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持たざるものへ 映画「苦役列車」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー

今日の映画感想は苦役列車です。


個人的お気に入り度:7/10

一言感想:森山未來さんがクズ男すぎてドン引き(褒めことば)


あらすじ


1980年代後半のバブル絶頂期。
日雇いバイトでその日暮らしをしている19歳の北町貫多(森山未來)は酒とタバコと風俗に溺れ、家賃も払えない日々を送っていた。
ある日、彼は職場で専門学校生の日下部正二(高良健吾)と親しくなる。
さらに古本屋で働く桜井康子(前田敦子)に一目ぼれした北町は、日下部の力を借りてアプローチしようとするのだが・・・





マイ・バック・ページ山下敦弘監督最新作です。

山下監督の魅力といえば、役者の長い芝居を見せる独特の「間」。
本作でもそれはいかんなく発揮されていて、登場人物の心情が繊細に描かれていました。

こうした作風はわかりやすさ、テンポを求めている人には向かないだろうけど、自分は大好きです。
役者の演技は映像作品でしか表現できないものであり、監督はそれを大事にしていると思えるからです。
本作も、山下監督ファンには納得の完成度であるでしょう。


原作は西村賢太による小説です。

西村 賢太
420円
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*原作の冒頭部分はこちらでも読めます(卑猥な表現があるので閲覧注意)→立ち読み|新潮|新潮社

ちなみにこの西村賢太さんはなかなかの変わり者で、芥川賞の受賞時には「風俗に行こうと思っていた」とほざいていました(←youtube)。
他にも「いいとも」で放送事故を起こしかけたり前田敦子の髪型を〇〇と揶揄(←youtube、下ネタ注意)するなど、そのインパクトはかなりのもの。
はてはこの映画版『苦役列車』について酷評したりしています。

ここまで行くと自由奔放を通り越して性格破綻者なんじゃないかと思いますが・・・面白い人が芥川賞を受賞したものです。


さて、この「苦役列車」は作者の自伝とも言える内容。
なので、この映画に登場する主人公も西村賢太さんそのものと言えるのですが、びっくりするくらいこの主人公はクズ野郎です

主人公の生い立ちは同情すべきところもあるんだけど、だからと言ってここまで性格の捻じ曲がった人間にはならないだろ・・・と思わずにはいられません。
映画のキャッチコピーには「この愛すべきロクデナシ」とありますが、いざ映画を観てみるとこんなやつ愛せませんて。

でもこのことこそが、この映画の最大の魅力です。
何より、このキャラクターを演じた森山未來が最高すぎます。
スラッとしていて、どこかひょうひょうとしているように見える彼がこんな役を演じれるなんて思ってもみなかった。
そのどうしようもないほどのダメ人間さは、他の追随を許しません。

主人公の親友を演じた高良健吾、先輩風を吹かせるマキタスポーツも超はまり役。
前田敦子演じるヒロインは映画オリジナルキャラクターとのことですが、作品には必要不可欠に思える存在感&可愛さです。
彼女の登場により、映画では原作と比べて「若者の青春」の比重が大きくなっていて、その全てが上手く機能しているように感じました。


作品は地味です。劇的な展開を求める人には全く向きません。
でもこうしてストーリーそのものよりも、「(ダメ)人間」をじっくり見せる、という映画もいいものであると思うのです。

風俗の描写が過激&主人公が卑猥なことばを吐きまくるのでR15+指定も納得ですが、自分は若い人にこそ観て欲しい映画だと思います。
主人公の姿は反面教師的に参考になるし、自分の将来について考えるところもあると思うからです。

ひたすら卑屈で、最低な人間を描いた作品だけど、全く嫌いになれない。
そんな不思議な魅力を持った映画だと思います。

以下、ネタバレです 結末に触れています↓















キャラクターごとに描いてみます

~北町貫多~

まずはどれだけクズ野郎かを箇条書きしてみましょう。

・家賃滞納&土下座までして許しをこう
・出て行く部屋にうん〇を残そうとまでする
・昔付き合っていた彼女のことを「すげえブス」「練習台」とまで言う
・親友に金を借り、返さない
・親友の彼女を侮辱する
・思い人に彼氏がいると知るやいなや、握手のふりをして手をなめる
・思い人を雨の中突き倒し、無理やりキスをする
・「高橋さん」に「貝を奥さんにあげられなくて残念でしたね~」となじる
・ふてくされると仕事は適当にやる

書いてて気分が悪くなるんですけど・・・
彼の悲しいところは、基本的にセックスのことしか頭になくて、相手を思いやる心も、友達をつくるすべも持っていなかったこと。

彼の父親は性犯罪者で、小学5年生のときにそれがわかって、彼自身が今まで大変な人生を歩んでいたとしても、ここまでの人間になるとはとても思えません。
それが性犯罪者の父の「遺伝」とも、思えません。

むしろ彼の人間性を作り上げたのは、「何も持っていない」がゆえの卑屈な気持ち、嫉妬心だと思います。
彼は自分が「持っていないものを持っている人」の話(日下部がコンパに行く話など)を聞くと、「それは僕に対してのあてこすりか?」とわめき散らしていました。
自分が誘った映画「コブラ」には興味を示さず、目の前で別の映画の話題をされたことも不満としてぶちまけました。
人脈を持ち、北町の知らないことを知り、楽しそうにしている親友の彼女を侮辱しました。

映画では3年の時が経過しますが、特に北町の性格と行動は変わっていません。
相変わらず風俗に行き、日雇いバイトをして、酒とタバコに溺れ、借金&家賃滞納をしています。

そう簡単に変わらない、変わるはずもない。
だけど、彼が最後に見せた、小説を書いている「背中」はこれからのほんの少しの希望を感じられるように思えました。

もうひとつ、彼のことは同情の余地があろうとも大嫌いですが、それでも好きなところがあります。
それは親友の日下部絶交し、再開した時の台詞です。

正二、お前友達だったよな、友達でいてくれて、ありがとう、本当ありがとう
これを聞いた正二は軽く手をあげて応えます。

彼は今まで友達の作り方も知らず、友達になってくれるものもおらず、せっかくできた友達をも傷つけました。
卑屈で周りを卑下していた彼は、感謝をすることもほとんどありませんでした。

そんな彼が、かつての親友に、友達になってくれたことを感謝するのです。
ここでも、ちょっぴりの希望が見えました。


~日下部正二~

世渡り上手で、常識人な普通の青年です。
北町が自分と同い年と分かるやいなや、即効で「タメ口になる」なれなれしさが、何ともリアルに思えます。

北町が「風俗は必要悪だ」と言うのに対し、彼は「必要悪は真理に反する」と返していました。
さらには「こういうところ(風俗)は汚いよ」と。
セックスのことしか頭にない北町に対して、日下部は物事の善悪を考えられる人間でした。
まあ彼も行ってみれば風俗に乗り気になっていましたがw

彼は北町から見れば、「自分にはないものを持っている人間」でした。
器用に仕事をこなし、女子とのコンパに誘われ、果ては彼女もできる彼は、北町から見れば羨望と嫉妬を感じる存在です。

彼は、本当に北町のことを思いやっていました。
本屋アルバイトの桜井と仲良くなるために間を取り持ったり、彼の言動や奇行をたしなめたり・・・
北町が自分の過去を告白し、「僕は卑劣で薄汚い性犯罪者の息子なんだ。努力したってどうにもならないよ」と言った時には、目に涙を浮かべ、こう言っていました。

「悪いことをしたのはおやじさんだろ、お前はおやじさんとは違うよ、お前はあんがいいいやつだよ

この後、北町は桜井に謝りに行きます。日下部がそう諭したのでしょう。

北町と日下部の友情は、北町の侮辱により壊れてしまいました。
しかし、日下部は北町の最高のパートーナーだったと思います。


~桜井康子~

彼女は自分でお金を稼ぎ、弁当まで作って大学に通う苦学生。
さらに、北町のようなコミュニケーション能力がないような青年にも、明るく「友達になってもいいよ」と答えてくれます。
北町の「手をベロン」事件もあっさり許してくれますし、このむさっくるしい映画の世界の中では、清涼剤とも思える存在でした。

彼女が隣に住むおじいさんの排尿を手伝うシーンも好きです。
そんなことやるなと言う北町(お前がやれよ)に対し、彼女はほぼ躊躇することなくそれをやってのけ、おしっこが止まらないことに笑ってしまいます。
その演技はとても自然で、魅力的でした。

そんな彼女は、雨の中、アパートの前に立っていた北町に倒され、無理やりキスをされます。
彼女が繰り出したのは「頭突き」。
そして「もう終わりだね」と言う・・・

彼女は本屋のバイトも辞め、二度と戻ってくることはありませんでした。
北町にあてた、本にはさんだ手紙には、笑顔のイラストとともに「この本を読んだら、北町くんが浮かんできました、読んでみてね」と書いてありました。

この手紙は、北町が無理やりキスをする前に書かれたものなのでしょう。
そうでなければ、「笑顔」なんて書けないと思います。

北町が自らの行動で壊したものは、あまりに大きいものでした。


~高橋さん~

彼は序盤に「若者なんだから夢を持てよ」と言ったかと思えば、後半で松葉杖をつかなければいけなくなったときには「夢なんか持っててもどうにもなんねえよ、わかってんのか中卒、この先生きていってもいいことなんかなんもねえぞ」と、北町をなじります。

その後に他人のマイクを奪い取ります。
その歌はすこぶる上手く、声はとてもよく響いていました。

終盤では、歌手として本格的にデビューした姿がTVに出て、北町の目がそれに止まります。

北町は、ヤクザ風の男がチャンネルを変えても、再度戻し、あまつさえテレビのリモコンを壊します。
北町が「あんなのいつまで経ってもこんなところでしか働けないクズ野郎だよ」と言っていた高橋さんが、こうして夢を掴んでいたのは、彼にとってショックでもあり、見逃せない感動だったのでしょう。

思えば、高橋さんがなじったことで、北町は「小説を書きたい」という夢を言うことができました。
高橋さんの言動と行動は、確実に北町のその後を変えたのです。


~好きなシーン~

・「動物ごっこ」
北町と元彼女が、元彼女がつきあっている男に、これを要求されます。
脚本家いまおかしんじさんの実体験に基づいているそうですが、意味わかんねーよ

・ボーリングで遊ぶ北町、日下部、桜井の3人
「ボーリングで遊んだことがない」とこぼした北町が切ない・・・あとストライクをホームランって言っているけど違うから。

・海で戯れる3人
これが北町の一番楽しかった思い出かも・・・
映画の終盤、北町がボコボコに殴られ、草むらから目覚めたあと、海へと駆ける2人を思い出すのもそれを示していると思います。

・海での幻覚のあと、ゴミ捨て場に落下する北町
どっから落ちてきたんや


~持たざるもの~

amazonには原作本の素晴らしい書評があります。

この孤独感。この孤立感。この虚無感。あがいてもあがいても浮かび上がれない息苦しさ、滑稽さ。これは、もたざる者の、もたざる者による、もたざる者のための書だ。
 『苦役列車』が優れているのは、もたざる者の声を代弁してるからではない。もたざる者が怠惰な海に心地よく浸ったときの苦境をあますところなく描いているからだ。


そのとおり、この物語は持たざるものへ向けられたものであり、その怠惰で、鬱積した心情をこれ以上なく描いているのです。
主人公と似た境遇にある方、それを経験したにとって、まさにバイブルであるでしょう。

この主人公のような状況に慣れたら終わりだなーこうはなりたくないなーって思ったら、それはたぶん、何かを持っている方なのだと思います。

思えば、主人公の北町だって、ちゃんと肉体労働を毎日こなしているし、行動しだいでは、原作者が芥川賞を受賞するように、「持つもの」になれると思うんです。

この物語を観たあとでは、北町のようなことをしていないかなと、自分の行動をいろいろ省みたくなりました。

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

2012-07-16 : 映画感想 : コメント : 2 : トラックバック : 0
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非公開コメント

北町が誘った映画はランボーではなくコブラでした
2015-01-28 21:20 : さそり監督 URL : 編集
Re: タイトルなし
> 北町が誘った映画はランボーではなくコブラでした

修正します。
2015-01-28 23:15 : ヒナタカ URL : 編集
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