自己肯定の物語 映画「メアリー&マックス」紹介
![]() | フィリップ・シーモア・ホフマン 3619円 評価平均: ![]() powered by yasuikamo |
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個人的お気に入り度:6/10
一言感想:予想以上にブラックテイストアニメ
あらすじ
メアリーは友達のいない8歳の女の子。
彼女はとある思いつきから、異国の地のマックスに手紙を送る。
マックスはアスペルガー症候群を抱えた中年の男。彼もまた、友達がいなかった。
彼はメアリーから届いた手紙に困惑していたが、苦心して返事を書く。
彼らは手紙を送り続け、次第に友情を育んでいく。
非常に高評価だったので、観るのが楽しみだった本作。
しかし観てみると、これは非常に好き嫌いの分かれる作品だと思いました。
作風はかなりブラックで、子どもには見せれない表現もありますし、デートにも向いていないでしょう。
「自分は不幸だ」と思っている人にはちょっと辛い作品になっていると思うし、後半の展開はあまり好きではありませんでした。
秀逸なのが2人の主人公の描写。
初めにメアリーは「泥水の目をした女の子」「アザはウンチの色」をしている、とナレーションで示されます。
なんてひどい映画なんだと思うところですが、これがラストに意味のあるものになるのです。
マックスは矛盾を抱えた社会に迎合できなくて、周りの人を傷つけてしまうことや、感情が抑えきれずパニックを起こすこともままあります。
自閉症(アスペルガー症候群)者の悩みを体現したマックスのキャラクターに、自分はめいいっぱい感情移入してしまいました。
音楽がこれまた素晴らしかったですね。
![]() | 2143円 powered by yasuikamo |
メインテーマのメロディはやみつきになりそうだし、劇中歌「ケ・セラ・セラ」の使い方もうまいと思います。
大絶賛の声が多い作品ですので、観て損は無いでしょう。
ただし、自分のように「受け入れられない人もいる」ことを念頭において、観て欲しいとも思うのです。
以下は作品のテーマと展開の不満点について書いています。未見の方や、この映画が好きな人は要注意↓
この映画の不満点、それは「不幸に不幸が重なる」物語と、この映画で示されるテーマの親和性が低いことです。
後半、うぬぼれたメアリーの行動に、マックスは怒ります。
それはマックスにとって、理解できない社会の人間によって、自らが晒し者になることに他なりません。
メアリーが悪いのは確かです。
しかし、理解していなかった自分を責め、おいつめられるメアリーの姿は、本当に観ててつらいのです。
そして、このメアリーの不幸をマックスは知らないまま、「許しの品」を贈るのです。
メアリーが幸福になったのも、また不幸になったのもマックスがいたからです。
なので、マックスには、言いようのない嫌悪感を持ってしまったのも事実なのです。
「こんなに不幸になっているのは、お前のせいなのに、『許し』なんて」というように。
仕方のないことなのですが・・・
せっかくの「欠点は選べないけど、友達は選べる」というテーマが薄れ、マックスの台詞も説教臭く感じてしまいます。
このテーマは究極の自己肯定のことばでもありますが、彼らの境遇が不幸過ぎて、なかなかそう思えないのも辛いのです。
そして、「友達を選んだからこそ、得たことがあった」という展開が見たかったのに、ラストのこの顛末。
素晴らしいラストシーンではありますが、やっぱりテーマのことが如実にわかるシーンが欲しかったな、とも思います。
全体としてはとてもいい作品だとは思います。
ラストのナレーションの一言や、タイプライターの「M」のアームの使い方は大好きです。
だとしても、もう少し彼らに対する優しさが欲しかった。
そう思うのは、この欠点ばかりを抱えたメアリーとマックスが愛おしくて仕方がなかったからだと思います。
オススメレビュー
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