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彼女の武器「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー

今日の映画感想はマーガレット・サッチャー 鉄の女の涙(原題:The Iron Lady)です。


個人的お気に入り度:5/10

一言感想:物足りなさはあるけど、「鉄の女」の強さを知れる伝記映画


あらすじ


かつての英国初の女性首相:マーガレット・サッチャーは、晩年に認知症にかかっていた。

サッチャーは首相に上り詰めていった日々を回想する。
彼女はその強い信念から、いつしか「鉄の女」と呼ばれるようになる。




マンマ・ミーア!」の監督最新作であり、大女優メリル・ストリープの主演作です。

メリルはこの映画で久々のアカデミー主演女優賞を受賞しました

若き日のサッチャーを演じたアレクサンドラ・ローチも含めて、実在の人物そのままの映像を見ているかのようでした。
彼女の表情、甲高い声はまさに生き写しです。
サッチャーに興味がない人でも、このメリルの演技には圧倒されるでしょう。



しかし、映画としては残念に感じた部分もありました。

理由の一つが、この映画のサッチャーが遂行する多くの政策が、表面的な事実としてしか見えてこないことです。

映画で主に扱われるのは「妥協をせず、強い決定力で押し通す」というサッチャーの行動です。

サッチャーの政策は周りの反感を買うことが多くあります。
それでも彼女は「鉄の女」と言われるように、自分の意志を貫き通すのです。

しかし、『なぜ』彼女がその政策を行ったのか、その詳細と彼女の心理はほとんど描かれないのです。
終盤にとある台詞として表現はされているのですが、それは漠然としたものとしか感じられません。

彼女の政策は、作中でも言われているように「弱者を切り捨て、強きものに味方をする」もののように思えるため、「なぜ」と気になる人はとても多いと思います。
そこに踏み込んでいないため、サッチャーという人物に感情移入しにくくなっていると思うのです。


政策自体は簡単な説明があるので、特に知らなくても大体のことはわかります。
しかし英国の事情になじみのない日本人にとっては、その本質は映画だけではわかるものではありません。

以下に知っておくとよい項目を挙げてみましたので、映画を観る前に是非参考にしてみてください。



保守党
IRA
フォークランド紛争
人頭税
英国病
ブライトンホテル爆破事件




「映画は娯楽」と考えている自分にとっては、「映画楽しむために勉強が必要なのもちょっと・・・」と思う部分もなくはないですが、最低限の知識は備えておくのも、観る者の礼儀だと思います。



またこの映画は構成も特殊です。
①認知症になった晩年のサッチャーの生活
②保守党時代からのサッチャーの活動と人間関係
これを交互に描くのです。

一人の女性の一生をただ描くのではなく、①の認知症をわずらった後の描写の比重が大きくなっています。

ここでのサッチャーは、まだ首相であるかのように振舞っていますが、一般的な方とはそう変わりません。
晩年の認知症のサッチャーの姿を見せることで、彼女のしてきたことが、その対比でより極端なもの思えるので、この構成も成功していると思います。

しかし、晩年の描写に傾倒しすぎている印象も否めません。
彼女の家庭人としての姿、彼女に反対する人たちの心情、政策をするに至った過程をもっと観たかった、というのが本音です。
105分という上映時間では、いささか描写が足りていないように思うのです。


いろいろ難点はあげましたが、マーガレット・サッチャーという人間を知りたい方にはオススメします。
彼女の「我の強さ」、夫との会話で見せる「弱さ」は一見の価値があります。


コメディシーンはほとんどありません。
彼女の家庭環境や、認知症の描写も人によっては辛い描写であると思いますので、観るときはお気をつけて。


以下、結末も含めて激しくネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓

















~サッチャーの信念~


彼女は雑貨商の家に生まれ、「自己責任・自助努力」という家訓を受け継いだそうです。

その精神は作中の「人は誰でも自分の足で立って行動する、それは政治だけでなくて、どこでも通用することです」という台詞に十二分に表れていました。



若き日のサッチャーが「女性3人に笑われる」というシーンがありました。
これは女性が政治家(しかも雑貨商の生まれ)を目指すということに対してのあざけりでもあります。
サッチャーは女性であるがゆえに、苦しんだことも多いのでしょう。

サッチャー1

たくさんの議員の中で、ただ一人目立つ服装をしているシーンも、そのことを表していると思います。

彼女にとって、親友・エアリー・ニーブの存在は大きいものでした。
彼女の声の出し方を指導し、「最高の指導者と思わせる女性にする」「中身は変えなくていい」「僕は牝馬(ひんば)に賭けるよ」というエアリー。
彼が死んだときの喪失感は、サッチャーにとって耐えきれないものであったと思います。

男は『財務整理』ということばを使いますけど、女性にとっては『家計のやりくり』です」という台詞も好き。
女性ならではの感性も持ち合わせていたと思います。



父から受け継いだことばは以下のようなものでした。

今の時代に必要なのは『どう考えるのか』ではなく『何を考えるか』でしょう
「考えがことばになり、ことばが行動になり、行動が習慣になり、習慣が人格になり、人格が考えになる」

「HOW」ではなく「WHAT」で考える彼女の行動は、作中で貫かれていると思います。



そして凄まじいのは、その決定力と妥協をしない姿です。

彼女は炭鉱を閉鎖し、効率を優先する。
国民全員に等しい税金を課す。

その政策を行なったことから、人々からは、「モンスター」とまで揶揄されます。
党内からも辞職する人があらわれるまでに、意見の食い違いがありました。

なぜ彼女がそうしたのか、それは終盤の彼女の一言に表れています。

その時は憎まれても、何世代も感謝される

事実、フォークランド紛争で勝利をしたとき、いままで反対をしていた議員も手のひらをかえしました。
さらには景気が最高潮になり好感度NO1の首相にまでになる彼女は、それを達成したと言ってもよいでしょう。

しかし、夫(の幻覚)には「(政策は)もしくはゴミとして捨てられる」とも言われていました。
議員の中にも、サッチャーに納得をしていない様子の人もいましたし、彼女がこうして評価されたのも、紙一重のことであったかもしれません。



政策の『なぜ』がほとんど語られない、ということを前に書きましたが、ひとつだけ明確なものがありました。
それはイギリスにゴミが溢れているのを見ていたことです。

これはゴミ収集人がストを起こしたせいで、労働組合が賃上げを合意したことに起因しています。
だからでこそ、「億万長者も民間人も同じ税を課す(かわりに他の税を減らす)」ような大胆な改革が必要だったのでしょう。



決断には犠牲が伴います。
その犠牲の大きさにより彼女は糾弾され続けていましたが、それが英国を救ったこともまた事実です。

彼女の代名詞である「鉄の女」は、非難をする意図が込められています。
しかし、彼女にとってはそれは勲章ものでもあったのでしょう。
『鉄』と称されるほどの信念が、彼女の武器だったのですから。




~サッチャーの行動で気になったこと~


・読んでいた本「王様と私
ミュージカルとしても有名な作品で、劇中歌の「shall we dance」は映画版の主題歌にもなっています。
<そのシーン>(Youtube)

ていうか日本でも松平健主演で公演するなんて知らなかった。


・夫(幻覚)にバターを塗りすぎと言う
サッチャーは卵ダイエットなるものをしていました。夫の健康も気にしていたのですね。


・冒頭でミルクを買いに行く
ミルク泥棒と言われたことの皮肉かもしれません。




~認知症のサッチャーと、夫の幻覚~


晩年の彼女のそばには、いつも夫(デニス)がいて、毎日小言を言ったり、ときには喧嘩をしたりもします。
しかし、娘に「パパはすでに死んでいる」ことを知らされます。

彼女が見たのは、とうに死んだデニスの幻覚だったのです。
*実際のサッチャーが夫の幻覚を見ていたかはさだかではありませんが、娘が何度も夫が死んだことを知らせていたのは事実です
*幻覚を伴う認知症には、レビー小体型認知症があります

序盤では、サッチャーはサインを間違えて旧姓の「ロバーツ」とも書いていました。
認知症により、幻覚を見ることだけでなく、結婚をしていたという事実すら忘れかけていたのかもしれません。




~ラスト~


終盤、サッチャーはこう言います。
あなたの幸せも望んだわ、デニス、あなたは幸せだった?」と。

「ほかの女のように、夫に寄り添う妻になれない」というサッチャーに対して「そういう君と結婚したいんだ」とプロポーズしたデニスですが、彼女が首相選挙に立候補すると言ったときは「家族のことを何も考えていない!」と罵りました。

デニスにそう言われ、「幸せだったこと」を確認できなかったことは、彼女にとって心残りであったでしょう。


たくさんあった靴や服を選別するサッチャー。
整理が終わり「デニス、トランクにあなたの服をきれいに詰めたわ」と言います。

デニスは扉に向かって旅立とうとします。しかし、靴を履いていません。

「靴を履かなきゃ、まだよ、まだ行かないで。私を一人ぼっちにする気なの?」と言うサッチャーに、デニスはこう応えます。
君は一人でも生きていけるよ」と。

この台詞は中盤に、サッチャーがデニスの幻覚に言ったことばでもあります。
そのときのサッチャーは激高して、「私は一人でも生きていけるわ、出て行って!」とデニスの存在を否定しているだけでした。
しかしサッチャーは、ことばと裏腹に、まだデニスを必要としていたのだと思います。

そして、「一人でも生きていける」ということをデニス本人から言われたのは、デニスの死という現実を、サッチャーが受け入れたがゆえなのでしょう。

靴を履かずに出て行くデニスの姿は、彼女の中でデニスが本当に(天国へ)旅立ったということを示しているのだと思います。

「幸せかどうか」を、結局デニスは言いませんでしたが、その後ろ姿は晴れやかでした。


サッチャーは、首相に立候補したときにも、夫のネックレスをはずそうとはしませんでした。
家庭は顧みませんでしたが、夫と、その子どもを愛していたことは事実です。

デニスもまたサッチャーを心から愛していたと思います。
仲違いをすることもあった2人ですが、幸せであった、そう願いたいです。


ラストでは「上院も、今日はどこにも行かないわ」と言い、お手伝いに任せず自分で食器を洗うサッチャー。
多くの「戦い」をしてきた彼女が、自由になったように思えました。

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

2012-03-17 : 映画感想 : コメント : 2 : トラックバック : 0
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非公開コメント

No title
病気のサッチャーの説明なしに、この映画を見ると災難映画になりますね。

私は、あの当時の凛とした政治家のサッチャーさんが、こんなに悩み多き晩年を送っていたとは(はて、彼女は存命であったかな?)思いもしませんでした。

私は「金持ち。貧乏人分け隔てない負担を」と言っていたサッチャーさんが好きだったので、もう少し甘い目で見ていました。

日本の政治家にも、彼女くらいの「鉄の意志」で政治に望んでもらいたいものです。

そういえば、映画の中でも、「貴方達は,自分が当選するかどうかしか、考えていないのね!」と怒鳴る場面がありました。

本当に、そう、思います。

閑話休題 それから、ユルー・ブリナーは今まで「ロシア人」」だと思ってましたが、「ノマ=ジプシー」出身と映画の中で宣言してました。

やっぱ、差別ってあるんですね。

2012-03-20 19:49 : sakura URL : 編集
Re: No title
> 病気のサッチャーの説明なしに、この映画を見ると災難映画になりますね。
>
> 私は、あの当時の凛とした政治家のサッチャーさんが、こんなに悩み多き晩年を送っていたとは(はて、彼女は存命であったかな?)思いもしませんでした。

サッチャーは存命で、実際に今も認知症です。


> 私は「金持ち。貧乏人分け隔てない負担を」と言っていたサッチャーさんが好きだったので、もう少し甘い目で見ていました。
> 日本の政治家にも、彼女くらいの「鉄の意志」で政治に望んでもらいたいものです。

日本の政治家ってグダグダ理屈をこねてなんにもしていない気が・・・この映画を観せたいですね。
2012-03-21 18:50 : ヒナタカ URL : 編集
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『メン・イン・ブラック3』
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<2011年下半期公開>
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『ツレがうつになりまして』
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