ルールが微妙な殺し合い「ハンガーゲーム」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:4/10
一言感想:ゲーム本編がつまらないってどういうことなの・・・
あらすじ
国家パネムでは年1回、「ハンガー・ゲーム」が行われていた。
それは各地区から選出された12歳から18歳までの24人の男女が、施設内に作られた森の中で殺し合い、生き残った者に生涯の富が約束されるという殺人ゲームだった。
カットニス(ジェニファー・ローレンス)は、そのプレイヤーに選出されてしまった妹の代わりに名乗り出る。
ベストセラー小説「ハンガーゲーム」の映画版です。
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以前から「バトル・ロワイアル」の模倣と呼ばれることが多かった本作ですが、いざ映画を観てみるとそれほど似ていないように感じました。
バトルロワイアルとの大きな差異は、ゲームが始まるまでの描写が多いことと、格差社会への批判が込められていることです。
国家が12の地区に分かれていて、戦争の代替として殺人ゲームを行っており、それを富裕層が支配しているという世界観は、バトルロワイアルにはないものです。
無理も感じる設定ではありますが、しっかりと独自の要素を盛り込んでいます。
最後の一人になるまで戦うという設定も、決してバトルロワイアルがはじめてなわけではないですし、一概に盗作とはいえないとは思います。
原作者自身もバトルロワイアルの影響はないと言い切っています(真偽はわかりませんが)し、一旦その類似点を忘れて本作を観たほうがよいでしょう。
余談ですが、自分はこうした生き残りゲームを描いた作品では「クリムゾンの迷宮」が大好きです。
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バトルロワイアルの原点と言われる「死のロングウォーク」も好きなのですが、この小説を超えるスリルと面白さは、同ジャンルでは未だに体験したことがありません。
グロテスクな描写が多いので子どもには薦めませんが、「ハンガーゲーム」が気に入ったのであれば是非読んで欲しいです。
内容が内容だけに非道徳的だと批判も浴びるかもしれませんが、個人的には若い人がこういった作品に触れるのは悪いことではないと思います。
確かに「若い少年少女が殺し合う」のを観て楽しむというのは悪趣味でしょう。
しかし、そうした生きるか死ぬかの戦いにより、見えてくるものがあると思うのです。
こうした「死のゲーム」で描かれているのは「死を迎えるかもしれないことによる、生への渇望」です。
本作のタイトル(ゲーム)に「hunger(飢餓)」という名を冠しているのは、それも理由にあるのではないでしょうか。
今の世の中では、若者は死を迎えることをほとんど考えなくなっているのかもしれません。
しかし、実際は世界を見渡せば、子どもがたくさん亡くなっている国も多くあります。
作品では、そのような「若くして死を迎えることがない」ことで、いかに幸せであるかも教えてくれます。
本作は、過激な設定にもかかわらずPG12指定どまりです。
バトルロワイアルは製作者がその世代に向けて送りたいであろうメッセージがあったはずなのに、R15指定を受けたのは残念でした(作中の残酷描写を観れば、納得はできましたが)。
ハンガーゲームは残酷描写が極端なまでに抑えられているので、若い人が観てもあまり問題のないようになっているのが好感触です。
真面目なことを書いてきましたが、そろそろ感想を。
はっきり言って映画自体は面白くなかったです。
なにがひどいって、メインになるはずのゲーム部分がつまらないこと。
詳しくはネタバレになるので↓に書きますが、とりあえず言えるのは緊張感がない。
死が隣り合わせの緊張感が伝わってくるのは、せいぜいゲーム開始後数分。
その後はご都合主義な展開ばかりで興ざめしました。
それだけならまだよかったのですが、ゲーム中盤のとある展開には、がっかりを通り越して怒りが湧いてくるほどでした。
そもそもゲームのルールが不明瞭で、「移動できる範囲」や「時間制限」の話題がないのも残念です。
ゲームに参加するキャラクターの描写は中途半端ですし、敵との攻防がしっかり描けているとも思えません。
主人公の強さの説得力がないことや、敵がわりと間抜けなのも致命的です。
反面、長い長いと噂のあった、ゲーム開始までの展開は面白かったです(1時間近くある)。
第二の主人公ともいえる「ピーター」の心理描写は丁寧ですし、やたらと主人公たちが「スポンサー」を気にしなければならないというのも面白い。
格差社会だけでなく、「スポンサーがつかないと事業をすすめることができない」という社会をも批判しているのかもしれません。
そんなわけで、正直凡作にしか感じなかったわけですが、サバイバル・ゲームに憧れる少年少女にとっては面白く観れるのではないでしょうか。
日本語吹替え版が異常なまでの豪華声優目白押しなので、日本でもヒットするでしょう。
次回作の日本公開も決まっている(全3部作予定)そうですが、次はゲーム部分の脚本が綿密に作られることを期待しています。
*ちなみに作品にお守りとして登場し、ポスターにも使われている「マネシカケス」は架空の鳥の名前だそうです。
*ギリシャ神話を題材としているので「コルヌコピアイ」などのことばも出てきます。
*「エスター」のイザベル・ファーマンの出演が嬉しいです。
以下、ネタバレです 結末に触れまくっています↓メタメタに書いているのでこの映画が好きな人にはごめんなさい。
とりあえず一番腹の立つ展開を書きます。
~ゲームのルール変更~
このゲームは、各地区からの男女2名×12地区の計24人が殺し合うというもの。
同じ地区の人間でも最終的には殺し合わないといけないため、そこにドラマが生まれています。
しかし映画では、ゲームの途中でルールを変更。
「ゲームの優勝者は同じ地区の2人でもいいよ」と主催者側がプレイヤーに告げるのです。
そして真に理解できないのはその理由です。
11地区の「ルー」と言う女の子が死ぬ
↓
主人公の「カットニス」は、彼女に花を添えて優しく看取る
↓
それをTV中継で見ていた11地区の人間たちが暴動を起こす
↓
教育係の「ヘイミッチ」は、この事態を重く見て、政府(主催者)の重役である「セネカ」に提案する
↓
その提案内容は「興奮すれば、連中の怒りを抑えられる。そのためには若者の恋だ」
↓
政府は、カットニスと、同じ地区の「ピーター」をイチャイチャラブラブにするため、優勝者を2人に変更
↓
11地区の暴動はおさまる
ちょっと待てや。
11地区の人間が、希望をかけていたプレイヤーが死んだことをきっかけに暴動を起こすというのは、まあ理解できます。
でも「他の地区の恋する男女を見たから興奮して怒りがおさまる」という意味不明な収束は納得できるもんじゃありません。ていうか70回以上もやっていて、今まで暴動も起きてなかったのか?
だいたい11地区の少女が死んだのは、もともと「同じ地区の人間同士でも殺しあわねければいけない」というルールにより、同じ地区の黒人の少年とはなればなれになったせいでもあると思うんです。
それなのに、少女が死んだあとで「やっぱり2人生き残っていいよ」っていうのは余計に反感を買うのではないでしょうか?
しかもゲームのラストでは、「やっぱり生き残りが2人ってのはやめにして、1人に戻します」とほざく政府。
次回作でこの政府を主人公がぶっつぶしてくれるのなら観たいです。
~リアリティ皆無のサバイバル~
まあね、主人公をはじめとして全然警戒心がないの。特に背後。
一回くらいは後ろを振りむきながら移動したり、2人共同で前と後ろを見張ったりするシーンがあってもいいと思うんだけど。
ルーの死を看取るのはいいのだけど、ちょっとは周りを警戒してください。狙われ放題だぞ。
それはまだ許せます。
問題は、「ケイトー」をはじめとしたグループが、木の上に登ったカットニスを下で待っているシーンです。
なんとこいつら、木の上にカットニスがいるのにもかかわらず4人ともどもグースカ眠りこけるのです。
見張りを立てろよ!「殺人蜂」を使わずとも、余裕でこいつら殺せそうです。
いつの間にかグループに加わっていたはずのピーターは離脱していたので、ピーターが見張り役だったのかもしれないけど・・・
少なくとも、ケイトーは専門学校で学んだ優勝経験者には思えねえ。もっかい学んでこい。
他にも、
主人公が蜂の毒で2日間寝ていても問題なかったり、
主人公が受けた傷はどう治すのだろう?と思っていたら、「差し入れ」の薬で治しちゃうし(効果抜群)、
結局食料や水不足を心配するシーンはないし、
「のろし」があがったら、一人だけ見張りに残してホイホイ見に行ってしまうチームとか話にならないです。
前半に「ゲームの死因で多いのは、サバイバルができなかった際の感染症や病気です」という台詞があって、これは期待できると思ったのだけど、期待した自分が馬鹿でした。
だいたい、純粋なサバイバルを描く気もないんです。
なにせ中盤、政府により火の玉が主人公に放たれる(比喩表現でなくて、マジででかい火の玉)のですから。
さらに終盤にはトラのような化物が放たれまくります。
人間同士の殺し合いから逃げた時点で、この映画の底の浅さが露呈しています。
そういえば12地区は審査で高得点を取り、スポンサーからの評価も上々だったと思うのですが、ゲームにおいてどういうアドバンテージを持ったのかがわからないです。
もしかして、あの差し入れの薬とスープがそうだったのでしょうか?だとしたら苦労した割にショボいような・・・
~ゲームのオチ~
前述のとおり「やっぱり生き残りが2人はアレなんで、1人にするよ」って政府がほざいたあと、生き残った主人公カットニスとピーターは同時に毒のある木の実を食べ、自殺しようとします。
これを見かねた政府は、「待て・・・みなさん、ハンガーゲームの優勝者です」と国民に2人を紹介。
優勝者がいなくては示しがつかないのでほだされたのです。
これはピーターが序盤に言っていた「政府に見せてやりたい、所有者じゃないということを」を示すものであるのだけど、やはりここまでゲームの主催側がこうコロコロとルールを変えまくるのは陳腐な展開としか思えないのです。
また、ケイトーが死ぬ直前に言った「仕組まれていた」とは続編への布石かもしれません。
映画のラストは、意味ありげに優勝者2人を見つめる大統領のカットで終わりますしね。
あと、政府の重役であるセネカが、ゲーム終了後に部屋に移動され、そこに毒のある木の実が大量に置かれてあったのにはびっくり。
「ゲームめちゃくちゃになっちゃったから、責任をとって死んでね」ってことなのか。ひでえ。
~ピーターのキャラクター~
ピーターの心理描写は秀逸でした。
彼はTV番組のショーで「恋している人もゲームに参加している」と言い、それはあくまでスポンサーを獲得するための演出のようにも見えました。
しかしピーターの、カットニスに恋焦がれている気持ちは本当でした。
ピーターは過去に「雨の中にいるカットニスにパンを放った」ことを気にやんでいました。
序盤でピーターは単独で訓練をしていましたが、そうした後ろめたさがあったからこそ、一緒に訓練をしようとはしなかったのではないでしょうか。
教育係のヘイミッチの言った「生き残るのは一人だから」という理由だけではないような気がするのです。
最後にカットニスは「(世界公認の恋人になったことを)忘れましょう」と言いますが、ピーターは「僕はいやだ」と答えます。
それこそ、ピーターの「誰の所有者でもない」という主張のように思えるのです。
でもピーター、君の怪力は一度も役に立たなかったよね。
~他にもよかったところを探そう~
・主催者がカットニスの弓矢の演技を見ようとしないため、カットニスは主催たちのそばにあった「豚の丸焼きがくわえていたりんご」を射抜く
「審査にお礼申し上げます」という台詞も含めて、痛快でした。
・果物を弓で落とし、埋まっている地雷を破裂させて物資を破壊するくだり
これもよかった。これ以外に主人公の知略が見える部分は皆無でしたが。
つーか地雷を物資のそばに置きすぎですよね。
・「ゲイリー」という、カットニスと仲の良い少年がピーターに嫉妬している描写
カットニスがゲームに参加したことで、ゲイリーは仲の良い少女を第三者に奪われているのです。
ゲイリーは、カットニスと同じように「代わりにゲームに名乗り出る」ことをしなかったことを、後悔しているのかもしれません。
・ゲームのルールは途中で変えないほうがいいという教訓が身にしみた
世界中のあらゆるゲームで一番やっちゃダメなことだよね。
オススメ↓
ハンガー・ゲーム : 映画評論家 兼 弁護士坂和章平の映画日記
「死のロングウォーク」を知っていますか?ユーザーレビュー - Yahoo!映画
原作からの補足↓
どんくらの映画わくわくどきどき ハンガーゲーム
ドナルド・サザーランドは知っていたんですが、『エスター』のイザベル・ファーマンの出演はサプライズでしたので、その辺は個人的に嬉しかったです。
しかし、ゲームのオチはやっぱりガッカリでしたね。「もしかしたら、あの木の実で仮死状態になるんじゃないか?」とか「ピータが隠れた本性を見せるのか?」とか思っていたんですけどねw
> ドナルド・サザーランドは知っていたんですが、『エスター』のイザベル・ファーマンの出演はサプライズでしたので、その辺は個人的に嬉しかったです。
本当ですね!気づかなかったです。
「エスター」は大好きな映画なので嬉しいです。
> しかし、ゲームのオチはやっぱりガッカリでしたね。「もしかしたら、あの木の実で仮死状態になるんじゃないか?」とか「ピータが隠れた本性を見せるのか?」とか思っていたんですけどねw
それと全く同じこと思っていました。
脚本に気が利いていなくてがっかり・・・です。
テンポ、内容が駄目駄目でした・・・
原作の方は分からないですが^^;
「死のロングウォーク」僕も大好きです!
小説なのにテンポがよく、人物描写も丁寧で良かったです。
小説は自分も未見ですが、これでもだいぶ端折られているようです。
> 「死のロングウォーク」僕も大好きです!
> 小説なのにテンポがよく、人物描写も丁寧で良かったです。
あれも人にはオススメできませんが、痛烈な印象を残した作品でした。
『バトルロワイヤル』が怖くて見れなかっただけに、ハリウッド版なら見れそう!という期待も相まって、観る前からちょっとがっかりです。中高生にヒットした作品なのかもですね。
『死の~』は気になります、『クリムゾン~』と一緒に本屋さんで今度、探してみるつもりです♪
個人的には海外で映画化して欲しいです
自分も一応期待したのですが・・・ヒットと作品の面白さは釣り合わないと思い知りました。
紹介した小説2つは大プッシュでおすすめですよ。
> 個人的には海外で映画化して欲しいです
「ミッキー〇ウス」も是非再現して欲しいですね(←読んでいる人にしかわからない)。
無理か。
自分は、想像通りの出来だったので、それほど腹も立たず、前半の好印象の方が予想外で残りました。
記録的なヒットの理由を知りたかったのですが、それはわかりませんでしたね。
あの効果抜群の薬は欲しいですよね。(笑)
> 記録的なヒットの理由を知りたかったのですが、それはわかりませんでしたね。
ティーンエイジャー向けの恋愛要素が受けたのかなあ・・・と。
前半と「ピーター」の描写は面白かったですし。
> あの効果抜群の薬は欲しいですよね。(笑)
あの薬あったら「感染症で死ぬことが多い」とかならないですよね。
自分もこの映画の恋愛描写の丁寧さには観る前の予想に反して好感が持てました。
ゲームが始まった後は…地雷のところも大切な荷物の前にあそこまで地雷置くかと思いましたし…
> ゲームが始まった後は…地雷のところも大切な荷物の前にあそこまで地雷置くかと思いましたし…
そういやそうですよねえ・・・追記させてください。
ゲーム自体は店舗が悪いうえに、スタート時のルール変更があり、24名だけの世界ではなくなりましたね。
最後の方で、12ブロックの二人が闇の中を歩く場面。
どうして、彼は武器を持っていなかったんだろうか?
これも続編発表!
映画はまだ見てないですが、原作からいらない変更あるっぽいですね。
原作の流れと伏線回収では、ゲームのルール変更や、主催側からの妨害なんかも納得いく部分でしたので。
そもそも原作の一作目では暴動なんて起きてないですからね。
ハンガーゲームの原作読んで見る事もおすすめします
「アナザー」みたいに原作からのひどい変更があるんですね・・・
本作の「暴動シーン」は全く納得できないのでひどいもんでした。
ゲームのルール変更は映画ではがっかりでしたが、原作では納得できるんですね。読んでみたくなりました。
…某政府への皮肉を他国がやってくれたようで面白かったです
火の玉飛ばしたり動物放ったりするのは「管理された状態でいじられまくってる」って事の表現では?
カブトムシ相撲で中央に寄せたり逃げさせなかったりした事ありますよね。
あれの人間バージョンだと思います
富裕層どもは「さぁどうする?」っていう展開が見たいんです。だから最後のルール変更があったんでしょう
それに富裕層は真剣なサバイバルが見たいんじゃなくてカブトムシ相撲でいう「戦い」が見たいんでしょう。
サバイバルのアドバイスは「長生きしてたのしませてもらうため」だと思います
本人も生きるために必死で覚えますしね
グースカではカットニスが武器持ってることを未確認でしたし彼らは。集団でいるし、降りてきて武器を奪いそうになればわかると思ってたんでしょう。実際彼ら武器手に持ってたし
見取りの場面では「(゚Д゚)ノおいおい ドキドキ」ってさせてくれたじゃないですか。しんみりだってないと2時間飽きるし
カットニスだって森慣れしてるんだから背後にいても足音でわかる事ぐらい知ってたんじゃないですか?
飛び道具は捕ったんだし
暴動はルーの弔い合戦では?初めに動いた男性反応からしてルーのパパっぽいし。
それに「若者の恋」は関心を向けさせるためで・・・鎮圧のためじゃないでしょ?
武力制圧して「抵抗は無駄」って悟らせて「だったらせめて弔ってくれたあの少女を応援しよう 同じ富裕層から切られた12地区の仲間として」ってなるじゃないですか。
あの恋で治まった場面てありませんでしたよね
ヘイミッチもそういう主旨の発言だったんじゃない?「カットニスが応援される」「再暴動が少しでも予防できる」
そういえばドナルド長生き・・・・かも