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温故知新と心機一転「アーティスト」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー

今日の映画感想はアーティストです。


個人的お気に入り度:7/10

一言感想:映画の魅力が詰まっている!


あらすじ


ジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)はサイレント映画の大スター。
女優志望のペピー・ミラー(ベレニス・ベジョ)はひょんなことからジョージと知り合い、新聞にそのことを大きくはやし立てられた。

そのさなか、映画はサイレントからトーキーへの転換が行われようとしていた。
かたくなにトーキーを否定し、あくまでサイレントにこだわるジョージは、自らサイレント映画の傑作を撮ろうと画策する。

一方ペピーはトーキー映画の女優として成功を掴もうとしていた。





これはよかった!
「今の時代にサイレント×モノクロの映画を作った」だけででなく、斬新なアイディアが盛り込まれているところが秀逸です。
このアイディアは詳しく言うとネタバレになってしまうので、予備知識を入れずに観ることをおすすめします。


舞台はトーキー映画へと観客の興味が移り変わりつつあるハリウッドです。
ちなみに制作国はアメリカではなくフランスです。
ヒューゴの不思議な発明」ではハリウッドがフランス映画の魅力を描くのに対し、今作ではフランスがハリウッド映画の魅力を描くのです。

劇中に登場するサイレント映画と同じく、この映画では声が出ません
一部は字幕で表現されるのですが、それ以外の台詞は脳内で補うしかないのです。

それで映画の内容がわかるのか?と言われると、これがちゃんと理解できるし、とても楽しいんですよね。
「こう言っているんだろうな」「ああ、この表情はこういうことなんだな」と想像する作業がすごく面白いのです。

小説の挿絵がないことでかえって想像が膨らむような、
ファミコン時代のRPGが演出が少ないぶんだけ自分で設定を考えることであるような、
そんな「想像の楽しさ」を教えてくれます。

当時の人は役者の仕草や表情、劇中の音楽を頼りにこうして映画を観ていたのだな、と思うとけっこう羨ましい気がします(生のオーケストラ付きだし)。
この作業の面白さを知れただけでも、この映画に感謝をしたくなるのです。


でもやっぱり「声がない」ことに物足りなさがあることも事実。
「これはこれでいいけど、やっぱり声が欲しいなあ」というジレンマは多くの人が感じることだと思いますが、これに映画はアイディアで応え、ジレンマそのものをトーキー映画へと移り変わる時代を利用して描いていることが素晴らしいです。

古きよき映画のシミュラークルっぽくはありますが、実は革新的な映画です。
この映画がオスカーを受賞したのは、単なる懐古主義に留まらず、温故知新の考えのもとで新しい映画を作ったことにあるのだと思います。


同じ時代背景、トーキー映画の出現により衰退していく人間を描いた作品に「サンセット大通り」があります。

グロリア・スワンソン
1178円
評価平均:
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かつてのスターの影
特典映像に幻の冒頭シーンが入っていないのが残念!
A movie for lover of movies

傑作と名高い作品であり、結末はアーティストと大きく異なります。
雨に唄えば」も合わせて、この時代の映画事情を見比べてみるのも面白いかもしれません。


とにかく、幸福な気分になれる素敵な映画に仕上がっています。
当時のことを知らなくても、新しいこと、古いことの両方の魅力を知れる本作は、映画ファンであればあるほど必見と言えます。

「音」が重要な作品なので、DVDであると魅力は下がってしまうでしょう。
ぜひ劇場でご堪能あれ。


以下は結末も含めてネタバレです、鑑賞後にご覧ください↓
















~野暮な不満点~

映画で残念だったのが、主人公ジョージの転落と喪失を描くパートが長く、その後のクライマックスが短く感じてしまうことです。

たとえばピクサー作品では
①主人公の大切なものを明らかにする
②「嵐雲」を起こす
③大切なものを失う
④ 主人公に「屈辱」を与える
⑤ 主人公を「岐路」に立たせる
⑥失った大切なものを取り戻す旅をする
⑦最後にそれを取り戻すと弱点も克服している
という流れの下で映画が作られています。

アーティストでも同じようなプロットで映画が作られていますが、ちょっと③~⑤の描写が多い印象です。

「主人公たちの紹介:主人公たちの喪失:大切なものを取り戻すまでの過程と結果」
これをピクサー作品は1:1:1くらいで描いていると思うのですが、アーティストでは4:8:1くらいの印象です。
ハッピーなラストは綿密な伏線の下に作られたものなのですが、それでもこの比重だとちょっと唐突なものに思ってしまうのです。

ジョージが転落していくまでに3年の月日が経過するので、その長さも必要だったところもあるのでしょうが、もっと最後に幸福であったジョージの姿を見たかったのです。


もうひとつ言えば、「ペピーがジョージの所有物を買い占めていた」ことが「主人公のさらなる喪失」のように描かれていたことに違和感があります。
プライドの高いジョージといえども、それは彼女の献身的な行動に感化されるべきどころではないか、と少し疑問に思うのです。

見猿、聞か猿、言わ猿が彼の所有物としてありましたが、これは落ちぶれていた彼の行動そのものを表していたのだと思います。



~映画のアイディア~

あの「コップを置く音がする」のにはハッとなりました。

その後にも「周りの人間の声」「犬の鳴き声」「電話の音」「女性の声」に悩まされるジョージ。
でも鏡に向かって言う自分の声は聞こえません。

羽が落ちる音でさえも爆音に聞こえるジョージ。

それは夢ではありましたが、ジョージにとってはトーキー映画への恐れそのものだったでしょう。

今までサイレント映画だったのに、トーキー映画に変わるというアイディアは「オズの魔法使」の「モノクロからカラーへの転換」のシーンを思い出しました。

しかもクライマックスで、このアイディアはこれ以上のない方法で取り入れられることになります。



~犬最高!~

オスカーに犬部門作ってしまえよと思うくらい犬の演技が最高でした。
*ちなみにカンヌ映画祭ではパルム・ドッグ賞を受賞しています。

「銃で撃つふりをしたら倒れる」「ジョージのしぐさを真似る」だけで萌えるのですが、主人を助けるために疾走するシーンは最高です!

あと地味に執事のおじいさんも萌えました。
1年給料もらっていなくても、ジョージといたいと願う彼も大好きだ!



~ジョージの転落~

映画のストーリーは
①ジョージの苦悩
②ジョージとペピーのロマンス
が大きな軸になっています。

この映画では、②に①の要素を取り入れているのがとっても上手い。
甘い恋愛話ではなく、結構辛辣なんですよね。

そのひとつが、ジョージが「泣きぼくろ」をつけたことで、ペピーがまさにそのタイトルの映画でスターダムにのし上がっていくこと。

もうひとつが、ペピーが記者に「観客は私の声を求めている」「演技を誇張する昔の役者に飽きた」「老兵は去り、後兵に道をゆずるべき」と、ジョージへの侮辱にも等しいことを言い、それをジョージに聞かれたことです。

ジョージは「どうぞ、ゆずったよ」とこれに答えます。

しかもジョージが監督をつとめた「愛の涙」はガラガラで、「泣きぼくろ」は大ヒット、あまつさえ出て行った女房にさえ「泣きぼくろ」を絶賛されます。
プライドが高くサイレント映画にこだわってきたジョージも、ペピーのトーキー映画を観たときには楽しそうに笑っていました。

ジョージのプライドはズタズタに引きさかれました。
それをしたのが「彼の衣装に手を回した」ほどのジョージのファンであるペピーであるというのは、何とも皮肉です。

あとジョージの映画は「砂に埋もれたところで終わる」という時点ですげーつまらないと思うのですけど、気のせい?



~ジョージが大切にしたかったもの~

彼は今までの作品を自ら焼き払おうとしますが、思い立ったようにひとつの作品を抱きかかえます。

ペピーがそのフィルムを再生すると、それはペピーとダンスをして、何度もリテイクを重ねていたあの映画でした。

ペピーから愛されたジョージですが、彼の転落のきっかけもペピーです。
そんな彼が、ペピーとの繋がりを失いたくないと感じ、その作品を大切に思っていたのです。



~ラスト~

拳銃自殺をしようとしていたジョージのところにペピーがやってきて、それを止めます(「BANG」という字幕を使って「撃った」と思わせる→実はペピーの車が事故った音というのがユニーク)。

彼らは無音の中、抱き合います

今までの「声」のないシーンでも、登場人物の心はわかりました。
ここでは音楽すらありません。でも、それでよいのです。

声がなくても、音楽が無くても伝わるものがあるのですから。


そして「名案があるの」と言った彼女が行なったことーそれは「ジョージとの共演」ということだけではありませんでした。
ジョージと2人でタップダンスを踊るのです。

序盤で、ジョージはペピーの「足だけ」のダンスに惚れ込み、それにジョージも応えていました。
ペピーだけでなくジョージもダンスの才能はあったのでしょう。

ここではタップの音も鳴り響きます。

軽快なステップで踊りきり、カメラに向かって手を伸ばす2人。

そして「カット」の一言。
もう字幕ではありません。人の声が響くトーキー映画へと変わったのです。

「パーフェクト」「もう一度」「喜んで」そして映画製作者の声が響くスタジオ内・・・

「Action(スタート)!」の声と共に映画は幕を閉じます。


ジョージは中盤にトーキー映画の存在を嘆き、頑なに否定しました。
そんな彼も新しきものに迎合し、なおかつペピーとの繋がりを失わないことで、未来への切符を手にしたのです。

そのジョージの姿を、映画自体がサイレントからトーキーに変わることで表現したのです。
これ以上ない爽快感に溢れたハッピーエンドでした。


オススメ↓
朝日新聞デジタル:映画「アーティスト」の魅力とは 大林宣彦×中野翠
キノ2(最後のジョージの一言に、隠された事実があります)

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

2012-04-08 : 映画感想 : コメント : 2 : トラックバック : 0
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非公開コメント

No title
あの最初の方の「取り直し」の場面が、とても、後まで効果のある場面だなと思って見てました。

あのコップの場面は「トーキー時代の到来」を、突然思わせる名場面ですね。

あのベビーさんの顔は、昔々のカレン・カーペンターさんを思い出させる、かわいい顔つきだと思ってました。

そして、確かに良い映画なのですが、これがアカデミー賞かい!って感じもしました。

サイレント映画というものに、慣れてないからなんでしょうか?
2012-04-14 17:35 : sakura URL : 編集
Re: No title
> あの最初の方の「取り直し」の場面が、とても、後まで効果のある場面だなと思って見てました。

だからでこそジョージにとって思い出になったのでしょうね。

> あのコップの場面は「トーキー時代の到来」を、突然思わせる名場面ですね。

ラストで180度違った使い方がされているのが好きです。

> あのベビーさんの顔は、昔々のカレン・カーペンターさんを思い出させる、かわいい顔つきだと思ってました。

ペピーですね。確かににてるかも!カーペンターズは自分も大好きです。

>
> そして、確かに良い映画なのですが、これがアカデミー賞かい!って感じもしました。
> サイレント映画というものに、慣れてないからなんでしょうか?

これができるのはこれ一回限りでしょうね。
ちょっと「特別賞」な感じもします。
2012-04-14 22:39 : ヒナタカ URL : 編集
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