使い捨て神様の戦い「インモータルズ」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:7/10
一言感想:血沸く!肉踊る!スプラッター神話!
あらすじ
巫女・パイドラ(フリーダ・ピントー)は、ハイペリオン(ミッキー・ローク)と呼ばれる男が、捕らえられた邪悪な神々であるタイタン族を蘇らせることを予見する。
そして農夫のテセウス(ヘンリー・カヴィル)の元にハイペリオンの軍が強襲する。
決死の覚悟で軍に突き進むテシウスだったが・・・
「ザ・セル」のターセム・シン監督最新作です。
この映画の魅力を言えばそれはもう簡単でして。
①監督ならではの美しい映像
②「300〈スリーハンドレッド〉」のスタッフによる、スローを巧みに使った大胆アクション
③グロ描写
いや本当この3つは最高ですから!
圧倒的な映像美は、監督の前作「THE FALL 落下の王国」から受け継がれています。
![]() | リー・ペイス 2650円 評価平均: ![]() powered by yasuikamo |
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ちなみにターセム監督作品の衣装デザインは日本人である石岡瑛子さんが手がけています。
この作品で見せたコントラストが鮮やかな衣装は今回も健在。
敵の甲冑&仮面のデザインなど、世界を彩るセットを観るだけでも楽しめます。
自分は2Dで観たのですが、この色鮮やかな発色を期待するのであれば、3Dにこだわる必要はないでしょう。
そしてこの映画の最大の魅力(と言い切ってしまう)は、残虐なアクションシーンです。
予告編ではおとなしい印象ですが、本編ではこの映像の中にも血糊が飛び散り、首がもげ・・・と大変アグレシッブな演出がなされています。
その人体破壊描写は美しさを感じるほど凄惨。
悪趣味ではありますが、映像の美しさのおかげか、それほどあとには残りません。
終盤にはそんなアクションがてんこ盛りなので、血がとにかく見たい!なんて人には大満足できる作品だと思います。
しかし・・・はっきり言って、ストーリーのほうはあんまり面白くありません。
神々の設定もいろいろ突っ込みたい部分はあるし、人物の掘り下げも足りないし、盛り上がるはずのシーンも伏線の積み重ねが足りません。
よく言えば考えずに観れますが、悪く言えば深さはありません。
単純明快なのはいいのですが、展開にそれほど熱くなることはできませんでした。
ちなみにタイトルの「インモータル」とは「不滅」の意味。
「死を免れることができない」を意味する「mortal」の対義語です。
人間は当然死ぬので「mortal」であり、普通に考えれば「immortal」は神々のほうをさすことばでもあるのですが、この映画の神様は「お互いに殺しあっている」のです。一見全然インモータルじゃありません。
でもこれこそ面白いところで、この作品では「不滅」とは肉体の消失であると捉えていないのです。
それはラストで如実に描かれます。
神話の世界にこのような考えを取り入れたのは、なかなかに斬新に思えるのです。
まあ一番斬新なのはギリシャ神話をスプラッターにしてしまったことなのですが。
脚本の不出来さは認めざるを得ないところですが、ターセム監督作品が好きな人はそれだけで必見でしょうし、ギリシャ神話に詳しくなくても問題なく楽しめます。
字幕ではキャラクター登場ごとにキャラクター名を表示してくれる親切設計ですし、残酷描写を除けば意外と間口は広い作品です。オススメ!
キャラクター紹介はこちらでも映像として観れます↓
『インモータルズ -神々の戦い- 』キャラクター紹介/テセウス - YouTube
また今作の公開日は11年11月11日(本国でも同じ公開日)。
そればかりか上映時間もなんと111分。
けっこうオンリーワンな作品です。
以下、ネタバレです 結末に触れているかつツッコミ多数↓
~神話のキャラクターにいろいろ言いたいこと~
・テセウス
彼はミノタウロスを退治するエピソードで有名な方です。
母を弔いに行くまでの通路は迷宮っぽさもありますし、その後に戦う「野獣」はまんまミノタウロスです。
この映画ではアリアドネの糸ではなく、足を傷つけて、その血を道しるべにしていました。
・パイドラ
処女をささげるシーンでは「え、予言の力は?」と思ってしまったのですが(処女を失うと力が消える)、その後に彼女自身が「私の夢は災いを呼ぶ、この先の世界は自分の肌で触れたい」というシーンが大好きでした。
中盤では主人公に「見えるだけの、変える力がない力が、(天からの)授かりものか?」とも言われていましたし、彼女は自分の能力のせいで周りの人間が傷つくことを恐れていたのでしょう。
・ハイペリオン
ミッキー・ロークは大好きなのですが、この作品では悪のカリスマと言うよりも、飲んだくれの親父にしか見えなかった気が・・・そう思うのは「レスラー」の印象が強すぎるからでしょうか。
彼が裏切り者の股間をつぶすまでのくだり(この人あとでテセウスに即効で殺されてかわいそう)、オラクルの姉妹たちに「女ならでは苦しみを・・」というシーン、「平和的解決を・・・」と言っていた評議長の首を一瞬ではねるシーンでは怖さも見えました。
ちなみに彼が拷問に使った「牛の像」はファラリスの雄牛と呼ばれるもの。
リンク先のエピソードが非道すぎる・・・
面白いのは、彼がテセウスと同じような生い立ちであること。
・肉親を救えず、神の存在を信じれなかった
・農夫であった
違うのは、神がテセウスに味方したのに対し、ハイペリオンにはそうではなかったこと。
神によって部下が殺されたと聞いたとき、彼はどんな心境だったのでしょうか・・・
・ゼウス
雷使ってよ!(雷をつかさどる神様です)
なんで火のムチなのか小一時間問い詰めたい。
まあそれはそれとして、一番言いたいのは「人間に加担すると死罪だ!」って言っていたわりには、お前もテシウスにそうとう入れ込んでいるよねってこと。
「人間に手助け」というのはどれくらいの線引きで行われているものなのでしょうか・・・もしくは別の人に「罰を与える」役目を与えてもよかったと思います。
・アテナ
メドゥーサの盾を与えた人。
終盤の回転しながらタイタン族をぶっ殺す描写が最高でした。
・ポセイドン
神らしい能力使ったのこの人だけじゃん。
ていうか「晴天に雷がなっても恐れるな!」の予言もあんまり意味なかった気が・・・正面に津波は見えているんであって、予言のおかげで気づけたわけでもないし、主人公たちはめっさ叫んで恐れているし・・・
・アレス
彼が唐突に登場して、ハイペリオンの軍の頭部を次々とぶっ潰すシーンは今作一番のお気に入りシーンです。
いきなり残虐なので笑ってしまったよ。
火のムチで吹き飛びましたが、人体破壊されまくりのこの映画ではどうにも死んだように思えませんね。
それと↑のリンクの項目に「神話ではいいエピソードがない」とあって泣きそうになった。
・アポロ
名前が字幕で紹介された次の瞬間に死にました。
ほかにもヘラクレスがいた気がしますが、いつの間に死んだかもよくわかりませんでした(吹き飛ぶ首とか手とか、ぶった切られる胴体とかに気をとられて)。
~弓って結局あんまり意味ないやん!~
まずハイペリオンが血なまこになって探している弓のありかが違和感ありすぎです。
主人公が完全に偶然見つけたような描写だしなあ・・・巫女の予言とはなんだったのか。
まあそれは100歩譲っていいとして、せっかく奪ったのに一回しか攻撃に使ってないハイペリオンはなんじゃいな。
タイタン族を復活させる鍵でもあったのですが、惜しげもなく使っていいと思うのだけどなあ。
タイタン族復活のときに、テセウスは気絶して、ハイペリオンはどっかに行ってましたが、なぜテセウスをその場で殺さないのかも理解に苦しみますね。
~ラスト~
テセウスとハイペリオンとの最後の戦いで、テセウスが「俺は死んで伝説になる!」と言うのは違和感があります。
ゼウスは彼のことを「彼は危険を恐れない、恐れるのは愛するものを失うことだけ」とも言っていたので、もっと彼の信念に則したことを言ってほしかった、というのが正直なところです。
画的にも地味で、引きちぎられまくるタイタン族集団VS死にまくる神様たち(怒られないのか、これ)のほうが気になってしょうがないのも少し残念です。
彼が「目に焼き付けろ」とハイペリオンに言ったのは、自分自身の姿。
これは序盤の、目の前で母親を殺したハイペリオンの台詞と一緒です。
己の復讐を同じ方法で返す。そして予言どおり(画がぜんぜん違うけど)抱擁をかわす。
彼にとってこれ以上ない復讐でしょう。
その後は彼は昇天(「死んだ」わけじゃないけど)。
さらにくずれゆくタルタロス山によって、ハイペリオンの軍団が壊滅!
畳み掛けるような(都合のいい)ラストですね!
予告編でも見せていた「天空での格闘」は、本編ではさらに血糊で装飾されていました。
テセウスの戦いは終わることはなく、それは彼の子どもにも受け継がれるのでしょうか。
ハイペリオンは「子種は最も脅威になる」ということも言っていました。
テセウスの子どもが見た光景・・・それに彼も巻き込まれ、そして英雄になるのかもしれません。
中盤、「不滅の魂のために戦え(Fight For Immortality)!」と言い、テセウスは軍をたきつけていました。
その魂は、まさしく潰えることがないものでしょう。
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