障がい者・病気をテーマとした映画その2「レナードの朝」ネタバレなし感想+お気に入りシーン
![]() | ロバート・デ・ニーロ 930円 powered by yasuikamo |
個人的お気に入り度:9/10
一言感想:全医療人に観て欲しい!
あらすじ
セイヤー博士(ロビン・ウィリアムズ)は精神神経科の慢性病棟に勤務を始める。
彼が出会ったのは、パーキンソン症候群をわずらい動けなくなった患者たちだった。
セイヤー博士は患者の一人であるレナード(ロバート・デ・ニーロ)の治療を試みるのだが・・・
今まで観ていなかったことが恥ずかしいくらいの素晴らしい作品でした。
本作は実話をもととしており、当時「眠り病」と呼ばれた嗜眠性脳炎を扱っています。
物語は、主人公・レナードをはじめとした患者にパーキンソン病の治療薬であるL-ドーパを投与したところ、長年昏睡状態にあった彼らが目覚めるというものです。
実際には昏睡というよりも、彼らには一部「反応」があるので「半昏睡」か「植物状態」のほうが正しいのですが、歩くことも、話すことも、意思疎通もままならないので「眠っている」とらえてもいいでしょう。
彼らが長い年月を経て起き上がったときにどういったドラマが展開するのかーそこが見所になっています。
本作の優れたところの筆頭にあがるのは、ロバート・デ・ニーロの名演技です。
デニーロはパーキンソン症候群の症状を演じるだけでなく、「心が少年である中年男性」を見事に表現しています。
医療ドラマとしても抜群に面白く、もう一人の主人公の医師・セイヤーがユニークな方法で患者の治療に立ち向かう様は万人が楽しめるでしょう。
前述のL-ドーパ薬は、当時パーキンソン「病」の特効薬として発表されていましたが、本作の嗜眠性脳炎によるパーキンソン「症候群」に効くかどうかは未知数であり、投薬の許可はされていませんでした。
このことも、しっかりドラマに生かされています。
さらに素晴らしいのは、患者が医師により治療されるだけでなく、医師も患者に影響されて変化・成長していくことが細やかに描かれていることです。
患者・レナードと医師・セイヤーの友情の物語は、多くの人、特に医療関係者にこそ観て欲しいです。
以下、作中のシーンと台詞が少しネタバレです↓重要な部分は反転し、結末にも触れていませんが、未見の方は要注意
~作中の治療法~
本作の、(L-ドーパ薬に頼る前の)「眠っている」患者へのアプローチは実にユニーク。
ルーシーという老年の女性がいつも同じところで立ち止まるので、「パターンを延ばす」を伸ばすためにセイヤー博士はこんなことを行います。<床を塗り塗り
前方に「何もない」空間があったから、それが刺激として認識され立ち止まったのだと、床のパターンを塗るのです。
さらに、患者たちの前にカードを置くと・・・<ほうっておいたら何もしませんが・・・
<カードを置くとみんな一斉に出しちゃう!
これはさすがにフィクションであり、実際の症状とは異なるでしょう。
しかし、こうして今まで治療の見込みがなく「廃人」としてしか見られていなかった患者たちがこうした「人間らしさ」を取り戻していくことはとても嬉しくなるし、面白い。
セイヤー博士と一緒に嬉しくなってしまいます。
~作中の用語について~
・レナードが知っていたリルケ-の「豹」は「眠っていた」ときの彼の心情を代弁したものなのでしょう
・フロイトがコカインが広めていたのは事実なのですね。(有名ですが)はじめて知りました。
・「精神分裂病」ということばが使われていますが、今は統合失調症という名称にかわっています
・患者がニューヨーク・メッツが優勝した時の「奇跡」につてい語る場面もありました。
この話題は「メン・イン・ブラック3」でも登場しましたね。
~作中の感動的なシーン~
作中にはいくつもの感動的なシーンがあります。
「母と『再会』するレナード」
「病院のみんなが出資してくれる」
「長年ことばも話せなかった患者が動いている」
「レナードはセイヤー博士のメガネを壊してしまう。レナードはパーキンソン症候群の症状が出ているのに必死で直そうとする」
「レナードは症状が出ても、自分を見てくれている女性とダンスをしようとする」
中でもレナードと母親の関係は涙を誘います。
終盤で、母は
「健康な子が生まれたことは幸運だ」
「なぜこんな不幸(レナードが嗜眠性脳炎になったこと)が・・・」
「これはもう『負け戦』よ」
と語ります。
序盤では、意思疎通ができないはずのレナードに話しかけるように看病する母親に、セイヤー博士が「ことばを使わずにどうやって話を?」と聞くシーンがあります。
このときにこの母親は「あなたは子どもはいる?子を持てばわかるわ」と言っていました。
序盤で息子を看病していた母親は強くあったのだけど、一旦回復した息子の症状に薬が効かなくなっていくのを見た母は、弱さを見せ、「負け戦」と言ってしまうのです。
しかし、それに反するようなポジティブなレナードのことばには勇気づけられます。
セイヤー博士に朝まで「人々は感謝の心、人生の喜びを忘れている」とことを力説し、演説で「確かなのは、人間の魂は薬よりも強いことです」と言うレナード。
観たあとは、彼の言う「大事なこと」を思い出しながら生きたい・・・そう思えました。
オススメ↓
人生論的映画評論: レナードの朝(ネタバレ注意)