてしまう印象さえありました。
一方、子役はすっごくかわいいのでこっちのほうが主役のほうがよかったんじゃないでしょうか。オヤジの汚さをそれなりに相殺してくれました。

また、いろいろなところで中途半端というところも大きな欠点。ジャンルすら不明確です。
うまくやれば、ディ○ニーランドで阿鼻叫喚の地獄絵図を展開するホラーにもできたでしょうし、ミッ○ーやグー○ィーやくまの○ーさんが襲ってくる不条理なブラックコメディにもできたはず。
しかし、できあがった映画はどちらの方向にも振り切れておらず、その印象をひと言で表すと「変な映画」だけで終わってしまいます。
せっかくゲリラ撮影したのに、もったいないですね。
どうでもいいですが、この映画にはひとつ謎があります。
前述のミッ○ーマウス風のポスター、なぜか日本版だと指が5本になっているのです。

※ゲーム「Left 4 Dead」のパッケージのように、4本指であることに差別的な意味があり規制されたのでは?とコメントをいただきました。


結論を言うと、まったくもっておすすめしません(笑)。
でも、映画が終わったときのあの「やるせなさ」を体験するだけでも観る価値はあると思いますし、それほどディズ○ーをディスっている印象もないので、ディズニ○好きも観てみてもいいのではないでしょうか。
ちなみに、この映画は昨年の超駄作「R100」に似ています。嫌いな方は観ないほうがいいでしょう。
主人公が現実逃避しして妄想に囚われるプロットといい、子どもが重要な役割になることといい、ギャグの下品さといい、わりと共通点が多いのです。
まあ、ちゃんと観客を楽しませようとする気概が感じられるだけ、R100よりは2億倍くらい、いい映画だと思いますけどね。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓
~関係ありません~
さて、本作の冒頭には、予告編でも流れていた“断り書き”が出てきます。
「ディ○ニー社とは関係ありません」と。<フィクションです。
いや、関係あるから。作中には○ッキーや○ーフィーやく○のプーさんが思い切り出てきたから。これ、本作の「なんかケンカを売っている」雰囲気に一役買っています。
笑ったのは、後に「ディ○ニー社の陰謀か!」と主人公が訴えたときに思い切りピー音が入っていたこと。いまさらすぎませんかね。
~隠れ○ッキーがこんなところに~
前半は
「家族のうち息子が男の子向けのアトラクション(バズ・ラ○トイヤー)に乗りたいから、パパとふたりだけで行ったけどすごい行列のうえに乗り物に不具合があって、その後に乗ったゴーカートのほうが楽しかった」とか、
「二手にわかれた相手を待つため、ママと娘がレストランに行ったけど、ぜんぜんお腹がすいていなくて食べ残しちゃう」など、遊園地のあるあるネタが続きます。
ふつうの遊園地のエピソードと違うのは、ときどきアトラクションのディ○ニーキャラの顔が豹変する妄想を見たり、主人公・ジムがフランス人の美女ふたりを追いかけ回すこと。
ジムは美女ふたりの尻をじっと眺めたり、プールで奥さんの目を盗んで近づこうとしたり、どさくさにまぎれてフランス語会話のガイドブックを買おうとしたり、わりと本気でダメダメです。
中盤では、ジムはとあるおばさんと出会って、子どもが遊んでいる隙にホテルの部屋でセックスまではじめます(最低)。
ここでおばさんは、あえぎながらジムに「隠れミッ○ーを突いて!」とほざきました。そんなところに隠れているわけねーだろ!
ちなみにこのおばさん、「ディズ○ーのプリンセンスは高級売春婦なのよ」と、ガチで訴えられそうなことばも放っていました。
プリンセンスが(買春をしている男の象徴として)アジア人の男に囲まれている画もギリギリだよなあ……<アジアのサラリーマンに失礼ですね
~SF展開に~
そんな感じで映画の貴重な1時間を費やした後、ジムはいきなり拉致されてしまい、スペー○・シップ・アースの下の怪しげな研究所に連れてこられます。
(このとき、90分の映画にも関わらず“休憩”(intermisson)が入ります)
研究所の男は「君が持っているのは壮大な妄想力(imagination)だ、かつてのウォルト・ディズ○ーもそうだった。目的を果たす前に死んでしまったが……」とジムを賞賛します。
それはつまり、妄想力を夢の国のアトラクションのアイデアに利用していたってことですかね。でもそのオヤジはスケベな妄想ばっかりだったから夢の国には使えないだろ。
あとこのときの操作パネルに「siemens」という企業のロゴが思い切り見えたのは気のせいでしょうか。たぶんそうじゃないと思うよ。
オヤジはボンドの中身をブシュッとひねり出して(見た目は精○)、パネルを故障させて脱出します。
その後に出会ったのは、前述のセックスをしていたおばさんでした。
~災いは起こる~
おばさんは、かつて自分が夢の国のキャストであったと告白します。
若い頃の彼女は「プリンセンスなら許される」と思い、子どもにハグしていたりしていて、あるときそれが問題になってしまってキャストをやめてしまったそうです。
彼女は、夢の国であっても“首切り”の事故が起こることも口にしていました。
(オープニングのビッグサンダー・マ○ンテンの映像も、その“首切り”の事故のものでした)
ジムが休暇中に仕事のクビを言い渡されていたのも、現実の不幸が襲い掛かってくるという意味で、皮肉的ですね。
彼女はジムにこう訴えます。
「災いはどこにでも起きる」
「ずっと笑顔なんて無理よ。シワだってできるわ」
夢の国では悪いことは排除。
夢の国のキャストはいつも笑顔。
それが理想的なのでしょうが、そうはならないのです。
いかに夢の国であっても、それを作ったのは現実にいる人間で、キャストを演じているのも人間です。
そこでも悪いことは起きますし、笑顔を続けるのも難しいことなのでしょう。
~汚いもの~
ジムは、美女のひとりに唾を吐かれたたために、猫インフルエンザに感染してしまったようでした。
トイレを汚し(オヤジがゲリピーになる画を執拗に見せるのでトラウマになりそう)、助けてくれとドアを開けた息子に訴えたジムでしたが……息子はその訴えを無視し、扉をしめてしまいました。
妻がトイレを開けたとき……ジムはひきつった“笑顔”のまま絶命していました。
息子は、なぜ自分の父親を見捨てたのか。
ジムはイヤだと言う息子を無理矢理スペース・マウン○ンに乗せて吐かせちゃったりしていましたし、そのあたりで息子は“汚いもの”にウンザリしていたところがあるのかもしれません。
部屋にやってきたホテルマンたちは、トイレを奇麗に掃除し、そこに猫インフルエンザの痕跡などまったく残らないようにしました。
ホテルマンのひとりは、息子を見つけ、何かの“才能”を見つけたようでした(ジムと同じ“妄想力”なのでしょう)。
その後、人々の夢の国の光景がいくつものカットで映し出されました。
直前に汚いものや災いを見続けていたために、それはいままで見ていた夢の国とは違った、異様なもの(悪いものを排除した世界)として映ります。
これこそ、この映画の訴えたかったことなのでしょう。
一見奇麗なものの“裏”には、多くの汚物や災いが隠されているのもかもしれません。
~奇麗なもの~
最後に、猫インフルエンザを主人公に感染させた美女のひとりは、男(ジムと似ている)といっしょにホテルにやってきました。
彼女は“悪意”や“災い”を体現した存在なのでしょう。
ジムはあれだけ妄想をしながらも、(スペー○・シップ・アースが転がって大惨事になる妄想を見たために)彼女の誘いを断ることができたのですが、けっきょくは“ずっと笑顔”で死んでしまいます。
災いは、簡単には排除できないのです。
最後は、「THE END」の文字とともに、美女ふたりがティ○カー・ベルのような妖精として登場しました。
これは、最後には奇麗なものを見てほしいという製作者の優しさなのかも。“裏側”をさんざん見たせいで、奇麗だとはとては思えないのですけどね。
ネタバレ参考↓
エスケイプ・フロム・トゥモロー | 逃した魚は大きいぞ
Escape from Tomorrow 解説 - 俺の映画感想まとめ
参考記事↓
夢の国で無許可ゲリラ撮影?ディズニー”未承認”『エスケイプ・フロム・トゥモロー』とは? | Ciatr[シアター]
ディズニーファンはどう捉える?最大の問題作「エスケイプ・フロム・トゥモロー」がついに公開! | Banq [バンク]
怒る人はファン失格! ディズニー無許可映画の魅力と撮影秘話に迫る
あれも、もしかして今作の言う表と裏の象徴かもしれません。
カゲヒナタさんはディズニーアニメーションで表と裏を象徴するシーンは思い当たりますか?
LEFT4DEADのパッケージやドラゴンボールのピッコロの指の数など、
日本は差別関係で指の数に敏感みたいなので
そのせいかもしれませんね。
ディズニーはおちょくれても差別問題には勝てないのが皮肉・・・
> あれも、もしかして今作の言う表と裏の象徴かもしれません。
> カゲヒナタさんはディズニーアニメーションで表と裏を象徴するシーンは思い当たりますか?
あんまりディズニーは“毒”を排除しているような気がするのであまり思い当たらないですね。
悪役の意外な顔とかもっと見せてほしいとほしいと思いました。マレフィセントはそういう作品だったけど。
> LEFT4DEADのパッケージやドラゴンボールのピッコロの指の数など、
> 日本は差別関係で指の数に敏感みたいなので
> そのせいかもしれませんね。
> ディズニーはおちょくれても差別問題には勝てないのが皮肉・・・
なるほど!画像とともに追記させてください。
ネズミ会社は動きをみせるのでしょうか。
それと、4本指は差別用語だった気がします
指の本数が修正されてたりする。
ヤクザのけじめやら欠指症への配慮と言われるが原因はわからない。
なんなんだろうね。