役者だからできたこと「スマグラー おまえの未来を運べ」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:6/10
一言感想:変態漫画的バイオレンス拷問映画
あらすじ
1999年世紀末。
青年・砧(妻夫木聡)は役者の夢を諦めたフリーターだった。
彼はひょんなことから300万円の借金を背負い、ジョー(永瀬正敏)とジジイ(我修院達也)と呼ばれる男ともに、ヤバイ荷物を運ぶ「スマグラー」の仕事を手伝うことになる。
同じ頃、「背骨」(安藤政信)と「内蔵」(テイ龍進)の殺し屋コンビは、ヤクザ「田沼組」の組長の殺害を試みる。
「鮫肌男と桃尻女」「REDLINE」の石井 克人監督最新作です。
今作は「闇金ウシジマくん」が大ヒット中の漫画家・真鍋昌平の「スマグラー」が原作となっています。
![]() | 真鍋 昌平 680円 評価平均: ![]() powered by yasuikamo |
![]() |
「背骨」の刺青など、原作のリスペクトも大いに感じるのですが、それ以上に影響を感じるのがクエンティン・タランティーノ監督への敬愛でした。
・一見して妻夫木聡演じる青年が主人公に見えるが、実際は多くの人間が入り乱れる群像劇
・構成は章立て
・暴力描写は直接的なものはほとんどないが、しっかり痛みを感じるエグさもあり
これらは原作から離れ、監督が思うがままに撮影したような描写にも感じます。
また嬉しいのがその豪華キャスト。
日本映画界トップクラスの役者・妻夫木聡が「役者の夢を諦めたフリーター」という時点でたまらないし、ゴスロリの服を着た金融街者の社長の松雪泰子、ちょい役で登場する松田翔太と大杉漣、 安藤政信のかっこよさ、そして極めつけは高嶋政宏演じる変態。
もう最高です。
その弟の高嶋政伸さんも「探偵はBARにいる」で死ぬほど気持ち悪い殺し屋を演じていましたが、今回のインパクトはそれ以上でした。
この描写は全く笑えない人もいるでしょうし、嫌悪感しか感じられない人がほとんどだと思います。
でも自分は悪趣味なんで大好物です!イエス!
さて今作でもっとも好き嫌いがわかれるのは、群像劇的ストーリーよりも、その演出でしょう。
スローモーションでアクションの動きをゆっくりとみせるのはいいんですが、後半のありえないアクションシーンでは「否」を突きつける人が多いんじゃないでしょうか・・・自分はこれも好きですけど。
ストーリーが意外にあっさりしていている上、映画としてはまとまりが悪いところもありますが、この「漫画的」な描き方が気に入れば問題なく楽しめると思います。
ちなみにタイトルにある「smuggler」は「密輸業者・密輸船」という意味。
文字通り彼らはヤバイ荷物を「密輸」していますが、それ以上に「殺し」という闇社会に青年を連れ込んだ、というような含みも感じられます。
かなりクセのある映画であることは間違いありません。
・ケレン味溢れる監督の感性や漫画的演出が苦手な方
・かなり痛い拷問シーンがあるので、そういうのが苦手な方
は素直に避けたほうがいいでしょう。
「鮫肌男と桃尻女」が好きな人には文句なくオススメですよ。
満島ひかりさん演じる「ヤクザのアネさん」も、予想通りなかなかハマっているので、彼女やそのほかの役者のファンも是非ご覧あれ。
以下、ネタバレです 結末に触れまくっています↓
本作は
第0章 始まりの夜、雨
第1章 運送屋
第2章 背骨と内蔵
第3章 荷台
最終章 覚悟
という構成になっています。これに沿いストーリーを追ってみます。
~第0章 始まりの夜、雨~
「1999年世紀末、俺は相変わらずのクソヤローだった」
そう青年・砧(キヌタ)はつぶやきます。
はじめに「666」という数字がひっくりかえり、1999という年号になります。
666は「新約聖書」の「ヨハネの黙示録」に出てくる獣の数字であるとともに、不吉の象徴でもあります。
これから青年に与えられる苦痛、それを暗示しているのかもしれません。
そりゃ裏ロムとかいうものに手をだしちゃいけないよね。
~第1章 運送屋~
背骨の、スローモーションで魅せるヌンチャクアクションが格好よかった!
そのあとで死体の始末に来る「掃除屋」たちがそのへんのおばちゃんっぽいリアクションで笑ってしまいました。そんなん雇うのかよ!
「俺は死が怖い」と言い、殺したはずのロン毛男の幻影を見る背骨。
彼が死を恐る理由は後半明かされます。
ジョーはジジイにこう言っていました。
「今までしてきたことが、今日のお前の結果だ」
さらにジジイはキヌタにこう言います。
「怠けていると、年食ってからでっかいツケが回ってくるぞ」
そう映画は警告し、後半の満島ひかりの言葉ににもそのメッセージはつながっていきます。
~第2章 背骨と内蔵~
松雪泰子さんは鼻血を出していても美人ですね。
まさかの「内臓」が同性愛者。
張(阿部力)とのカラミのシーンは誰が望んでいるのかわかりません(笑)が、絵的には面白かったです。
殺し屋たちは軽くなでるけど、逆上した内蔵のせいで結局捕まる背骨・・・このなんだこりゃ展開は賛否分かれそうです。
~第3章 荷台~
高嶋政宏が部下に「ブスの嫁だろ?」と言い→部下「ブスじゃないです!」と返される。
股間を潰すという嫌なシーンでこのギャグ。正直笑いにくい(笑ったけど)。
あっさり内臓が死んでいるのには驚きました。
そしてジョーを脅す田沼の妻。
満島ひかりさんはこの手の「キツイ性格」の女性が似合っています。
そしてトラックの中で話し始める背骨とキヌタ。
背骨は「俺は死が怖い、人間は細胞が何個もつながって出来ている、ひとつの細胞にもいみがある、俺はそれを壊してきた」と語ります。
彼は殺し屋ですが、死が怖い以上に、死に対して後ろめたい感情を持っていたのです。
さらに田沼の妻(満島ひかり)は、キヌタから貰ったたこ焼きを捨て、こう説教します。
「私だったら、自分の居場所を作るために、争いを避けたりしない」
キヌタの性格は、消極的かつ内向的です。
映画は「自分の人生のために」そうならずに戦え!と教えているのです。
~最終章 覚悟~
まあ実際は~最終章 拷問~なのですが。
背骨の替え玉となり、拷問を受けるキヌタ。
めさくさ痛そう&長いので観ていて辛かったのですが、あまりに高嶋政宏さんが楽しそうに変態を演じていらっしゃるので笑ってしまいそうになります。ていうか笑いました。
何故か兵隊の格好+オムツとかそりゃあ笑いますって。
一方背骨はチャイニーズ・マフィアを皆殺しにし、その場所にジョーも機関銃を持って駆けつけます。
そして機関銃をクモのようなありえない動きでかわしまくる背骨。
なんじゃこりゃあ!おふざけがすぎるけど笑ったので許す!
そしてジョーは「必ず頭部を狙ってくる」ことを予測して勝利。
その後田沼の妻が黒幕であることがわかりますが、いやにあっさり流します。
あと背骨は眉間を撃たれたのに即死していないのはなんででしょうね?
そして足を「CUT」されそうになるキヌタ(恐怖のためか白髪になっている)。
彼はジョーに言われた「本気の嘘をつき、真実にしてしまえ」ということばを思い出し、背骨になりきることを思いつきます。
そして背骨と同様、拘束具を外して大逆転を遂げるキヌタ!
なんで拘束具が一気に外れんねんというツッコミどころはあるのですが、最高に爽快なシーンでした(拷問シーンがキツかった反動で)
*ジョーの細工では?とご指摘をいただきました
その後に変態拷問者が田沼の嫁に言ったことは、「彼は本物の背骨でした!間違いありません!」でした。
序盤では彼の「演技」により、警官を出し抜いたシーンもありました。
彼が役者を目指していたことが、彼自身を救ったのです。
背骨が死ぬ前にジョーに頼んだことは「キヌタに『ありがとう』と伝えてほしい」でした。
それに対してのキヌタは「そんなささいなことで・・・」と言うだけでした。
キヌタはたこ焼きを背骨にあげたことを思い出していたのでしょう。
あれだけひどい拷問を受けても、背骨を責めることがなかったキヌタ。
自分を卑下し、田沼の妻にもその性格をなじられていたキヌタですが、彼のその言葉には尊さを感じ得ました。
最後にキヌタは「お前はクビだ」と言われ、スマグラーの仕事から解放されます。
正直周りに何もない土地に降ろしてどうするねんとか、足も拷問受けたのに普通に歩いているのはどうして?とか、退職金はもらったけど借金の300万はどうなったんだ(あとでジョーが肩代わりしてくれたorすでに貯まっていたのかも?)とかツッコミたい部分もあるんですが、解放感あふれるラストに仕上がっていると思います。
こうしてみると小日向文世さんがいてもいなくてもいいような立ち位置になっていたり、登場人物がそれほど交錯したりはしないので(コンビニで内蔵がジョーに喧嘩を売るシーンくらい?)群像劇としてはそれほど出来はいいとは思えません。
アクションや人物描写よりも、終盤の拷問シーンばかりが印象に残ってしまうのはバランスが悪いし、独りよがりな印象も受けます。
でもそれをカバーする勢いと、監督らしさがギュッと濃縮されたテイストに魅了された2時間でした。
素直に面白かった!(特に変態が)
ps.エンドロールで「田沼組」の組長が島田洋八さんであると表示されたときに、劇場内で笑いが起こっていました。
こちらも役のイカレっぷりがすごかったね!
ps2.キヌタがビデオで観ていたのは、松田優作さんが演じていた映画「野獣死すべし」。
その息子である松田翔太さんが出演しているのも、ファンにとっては感涙ものかもしれません。
スマグラーのレビューを検索してこちらに参りました~。
私は妻夫木さんのファンでこちらの映画を見たのですが、ファンにとっては拷問シーンは痛すぎてつらいものでした。
でも見終わったあとにスーパーフライの曲で妙にスカッとしてしまったのも事実なわけで。
ただ私がひっかかったのは、あれだけ拷問で足に熱い棒のようなものをさされたのに、ラストで普通に歩いていたのと、あれだけ腫れあがってた顔も元に戻っていたのがあまりに不自然に思えてしまいました・・
もちろん妻夫木さんのファンなんで、お顔に関してはファンのためなのかな?なんて思ったりもしましたが・・
でももちろん映画や漫画なんで大げさに脚色してるとは思いますが、実際にこういう世界(拷問とか)ってあるのかな・・、なんて想像するとめちゃくちゃ怖くなりました。
今は原作を読もうか思案中。結構原作と違う点も多いのでしょうか?エンドロールに漫画の映像が出てきて高島さん演じたサディスティックなヤクザの姿のあまりの違いに少々興味がわいたというか。(笑)
ちなみに、松雪泰子さんの鼻血とは、ラストですかね?
私、妻夫木さんの拷問シーン以外はちゃんと見たと思ってたんですが、松雪さんなんで鼻血出してたのかわからなくって妙にひっかかってしまって。
教えていただけたらよりスッキリした気分になれそうなのでよろしくお願いします☆
> 私は妻夫木さんのファンでこちらの映画を見たのですが、ファンにとっては拷問シーンは痛すぎてつらいものでした。
> でも見終わったあとにスーパーフライの曲で妙にスカッとしてしまったのも事実なわけで。
顔に傷がつくシーンはつらいものがありました・・・
主題歌はピッタリはまってましたね。
>
> ただ私がひっかかったのは、あれだけ拷問で足に熱い棒のようなものをさされたのに、ラストで普通に歩いていたのと、あれだけ腫れあがってた顔も元に戻っていたのがあまりに不自然に思えてしまいました・・
> もちろん妻夫木さんのファンなんで、お顔に関してはファンのためなのかな?なんて思ったりもしましたが
足の指の間だったり、致命的なところが損傷したわけではないのでしょうが・・・それにしたって不自然ですよね。
>
> でももちろん映画や漫画なんで大げさに脚色してるとは思いますが、実際にこういう世界(拷問とか)ってあるのかな・・、なんて想像するとめちゃくちゃ怖くなりました。
あんなんはなかなかないですよーいままで見た中では「ホステル」も怖かったです。
>
> 今は原作を読もうか思案中。結構原作と違う点も多いのでしょうか?エンドロールに漫画の映像が出てきて高島さん演じたサディスティックなヤクザの姿のあまりの違いに少々興味がわいたというか。(笑)
原作とは結構テイストが違う感じに思えました。負けず劣らずグロいので見るときは注意を。
> ちなみに、松雪泰子さんの鼻血とは、ラストですかね?
> 私、妻夫木さんの拷問シーン以外はちゃんと見たと思ってたんですが、松雪さんなんで鼻血出してたのかわからなくって妙にひっかかってしまって。
> 教えていただけたらよりスッキリした気分になれそうなのでよろしくお願いします☆
松雪泰子は、高嶋政宏さんに殴られるシーンで鼻血を出していました(中盤です)。
自分にとっては高嶋政宏さんの怪演が見られただけで満足な映画でした。
私、おそらくそのシーンの頃一回トイレに行ったのを思い出しました。。で、きっと見落としていたのだと思います。すみませんでした!
あとさきほど検索をしていたら高島さんのインタビュー記事を見つけて読んだのですが、こちらの役はかなりお気に入りのようで、ものすごくテンション上がってインタビューにもこたえていらっしゃいました。(笑)
実際にこういう趣味のある方にも取材されたりもしたとか。私にはその事実の方が恐ろしく思えてなりませんでしたが。。。
銃も仕込んでましたし
> 銃も仕込んでましたし
ご指摘感謝です。