生きる意味を探す物語 漫画版「マルドゥック・スクランブル」レビュー
天地明察の原作者の冲方丁さんは「ばいばい、アース」「カオス レギオン(もとはTVゲーム)」など、バリバリのSFやファンタジー作品も得意としています。
今日は、冲方丁さんの代表作である「マルドゥック・スクランブル」の漫画版を紹介します。
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何故漫画版を紹介しているかというと、劇場公開されたアニメ版よりも面白かったからです(原作小説は未見です、ごめんなさい)。
アニメ版は原作通り「圧縮」「燃焼」「排気」という3つの章に分かれているのですが、展開が早く、わかりにくく、キャラの描写が足りていないように感じる上、なおかつ上映時間がそれぞれ60分ちょっとと、もの足りない印象でした。
でも漫画版は描写がとても丁寧で、躍動感と迫力、キャラの魅力(特に主人公)もアニメ版よりも優れている印象でした。
小説やアニメ版を全く知らなくても、物語を全く問題なく楽しむことができるででしょう。
序盤の展開やラストは小説版と異なっているようですし、小説を読んだ方にもおすすめできると思います。
内容も簡単に紹介してみます。
主人公は「バロット」という少女です。
一見普通ですが、彼女の人生は辛苦に満ちたものでした。
*以下少しだけネタバレ注意(未見でも問題ないとは思います)↓
彼女は生きるために男に身を売る生活をしている・・・そこに自分を救ってくれた男「シェル」がいたのですが、彼に殺されかけてしまうのです。
そこに手を差し伸べてくれたのは、一人の医者と一匹のネズミでした。
見てわかりますが、このネズミ「ウフコック」が超可愛いです。
バロットが彼らの力を借りて、「シェル」をはじめとした敵に立ち向かうのが基本のプロット。
世界観の見た目は「ブレードランナー」のようでもあります。
貧しいものは下においやられ、富裕層が支配する世界。
その中でも、幸せをつかむことができると、ウフコックは宣います。
見た目はネズミでも、中身は頼れる紳士のようなウフコック。
彼をはじめとした登場人物は本当魅力的で、読み始めると止まらない面白さがありました。
アクションもすごく見ごたえがあります。
見にくくさを感じる方もいるかもしれませんが、スタイリッシュかつ迫力ある絵は作品にとても合っています。
原作者があとがきで大絶賛しているのも納得です。
物語で興味深いのは、主人公バロットの目標が『復讐』ではないことです。
最後で彼女が言う結論も、単なる勧善懲悪にはなっていないものでした。
少年誌掲載とは思えないほど、性的な話題や残酷な描写も出てきますが、主人公の変化を描く上で必要なものです。
エロもグロも大いに存在する世界観は人を選びますが、このダークさこそ作品の魅力だと思います。
大興奮したのが、単行本5巻からのカジノでのギャンブルの勝負。
これはもう読んでくれとしか言いようがないほど面白い!
「ジョジョの奇妙な冒険」「カイジ」あたりが好きな人も気にいると思います。
そんなわけで大プッシュでおすすめの(漫画版)「マルドゥックスクランブル」ですが、現在ハリウッドで実写映画化も企画されているのだとか。
ここまで素晴らしいクオリティのSF作品であれば、それも当然というもの。日本人として、とても嬉しく思います。
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*全7巻なので、集めやすいですよ。
*タイトルの「マルドゥック」とは作品に登場する市の名前、「マルドゥック・スクランブル」は人命保護を目的とした法令の名前です。
*アニメ坂の最終作「排気」は今週末(9月29日)公開です。
変態集団が出てくると聞いて俄然興味がでてきましたwいつか読んでみたいです。