生き抜く強さ「おおかみこどもの雨と雪」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:8/10
一言感想:気になることは多いけど、それ以上に素敵な「母子」の物語
あらすじ
女子大生の「花」は大学で知り合った男に恋をする。
しばらくして、彼は自分が「おおかみおとこ」であったことを明かす。
2人は結ばれ、ほどなくして「雨」と「雪」という子どもが産まれるが、子どもたちもまた、おおかみと人間の血を引き継ぐ「おおかみこども」だった。
「サマーウォーズ」「時をかける少女」の細田守監督最新作です。
これは面白い!
作品の魅力はアニメーションならではの画の面白さ、生き生きとした登場人物の描写です。
今作は「母と子」の物語。
それも子どもが生まれ、そして少年少女へと成長するまでの姿が描かれているのです。
細田監督のいままでの作品と同じように、本作には悪役はほとんど登場しません。
本作で主人公たちが立ち向かうのは、「生きぬくこと」という困難です。
それは、
「おおかみこども」であるが故に、世間にバレずにいなければならないことだったり。
経済的な問題だったり、
人間関係だったりします。
こうした日常の描写の中に、たくさんの登場人物の思いや、決意がみてとれます。
「おおかみこども」に関する描写はファンタジーですが、それ以外は現実にもあるもので、世の親御さんにはきっと思うことのある描写だと思います。
母として、子どもを育てることの大変さを描き、その愛おしさと、母が絶え間ないほどの愛情を注いでいることが伝わってくるのは、本作の最も優れた点でしょう。
大野百花さん演じる「雪」をはじめ、それ以外の登場人物も可愛くって仕方がない。
個人的には菅原文太が演じたおじいちゃんが一番キュートでした。
音楽がこれまたよかった!
![]() | 高木正勝 2350円 powered by yasuikamo |
![]() | アン・サリー 高木正勝 990円 powered by yasuikamo |
参考→高木正勝 - YouTube
躍動感あるシーンでの高揚感はかなりのもの。
エンドロールで流れる歌の歌詞は、本作の内容に即したものでした。
是非その歌詞に、思いを馳せてみてほしいです。
ビジュアルと演出が素晴らしい反面、気になることも多かったです。
それは主人公・花の描写。
普通に考えて大学生のまま子どもを生むことは、その後の人生を考えれば無謀なことであるし、そうなるに至ったまでの説得力は薄く感じます。
母親としても、世間一般的に考えれば、共感できないところもあります。
こうなったのは、あくまで登場人物たちの心情や、生活を描きたかったからからだと思います。
しかし、背景をあまり描写せずに、多くの人が気になるであろうことを、おざなりにしていると感じたのも事実。
メインの描写がとてもいいのに、あれはなぜなんだろう?どうしてそうするんだろう?と、「ひっかかり」ができてしまうのはもったいないと思います。
こういった欠点も含めて、今までの細田監督作品よりは好き嫌いは分かれると思います。
それでも、優れたアニメーション作品として是非おすすめします。
物語の起伏は薄めで、重い展開も多く、ベッドシーンに近い展開もあり、作品のテーマも含めて少し大人向けです。
登場人物が可愛いので子どもにも楽しめると思いますが、大人にこそ観て欲しい作品であると思います。
以下、ネタバレです 結末に触れています↓ はじめに気になることをあげているので、この映画が好きな人は要注意
*水色で示しているのはコメントでいただいたご意見です。ありがとうございました!
~「おおかみおとこ」と「花」の背景が不明瞭~
この2人の背景について、気になることをあげてみましょう。
「花」について
・大変な思いをして大学に通っているのに、何故子どもを産むことをよしとするのか?
「おおかみおとこ(彼)」について
・彼は何故、花に自分がどうやって育ってきたのかを語らなかったのか?(言ったのはせいぜい種族の末裔であることくらい)
・彼自身も、子どもを産めば大変な思いを花にさせてしまうことはわかっているのではないか?
「花」は冒頭で言ったとおり、奨学金を使い、アルバイトをしてまで国立大学に通っています。
そこまでして大学に行っているのに、子どもを産み、アルバイトも辞め、休学どころか中退をしてしまします。
大学を中退をするというのは、本人とってみれば大きな決断だと思うのですが、本作ではそこに至るまでの葛藤は全く描かれていません。
そしておおかみおとこも、花が大学を卒業することも待たず、子どもをつくる。
さらに、年子でもう一人つくる。
しかも、その子どもは、ただの子どもではないのです。
まったくもって勝手だとしか思えませんでした(しかも当の本人は理由が不鮮明なまま事故で死んでしまう・・・)。
この作品は、そうした「子どもを持つことの後ろめたさ」が全く描写されていません。
「惜しみのない子どもへの愛情」を描くためには、それは必要ではないと判断したのかもしれません。
おおかみおとこの背景や、花が大学に通っていた目的を描けば、よけいに子どもを産むことに賛同しにくくなってしまうだろうし、花が試行錯誤をする描写も希薄になってしまうので、あえてそうした理由づけは避けたのかもしれません。
そうだとしても、最低限の納得できる理由が欲しかった、彼らに感情移入がしにくかったのも事実です。
この映画の、一番大きな欠点だと思います。
花の家族や親戚の描写がないのもやや不自然に思えます(父が葬式で死んだ事だけがわかります)。
このあたりはノベライズ版で補完できるそうです。
この映画は総じて「理由付け」がされていませんが、以下のような肯定的な意見もあります。
<みんなのシネマレビュー:めっくさん>
花としては、「彼」が稼いでいたので、主婦に成るつもりだったのでしょう。彼女自身の収入が必要なら、子供が手を離れたら、クリーニング屋の受付に復帰すれば良いです。
また、推定ですが、花はその母親に捨てられています。それが彼女の深層での、自らの母性徹底へのモチベーションになっていたと思われます。
「彼」もまた、家族を欲しがっていたと思われます。「家が欲しい」は「家族が欲しい」という事でもあるのです。
小説ですと、情報の補完が色々有ります。
おおかみおとこが死んだ折り(雨の出生翌日。早春)、冬の生まれの雪は、生後1年と1ヶ月です。
雪が小学校に入って程無く(4月)、花はバイト就職します。
なお、この頃には家庭菜園も順調であり、生活はかなり楽になって居る筈です。
また、バイト採用の翌年、正職員に採用され、収入が安定します(映画でも、草平事件の折に写った花のデスクの充実振りや、自動車に乗っていた件から、既にバイトではない事が伺われます)。
花達が、「彼」の遺した貯金頼りで暮らしていた期間は、大体、5年と数ヶ月と思われます。
里での買出しの場面の財布の小銭が目立った中身などを見るに、田舎への引越しの頃には、既にかなり乏しくなって居た筈です。よって当然無尽蔵に有った訳ではありません。
約5年を、花達が倹しく暮らしていたとして、 月々16万円くらい、年間約200万円として、5年数ヶ月に足りる程度とすれば、推定で1千万円以上の貯金が有ったと思われます。
彼は、「家が欲しい」と言っていたので、その為の積み立てをしていたのではないでしょうか。
彼が、高卒後すぐに、予め大型免許などを取った上で、引越し専門の運送屋に就職し、貯金を始めたとしたら、 亡くなったのはアラサーくらいですから(彼は花より7歳年長です)、約10年を稼ぎ続けたことになります。
勤務内容にもよりますが、頑健な人狼であるわけですし、贅沢していなければ(彼が花の家に移った折、その荷物は本の入った紙袋2つだけだった由です)、1千万円以上は貯まる筈です。
本作は、雪による語りが全体に導入されています。蛇足だというコメントもあるようですが、私は、「雪が雪の視点で母を語る映画」だと思いながら観ていました。
雪が生まれる前や幼い頃の出来事は、母から聞いた思い出話であるかのように、「~だそうです」と綴られています。
苦労して通っていた大学を中退することや、19歳という若さで子供を持つことといった様々な葛藤は、花から雪に語られなかったのだと思います。
よい母親であろうとした花が、自分の愛する子供に、「あなたを生むために大学に通う(=自分の将来)ことを諦めたのだ」と語るはずがありません。
これは推測ですが、物語は雪が中学の寮に入るところまでとなっているので、おそらく中学生くらいの歳の雪が母を語る、といった体で構成されていると考えると、母の心奥の葛藤は雪には想像することもできないと思います。それゆえに映画の中で触れられなかったのではないでしょうか。
また、雪にとって花は、愛情いっぱいに自分と雨を育ててくれた強く優しい母親です。
そのため、ご指摘のあった、シャッターが閉まったあとの店で待ち続け、満面の笑みでおおかみおとこを迎えるところのように少しやりすぎと感じられる部分も、雪の花に対するイメージが、辛い時でもいつも笑顔でいる、気高い母親だからなのではと感じました。自分の弱さや挫折は、子供の前では決して見せなかったがために、劇中では描かれなかったのでしょう。これは深読みのしすぎかもしれません。
さらに、おおかみおとこについては背景も内面もほとんど語られておらず、謎な部分や明かされない部分も多かったのは、雪が父親について、母が語った以上のことを知り得ないからではないかと思います。物心着いた頃にはもう父親という存在がなかった雪にとっては、父親の存在はあくまで母を通してしか知らないのです。
~他にも野暮なツッコミどころ~
・葬式で笑顔でいたことに対して「不謹慎だったかな」と言う花に対して、「不謹慎じゃないよ」とフォローをするおおかみおとこ
いや、それは不謹慎では・・・
葬式の笑顔については、普通は不謹慎だと思うでしょうが、「お父さんが一番喜ぶ姿で見送ろう」という花の考え方に、おおかみおとこが共感した、つまりその特殊な価値観を共有出来る相手に出会った、という事実が大事だと思いました。
・シャッターが閉まったあとの店で待ち続け、満面の笑みでおおかみおとこを迎える花
彼女が「辛い時にこそ笑顔でいる」ことがわかる描写ですが、やりすぎに思えたかも。
・ベッドインするとき、狼になっているおおかみおとこ
なぜ。多くの人が眉をひそめると思う。
ベッドで狼のままなのは、雪が気持ちが高ぶると狼になってしまうという描写があったので、(あくまで想像ですが)彼もベッドでは狼であることを抑えきれなかったのではないでしょうか。
自分が狼であることをひた隠しにした雪でさえも、草ちゃんに追い詰められた時に狼になってしまったくらいですから。いつでもコントロール出来るものでもないのでしょう。
また、あれは厳密には半獣状態と言えます(草平を傷つけた際の雪と同じ)。ここでは花の覚悟を示す必要性があったのです。
・雪は保育園に行きたいことを訴え、「ちゃんと(人前ではおおかみにならないという)約束は守るから!」と言うが、次のシーンでは人前で速攻おおかみになっている。
保育園いかなくてよかったね・・・
このシーンは雪のセリフでも多用されましたが人前でも「うまくやっていける」ということを子供心に証明しようとしたんだと感じます。雪は「おおかみにならないこと」でなく「おおかみだとばれないこと」が本当は重要だと認識したのでしょうね。
・豪雨の日、雪と転校生の「草平」が学校に残される。体育館にランドセルが2つ残されているが、誰も気にすることがなかった。
車で送迎しようとする先生が不審に思うんじゃ・・・
雪の友達の信乃ちゃんのお父さんが「送っていこう」と発言していましたが、小説によると、それを聞いた下級生がその旨を先生に証言したので、先生は「帰った」と誤認したようです。
・わずかなおおかみおとこの貯金でどうにかなっている
十何年の時がすぎるうえ、花の給料もほとんどないに等しいものだったのに・・・
(助言があったとはいえ)女手一人で自給自足生活がちゃんとできていることも含めて、やや不自然に感じます。
花は「悲しいときも笑っている」というメンタル面も含めて、「強すぎる」と思ってしまいました。
彼女の弱さや、挫折がもっと描写されていると、より感情移入できたと思います
花の行動に対して、以下のような否定的な意見もあります
<みんなのシネマレビュー:はち-ご=さん>
彼女が徐々に周りの人たちに認められる描写は大好きです。
~気になったシーン、好きなシーン~
・雪が吐いたものを描いている
これには驚きました。
授乳やつわり、果ては「少しの時間があれば眠れるようになる」など、日常的な子育ての様子が細やかに描写されているのはすごいと思う。
・小児科に行くか、獣医に行くかを迷う花
ここは劇場で一番笑いが起きていたと思います。
シリカゲルは基本的に飲んでも問題はないようです。
・おおかみおとこの遺影が「免許証」
死んだことを証明できないので、仕方がなかったのですのね。
2人で撮った写真があってほしかったです。
・花たちのイモだけが動物に荒らされていなくて、みんなにおすそ分けできる言わずもがな、雪が動物を追い払ったのでしょう。雨もそうしていたのかもしれません。
*以下のご意見が正しいと思います
夜行性の野生動物のことですし夜に眠っている子供たちが「追い払った」のではないと思います。「動物たちにえらそうにしないで」と花から言われてもいますし。では、なぜ野生動物たちが畑を荒らさなかったのか?ヒントは縁側に近所の方たちの集まるシーンでの雪の「おしっこ!」というセリフです。おそらくおおかみの尿のにおいに敏感な嗅覚をもつ野生動物たちはおののいてしまったのでしょう。
・定期健診を受けていないおかげで、幼児虐待やネグレクトではないかと、訪問してきた調査員に言わてしまう
それも致し方がないでしょう。リアルな場面でした。
・自然観察指導員
花がこの職業を選んだのは、狼に会いたかったから。
基本的にボランティアに近いようなもので、給料が微々たるものであることも事実のようです。
・「(雨が小学校に行っていないことに対して)それは見どころがある!エジソンとわしがいい例だ」
これは畑の助言をしてくれた「韮崎」さんのことばです。
そういえばエジソンは小学校を辞めさせられ、母親に授業を教わっていたのでしたっけね。
韮崎さんはぶっきらぼうでしたが、実はとても花を心配していたツンデレおじいちゃんなので大好きです。
もう少し活躍して欲しかったけどね。
・花に助言をするおじさん2人組
2人とも「わしの助言のほうが正しい」と譲りません。
・おみやげ三つ
作中で言う「おみやげ三つ、たこ三つ」は、昭和初期にかかれた童歌からのものです。
これは「ゆびきりげんまん」の後に続いて使われたこともあったようです。
指きりげんまんには怖い意味もあるので、こちらを採用したのだと思います。
・大雪原を駆け抜ける家族
この映画で一番好きなシーンがこれ。
音楽の相乗効果もあり、その疾走感・躍動感の素晴らしさは筆舌に尽くしがたいものがあります。
後にある、雨が大自然を駆け巡るシーンの美しさも忘れらないものでした。
・雨と雪の学年が変わっていくシーン
2人の学年が変わっていくことを、横からとらえた画で左右に動かしながら表現しています。
・カーテンがゆれるたび、狼になったり、人間にもどったりする雪
これも大好き!映画ならではの表現であると思います。
・母を置いて出て行ってしまう雨
このせいで、花は森の中で苦しむことになります。
何か書き置きをするか、最後に雨が花に謝って欲しかった、というのが本音です。
雨が学校に行く前の雪に「今日は家にいなよ」と言ったのは、すでに出ていくことを決心していて、自分の代わりに母といて欲しかった(嵐がくることがわかっていた)からでしょう。
きつねの先生が、油揚げをとらずに桃を持っていく点ですが、実はきつねは油揚げを好物としないそうです。人間が長い年月をかけて勝手に思い込んでいるだけみたいですよ。それをしっかり調べて再現する細田監督の綿密さに驚きです。
~母親としての花~
母としての花は、夫を亡くし、田舎で生活をはじめ、それでも子どもを立派に育て上げている賞賛すべき人間です。
彼女は、雨と雪が喧嘩したことを叱りませんでした。
このとき、彼女は「自分の道を選ぼうとしているのに、不安でしょうがなかった」と、子どもの喧嘩そのものとは違うところで悩んでいます。
雨が学校に行かなくなったときも、花は雨を叱っていませんでした。
それは、雨がおおかみおとことしての本能に目覚めていくことに気づき、「先生」までもがいることを知ったからなのです。
花は子どもの意思を尊重しているともとれます。
また、彼女は「お母さんが何も知らないのがいけないの」と田舎暮しをはじめた自分を責め、最後に雨が旅立つときには「私、まだあなたに何もしてあげれていない」と言います。
夢の中でおおかみおとこに会ったときも、母親としての自分がまだ未熟であることを告白していました。
おおかみおとこが「本当だよ」と言ったのには、ちょっと笑ってしまいました。
父狼がラストの夢で「本当だよ」と言ったのは、花が言ったことに対してではなく、自分が言ったこと「花は子どもをちゃんと育てた」にかかっていたとみるべきではないでしょうか。
~野性的だけど、次第に学校に適応していく娘・雪~
この描写も大好きです。
幼いころの花はわがままで、部屋を汚しまくったり、机をかんだりとやりたいほうだいでした。
でも小学校に上がり、青大将を掲げたときと、動物の骨のコレクションを見せたとき、同級生のリアクションを見て、彼女は「普通の女の子はそんなことしないんだ」とすごく恥ずかしくなってしまいます。
雪は「おしとやかに生きる」ことを決め、母の花が作ってくれた「ワンピース」に救われたことを言います。
いままで野性的だった彼女が、「女の子」に成長する姿が見れて、嬉しかったです。
~転校生の「草平」~
彼は「けもののにおいがする」と雪につめより、結果、怪我を負います。
終盤、草平の母親が再婚し、子どもができたため、草平が「いらない子」と言われてしまったことがわかります。
彼は「一匹狼でも生きていくさ」と言い、花と同じように、辛いときでも、雪に満面の笑みを見せます。
雪は「あなたように本当のことを話しても、笑っていられるようになりたい」と言い、正体を明かします。
草平は、雪が「おおかみ」であることに気づいていました。
だけどその正体を誰かに言うことはありませんでした。
草平は、雪に自分と似たものを感じ、そうした対応をとっていたのかもしれません。
事実、草平と雪は、鏡の前で同じように「早く大人になりたい」と言っていました。
雪は、いままで言えなかった自分の正体を草平に告白できて、少しだけ救われたのだと思います。
~おとなしいけど、次第に自然で生きていこうとする息子・雨~
姉とは対照的に学校にはなじめず、ヤマセミを捕まえて溺れかけたときをきっかけに、狼としての本能に目覚めていきます。
彼が「狼(オオカミ)って、どうしていつも悪者なの?」と花に聞いたのも、その本能にいち早く気づいたからなのでしょう。
花は雨に「あなたはまだ10歳なのよ?狼の10歳が大人でも、あなたは・・・」と言いかけますが、そこで口をつぐみます。
花も雨が狼として生きることを望み、それができる年齢であることに気づいたのです。
ヤマセミを捕まえた時から、雨は狼として成長しだしました。それに伴い、雨の内面も、狼の早さ、つまり、人の何倍もの早さで成長していたために、10歳にしてまるで老成したかのような振る舞いをみせていたのだと思います。
私は、花の「あなたは・・・」で途切れた言葉の続きは、「あなたは狼じゃないのよ!?」だったのではないかと思います。そして、自分の言おうとしたことが、今まで「好きに生きればいい」と言ってきたはずの自分の言葉と真逆であること、おおかみおとこや雪、雨の中の狼の部分を否定してしまうことに気づき、口をつぐんだように感じました。
このあたりの花は、子離れできない母親の姿なのかな、と感じました。自分の考える以上の早さで、しかも自分がわからない狼として成長して旅立とうとしている雨に対し、まだ自分が保護しなければならない小さな子供なのだと思っていたかった。
しかしそのあと、森で雨に助けられた時に、雨はもう自分が守ってあげなくても大丈夫なのだと気づき、旅立つ雨に「生きて」とエールを送ったのだと思います。「洗いたてのクモの巣、洗いたての空、全てが生まれ変わったようだった」というのは、それまでずっと良い母であろうと気を張ってきた花が、雨との子離れ・親離れを通して、肩の力がやっと抜けた瞬間だったのではないかと感じました。
豪雨の中、森に入っていく雨を花は追いかけます。
雨は以前にも森で死にかけたことがあったので、花はいてもたってもいられなかったのでしょう。
最後には、雨の手により花は駐車場へと送り届けられ、雨は少し躊躇しながらも、狼の姿で森へと帰っていきます。
雨は、自分で狼として生きる道を選んでいきました。
花が「元気で、しっかり生きて」と、最後にエールを送ったのは、狼として、吠え、そこで生きる姿を想像できたからでしょう。
花はその日を「洗いたてのクモの巣、洗いたての空、全てが生まれ変わったようだった」と言い、子どもを育てた12年間の月日を「おとぎ話のようだった」と振り返ります。
あれほど大変だった子育てを「おとぎ話」と表現する彼女のことばには、重みと、力強さがありました。
その後に映し出されたのは、監督の前2作品でもあった、大きな入道雲。
それは登場人物を投影しているものなのでしょう。
~母親の笑顔~
花は韮崎おじいちゃんに「笑顔でいると何もできんぞ」と言われていました。
それでも彼女は辛いときには笑顔でいて、本作のラストカットも彼女の笑顔で終わります。
笑顔でいることも、花の強さであり、そうすることで辛いことも乗り越えられたきたのでしょう。
ラストでの笑顔は、子どもがいなくなってちょっぴり寂しくはあるけれど、雨と雪をそれぞれ自分の意思で生きていけるまでに育てたという、誇りによる笑顔だと思います。
彼女の心情は、エンドロールの歌詞にもあらわれていました→おかあさんの唄 アン・サリー、高木正勝 歌詞情報 - goo 音楽
これから、中学生になり寮で暮らす雪は、森で生きる雨は、一人で生きると誓った草平くんは、そして家から子どもがいなくなった花は、どのように人生を歩んでいくのでしょうか。
どうあっても、皆のその後が、心からの笑顔に溢れていることを祈ります。
おすすめ↓いろんな感想がまとめられています
『おおかみこどもの雨と雪』雑感 雨と雪はやがて水となって川を流れタービンを回す : 筆不精者の雑彙
>個人的には最後、寮に引っ越す雪との別れも描いて欲しかったです。
そうですね、意外と主題を追い、その分細かいことは描いていない映画のように思えます。
私は「面白かったけど…」という感じですかね。
気になるところを細かくあげるとキリがありませんが、大きく言うと2点あり、まずは私も冒頭部分です。もう一つはそれとも関係してくるんですが、花のキャラクターが強すぎる件です。
まず在学中、20そこらで2人の子持ちで、夫とは死別(しかも目の前であんな別れ方…)して、田舎に行き一人で子育て、リフォームも農業も一人でやっちゃうところを置いといても、あれだけずっと孤独に子育てしてるのに、1度も怒るところが無い。
人間平穏に暮らしていても感情が抑えきれなくなり、つい怒ってしまったりすることはあると思います。
でも花にはそういう描写が無いし、冒頭でおおかみおとこが何時間も待たせたのに一切小言も言わず、笑顔で許してるところを見ると、花が成長してるように見えません。(最初から強く見える)
しかも映画を見る限り、父親は明示されてましたが母親もいないみたいだし、もとから花に関係ある人が一切出てきませんよね。
最後も花が一人で笑って終わり。結局子供も親離れして、また一人。それでも笑ってるってどんだけ精神力強いんだよと思います。だから花に感情移入が全然出来ませんでした。
最後に子育て終了的な終わり方も良いとは思えません。僕は子育ての経験はありませんが、こっから思春期、反抗期があり大変なんじゃないかと思う人もいるでしょう。雨と雪は対比関係なら、雪はまだ花から離れない方が良かったと思います。
まぁこれだけ言ってもまだ言い足りませんが、それでも良い映画だとは思ったのでさすが細田守といったところでしょうか笑
>花のキャラクターが強すぎる
>花が成長してるように見えません。(最初から強く見える)
本当そうですよね。
子育てに奮闘する場面はあっても、それで感情を荒げることがありませんでした。
> しかも映画を見る限り、父親は明示されてましたが母親もいないみたいだし、もとから花に関係ある人が一切出てきませんよね。
花の母親や、親戚の話題がないのも不自然ですよね、参考になったので追記させていただきます。
> 最後も花が一人で笑って終わり。結局子供も親離れして、また一人。それでも笑ってるってどんだけ精神力強いんだよと思います。だから花に感情移入が全然出来ませんでした。
本当に花は強い。
だけど大学のこと、おおかみおとこが死んだこと、それらに対する悲しみの描写が少なく思えます。
個人的には「花が笑っているけど、あまりに悲しい事態に遭遇して、ついに泣き出してしまう」ような描写がほしかったです。
> 最後に子育て終了的な終わり方も良いとは思えません。僕は子育ての経験はありませんが、こっから思春期、反抗期があり大変なんじゃないかと思う人もいるでしょう。雨と雪は対比関係なら、雪はまだ花から離れない方が良かったと思います。
「車で2時間半かかる」にしても、そうですよね。
自分もまだ離れないでいるほうがよかったと思います。
> まぁこれだけ言ってもまだ言い足りませんが、それでも良い映画だとは思ったのでさすが細田守といったところでしょうか笑
背景や説得力に欠ける描写はあったものの、話の主軸はとってもよかったです。
本屋でノベライズ本があったので気になった部分だけ見たんですが、花は父子家庭で、大学合格の時に父親が亡くなって、親戚が援助を申し出たそうですが断ったと書いてありました。
やっぱり最初からたくましすぎるし、花に可哀想なことが多いですね。
田舎の人のキャラが良かったので最後は交流してるとこで、花の笑顔とかの方が救いがあるし良かったかなとも思います。
ノベライズ版は色々と疑問点を補完出来そうなのでまた読みたいと思います。
そうだったのか!ノベライズは雪の一人称で物語が語れていなかったりするそうですね。
自分も読んでみたくなりました。
私は高木正勝さんが音楽担当と言う事が楽しみで事前情報無しで見ましたのですが、
色々と細かなつっこみどころがあるのはアニメだし置いとくとしてw良い映画でしたね。
映画を見ていてる人の経験が反映される映画だと思いました。
映画見てる途中に自分やあの子がああだったなーって思ったりしたんですよね。
そういえば今朝のTVで監督がインタビュー受けていたんですけど、おみやげみっつの意味は
指きりの歌の後ろに続く歌だといっていて映画での使われ方が謎だったので納得しました。
こういう歌って地域によって最初は一緒なのに後は不思議なほどばらばらですよね。
ハッピーエンドにしてほしかったといいますか・・・
今でも引きずっています。
感情移入しすぎたと思っていますが
それくらいの気持ちになれるいいお話だったと思います。
作品のシーンとのシンクロっぷりが最高でした。
>映画を見ていてる人の経験が反映される映画だと思いました。
雪の行動は、本当「あるある」ですよね。
>みやげみっつの意味は 指きりの歌の後ろに続く歌だといっていて
そうだったのですか。参考になったので追記します。ありがとうございます!
>ハッピーエンドにしてほしかったといいますか・・・
>今でも引きずっています。
あの展開は、確かに純粋なハッピーエンドではないですよね。
「生きて」と言う花は強すぎて・・・彼女にはもっと子どもがそばにいてあげてほしいと、自分も思いました。
それでも、心地よい余韻を残してくれたと思います。
私が一番気になったのは、雨が巣立ったとき、それを周囲にどう説明したのか…なんですよね。
父親の“おおかみおとこ”がいなくなったのとは話が違う。
野暮な突っ込みなので、当方の感想には書きませんでしたが。
> 欠点をほとんど補えるほど、素晴らしい描写が多い!
いや、まさに仰る通りです。
そしてこの映画を、できることなら手塚治虫に観せたい。
「アニメは、ここまで“生きている画”に到達しました」と。
> 父親の“おおかみおとこ”がいなくなったのとは話が違う。
> 野暮な突っ込みなので、当方の感想には書きませんでしたが。
そうですよね、雨の存在はまわりに認知されているはずなのに・・・
> > 欠点をほとんど補えるほど、素晴らしい描写が多い!
> いや、まさに仰る通りです。
> そしてこの映画を、できることなら手塚治虫に観せたい。
> 「アニメは、ここまで“生きている画”に到達しました」と。
雪山を疾走するシーンが本当大好き。
アニメならではの表現に感動しました。
手塚治虫に、たしかにみせたい!
映画館で見て損はなかったけど、突っ込みところが満載でした。摘んできた野の花が萎れてないのが。最後のさよならする手が節くれだってたら、いろいろ許せたのに。
なるほど!参考になりました。追記させていただきます。
ちょっと誤解を生みますね。
この映画を見てとても感動してしまい、様々な批評をネットサーフィンしながら見ておりました。
おおむねこの批評通りだなと感じました。
しかしところどころ、私の思いとは異なる点がありました。
ケチをつけるわけではないですが、「違った解釈もある。」くらいのお気持ちで読んでいただけると幸いです。
以下、この批評と異なると感じる点を述べさせていただきます。
>雪は保育園に行きたいことを訴え、「ちゃんと(人前ではおおかみにならないという)約束は守るから!」と言うが、次のシーンでは人前で速攻おおかみになっている。
このシーンは雪のセリフでも多用されましたが人前でも「うまくやっていける」ということを子供心に証明しようとしたんだと感じます。雪は「おおかみにならないこと」でなく「おおかみだとばれないこと」が本当は重要だと認識したのでしょうね。
>花たちのイモだけが動物に荒らされていなくて、みんなにおすそ分けできる
言わずもがな、雪が動物を追い払ったのでしょう。雨もそうしていたのかもしれません。
夜行性の野生動物のことですし夜に眠っている子供たちが「追い払った」のではないと思います。「動物たちにえらそうにしないで」と花から言われてもいますし。では、なぜ野生動物たちが畑を荒らさなかったのか?ヒントは縁側に近所の方たちの集まるシーンでの雪の「おしっこ!」というセリフです。おそらくおおかみの尿のにおいに敏感な嗅覚をもつ野生動物たちはおののいてしまったのでしょう。
他におもしろいと感じた点
・本棚の本が徐々に変化していく点。
教科書や参考書→育児書・オオカミの生態についての本→農業系の本(特に広辞苑が最後ではなくなるところが月日の経ち方を感じる。)
・おおかみおとことともに丘の階段を上るシーン
幅のある階段を彼はゆっくり一歩ずつ、花は二歩ずつで登るのが見ていてキュンときました。
・きつねの先生が、油揚げをとらずに桃を持っていく点
実はきつねは油揚げを好物としないそうです。人間が長い年月をかけて勝手に思い込んでいるだけみたいですよ。それをしっかり調べて再現する細田監督の綿密さに驚きです。
・耳を覆い隠す雪と雨の髪型
おおかみの耳が生える時人間の耳は当然なくなります。
しかしショートカットではそれでは不自然なことになってしまいますよね…
疑問点
・いつ花は免許を取得したのか?(いくら田舎でも無免許運転はいけません。)
・雪の髪色の変化
おおかみから人間よりになる雪を象徴する「赤のイメージ」から「青のイメージ」。それに伴って髪色も茶色から黒になりますが、成長によってそんなに髪色はかわるのでしょうか?
以上が私の感想になります。
長文になりましたが読んでいただいてありがとうございます。
いやあ・・・ものごっそい参考になりました。短絡的に解釈ばっかりしてすみません。
確かに!という意見ばかりで感服しました。
> >雪は保育園に行きたいことを訴え、「ちゃんと(人前ではおおかみにならないという)約束は守るから!」と言うが、次のシーンでは人前で速攻おおかみになっている。
> このシーンは雪のセリフでも多用されましたが人前でも「うまくやっていける」ということを子供心に証明しようとしたんだと感じます。雪は「おおかみにならないこと」でなく「おおかみだとばれないこと」が本当は重要だと認識したのでしょうね。
なるほど!花は素直で、かつ子どもだからこそ、そういう認識をしたのですね。
> >花たちのイモだけが動物に荒らされていなくて、みんなにおすそ分けできる
> 言わずもがな、雪が動物を追い払ったのでしょう。雨もそうしていたのかもしれません。
> 夜行性の野生動物のことですし夜に眠っている子供たちが「追い払った」のではないと思います。「動物たちにえらそうにしないで」と花から言われてもいますし。では、なぜ野生動物たちが畑を荒らさなかったのか?ヒントは縁側に近所の方たちの集まるシーンでの雪の「おしっこ!」というセリフです。おそらくおおかみの尿のにおいに敏感な嗅覚をもつ野生動物たちはおののいてしまったのでしょう。
>
これまたハッとさせられました。
「なわばり」が出来たいたのかもしれませんね。
他にも油揚げの描写はそうだったのか!の感激しっぱなしです。
以上は記事に反映させていただきます、ありがとうございました!
ノベライズを読んでいて気がついたのですが、女の子らしく振舞いたい雪に対し「仕方ないなー」と話しワンピースを作ったシーン。
これなんでワンピースなのかな~と思ったら、一番最初に彼と花が待ち合わせした時に、服選びに悩んだ花が着てたのがワンピースでした。
恋をしてた花と、友達の前で女の子らしくしたい雪ではちょっと目的は違いますが、同じ「女の子らしく!」という意味で花はワンピースを作ってあげたのかもしれないですね。
こういう気付きもあったので、ノベル(というか原作ですが)も合わせて読むと面白いかな~と思います。
それは気づかなかったです!
いろいろ見返すと気づくことが多い映画ですね、ありがとうございます!
短絡的な解釈なんて、とんでもないです。
私はこの映画を気にいって、この映画についてのみ考察しているので、色々と考えをめぐらすことが出来ますが、ヒナタカさんは色々な映画に対してかなりの量を感想にまとめていらっしゃいます。本当にすごいと思います。
並みの映画好きがなかなか出来ることではないでしょう。
今後も新たに映画を見た際にはヒナタカさんの感想も拝見させていただきます。
よろしくお願いします。
待ちぼうけのシャッター前で笑顔を見せるシーンも、花の強さというよりも「それほど彼を愛してる」という描写だと感じました。顔を見ただけでも笑顔になってしまうほど好きな人。待たされたことも許してしまうほど好きな人。それが、花がおおかみおとこの真実を知った後にも相手を受け入れられるということにも繋がると思います。
全ての人が、そこまで愛せる相手に出会えるかどうかは分かりませんし、同じような状況で子供を作らない選択をする人もいると思いますが、花はそういう人に出会ったし、子供を作る選択をした。そういう描写だと思いました。
おおかみおとこについても、子供を残したいと思う相手に出会えたから、ああいう行動に出たのでしょう。
子供が幸せになれないかも知れないから、一生子供を作らずに生きるという選択をする人もいるかも知れませんが、それでも愛する人の子供が欲しいという感情に、私は共感しました。
何となく無責任に子供を作ることを、推奨する訳ではありません。
でも観る人もそれは分かってくれると思いました。
葬式の笑顔については、普通は不謹慎だと思うでしょうが、「お父さんが一番喜ぶ姿で見送ろう」という花の考え方に、おおかみおとこが共感した、つまりその特殊な価値観を共有出来る相手に出会った、という事実が大事だと思いました。
それも、愛すべき人に出会えた、という描写だと思いました。
自分なら世間体を気にしてしまって笑顔にはなれないでしょうが。
ベッドで狼のままなのは、雪が気持ちが高ぶると狼になってしまうという描写があったので、あくまで想像ですが、彼もベッドでは狼であることを抑えきれなかったのではないでしょうか。
自分が狼であることをひた隠しにした雪でさえも、草ちゃんに追い詰められた時に狼になってしまったくらいですから。いつでもコントロール出来るものでもないのでしょう。
体育館にランドセル2つを放置したのは、完全に教員の不手際ですね。大きな問題にならなくて良かったです。
花の収入については、何とかしたんだろうな、と想像するしかありませんね。
マイカーも持ってましたから、「高校生のバイトより低い時給」で何とかなるとは思えません。
詳細は描かれてませんが、そこまで細かく説明しなくても良いと思いました。
何とかうまくやっている、という事実が描かれていれば。
その他、良かったと思う部分については、凄く共感します。
とても好きな作品です。
(それ故、何でもかんでも擁護し過ぎだと思われるかも知れませんが(^_^;)
> 葬式の笑顔については、普通は不謹慎だと思うでしょうが、「お父さんが一番喜ぶ姿で見送ろう」という花の考え方に、おおかみおとこが共感した、つまりその特殊な価値観を共有出来る相手に出会った、という事実が大事だと思いました。
> それも、愛すべき人に出会えた、という描写だと思いました。
> 自分なら世間体を気にしてしまって笑顔にはなれないでしょうが。
そうですね、それがあのシーンで大切なことだったと思います。
> ベッドで狼のままなのは、雪が気持ちが高ぶると狼になってしまうという描写があったので、あくまで想像ですが、彼もベッドでは狼であることを抑えきれなかったのではないでしょうか。
なるほど。「ハルク」にも似たシーンがありました。
>それ故、何でもかんでも擁護し過ぎだと思われるかも知れませんが(^_^;)
むしろ批判ばかりしてすみませんでした。以上は記事に追記させてください。
気になってた映画。…でも獣姦のレビューみてから、一気にテンション下がったな。(嫌悪感わく。)
これ観る年齢層ひろいのに、だいじょうぶか?…なんていらぬ心配してしまうし。
母親からしたらさ子育ては、こんなもんじゃないよって。現実の人が19才で妊娠したら、どういう人生なるか…監督はしってんのか?(怒)
現実じゃないのはわかってますけど、ある種の嫌悪感が最近まで消えなかった。(ほんと面倒くさいなー!)
とまぁ、いろいろな感情を感じてます。
この監督の映画。前からオタク臭さが好きになれなかったけど、おおかみさんは劇場に足を運んでみようと思います。
> これ観る年齢層ひろいのに、だいじょうぶか?…なんていらぬ心配してしまうし。
> 母親からしたらさ子育ては、こんなもんじゃないよって。現実の人が19才で妊娠したら、どういう人生なるか…監督はしってんのか?(怒)
あのベッドシーンだけに限らず、本作を「気持ち悪い」と思う方が沢山いるのも事実です。
若くして子を産む花の気持ちを大切にして欲しかったですね。
これから観るのでしょうか?
この「おおかみこども」を見て僕がずっとモヤモヤしていたことに対する答えの一つが書いてあります。未見でしたら一度見ておいた方がいいと思います。
あの方の感想は的を得ています。自分も記事に追記します。
とても詳細にまとめられていて素晴らしいと思います。
ただ、2つだけ言わせて下さい。一つは雨が学校に行く雪に向かって「今日は家にいなよ」と言っていたことについてです。私は、雨が朝早くに起きて空を見ていた時には、既に物凄い嵐がやってくるということを察知していたのではないかと思います。
アカギツネの先生から天気の変化についても教わったようですから、雨は「嵐が来るから今日は学校に行かない方がいい」という意味を込めて雪にあの言葉を言ったのではないかなぁと私は映画を見てから思いました。
残りの1つですが、雨のことについてまとめている章で、「狼はいつもどうして悪者なの?」と作者様は描かれておられますが、厳密に言えば「狼(オオカミ)って、どうしていつも悪者なの?」です。
長文失礼しました。
一応そのあたりはわかっていて、あのように書いたのですが、たしかにことば足らずでした、申し訳ないです。
雨はあまりしゃべらない子なので、あのように言ったのでしょうが、ちょっと冷たいよなあ・・と。
修正いたします。
自分はサマーウォーズも大して好きではないのでこの映画もストーリーにはあまり期待せず、動く絵を楽しむくらいの気持ちで見に行きました。そういう意味では達せられたのかなという気もしなくありません。
が、映画としてこりゃないだろ!と思った事がありました。それについて書かれている方があまり居られないので、自分の映画の見方がおかしいのかとも思いつつ、書いてしまうと、それは雪のナレーション。その時点での心情吐露ではないので、あれはナレーションですよね。しかもそれを語っている雪は劇中のどこにも存在しない、劇中で行われている全てが終わってからの目線。
どんなにツマラナイ映画でも、そこでやり取りされている世界に多少は入り込んで観るものだと思うんですが、それがあったせいで抗いようもなくそこから引き剥がされて映画館の席へと連れ戻されてしまいました。
絵本の読み聞かせでも意識してるのか?と感じましたね。
あとは・・強いて言うなら花の旦那への想いも夢の中みたいなところで話してしまうよりも、日常の出来事として描いて欲しかったかなというくらいです。「本棚でいっぱいにしたい」と言っていたのだから本棚が増えていくだけで十分伝わるんじゃないか?とか。
絵的には3人で雪の中を駆けるシーンもそうですが、姉弟ゲンカのシーンも圧倒されました。
何ヶ月も前でうろ覚えな上、こういったところに書き込むのは初めてなので失礼がありましたらご容赦頂けると幸いです。
確かに「説明しすぎなところ」は大いに感じました。
みんなのシネマレビューであった意見では、「自然出産」の本を手にするシーンがあるのに、そこもナレーションで「自然出産をする事にしました」とするのが不満、というのもありました。
ベラベラしゃべるのではなく、画で表現して欲しかった気もします。
兄弟喧嘩のシーンも、なんともリアルでしたね。
貴重なご意見がいただけて、嬉しいです。
保育園、小学校も真面に言ってないのに 良くあそこまで自我が保てるもんだ
精神年齢30歳くらいなんじゃない?まあ将来は言葉も話せない只の狼になってるんだろうな…
一番気になったのは草平のあの後が気になります。
丁寧なご感想、感心して読ませて戴きました。
以下、少しご指摘させて頂きます。
>普通に考えて大学生のまま子どもを生むことは、その後の人生を考えれば無謀なことであるし、そうなるに至ったまでの説得力は薄く感じます。
>大変な思いをして大学に通っているのに、何故子どもを産むことをよしとするのか?
>彼自身も、子どもを産めば大変な思いを花にさせてしまうことはわかっているのではないか
花としては、「彼」が稼いでいたので、主婦に成る積りだったのでしょう。彼女自身の収入が必要なら、子供が手を離れたら、クリーニング屋の受付に復帰すれば良いです。
また、推定ですが、花は、その母親に捨てられています。それが彼女の深層での、自らの母性徹底へのモチベーションになっていたと思われます。
そして、「彼」もまた、家族を欲しがっていたと思われます。「家が欲しい」は「家族が欲しい」という事でもあるのです。
>・ベッドインするとき、狼になっているおおかみおとこ
>なぜ。多くの人が眉をひそめると思う。
厳密には半獣状態です(草平を傷つけた際の雪と同じ)。
あの折は、花の覚悟を示す必要性が有ったのです。
>体育館にランドセルが2つ残されているが、誰も気にすることがなかった。
雪の友達の信乃ちゃんのお父さんが「送っていこう」と発言していましたが、小説によると、それを聞いた下級生がその旨を先生に証言したので、先生は「帰った」と誤認したようです。
>十何年の時がすぎるうえ、花の給料もほとんどないに等しいものだったのに・・・
既にお読みかもしれませんが、小説ですと、情報の補完が色々有ります。
おおかみおとこが死んだ折り(雨の出生翌日。早春)、冬の生まれの雪は、生後1年と1ヶ月です。
雪が小学校に入って程無く(4月)、花はバイト就職します。
なお、この頃には家庭菜園も順調であり、生活はかなり楽になって居る筈です。
また、バイト採用の翌年、正職員に採用され、収入が安定します(映画でも、草平事件の折に写った花のデスクの充実振りや、自動車に乗っていた件から、既にバイトではない事が伺われます)。
花達が、「彼」の遺した貯金頼りで暮らしていた期間は、大体、5年と数ヶ月と思われます。
里での買出しの場面の財布の小銭が目立った中身などを見るに、田舎への引越しの頃には、既に、かなり乏しくなって居た筈です。よって当然無尽蔵に有った訳ではありません。
約5年を、花達が倹しく暮らしていたとして。
月々16万円くらい、年間約200万円として、5年数ヶ月に足りる程度とすれば、推定で1千万円以上の貯金が有ったと思われます。
彼は、「家が欲しい」と言っていたので、その為の積み立てをしていたのではないでしょうか。
彼が、高卒後すぐに、予め大型免許などを取った上で、引越し専門の運送屋に就職し、貯金を始めたとしたら。
亡くなったのはアラサーくらいですから(彼は花より7歳年長です)、約10年を稼ぎ続けたことになります。
勤務内容にもよりますが、頑健な人狼であるわけですし、贅沢していなければ(彼が花の家に移った折、その荷物は本の入った紙袋2つだけだった由です)、1千万円以上は貯まる筈です。
小説版は読んでいなかったので、読んだ方の意見がいただけて嬉しいです。
いまでもこれほどまでに語る人がいるのは、この作品が愛されている証拠ですね。
全て追記させてください。
自分では気づかなかった点がたくさん指摘されており、
映画をもう一度観返したくなりました。
さて、ヒナタカ様とは異なった解釈をした点について、語らせていただきます。
まず、
>この作品は、「子どもを持つことの後ろめたさ」が全く描写されていません。
「惜しみのない子どもへの愛情」を描くためには、それは必要ではないと判断したのかもしれません。
ですが、本作は、雪による語りが全体に導入されています。蛇足だというコメントもあるようですが、私は、「雪が雪の視点で母を語る映画」だと思いながら観ていました。
雪が生まれる前や幼い頃の出来事は、母から聞いた思い出話であるかのように、「~だそうです」と綴られています。
苦労して通っていた大学を中退することや、19歳という若さで子供を持つことといった様々な葛藤は、花から雪に語られなかったのだと思います。
よい母親であろうとした花が、自分の愛する子供に、「あなたを生むために大学に通う(=自分の将来)ことを諦めたのだ」と語るはずがありません。
これは推測ですが、物語は雪が中学の寮に入るところまでとなっているので、おそらく中学生くらいの歳の雪が母を語る、といった体で構成されていると考えると、母の心奥の葛藤は雪には想像することもできないと思います。それゆえに映画の中で触れられなかったのではないでしょうか。
また、雪にとって花は、愛情いっぱいに自分と雨を育ててくれた強く優しい母親です。
そのため、ご指摘のあった、シャッターが閉まったあとの店で待ち続け、満面の笑みでおおかみおとこを迎えるところのように少しやりすぎと感じられる部分も、雪の花に対するイメージが、辛い時でもいつも笑顔でいる、気高い母親だからなのではと感じました。自分の弱さや挫折は、子供の前では決して見せなかったがために、劇中では描かれなかったのでしょう。これは深読みのしすぎかもしれません。
さらに、おおかみおとこについては背景も内面もほとんど語られておらず、謎な部分や明かされない部分も多かったのは、雪が父親について、母が語った以上のことを知り得ないからではないかと思います。物心着いた頃にはもう父親という存在がなかった雪にとっては、父親の存在はあくまで母を通してしか知らないのです。
それから、雨について。
ヤマセミを捕まえた時から、雨は狼として成長しだしました。それに伴い、雨の内面も、狼の早さ、つまり、人の何倍もの早さで成長していたために、10歳にしてまるで老成したかのような振る舞いをみせていたのだと思います。
>花は雨に「あなたはまだ10歳なのよ?狼の10歳が大人でも、あなたは・・・」と言いかけますが、そこで口をつぐみます。
>花も雨が狼として生きることを望み、それができる年齢であることに気づいたのです。
の部分ですが、私は、花の「あなたは・・・」で途切れた言葉の続きは、「あなたは狼じゃないのよ!?」だったのではないかと思います。そして、自分の言おうとしたことが、今まで「好きに生きればいい」と言ってきたはずの自分の言葉と真逆であること、おおかみおとこや雪、雨の中の狼の部分を否定してしまうことに気づき、口をつぐんだように感じました。
このあたりの花は、子離れできない母親の姿なのかな、と感じました。自分の考える以上の早さで、しかも自分がわからない狼として成長して旅立とうとしている雨に対し、まだ自分が保護しなければならない小さな子供なのだと思っていたかった。
しかしそのあと、森で雨に助けられた時に、雨はもう自分が守ってあげなくても大丈夫なのだと気づき、旅立つ雨に「生きて」とエールを送ったのだと思います。「洗いたてのクモの巣、洗いたての空、全てが生まれ変わったようだった」というのは、それまでずっと良い母であろうと気を張ってきた花が、雨との子離れ・親離れを通して、肩の力がやっと抜けた瞬間だったのではないかと感じました。
以上です。
あくまで私の独断と偏見による根拠のない感想ですので、
変わった捉え方をする奴もいるのだなと聞いていただけると幸いです。
つい長々と書いてしまい、申し訳ありません。
今後の更新も楽しみにしております。
記事に追記をさせていただきました。
この感想は多くの方からの意見をいただけて嬉しいです。
「あなたは・・・」の続きの解釈は自分も気になっていました。重ねて感謝申し上げます。