情熱的な仲間たち「マダガスカル3」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:9/10
一言感想:なーんにも考えなくても、超楽しい!
あらすじ
ライオンの「アレックス」、シマウマの「マーティ」、カバの「グロリア」、キリンの「メルマン」の4匹は生まれ故郷のアフリカに戻ったものの、考えることと言えば、第二の故郷であるニューヨークの動物園のことばかりだった。
ニューヨークへ帰るためには「ペンギンズ」の助けが必要なのだが、彼らはモンテカルロのカジノに遊びに行ったまま帰ってきていないのだ。
そこで彼らはモンテカルロに向い、ペンギンズを奪取しようとする。
しかし、騒ぎを起こしたせいで動物公安局のスゴ腕女刑事「デュボア」に目をつけられてしまった!
一行はとあるサーカス団にかくまってもらおうとするのだが・・・
やべえ!超面白え!大人から子どもまで大満足できる素敵な娯楽映画です!
自分は実は1作目と2作目は観ていませんでした。
キャラクターをよく知るためには前作を観ていたほうがよいのでしょうが、映画自体は前作を観ていなくても全く問題なく楽しめます。
そこには過去作を観ていないとわからない敵キャラや因縁などはありませんし、この1作だけで完結している潔さはシリーズを初めて観る方でも受け入れられるでしょう。
本作のストーリーの主軸は3つあります
①メインの4人の故郷のニューヨークに帰りたい!という願いのもとで繰り広げられる冒険
②イカれた女刑事「デュボア」との攻防戦
③落ちぶれたサーカス団の再建物語
そのどれもがお互いを邪魔することなく、むしろ相乗効果で各場面が面白くなっているのは見事。
とってもボリューム感があって満足できます。
つーか、②の悪役のキャラがヤバいのなんのって・・・

このオバチャンは予告編でも相当なインパクトを残してくれましたが、映画本編ではそれをはるかに超える変態っぷりを見せてくれます。
あんまり小さい子だと怖がっちゃいそうだ(大人でもドン引き必至)。
そして本作の最も優れた要素は、迫力満点のアクション描写。
序盤のカーチェイスの面白さ、サーカスの練習シーンのワクワク感、終盤の伏線を生かしまくってくれた展開。
その全てが楽しいのですが、中盤にある予想もしなかったサーカスの映像は、観るものをとりこにするでしょう。
その美しさは「塔の上のラプンツェル」の名シーンを思い出させました。
自分は時間が合わず2D版で観ましたが、これは3Dで観ればよかった!と若干後悔。これから観る人は3Dをオススメしたいと思います。
音楽もこれまたハイセンスですね。
![]() | Soundtrack 684円 powered by yasuikamo |
「Firework」「Wannabe」(←youtube)など有名な曲とのシンクロっぷりも抜群です。
子どもが大はしゃぎして楽しめる映画であることも間違いないですが、大人向けの描写も忘れてはいません。
作中のジョークは大人向けだし、主人公たちが出会うサーカス団員の心情は大人にこそ思うものがあるでしょう。
残念なのが、字幕版の上映が全国で3館しかないこと。
ジョークの「ことば遊び」は原語であるとより楽しめると思うので、ちょっともったいないですね。
上映時間は90分程度とコンパクトだけど、とにかくテンポがいいので下手な2時間超えの映画よりも満足感がありますよ。
この夏のイチオシ映画として、オススメです!
以下、ネタバレです 結末に触れています↓
~変態・デュボア刑事~
彼女は色んな意味でヤバすぎです。
・幼少時から動物を捉えることに快感を覚えていた
・ライオンを捉えたい理由は「頭部を飾りたい」
・原付バイクでしつこく追いかけてくる
・すぐに麻酔銃を放ちまくる
・原付バイクで映画の「スピード」みたいな大ジャンプを繰り出してくる
・「バナナ弾」をマトリックス避け
・ペンギンズの飛行機(?)のロープに捕まる→しかしビルにぶつかりそうに→いったんロープを離し、ビルの中を壁ぶち壊しながら追いかける
・犬のように臭いをたどることができる。つーか体重や「トリートメント使いすぎ」ということも当てているし、犬を超えている。
・ローマでアレックスたちを見つけると、地元の警察の原付をパクる(でもなぜか紐でつながっていたせいでお縄)
・ベッドの下に潜り込み、牢屋から脱出する
・昏睡状態の部下のもとに行き、なぜかミュージカル調になり皆を復帰させる
本当に人間かこいつ。
感情移入の余地が全くないヒールっぷりがステキ。
ピクサー作品では出てきそうにありません。
最後には「マダガスカル行き」の船の荷物として、部下共々送られる彼女。
ここでしかタイトルのマダガスカル出てないやんとツッコミました。
~落ちぶれたサーカス団~
落ちぶれた理由は、トラの「ビターリ」の失敗と、古い体制を変えようとはしない保守主義のためでした。
そんな彼らを、主人公たち4人が変えようとします。情熱を持って・・・
それでもサーカス団を出ていこうとするビターリに、アレックスは「仲間を見捨てないんだろう」「もともと無茶だったじゃないか、だからみんな喜んだ」「君は自分を必要じゃないと思っているけど、皆は君を必要としている」と言います。
それに感化されたビターノは「よく燃えるエキストラバージンオイル」ではなく、コンディショナーを塗った「輪っかくぐり」を成功させるのです。
この物語は、心機一転をはかる革新的な行動を賞賛しつつも、こうした「伝統の芸」への敬意を忘れていないことが嬉しくって仕方がありませんでした。
ちょっとの工夫で、古いと思われた伝統のものや過去の失敗も、十分「今」に活かせるのです。
~クライマックス~
クライマックスの動物園でのアクションも面白い!
中盤に練習していた「ジェットシューズ」や「空中ブランコ」だけでなく、ビターノの「輪っかくぐり」を「鍵穴」で代用してくれるシーンはニヤニヤが止まらなかった!
この輪っか抜けのシーンで秀逸なのは、そのくぐり抜ける瞬間のシーンを映していないこと。
輪っかは指輪ほどの大きさしかなく、どう見ても物理的に不可能です。
そこで「どうやったの?」と想像をふくらませてくれるのは、マジックのタネを明かさないこととと同じような「想像の楽しさ」を感じました。
最後にアレックスが、古い芸である「ごろんごろん」「お座り」「待て」をデュボアに命じるのも愉快痛快でした。
~好きなシーン、気になったことば~
・電飾で彩られたサーカス
すごく美しかった!
空宙ブランコをしながら、落下しながら、飛び跳ねながら、背景にはネオンの光が輝く・・・
この映画で最も感動したシーンでした。
・カバの「グロリア」はシャッターに突撃するけど、その形にヘコむだけで壊せない
「トムとジェリー」を思い出します。
・「キング・ジュリアン」はクマの「ソーニャ」にぞっこん
即効で結婚しているのに笑いました。
・アレックス「ニューヨーカーだから運転できない」
おそらく都会に住んでいるから車がいらない→だから運転できない、の意。
・「フランス人は労働法のおかげで週2日働けばいいんだ」「それじゃカナダ人みたいじゃないか」
これは「ペンギンズ」とアレックスの会話ですが、おおよそ日本人にはわからない話題ですね。
フランスでは週35時間労働制というものが制定されており、カナダの労働時間は緩めのようです。
「週2日」は言いすぎですね(ジョークだからなんだろうけど)。
・アレックス「人間たちはアニマルだが、こっちこそアニマルだ。動物たちだけのサーカスを作ろう!」
ここは翻訳が上手くいっていない気が・・・
animalには「けだもの、人でなし」の意味があります。
・ビターノ「見捨てるなんて許さレーニン」
これはビターノがメインの4人を助けようとしたときの台詞。
もともとはどんなセリフだったのかが気になります。日本語訳するのは大変だったろうなあ。
そういえば、アレックスがビターノを激励するときの「the show must go on」は原語そのままで使われていましたね。
~4人の気持ち~
4人は都会で喝采を浴びていたので、それが忘れられずニューヨークの動物園に帰ろうとしていました。
映画の最後でビターノは4人に「どうする?」と聞きます。
その後に映し出されたのは、「サーカス・アフロ」状態になっているサーカス団一行の姿でした。
4人がどんな決断をしたかは明確には提示されませんでしたが、「もう少しだけ」サーカス団に残ることを決めたように思えます。
故郷は大切だけど、それよりも情熱、仲間を見捨てない心を持つことがもっと大事に思える時もあるのです。
アシカの「ステファノ」、ヒョウの「ジア」、その他もろもろのの登場人物も愛おしくってしかたがない!
彼らの楽しいサーカスを、もっと観ていたくなりました。
> 変態・デュボア刑事
なるほど、銭形のとっつぁんですね。
> 日本語訳するのは大変だったろうなあ
第1作目しか観ていないのですが、和訳の秀逸だったことが印象的でした。
挿入歌の「I like to move it! move it!」を「踊るの好き好き」は音韻の踏み方が絶品!(母音が原語とほぼ合っている!)
> > 変態・デュボア刑事
>
> なるほど、銭形のとっつぁんですね。
銭形のとっつあんなんてまだ良心的ですよ。
> 第1作目しか観ていないのですが、和訳の秀逸だったことが印象的でした。
> 挿入歌の「I like to move it! move it!」を「踊るの好き好き」は音韻の踏み方が絶品!(母音が原語とほぼ合っている!)
それはすごい!DVD化したら、本作も吹き替え版と字幕版の両方を見比べてみたいです。
> おそらく都会に住んでいるから車がいらない→だから運転できない、の意。
だいたいそんな感じです。
M.スパーロックの『スーパーサイズ・ミー』曰く「NYの住人はよく歩く。仕事に公園に買い物。車も持ってない」(字幕版より)
> M.スパーロックの『スーパーサイズ・ミー』曰く「NYの住人はよく歩く。仕事に公園に買い物。車も持ってない」(字幕版より)
スーパーサイズミーにそんな展開があったのですね(観たのに全く覚えていない・・・)NYの人は健康そうです。マクドナルドに行き過ぎなければ。
デュボア警部の異常っぷりがよくわかりました。
しかし、あれだけ感情移入の余地が無いにも関わらず、激しく魅力的なキャラクターだというのは素晴らしいです。絶対に勝ってほしくない、くたばって欲しいのに、にも関わらず立ち上がってほしい。こんなヒールは初めてです。
私のブログのほうでも書きましたが、とにかく計算が素晴らしい。
主題歌がCIRCUSとAFROしか歌詞が無い(原語の時点でそれしかない)のも恐らくは計算ですね。このノリに乗ってしまい、EDで一緒になって歌っている小さな子どもが何人かいました。これならば国籍関係無く観客を巻き込めます。
それとサーカスを売り込むのがロンドンというのも恐らくは計算。
あの華々しくも美しいネオンとパフォーマンスに、オリンピックセレモニーを重ねたのは私だけでは無いのではという気がしました。
そう言えば本シリーズのテーマ自体、異種の共存。まさに五輪の精神ではないですか!