人を生かす剣 実写映画版「るろうに剣心」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:8/10
一言感想:漫画の実写化としては出色の面白さ!
あらすじ
明治11年の東京。
緋村剣心(佐藤健)は道場の師範代の薫(武井咲)と出会う。
剣心はかつて「人斬り抜刀斎」として恐れられた剣客だったが、今は「不殺」の誓いである「逆刃刀」を背負い、流浪人としてあてのない旅を続けていたのだ。
そして街では「抜刀斎」を名乗る人物による殺人事件が発生していた。
剣心はその犯人である鵜堂刃衛(吉川晃司)と出会い・・・
一世を風靡した漫画「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」の実写映画版です。
![]() | 和月 伸宏 720円 powered by yasuikamo |
「少年ジャンプ」に連載された作品で、「歴史もの」としては異例の人気を誇っていました。
連載が終了したのは1999年とおよそ13年前。
ここに来ての実写化は、その根強い人気を証明するものでしょう。
この作品は厳格で史実に忠実な歴史漫画ではなく、あくまでアクション描写やケレン味、キャラクターの魅力を前面に出し、少年漫画としての面白を追求しているものでした。
そして本作でも、その精神はいかんなく発揮されています。
現実的に考えればありえない荒唐無稽なキャラクターたちにはきちんと血が通っています。
ハッタリや台詞回しも効果的に働き、原作で読んだシーンも十二分に再現されていました。
原作を読んだことのある自分としては、単なる見た目だけでなく、「まさしくこれは『るろうに剣心』だ」と言える作品に仕上がっていました。
以下、その魅力的な登場人物を原作の絵とともにご紹介します。






















映画版は原作の序章である「東京編」のストーリーが主となっていますが、最終章である「人誅編」のキャラクターもおり、主人公の過去にまつわるエピソードも盛り込まれています。
個人的に素晴らしかったのは佐藤健、吉川晃司、香川照之の3名。
佐藤健はNHKの大河ドラマ「龍馬伝」でも人斬りである岡田以蔵を演じていました。
その剣さばきは見事で、ベテランの揃う役者たちの殺陣の中でも全く見劣りしません。
そして役柄も主人公のキャラにものすごくあっています。
普段は可愛らしさも感じられる優男だけど、怒れば声を荒げ、激情の男となる。
その「剣心」のイメージに、彼はぴったりでした。
吉川晃司演じるボスキャラクターの「鵜堂刃衛」は、作中1、2を争うほどの原作の再現っぷりを見せつけてくれます。
悪役としてのカリスマ性は原作以上と言っても過言ではありません。
序盤からその「強さ」を見せつけるさまは鳥肌ものでした。
香川照之はね、あのね、最高。
予告編でもワクワクさせてくれましたが、実際に本編を観てみるとそのシーンをはるかに超える狂いっぷり。
いいんだけど原作とはもはや別人です。好き勝手やってる感じですね。
そういえば、香川さんは佐藤健と同じく「龍馬伝」に出演していました。
監督曰く、龍馬伝の岩崎弥太郎が道を間違えたのが本作の「武田観柳」だそうです。
原作のエピソードを盛り込みつつ、映画ならではのダイナミズムも追求した脚本もよかったです。
小話を挟みつつも、ひとつの映画として起承転結がしっかりしている構成は万人が楽しめると思います。
原作を知らない方にも、十分受け入れられるでしょう。
ONE OK ROCKによる主題歌「The Beginning」も格好良かったですね。
歌詞の大半が英語なので観る前はミスマッチさも感じていたのですが、いざエンドロールで流れたときはこの上ない高揚感を感じることができました。
→ONE OK ROCK 「The Beginning (short ver.)」 - YouTube
もちろん不満がないわけじゃありません。
原作のファンにとっては以下の点は気になると思います。
・原作から端折られてしまったキャラクターがいる
・あまり活躍がないキャラクターもいる
時間の制約上仕方ないところもありますが、好きなキャラクターの活躍を期待している人にとっては肩透かしかもしれません。
また、そもそも原作から乖離しまくっているシーンもあるので、その点でも受け入れらない人もいると思います。
他にも中盤の展開が間延びしていて少々退屈だったり(上映時間も2時間14分と長め)、
武井咲演じるヒロインがちっとも「師範代」の剣術の腕前に見えなかったり、
終盤の雑に思える心理描写など、
原作を知らない人でも、微妙に思うであろう事柄が多いのは少し残念です。
それでもこれは十分オススメできる「時代劇」です。
明治維新を迎えたばかりの時代背景、殺陣やアクションの面白さ、魅力たっぷりのヒーローたち。
それだけで楽しめる作品ですので、原作漫画を知らなくても、昔ながらの時代劇が好きな人も是非劇場へ!
以下、ネタバレです 結末に触れているので鑑賞後にどうぞ↓
まずは野暮な不満点からつらつらと。
~残念だったこと~
・「弥彦」の扱い
原作では初登場のときに印象に残るエピソードがありましたが、本作ではろくな活躍シーンがありません。
せいぜい剣道場を襲撃に来たチンピラに歯向かった程度です。
さらに原作では、弥彦は「武田観柳」の屋敷に「剣心」と「左之助」と一緒に戦いに向かっていたのですが、本作では剣心に道場を守ることを任命されます。
それはいいのですが、以下はちょっと納得できないぞ。
剣心「お主に道場をまかせるでござる」
↓
弥彦は警察に行き、「斉藤一」を呼びに行っていた
↓
道場にいた「薫(ヒロイン)」を「鵜堂刃衛」がさらう
いやいやいや!道場守れって言われたのに弥彦はなんで警察に行っているの!
薫が命じたのかもしれないし、結果的に斎藤一に剣心たちが助けられたとは言え、そこは弥彦に薫を守ろうとして欲しかったです。
・「恵」が罪をつぐなおうとしない
恵は武田の愛人となり、阿片の精製に加担していた人物です。
原作では、薫が自殺しようとしていたところを剣心が止め、「3年間も罪の意識にさいなまれたのだから」と、許されるシーンがあります。
また原作の恵は自分の作った薬が阿片であることをはじめは知りませんでした。
しかし映画では「生きるため」に阿片を作っていて、阿片がどんなものであるかも知っていました。
人を苦しめることを知っておきながら阿片を作り、最後は笑顔で朝食を作っている恵。
映画でも、恵の罪の重さを見せて欲しかったです。
恵が「あなたとは違う」と人殺しだった剣心を責めるも、過去の自分の罪から涙を流してしまうシーンはとてもよかったのですが、それだけでは不十分だと思います。
・「隠密御庭番衆」が出てこない
原作で武田邸の番人として登場した敵キャラクター「般若」「ひょっとこ」「柏崎念至」「癋見(べしみ)」「式尉(しきじょう)」そして「四乃森蒼紫」は本作に一切出てきません。<出番はありません
代わりに「外印」「戌亥番神」というキャラが出てくるのですが、お前ら終盤に出てきたキャラじゃん。
う~ん原作の「般若」が好きなキャラだったので、出てきて欲しかったな。
また、これらのキャラが削除されたのは、尺の他にもキャラクターの再現が難しかったのが理由だと思います。
なにせ「ひょっとこ」なんか巨体な上、盛大に火を吐くのですから。<「北斗の拳」にもこんなのいたよね
さらにこれに剣心は刀を回転させて防ぎます。<どうやって回してるの?
正直これは実写では観たくなかったので、ひょっとこを出さなかったのは正解だと思います。
・斎藤一の「牙突」
超有名な必殺技「牙突」はシャンデリアに放ってそれを落として攻撃という残念な使い方に・・・
しかもワイヤーアクションで宙を飛ぶのでちょっと笑ってしまった。
もっと見せ場があるとよかったですね。
~好きなシーン~
・オープニング
鳥羽・伏見の戦いの渦中にいる剣心、鵜堂刃衛、斎藤一の邂逅が語られます。
はじめから大胆な殺陣を見せてくれて期待に胸が高まります。
刃衛が剣心の捨てた刀を拾い、剣心に執着するシーンを見せるのもよかったです。
・刃衛の凶行
もう本当に強い。
警官たちをばっさばっさとなぎ払い、「心の一法」という技で相手の動きを止めるという荒唐無稽さも再現されていました。<「ひょっとこ」ほどじゃないけど、実写映画でやるにはギリギリだなあ
欲を言えば、原作の「うふふふふ」という笑い方も再現して欲しかったですね。
ちなみに原作で抜刀斎を名乗っていたのは別のザコキャラクターです。斬奸状は実際に「岡田以蔵」が残していたそうですね。
・原作以上にゲスな「武田観柳」
阿片の精製に関わった人間を一人(恵)だけ残し惨殺を命じる非道さを持ち合わせていますが、その造形はもはやギャグに等しいです。
生き残りを決めるとき「ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・な~」と選んだり、最後に捕まろうともまだ賄賂を持ちより「俺はきっと戻ってくるぞ~!」と言ったり、そのしつこさと狂気には感服しっぱなしです。あと白服の部下が一人窓から逃げたけど、その後どうなったの?
*白服の人は刃衛に斬られ、お祭りの隅っこで斎藤に発見されていたようです。
・道場でチンピラを倒しまくる剣心
チンピラのムカつき具合が秀逸でした。「『生かす剣』でお前自身を生かしてみろよ~!」とかね。
そして剣心がそいつらを次々と倒す様は気分爽快愉快。
特筆すべきは、剣心が道場をくぐる際、戦いの渦中にもかかわらず「礼」をしていたこと。
剣技に敬いがある彼の仕草が観れてよかったです。
・剣心が道場で戦ったために牢屋に入れられる
原作にはない展開ですね。
剣心はこの後に「山県有朋」と共にいる斎藤一と再会し、「人斬りが人を斬らずしてどうやって人を守る?」と疑問を投げかけられます。
この問いに、彼は最後の戦いで身をもって答えることになります。
あとしれっと牢屋に入れられて登場した左之助に笑いました。
・剣心VS左之助
喧嘩のシュチュエーションが原作とだいぶ違っていましたが、「斬馬刀」もしっかり再現されていたし、剣心が「戦う理由がない」という理由で戦いを退けさせた描写がよかったです。
・村の皆が水に入っていた毒に冒され、医者であった恵は対応する
原作では弥彦がくらった毒の治療にあたっていました。
このシーンでは彼女の正体とその心情がわかります。
あと、その前に「外印」が恵に言った「気をつけろ」という助言はことば足らなすぎだと思いました。せめて「『水に』気をつけろ」くらい言えよ。
・剣心&左之助VS士族250人
この大人数との勝負も原作にないシーン。
すさまじい速さで地面を滑走する剣心、斬馬刀を相手に持たせた隙に拳で殴る左之助が好きです。
・左之助VS戌亥番神
拳と拳の勝負に漫画ほどの迫力を感じられなかったのは残念ですが、中盤に肉を食べて休戦をするシーンは笑えました。
戌亥が「俺は菜食主義者だ」と言ったのは、原作にそういう設定があったのではなく、演じている須藤元気がベジタリアンなためでした。それ何人の人に通じるんだ。
最後のバックドロップも面白いよね。
・剣心VS外印
攻撃法はこれまた原作とは違っていましたが、画の面白さがすさまじかったです。
チェーンのようなもので剣心を縛り上げ、二丁拳銃を撃ち、その後に接近戦のバトルに転換するさまは大興奮です。
・剣心&左之助&斎藤一VSガトリングガン
いやもうこのバトルは大爆笑です。
剣心が律儀にドアを開けようとした瞬間に武田が撃ちまくり「ヒョー!たまんねえな~!」と言うだけで大好きです。<ノリノリです
しかもその後武田は「俺の家をめちゃめちゃにしやがって~!」と言います。左之助から「ぶっ壊してんのはお前だろ!」というツッコミが入ったのも当然ですね。
その後左之助&剣心は降参したふりをしてだましうち(これまた原作とは違う)。
ここは原作を超える勢いで面白かった!
~最後の戦い:VS鵜堂刃衛~
ここは原作の再現度が素晴らしい!
「心の一法」のために薫が死にかけてしまい、そのため時間内に刃衛を倒さなければいけないという制約、
「殺してやるからかかってこい」という今までの剣心の人格を壊す台詞、
鞘で肘を叩き壊すという「双龍閃」での決着、
「薫どのを守るため、今一度人斬りに戻ろう」という台詞、
それを見かねた薫が、自力で心の一法を破る、
そして迫力の殺陣・・・
本作には原作に忠実と言えるシーンはそこまで見受けられなかったのですが、最後に原作ファンに嬉しい戦いを再現してくれて本当に嬉しかったです。2分という制限時間を超えて戦っていたように感じたのは気のせいです
~人を生かす剣~
薫の父は「人を生かす剣」について説いていました。
道場にチンピラが押し入ったとき、剣心はこう言っていました。
「確かに『人を生かす剣』というのは甘っちょろい戯言(ざれごと)でござるよ。
剣は凶器、剣術は殺人術、それが真実。
だが拙者は、そんな真実よりも薫殿の言う戯言のほうが好きでござるよ」
剣心は言わずもがな、元人殺しです。
過去に結婚を間近に控えた男を殺し、頬に傷をつけられました。
頬の傷は、彼が人殺しという罪を背負った証でもあるのです。
そんな彼は刀を「逆刃刀」に替え、流浪の旅に出ます。
彼は薫の言う「人を生かす剣という戯言」を聞き、その価値観が好きになったのです。
剣心が薫の父が残した着物を身にまとったのも、その「人を生かす剣」という精神を受け継いだからなのでしょう。
彼が解放されたように空を見上げたのは、そのためだと思います。<赤い着物を着て、空を見上げる剣心。これも原作にはないシーンです。
剣心は薫に「(父の)流儀は命をかけてまで守るものではござらんよ」とも言っていました。
彼も生命を最も大切に思う人物だったのです。
~殺さないことで救われた者~
剣心は斎藤一に、普通の刀を捨て「逆刃刀」を持ったことをなじられたとき「この目にとまる人くらいなら守れる」と言っていました。
しかし、中盤では、剣心がチンピラを殺さなかったために警官が巻き込まれたので、斎藤に「役に立つ逆刃刀だな」と皮肉を言われることになります。
剣心が殺すことをやめたために、そのような犠牲があったことも事実です。
剣心は最後の戦いで「人斬り」に戻ろうとしますが、薫がすんでのところで止めてくれました。
戦いの後、目覚めた薫は、当たり前のように道場にいる剣心と顔を合わせます。
薫が「おかえり」と言い、剣心が「ただいまでござる」と返したところで、映画は幕を閉じます。
中盤に薫は「私が出会ったのは剣心という流浪人よ」と言っていました。
彼女にとって人斬りである剣心は、剣心ではないでしょう。
薫は、剣心が人を殺さなかったことで救われたのです。
そして剣心自身も、人を殺さないことで救われたのだと思います。
結果、彼は薫のもとに戻ることができたのですから。
剣心と斎藤が言ったように「不殺」によって人を守るというのは戯言かもしれません。
しかし、人を殺すことなく登場人物が幸せになる「るろうに剣心」が、自分は大好きなのです。
土日に見に行ってみます。感想は後ほど。
縁は「志々雄真実」に比べると人気はないように思えますが、自分も好きです。
「十本刀」にはさらなる巨大キャラが・・個人的にはオカマキャラ(むしろ「男の娘」)が好きだったので、出てきて欲しいですけどね。
*2つ上にコメント下さった方へ:感想お待ちしています。
映画観た後に人様の感想を読むとまた面白さが倍増しますしね。
個人的に残念なのは、斎藤一が軽く見えたのと。剣心の演技にメリハリがなかったことでしょうか。漫画が原作だから仕方ないのかもですが、最初の剣は「殺人術~」の厳しい顔から「それでも、薫殿の言う甘っチョロい戯れ言のほうが好きでごさるよ」の満面の笑み。ここにもう少しメリハリが欲しかった(笑)
あと、斎藤は志士雄編みたいに。
観柳が喋ってる間に、窓から不意打ちで一気に決着とかw
別に剣心と話し合う必要ないんだから、冷血な人斬りらしくして欲しかったな~。と思いました。
いい、と思いました。
あれだけのキャラの出逢いを2時間ちょっとで再現するのは無理だよな、しかも斎藤まで出るってことは、かなり話がギュウギュウじゃないかな?と思っていましたが…
剣心の出逢い。というより、幕末を生き抜いた人斬りが、不殺を誓い、維新が完成していない明治を生き、模索する。という描写に長けていると思いました。
アクションも、剣心が活心流に触れていくところもすごくよく、1つの時代劇として完成してましたね。
ただちょっと残念だったのが、薫を助けたあとに剣心が簡単(と私は思ってしまいました)に帰ってきたこと。もうちょっと悩みというか、抜刀斉である自分が巻き込んでしまった。けれど…みたいな描写が欲しかったかな?と個人的に思います。斎藤からの嫌味への踏ん切りというか。
ただいまでござる。
の、一瞬驚いてからの台詞は、志々雄との戦いの後を彷彿させて、微笑ましかったです。
あ、あと白い服を着てた、窓から飛び降りた人は刃衛に斬られて、お祭りの隅っこで斎藤に発見されてました。
面白かったですね。
薫を助けたあとの葛藤の描写はたしかにありませんでしたが、剣心の「不殺」は守られていたので、あの描写(斎藤のイヤミなセリフ)で良かったとも個人的には思います。
個人的には幕末という設定をもう少し生かして欲しかったかな(左之助が喧嘩をした理由も原作と違っていたし)
> ただいまでござる。
> の、一瞬驚いてからの台詞は、志々雄との戦いの後を彷彿させて、微笑ましかったです。
そういえばそのときのセリフでもありますね。
> あ、あと白い服を着てた、窓から飛び降りた人は刃衛に斬られて、お祭りの隅っこで斎藤に発見されてました。
な、なんだってー!気づかないよ(笑)
追記しておきます。
でもあの神ovaがあるからな
相当覚悟して作らないとたたかれるだろうに