オタクとエイリアンの珍道中「宇宙人ポール」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:7/10
一言感想:下品でマニアックなSFロードムービー
あらすじ
SFオタクのグレアム(サイモン・ペッグ)とクライヴ(ニック・フロスト)は、アメリカ最大のコミックマーケット「コミコン」や有名なUFOスポットなどを巡る旅をしていた。
そこで出会ったのは本物の宇宙人!
ひょうきんな「ポール」と名乗る彼にヒッチハイクを要求されるのだが・・・。
「ショーン・オブ・ザ・デッド」「ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!」に続く、サイモン・ペッグとニック・フロストのダブル主演シリーズ(?)の第3弾です。
いやーこれは楽しい!
SFの体裁をしていますが、実際はコメディ×ロードムービーな映画の作り。
どちらのジャンルが好きな人もきっと気に入ると思います。
それでいて、作中に溢れる映画愛も半端ないです。
このSF作品に対するリスペクトは「スーパー8」を思い出させました。
まあこの映画ではリスペクトというよりもおちょくりと言ったほうが正しいかもしれません。
個人的には作中の「ET」の扱い方に笑いました。
![]() | ディー・ウォーレス・ストーン 641円 評価平均: ![]() powered by yasuikamo |
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もうこの映画の話題が出たときはそりゃねーだろってツッコんでください。
他にも「エイリアン」、「スター・トレック」シリーズを知っているとより楽しめると思います。
気になるのは作中のギャグの大半が下ネタであること。
まあこれは単純に好き嫌いの問題です。
自分はゲイネタや汚いことばで笑いをとるのはちょっと苦手です。
ややマニアックな台詞も多過ぎるかもしれません。
いくつのも「?」な固有名詞があって、蚊帳の外っぽく感じてしまうのです。
ラストに至るまでの展開もちょっと消化不良かも。
まあこれも「B級SF」な感じがして決して嫌いではないのですけどね。
自分が気に入ったのは、主演2人の関係。
今作ではそれぞれがSF作家と、その本のイラストレーターという設定になっています。
今までの作品でもこれ以上のない仲の良さを見せつけた2人ですが、今作が最も見ていて微笑ましかったです。
オタクの「聖地」を巡礼し、宇宙人と子どものように楽しく遊ぶ彼らが羨ましくって仕方がないのです。
途中から参加するクリスチャンの女性の設定も面白い!
SFオタク+宇宙人との掛け合いは、そのギャップを存分に楽しめます。
展開自体は元ネタを知らなくても問題なく楽しめますし、下品なギャグを除けば意外と万人向けだと思います。
この主演2人のファンならずとも、SF映画ファンには大推薦!
今年の締めくくりにもオススメです。
以下、ネタバレです↓結末の展開に触れまくっているので鑑賞後にご覧ください
今作の展開と、それに関連する用語をいろいろ書いてみます。
・オープニング、UFO襲来
年代は1947年。
ラジオで流れていたのは、新聞連載漫画・フラッシュ・ゴードンの話題。
のっけからマニアックです。
字幕監修をした町山智浩さんは相当大変だったんじゃないだろうか。この人の知識なら問題ないか。
・サンディエゴのコミコンに訪れる主人公2人
「ルービーズ」は世界最大級のコスチュームメーカー、「クリンゴン語」はスタートレックに出てくる言語です。
これらも映画オタクには常識っぽいですね。
クライヴのとった「ネビュロン賞」は実在するものではなく、トランスフォーマーに出てくる惑星の名前が元ネタ。
・・・・この時点でこのマニアックなネタの数々。全部わかる人にはわかるんだろうな。
「シャドー・チャイルド」「3つの乳房があるエイリアン」は映画オリジナルみたい。
・仲がよいおかげでゲイに間違われる2人
ホテルでは「新婚旅行ですか?」と聞かれ(ベッドをツインにしているのに)、あとで宇宙人のポールにまで疑われます。
サイモン・ペッグとニック・フロストは私生活でも超・仲がいいそうなので、実際にも言われてるんじゃないかと勘ぐってしまいます。
こちらについては<「破壊屋」さんの記事>が詳しいので是非読んでみてください。
また、イギリスとアメリカでは「駐車場」の言い方が違うのですね。
イギリスでは「car park」、アメリカでは「parking」がよく使われているそうです。
ホテルマンに「エイリアン信じる?」と言ったとき、「私もエイリアン(外国人)ですが」と返してくれるのも好き。
日本人も、映画の影響でよく意味を取り違えていそうです。
・UFOの訪れた場所
2人はエリア51へと続く、ETハイウェイ上にあるブラックメールボックスにたどり着きます。
ブラックメールボックスは誰が設置したのか不明なのか・・・自分はロズウェル事件ぐらいしか知りませんでした。
二人ではしゃぎすぎて観光客が若干ひいている画が好きです。
・宇宙人のポール
いきなり気さくすぎて笑いました。
この「宇宙人との交流がフランク」なのは今作の好きなところのひとつです。
彼がクライヴが気絶した時に言った「フェイザー」は、これまたスター・トレックの武器のこと。
彼の消える能力はまんま「プレデター」ですね。
気絶から回復したクライヴは、「メン・イン・ブラック」に捕まる!とも言っていました(3作目が楽しみですね)
・傷を治した鳥を喰うポール
ドン引きだよ!(笑ったけど)
・クリスチャンのルース
彼女が着ていたTシャツの柄は、キリストが進化論を唱えたチャールズ・ダーウィンを撃ち殺すという過激なもの。怒られないのかこれ。
「お祈り」をしていたり、彼女は父親の宗教観を押し付けられ育ってきたのでしょう。
娘をそんなふうに溺愛する父はこの後大活躍します(悪役として)。
・ポールの回想
宇宙人ポールがスティーヴン・スピルバーグにE.T.のアイディアを教えていたというアホ展開。
スピルバーグが「演出ならまかせろ!」と言ったときに笑いました。
さらに「Xファイル」のモルダー捜査員も彼のアイディアだってさ。
もうちょっと後のシーンでは、ジョージ・ブッシュに「君は今まで私が侵略した中で最高だよ!」と言わせていました。
好き勝手やるなあ、この映画。
・アメージンググレースを歌うルースに、宇宙の真理を教えるポール
あのー思い切り宇宙人が交尾している画が見えたんですけど、大丈夫?(映画はPG12指定です)
さらに目を治してもらったルースは、グレアムにキスしたり、股間を握ったりと超アグレッシブです。
・クライヴはポールに自分の思いを打ち明ける
SF作家の彼が、宇宙人に会えたのに喜んでいなかった理由・・・・それはせっかくの2人の旅行なのに邪魔されたというものでした。
可愛いなこいつ!
ポールに言ったとおり彼はゲイではないのでしょうが、グレアムを誰よりも会いし、ヤキモチ焼きでもあったのでしょう。
ルースと出会ったときにも「結婚すれば?」と悪態をついていましたね。
ポールが、自分との出会いを「これだって特別だろ?」と言うシーンが好きです。
・スペースボール
作中では「キン〇マ」の意味で使われていたような気がしますが、これも元ネタはSF映画でした。
![]() | メル・ブルックス 1486円 評価平均: ![]() powered by yasuikamo |
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・夜、語らう4人
ハッパを吸ってぶっ倒れるルース。気絶するシーンが多い映画だなあ(酒場でも、車をぶつけたチンピラ2人がポールを見て気絶していました)。
男だけでエロトークを弾ませるのが好きです。
・KATANAを買うクライヴとポール
普通に少年と交流しているポールは危機感がありませんね。
万引きを許していたりととことん教育上に悪そうな映画だな。
股間をキックして助けてくれるのも好き。
・花火を万引きするクライヴ
でかすぎ。300ドル近くするとか高すぎ(KATANAと一緒)。
・彼らは「タラ」の家へ
60年ぶりに、ポールは彼女に再開します。
そこで語られたのは、ポールと関わったことで変わってしまった彼女の人生。
誰もポールのことを信じてくれず、彼女はずっと家にこもりがちだったのです。
それでも「あなたが存在することがわかってよかった」と応えるのです。
タラとポールの交流のシーンは映画では描かれませんが、このセリフだけで2人の絆が見えました。
・銃撃戦
パパの姿を確認したあと、即効で振り向いて戻るルースに笑いました。
それにしても「ハガート」が「俺の獲物だ!」と執念を燃やす理由がわかりませんね。
車落ちて死んじゃってかわいそうです。
・登場するあの女優
まさかのリプリーことシガニー・ウィバーが登場しました。
「ギャラクシー・クエスト」といい、こうしたコメディ映画で出てくれるとうれしいですね。
そして、実はポールの友人だった「ゾイル」が助けてくれます。
彼は「ビッグ・ガイ」ことシガニー・ウィバーの命令に従うように見えて、陰ながらポールを守ろうとしていたのです。
ここで出た台詞ブラインド・フューリーとはアメリカ版「座頭市」のことです。
・肉弾戦開始
4人(ポール除く)で大女優を順に殴るという、盛り上がってんだかショボいんだかわからないラストバトルです。
「Get away from her, you bitch!」って言われてますけど、これは「エイリアン2」の名セリフですね。
最後にシガニー・ウィバーは宇宙船に一瞬でつぶされます。
ポールは「訂正するよ(1回目はルースが倒れたときに言っている)、これがジェンガだ!」って言ってましたけど、ジェンガってそういうゲームだっけ。
・ルースのパパに撃たれるグレアムを、ポールが治す
「人間を治癒すると自分に傷がはね返る」という伏線を使ってくれました。
グレアムもポールも死ななくてほっとしました。
みんな仲良く写真を撮りましたが、そのパパも入れるなんてみんな心が広いですね。
・飛び立つ宇宙船
ポールは「責任をとって、新しい人生をあげる」と言い、タラを連れていきます。
彼は60年間、タラに対してずっと罪の意識を持っていたのでしょう。
長年会うことができなかった彼らの、これからの幸せを望みます。
最後にポールに向かって、グレアムが呼んだのは「ショートラウンド」。
これはインディ・ジョーンズ/魔宮の伝説に出てきた少年の名前です。
グレアムは「楽しい冒険をありがとう」という意味でこの名前を使ったのだと思います。
ポールは序盤に「たまには冒険しなきゃな」とアドバイスしていましたしね。
手を振りながら「(宇宙船が)トロくて気まずいだろ?」と言うポールも大好きだ!
・ラスト
2年後、小説の受賞式です。
万引きの件は許されたの?とか、
チンピラ二人が「あの二人は友達なんだよ!」と喜んでいましたがそれでいいんかい?(車の修理代くらい払ってあげようよ)
とか言いたいことはあるんですが、なかなか気の利いたエンディングで大満足です!
この映画を観て思うのは、言わずもがな圧倒的なまでのSF作品の敬愛。
これは初主演のドラマ「SPACED ~俺たちルームシェアリング」でも「SFオタクの主人公」を演じたサイモン・ぺッグによる、オタクのための映画です。
楽しかった~!