勝利の証 映画「ヘルプ」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:8/10
一言感想:差別を笑い飛ばす強さ!大好きです!
あらすじ
作家志望のスキーター(エマ・ストーン)は、黒人のメイドが当たり前の環境で過ごしてきた。
大学から地元のミシシッピー州へ戻った彼女は、白人社会にいるメイドたちが置かれた立場に、憤りを感じるようになる。
このことを公表するため、スキーターはメイドのエイビリーン(ヴィオラ・デイヴィス)にインタビューを試みる。
しかし、彼女たちにとって真実を語ることは、生き死にに関わる問題でもあった。
一方、エイビリーンの親友のミニー(オクタヴィア・スペンサー)は、白人のトイレを使ったがために解雇されてしまうのだが・・・
いやーこれは面白い!
黒人への差別という題材ですが、雰囲気は重くならず、軽快です。
予告では地味な印象でしたが、映画を観てみるとこひとときも飽きることがない展開の面白さ、巧みな構成で魅せてくれます。
上映時間は2時間半と長めですが、その時間を感じさせません。
もっと観ていたい、と思うくらいこの映画の登場人物が大好きになりました。
原作はキャスリン・ストケットによる小説です。
![]() | キャスリン・ストケット 720円 評価平均: ![]() powered by yasuikamo |
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映画は原作ファンにとっても納得の出来であるようです。
映画を観たあとに、細かなエピソードを小説で補完するのもよいでしょう。
舞台は1960年代のミシシッピー州ジャクソン。
原作者も、監督のテイト・テイラーもここの出身です。
キング牧師によるI Have a Dreamが演説される少し前であり、KKK団によるメドガー・エヴァーズの暗殺事件などが起こった、黒人差別の転換期と言える時期の物語になっています。
ミシシッピー州は黒人差別が他より根強い地域で、黒人は白人家庭でメイド(アメリカでは『ヘルプ』と呼ぶ)になることが当たり前になっています。
問題は、そこに人権という感覚がまるでないこと。
白人は黒人メイドに家事洗濯その他もろもろを頼むのに、同じ食器は共有せず、同じテーブルで食事をすることはありません。
さらには黒人が社会的地位の向上をはかることも認めらていません。
恐ろしいのはこれらがジム・クロウと呼ばれる法律で取り締まられているということ。
作中の登場人物が言うように、今の状況を公表すれば生きる場所を失うかもしれないのです。
その中で彼女ら(=作家志望の主人公とメイドたち)がどうやって差別と向き合い、戦っていくか。
是非劇場でご覧になってほしいです。
この映画は登場人物が多めで、それぞれのキャラクターを頭に入れていたほうがよいでしょう。
以下にメインで活躍する5人の登場人物をあげてみます。

<スキーター>
黒人たちの声を集めた本を出版しようと奔走する。母親に男っ気がないことをいじられている。

<エイビリーン>
心に傷のある女性だけど、気丈。

<ミニー>
毒舌家。すぐ「あの奥さんは〇〇でね~」とか言うので怒られないか心配。

<ヒリー>
婦人会のリーダーであり、差別主義者の悪役。いろんな意味で気の毒な人。

<シーリア>
見た目はデヴィ夫人みたいですが、実は誰よりも純粋な女性。
これら+脇役のキャラクターそれぞれが、個性的かつ魅力的です。
個人的に一番好きなのはシーリアとミニーの関係。
この2人の掛け合いが微笑ましくてしょうがなかった。
差別問題に詳しくなくても、問題なく映画は楽しめます。
登場人物にこれ以上なく共感できるこの作品は、秀逸なヒューマンドラマとして老若男女にオススメです!
以下、ネタバレです 結末に触れているので鑑賞後にご覧ください↓
キャラクターごとに書いてみます。
~スキーター~
ヒリーの言う「黒人専用のトイレを作ることを義務付けるべきよ」のに対し、「あんた専用のトイレも作ったら?」と返すあたりは痛快でした。
この濃いメンバーの中では忘れがちですが、彼女もまた行動的で、歯に衣着せぬ言い方をする人物でした。
しかしスキーターの性格は、本が出版されたときに軽薄男のスチュアートに卑下されてしまいます。
「ここの街は平和だ!かき乱さないでくれ」と訴える彼は、保守的な体制の象徴でもあったのでしょう。
革新的な行動を取る者は、理解されないことも多いのだと思います。
スキーターは黒人のメイド・コンスタンティンに育てられていました。
コンスタンティンは、「ブサイク」とからかわれているスキーターにこうアドバイスをします。
「ブサイクとは、心の中に育つものよ。私は信じるのか?あいつらの言う『ブサイク』を?そう思いなさい」
ここで言うことは、あらゆる不当な扱いを受けている方へのメッセージのようにも思えました。
黒人と白人というものだけでなく、差別はさまざまな環境で起こりうるものなのですから。
コンスタンティンは、長年仕えてきたにもかかわらず、母親により解雇されていまいます(その失態により自分から去らずにはいられなかった)。
彼女が死んだことを知らされたスキーターの悲しみは筆舌に尽くしがたいものだったでしょう。
しかし、だからでこそ、暴露本「The Help」で問題を訴えることへの信念が強くなったのだと思えます。
最後に出版社からの採用を断ろうとするスキーターですが、エイビリーンとミニーに「あなたはここにいてもいい人生を送れない」と言われ、ニューヨークに行くことを決めます。
手を取り合う3人。
再び会うことは難しくとも、その信頼はずっと続くものでしょう。
~ミニー~
彼女は「白人の子どもは、子どものうちは可愛い。でも大人になったら母親そっくりだ」と言っていました。
確かにその通りで、差別の意識を持って生まれてくる子どもなんていません。
差別の意識は環境によって植え付けられたものなのですよね。
そして元主人のヒリーへの復讐の方法は・・・なんと「〇〇コ入りのチョコパイを食べさせる」です。
ひでえ!いや本当に入れたかどうかは定かじゃないけどさ!
ヒリーは一緒のトイレを使っただけでミニーをクビにしたので、この「ク〇喰らえ」は最強の復讐方法でした。
しかもそれだけに留まらず、「保険のために、むしろ本にすべき」というミニー!
敵に回したくない人です。
「黒人のウ〇〇を食べたなんて事実は認めたくないはずだから、むしろ書いたほうが安全」と言うのはわかるんですが、スキーターの言うように明らかに危険だよね。結局それは大成功したけど。
コミカルなシーンが多い彼女。
一番好きなのは、シーリアの夫に見つけれられて、殺されるかと思って身構えるシーンです。
本人にとっては深刻なんですが、木の枝で武装するとさすがに笑います。
~ヒリー~
「同じトイレを使ったら病気になる」「白人の家に黒人専用のトイレを作れば高く売れる」などとほざき、シーリアを村八分の状態にもさせた差別主義者の彼女がしっぺ返しをくらうのは当然です。
でも終盤はさすがにかわいそうでした。
そりゃあ(〇〇コ入りパイのエピソードが載った)本を読んで、ベッドでぎゃあああって叫ぶわ。
他にもシーリアの結婚相手も元彼だったわけで・・・。
男運もないですもんね。
母親に「忘れらないことが2つあるわ、あんたに老人ホームに入れらたことと、チョコパイのこと」と言われるし、家族にもそっぽ向かれている状態です。
あとスキーターによって庭に集められた便器はどう処理したんでしょうか。
もうひとつ気になるのは、ヒリーは黒人を同じものを使いたくないくらいに毛嫌いしているのにも関わらず、娘を触らせたりするのは容認していること。
ヒリーは子どもに愛情を注いでいなかったのかも。
ヒリーがしているのは「お尻をたたくこと」くらいで、最後に子どもが泣きじゃくったときにも何もしていないのです。
ヒリーはエイビリーンに「(そんなに差別をしていて)疲れませんか」と言われていた時には涙を浮かべていました。
彼女は根っからの悪人ではなく、差別主義の自分にもどこか疑問を持っていたのかもしれません。
~シーリア~
彼女がメイドを雇った動機は、「家事ができる女」を装うためという不純すぎるもの。
それが「口答えをしない」と決めて就職口を探していたミニーと利害が一致しているのも面白いですね。
ミニーは「リビングで食事をしてください」と言いますが、シーリアはおかまいなしにミニーと共に食事をとります。
シーリアは子どものように純粋なので、そうしたことを気にしなかったのでしょう。
流産を繰り返すことにコンプレックスを持ち、夫に捨てられるかもしれないと危惧していたシーリア。
誰とでもコミュニケーションをとる彼女ですが、そうした不安要素には弱かったのだと思います。
しかし、シーリアがメイドを雇ったことは夫にバレバレだったんですね。
初日にフライドキチン作ったら、そりゃあねえ・・・
~エイビリーン~
物語はエイビリーンへのインタビューから始まり、彼女のモノローグで幕を閉じます。
インタビューは「私は14歳でメイドになり、学校を諦めた。母も祖母もメイドだった」と答えます。
中盤では、いとこが投票所に行っただけで車を燃やされたこと、職場で息子が無残にも殺されたことを告白します。
彼女は「私が怖いのはジム・クロウよりも視線よ」とも言っていました。
辛い思い出を、誰かに聞いてもらうことすらままならなかったのです。
彼女の体験は世に出され、黒人仲間の皆はエイビリーンに拍手を送ってくれます。
そのときに、少しだけ救われたのだと思います。
しかし、最後にはヒリーがエイビリーンを泥棒に仕立て上げようとします。
彼女は反発します。
「刑務所では真実の手紙が書ける」「脅せば誰でも従うとでも?」と。
それでも出ていくしかない彼女は、最後にヒリーの娘に「大切なこと」を教えます。
「あなたはとてもいい子、大切な子」と。
ヒリーの娘は、こうした「あなたが大切」といったことばをかけてもらうこともなかったのかもしれません。
「『汝の敵を愛せ』と言うが、難しい」
「まずは真実を語ることだ」
「息子は家族の中から作家が出て欲しいと言っていた、それは私なのだろう」
そう語り、去るエイビリーンの姿で、映画は幕を閉じます。
一見、エイビリーンは全てを失ったようにも思えるラストでしたが、同時に希望も感じ得ました。
それはエンドロールで流れる歌(the living proof)の歌詞にも表れています。
「人からどう思われようと、なんと言われようと
真実はそこにある
私こそが勝利の証」
「エリザベス」は娘のおむつを10時間も代えておらず、エイビリーンは「奥さまは母親失格です」と言っていました。
中盤では、ヒリーの子どもはエイビリーンのことを「本当のママ」と呼んでいました。
子どもを愛し、子どもからの愛を手にし、黒人メイドの現状を世に知らしめたエイビリーン。
彼女(たち)の戦いはまだ続きます。
しかし勝利の証そのものである、その未来は明るいと思えました。
この映画、先日、私も観てきました。
とても好きな作品です。
初めての書き込みで失礼なのですが、
ヒリーの記述に少しばかり間違いが…。
△「スキーターになかなか会えない彼氏を取られる」
スキーターの元を去った保守主義の彼氏ですよね?
あの彼は、既婚者のヒリーがスキーターに紹介した人では…。
ヒリーは彼氏を作ろうとしないスキーターに対して、
一応、友人の立場から彼氏を紹介したのだと思いますが。
△「娘のオムツを10時間も取り替えていない」
これは、もう1人の白人奥様、エリザベスですね。
エイビリーンはエリザベスの家でメイドをやっています。
ヒリーのところにいたメイドは、最初はミニーで、
ミニーが解雇されてから次に来た人は、双子の息子たちの
大学資金の借金を申し込んで断られてしまった彼女です。
ヒリーは本当に嫌な人として描かれていますよね。
悪役としてのカッコ良さもないし、女優としては、
まるで旨味のない役柄にも関わらず、きっちり嫌な女性として
演じきったブライス・ダラス・ハワードに感心しました。
注目の女優、エマ・ストーンも良かったです。
アカデミー賞にノミネートされた3女優はもちろんのこと、
非常に女優陣が充実していた映画でした!
そのへんは自分も怪しいと思っていました・・・一緒に見た友人もあやふやだし・・・。
「エリザベス」の描写が少なくて混乱してしまったんですね。訂正しておきます。
長々と、本当にありがとうございます。またよければ見にいらしてください。
> いつも楽しく拝見しています。
> この映画、先日、私も観てきました。
> とても好きな作品です。
>
> 初めての書き込みで失礼なのですが、
> ヒリーの記述に少しばかり間違いが…。
>
>
> △「スキーターになかなか会えない彼氏を取られる」
>
> スキーターの元を去った保守主義の彼氏ですよね?
> あの彼は、既婚者のヒリーがスキーターに紹介した人では…。
> ヒリーは彼氏を作ろうとしないスキーターに対して、
> 一応、友人の立場から彼氏を紹介したのだと思いますが。
>
>
> △「娘のオムツを10時間も取り替えていない」
>
> これは、もう1人の白人奥様、エリザベスですね。
> エイビリーンはエリザベスの家でメイドをやっています。
>
> ヒリーのところにいたメイドは、最初はミニーで、
> ミニーが解雇されてから次に来た人は、双子の息子たちの
> 大学資金の借金を申し込んで断られてしまった彼女です。
>
>
> ヒリーは本当に嫌な人として描かれていますよね。
> 悪役としてのカッコ良さもないし、女優としては、
> まるで旨味のない役柄にも関わらず、きっちり嫌な女性として
> 演じきったブライス・ダラス・ハワードに感心しました。
>
> 注目の女優、エマ・ストーンも良かったです。
> アカデミー賞にノミネートされた3女優はもちろんのこと、
> 非常に女優陣が充実していた映画でした!
> ヒリーは本当に嫌な人として描かれていますよね。
> 悪役としてのカッコ良さもないし、女優としては、
> まるで旨味のない役柄にも関わらず、きっちり嫌な女性として
> 演じきったブライス・ダラス・ハワードに感心しました。
悪役っぽさを感じたことがない女優さんだったのですが、今作は見事なハマリ役でした。
> 注目の女優、エマ・ストーンも良かったです。
> アカデミー賞にノミネートされた3女優はもちろんのこと、
> 非常に女優陣が充実していた映画でした!
ブログでも紹介していますが、エマストーン主演の「小悪魔はなぜモテる?」はかなりおすすめですよ!
一緒にみていた友人もあやふやだしとか、描写が少ないからとか人のせいにしてはだめでしょう。
記事にするなら、責任をもって書いて下さい。
とても素敵な映画なのでその辺は残念でした。