ひねくれた大人には物足りない「friends もののけ島のナキ」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:3/10
一言感想:メインの話はとてもいいんだけどね・・・
あらすじ
もののけ島に、人間の赤ん坊「コタケ」が迷い込む。
赤鬼のナキと青鬼のグンジョーは、しぶしぶ面倒を見ることになる。
島の嫌われ者で、人間を毛嫌いしているナキだったが、コタケに次第に心を開いていく。
絶賛の声も多い作品なので批判するのは申し訳なく思うのですが・・・正直これはがっかりしました。
気になったのは
①ギャグがつまらない
②脚本が細かいところまで気が利いていない
③3Dを意識しすぎてうっとおしい止め絵
ということ。これらがいずれも深刻です。
①に関してですが、とにかく安直です。
簡単に言えば下ネタとか、お尻に火がついて大慌て!とかの子どもだましなのです。
序盤はこんなシーンばかりで観たことを後悔するレベル。
例えば「アーサー・クリスマスの大冒険」では大人が笑えるウィットの効いたコメディシーンがたくさんありました。
でもこの映画ではウ○○ネタで笑いをとります。
子どもにこの映画を観せにきた大人はガッカリするんじゃないでしょうか。
コメディシーンの音楽も寒さを助長しているようにしか思えない。非常に残念です。
赤鬼と赤ん坊の掛け合いは楽しいのですけどね。
②が個人的に一番不満です。
メインのストーリーはよくできているのですが、登場人物の心の移り変わりを十分に表現できてるとは言いがたいです。
これについては↓のネタバレで。
原作はベストセラー絵本「泣いた赤鬼」です。
![]() | 浜田 廣介 1470円 評価平均: ![]() powered by yasuikamo |
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この魅力をこの映画は十分に表現できていたのでしょうか・・・気になります。
③もちょっとね・・・・
自分は2Dで観たのですが、これ3Dで観ても相当ウザいと思います。
何故って、何かが飛び出すごとに画面がスローモーションになるのです。
登場人物が画面にせまってくるたびにスロー、何か飛んでくるたびにスローと劇中何回繰り返すんだって思いました。
これは「日本でも3Dアニメ映画を作ったんだぜ!」というアピールでもあるのでしょうが、そんなことは求めていません。自分は面白い映画が観たいだけです。
これだけこき下ろしましたが、赤鬼のナキと人間のコタケの交流、ラストの展開はとてもよかったです。
ここは素直に感動することができました。
アニメーションの質もいいし、キモカワイイキャラもいい。
でもそれで今までの展開が帳消しになるかといえばそうではないわけで・・・・
山崎貴監督の「ALWAYS 三丁目の夕日」はいい映画だと思うし、「SPACE BATTLESHIP ヤマト」も(個人的には)面白かったので、世間の評判はともかく、もうすこしこの監督に付き合ってみたいと思っていたのですが・・・・・もう当分は観ないでおきます。
前述のとおりメインのお話は十分面白いので、映画をあまり見慣れない人やお子様は楽しめるでしょう。
でも似ている映画の「モンスターズ・インク」を観たほうがいいと思います。
以下、ネタバレです↓結末に触れています この映画が好きな人は読まないほうがいいかも・・・ごめんなさい。
というわけで、前述の②「脚本が細かいところまで気が利いていない」ことをいろいろ書いてみます。
・ナキがコタケの兄をぶん投げて溺死させようとしている
後半では住民を助け、そして島に受け入れられるナキですが・・・このとおり人間に対しても普通に危害を加えています。
助けた住民の中にもコタケの兄がいます。
窮地を救ったとしても、あれだけでナキへの恐怖が薄まったとは考えにくいです。
同じく「共存」というテーマを描いた「ヒックとドラゴン」のラストの深さとは雲泥の差です。
・コタケの母の病気
いつの間にか映画から存在が消えうせました。
映画にはバリエーション豊かな「きのこ」が登場しているのですから、病気に効く薬のようなものを用意してもよかったのではないでしょうか。
・もののけ島の仲間の活躍がない
個性豊かな面々なのに、中盤に人間に化けただけ!
かわいいぬりかべみたいなのに活躍させろよ!YOU演じる「ミッケ」もいいキャラしていたのに!
しかもこの作戦
人間のふりをする→門番にバレる→村が大慌てで、もぬけのからになるというもの。
これでグンジョーは「うまくいった」とかほざきます。
おとりに使うだけなら変装する意味ないじゃん!
・「ゴーヤン」のいじめられっぷり
ゴーヤンはとにかくひどい目にあいまくりで、観ていて気の毒なだけで笑えません。
さらに、こいつはこいつでつるし上げられるナキとグンジョーに「あいつらが無理やりやったんだ~(事実だけど)」とか言う始末。
ちっとも成長も救いも見えません。最悪。
ほかにもコタケがナキとグンジョ―に火をつけるシーンも笑えません。
・敵のお侍×3
侍なのに何故ボウガンで戦うのか、
ヅラという安易な笑いをとる(笑えねえよ)、
というのはまあ一万歩ゆずって許せます。
でもこいつらいる意味すらねえ!
あんなん無理っす~って逃げるというつまらないギャグいれるくらいなら初めから登場すんな!
・ナキの「へりくだり」かた
ナキが「怪しいものではございません~」と言いながら、人間に交渉を持ちかけるのも腑に落ちない。
彼の人間への恨みは根深いものです。コタケとの交流だけでそれが解消されたとは到底思えません。
作中に「(子どもの頃はよくても)すぐ凶暴になる」という台詞もありますし、とことん大人の人間は信じていないはずなのですから。
・終盤のグンジョーとコタケ
コタケはあの化け物がグンジョーだと気づいているのに、ナキしか応援しないのはがっかりだよ!
そこは葛藤でゆれなきゃ納得できません。
・最後のグンジョーのメッセージ「止まれ」
そこは「進め」のほうがメッセージとしてよかったのではないかと思います。
こうして観るとう~ん・・・・ピクサーほか、近年の傑作アニメ作品の出来の良さを改めて気付かせてくれたことだけは感謝します。
あと途中でコタケを襲うトカゲみたいな化け物はなんであんなに怖いの?
バイオハザードとかに出てきそうだったよ?
この映画のよかったところは、グンジョーとナキの友情の物語です。
あれが「演技」だということは早々に読めてしまったのですが、「お前はずっと人間と楽しく暮らすがいいさ」という捨て台詞が、事実を知ったあとに意味が逆転しているのは文句なく上手いと思います。
グンジョーは「俺がいないと(ナキは)だめだろ」という友だち思いであり、なおかつ彼もナキを必要としていたのでしょう。
最後にはその思いを断ち切り、ナキの幸せのためにあの選択をしたグンジョーが大好きです。
ps.この映画のあと、DVDで「塔の上のラプンツェル」を観ました。
これを観たのは3度目ですが、やはり何度見ても抜群に面白いし、感動します。
映像面は「friends」も負けてはいないと思うのですが、満足度が全然違うのは何故?と考えると、やっぱり監督の力量じゃないかな・・・と思ってしまいます。
pps.ラストのグンジョーとナキの関係は、原作絵本と少々異なるそうです→<参考>
ppps.MISIAのエンディング曲はよかった!
バックコーラスを担当するのは、震災の被害を受けた石巻市の少年少女合唱団です。
最後に勇気をもらったので、後味はよかったです。
お兄ちゃんは、コタケのお兄ちゃんに感情移入しながら見ていたはずです。そこで、あのナキがコタケのお兄ちゃんを襲うシーンです。わたしは、お兄ちゃんにどう写ったかと思うと心が痛みました。
お話自体は楽しめたようですが、夜「じゃあ夢の中で今日はもののけ島に行こうか~?」というと「いやだよ!!」と。 「怖いの?あの鬼さんは本当はやさしいんだよ~」と言うと、「(やさしいのは)コタケにだけだよ。」とポツリといいました。
わたしはそれ以上 もののけ島の話はできませんでした。正直、映画を見せなければよかったと思っています。
そうですよね、優しいのはコタケにだけ・・・そう思わせてしまうのは残念です。
おまえの評価0/10