それでも信じたい「長ぐつをはいたネコ」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:6/10
一言感想:猫可愛いけど、たまごウザい
あらすじ
お尋ねのものの猫・プスは「長ぐつをはいた猫」と呼ばれていた。
彼は幼いときから「魔法の豆」を探しており、その情報をついに手にする。
魔法の豆を持っているのは「ジャックとジル」と呼ばれる荒くれ者。
なんとか盗もうとするプスだったが、そこに同じく豆を狙う猫が現れる。
さらにプスはかつての親友・ハンプティ・ダンプティと再開する。
手を組もうと提案する彼に対し、プスは「二度とごめんだ」とつっぱねる。
彼らには、7年(猫の時間では35年)来の因縁があったのだ。
「シュレック2」で初登場した、人気キャラを主役としたスピンオフ作品です。
「長靴をはいた猫」はもともとシャルル・ペロー作の童話です。
日本では、東映のアニメーション版が一番有名かもしれません。
![]() | 3608円 評価平均: ![]() powered by yasuikamo |
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懐かしいなあ・・・海外でも評判がいいというのは嬉しいですね。
今回の映画では、猫のキャラクターだけを借りているだけで、物語はこれらとは関係のないオリジナルのものです。
加えて「シュレック」シリーズとのつながりもほとんどありません。
むしろ物語に関わっているのは、童話「ジャックと豆の木」と「ガチョウと黄金の卵」です。
映画を楽しむには、この2つのエピソードを知っておくくらいで問題ないでしょう。
さて、この映画は子ども向けのアドベンチャーのツボをしっかり押さえていえて、観ていてとても楽しかったのですが・・・どうしても気になることがあります。
それは物語の鍵を握るキャラ、ハンプティ・ダンプティの存在です。

ぱっと見でわかるのですが、こいつ可愛くないです。
しかも性格もかなり嫌な奴で、このキャラへのイライラは「カーズ2」のメーターを軽く超えていました。
しかしこの性格付にも意味がありますし、主人公・プスとの因縁は、大人にこそわかるものです。
ハンプティが何故「裏切り」、プスは「見捨てた」のか。
「悪友」との付き合いが長い方には、思うことのある描写だと思います。
しかし、子どもにとってはこのキャラは理解しにくいでしょう。
仮にも主人公サイドのキャラなので、もう少し可愛げがあってもよかったのではないか、と思わずにいられないのは少々残念です。
勝俣州和の声のうっとおしさ(褒め言葉)はこいつにはぴったりでした。
アクションにそこまで目新しさはないですし、最近のピクサー作品のような深い感動を求めると確実に肩すかしでしょう。
しかし、堅実に話はまとまっているので、過度な期待をしなければ誰にでも楽しめると思います。
そして・・・この映画、本当猫が可愛すぎるんですよ。
主人公のプスは格好いいのにどこか抜けていて、新キャラの猫のヒロインもチャーミングでしかもセクシー。
ラテンのリズムにのり、踊る彼らを観るだけでも楽しい。実に魅力的です。
特に今回は「幼少時のプス」が登場し、これがもう萌え殺す気かと思うくらいキュンキュンくるので、猫好きな人は迷わず観に行ってしまえ。
以下、ネタバレです 結末に触れているので鑑賞後にご覧ください↓
~ハンプティダンプティとプス~
ハンプティには、同情できる余地もあります。
それは「英雄として脚光を浴びるプスに対して、ハンプティの日常は陰っていった」ということです。
しかもそのきっかけは、ハンプティが誤って暴れ牛を解き放ち、プスがその牛を止めたことによります。
栄光の象徴である長靴をもらい、あがめられる親友・プスの姿を、ハンプティは羨望ではなく嫉妬の眼差しで見ていたのでしょう。
「俺たちは家族もいない」と仲間意識をプスにもち、強盗に協力させようとするハンプティに対し、プスは「お前がやっているのはもう立派な犯罪だ!」と非難します。
しかしプスはこうも言います「お前は本当はいいやつだろう、俺は二度と泥棒はしない」と。
その言葉も、プスと「魔法の豆を探す」と誓い、似たものどおしだと感じていたハンプティにとっては辛いものだったのでしょう。
だからと言って、プスをだまして銀行強盗までさせたのは許せません。
さらに映画の後半、ハンプティはさらに裏切ることになります。
~ハンプティの裏切り~
「ジャックとジル」ばかりか「キティ」までもがハンプティとグルであることがわかります。
でもこれは妙な話。
「ジャックとジル」とハンプティがグルなら、「プスとキティが命をかけてジャックとジルから豆を奪う」なんてことはしなくていいはずです。もともとハンプティが豆を持っていればいい話でしょう。
これは「プスはジャックとジルにやられてしまえばいいとも思っていた」「それを助けることで信頼感を得ようとしていた」という方向にも考えられますが、しっくりきません。
故郷の村にたどり着いた瞬間にネタバラシというのも無理があるし、成功した割にはザックリしたプランに思えるなあ・・・
ともかく、またも裏切ったハンプティ。
目的は「橋の上で自分を」見捨てたプスへの復讐です。
ハンプティは自ら蒔いた種でプスを御尋ね者にして、故郷を奪ったばかりか、自分を被害者だと思っていたのです。
酷い話です。
実際にもこういうことはありそうな気がします。
例えば事故をおこした人間が、「自分も不幸になっているのだから、私も被害者よ」と言うような、あさましさを感じました。
~ハンプティは村も潰そうとしていた~
牢屋の「ジャックじいさん」は、プスに「親のガチョウが子を取り返すため、村をめちゃくちゃにする」ことを言います。
その牢屋はかつてハンプティもいたところ。
ハンプティはそのことも知り、村の皆に金の卵を与えていたのです。
プスどころか、自分を育ててくれた街をも破壊しようとしていたハンプティ。
本当に最低野郎ですが、「巨大ガチョウが街を襲う可能性100%」と予報していたハンプティは、ちっとも喜んでおらず、どこか沈んだ様子でした。
ハンプティは、復讐をする自分にどこか疑問を持っていたのかもしれません。
牢屋から脱出したプスは、再び「本当はもっといいやつだろう、発明家のたまごだ。正しいことをするのに、遅いことはない、手伝ってくれ」と説得します。
2度も裏切られながらも、ハンプティに協力を願おうとするプス。
その姿には、彼の自責の念、かつての友を思う気持ち、そして義理人情にあつい彼の性格が表れていました。
~ハンプティの正体~
7年前にプスがハンプティを見捨てた、因縁の橋。
そこでプスは子ガチョウを助けるか、ハンプティを助けるかの二者択一を迫られます。
プスは「絶対に見捨てない!お前は俺の兄弟だ!」と言い、ハンプティは「俺のことはいいから、子ガチョウを救ってくれ」と返します。
7年前とは正反対の行動をとる2人。
ハンプティは二度も説得を試みて、信頼してくれたプスの姿に思うところがあり、プスもまた、ハンプティを見捨てたことを後悔していたのでしょう。
そして自ら手を離すハンプティ。
プスは子ガチョウを助け、下を覗きます。
そこには金の卵がありました。
中盤にハンプティは金の卵のスーツで変装しようとしていましたが、今度は本物です。
それを見てプスは「中身はいいやつだって、最初からわかっていた」とこぼします。
結局復讐にかられ、プスを二度裏切ったハンプティ。
もともといい奴だったのに、正しいことを友のプスにしてやることができなかったのです。
金の卵になる前「俺は何をやってもだめなやつだ」と言っていました。、
しかし最後には何度もプスが言ってきたように、中身が金のように価値があることがわかるのです。
「死ぬことにより正体がわかる」ということがいささか唐突に思えたのは残念ですが、最後にハンプティを肯定してくれたことが、とても嬉しかったです。
~その他ちょっと補足~
・プスは「吸血チュパカブラ」とも呼ばれていた。
なんでやねん。チュパカブラとプスは微塵も似ていないと思うのですが。
キティを追いかけるときにも女性に呼ばれていました。
・ハンプティは「ボーイブルー」に邪険にされるプスを気遣い、そのことでプスはハンプティを一生味方することを決める
このボーイブルーってなんだったの?見た目真っ青な子どもで、すごくぎょっとしたのですが。ブルーマングループみたいだった。
それにしても、はじめからプスが義理人情にあついことが知れて嬉しかった。
・ジャックとジル
なんで東北弁でしゃべるねん。
どうでもいいけど同名の映画が海外でものすごい嫌われ方をしています。
・あかっんべーをするキティ
この動作は国によって伝わり方が違い、イタリアでは違法にもなりかねないこともあります。
となりのトトロのあっかんべーも意味がわからないことが多いらしいですね。この映画の場合はわかりやすいけど。
・空気が薄いので声が高くなる
富士山の上から叫んでもそうなるみたい。
・「巨人は墜落死しているよ」というハンプティ
よく考えるとそうなんですよね。
ジャックと豆の木は泥棒を肯定する上に、豆の木を切って巨人を落とすという非道徳的(?)な話です。
・牢屋を脱走するために「うるうる目」を使うプス
大量殺戮兵器にもほどがある可愛さでした。番人がほいほい鍵を開けてしまいましたが、それもしょうがないかと。
声の渋さとのギャップがまた笑えます。
・なんで「子どもの」ガチョウが(金の)タマゴを生むの?
知らん。
~作品のテーマ~
アドベンチャー作品としても十分に楽しい作品ですが、自分には「シュレック」と同じような、コンプレックスを持った人々のメッセージが込められているように思えます。
自分では起き上がることのできなかったハンプティ。
だからでこそ、彼には信頼できる友達が必要だったのです。
しかし、ハンプティは自らその親友を失ってしまいます。
もしハンプティが自分が不幸だと感じたとしても、成功したプスの幸せを願っていれば、こうならなかったでしょう。
ハンプティがこうなったのは、プスのせいではなく、本人の気の持ちようによるものなのです。
映画をやってるペンギンズからドリームワークス巡りをし、最近「長ぐつをはいたネコ」を見、考察記事を見てました。それで一つ思ったのが
>・なんで「子どもの」ガチョウが(金の)タマゴを生むの?
あれ・・・フンかも・・・・・
インスピレーションです。
失礼しました。
ドリームワークスは映像とキャラとギャグが凄くて話の方は素直に進みませんね!