オーディンの使い 映画版「悪の教典」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:7/10
一言感想:エクセレ~ント(主に三池崇史監督が)!
あらすじ
英語教師の蓮実聖司(伊藤英明)は『ハスミン』というニックネームで呼ばれ、生徒たちから圧倒的な人気を集めていたが、その正体は他人への共感能力に乏しい人格障害者であった。
蓮実は自身や学校に降りかかるトラブルを排除するために、次々と殺人を犯しては隠蔽していたのだ。
数学教師の釣井(吹越満)をはじめ、生徒の圭介(染谷将太)も蓮実のことを調べようとする。
一方、蓮実のもとには美彌(水野絵梨奈)という生徒が、体育教師の柴原 (山田孝之)にセクハラを受けていることを相談するために訪れていた・・・
貴志祐介の小説を原作とした映画です。
![]() | 貴志 祐介 730円 powered by yasuikamo |
内容は「容姿端麗・頭脳明晰・人望も厚い人気教師が実はサイコパスであり、つぎつぎと生徒と教師を惨殺していく」というインモラルなものです。
映像化を手がけたのは三池崇史監督。
今でこそ年に数本のメジャー作品を世に送り出すヒット・メーカーですが、そのキャリアでは「オーディション」「殺し屋1」など、グロテスクなバイオレンス作品も数多く手がけています。
本作はそんな三池監督の久々のR15+指定作品。
宣伝で指定を受けたことを大きくアピールしてるだけのことはあり、そこには妥協はありません。
世間一般の観客を無視したような悪趣味(褒めことば)な映像に圧倒される、濃密な時間を過ごさせていただきました。
本当にこの監督に、この作品を撮ってもらって良かったと思います。
氏の才が本領発揮されるのは、こうしたモラルが欠如しまくった作品にあると、本作を観て感るはずでしょう。
まさに本作は、長らく三池監督のファンが待ち望んだ作品と言えそうです。
この本編のみを観た方には「ただの頭のおかしい教師が生徒を殺しまくる内容にしか思えない」と感じる人も多いことでしょう。
その感想は正しいです。
映画本編のみでは教師・蓮実の計算高さや人の心を掌握する印象に乏しく、行き当たりばったりに殺人を犯しているようにしか見えません。
人物描写も簡略化されているために、「何故教師・蓮実が殺人を犯すのか」「どうして人を意のままに操れるのか」という点においては説明不足とも言えるとも思います。
しかし、自分はこれを肯定的に捉えたいです。
もともと主人公は他者への共感能力に乏しいサイコパスであるので、普通の人間が思うような殺人への罪悪感がありません。
その人物に、『なぜ』と問うことにはそもそも意味がないのです。
「『なぜ』なのかがわからない」ということは、ある意味で最も恐ろしいことです。
ただ「邪魔だから殺す」という、徹底的に感情移入を拒むかのような主人公の姿に、自分は身震いするほどの恐ろしさを感じました。
小説よりも省略や簡略された部分が多くなることにより、主人公の異常性を描くことおいては成功しているのではないでしょうか。
「異常性」そのものは、事件が起こる前でも、彼の乗っているボロボロの車(ハイゼット)や住まいで十二分わかると思います。
ただやはり前半の人物描写にダイジェスト感が否めないのも事実。
生徒にセクハラをするクズ体育教師(山田孝之)の描写などは明らかに足りていないし、主人公を追い詰めるようなサスペンスの面白さはあまり感じません。
リアリティは感じないし、けっこうツッコミどころも多いです。
個人的には、伏線がわかりやすすぎるのも気になりました。
肝心の後半の殺戮シーンでも不満点があります。
詳しく書くとネタバレになるので↓に描きますが、これは三池ファンにとっても肩すかしかもしれません。
そんな弱点も多い作品ですが、ここまでひどい(褒めことば)映画をメジャー系の作品で観れることに嬉しさを感じざるを得ません。
三池崇史監督のファンにとっては必見作ですが、インモラルな内容を嫌う方は絶対に観ないほうがいいです。
宣伝で女子高生が「怖かった~」なんて楽しそうに語っていますが、本編はマジでゲンナリする内容で、若い子にはトラウマになりかねませんて。
ちなみにグロだけでなく、性的な面でも15禁な描写があるので要注意。
加えて主演の伊藤英明はしょっちゅうヌードを披露します。ファンサービスにぬかりがないですね。
また本作の前日談として、「悪の教典 序章」があります。
![]() | 伊藤英明 2872円 powered by yasuikamo |
*BeeTVでも配信されています
監督は本編の三池崇史ではなく、野本史生という別の方。
内容もR15+指定になるような過激な画はなく、加えて「二階堂ふみ」「染谷将太」や「山田孝之」など本編に出てくる出演者は姿を見せません。
一本のドラマとしても物足りない印象ですが、数学教師の釣井(吹越満)や、生徒の蓼(KENTA)の内面を知る上では価値のある一本です。
この序章を観ていないと本編の展開がわからないということは全くないので、無理に事前に見る必要はありません。
しかし、本編では描かれなかった(小説にもある)釣井の過去の物語は重要であるので、映画本編を観たあとでもよいので観てみることをおすすめします。
賛否両論であること(否の意見が多いこと)も、この映画にとっては勲章ものでしょう。
そんなAKB48の大島優子さんが涙ながらに退場してしまうほどの問題作なので、オススメするのはちょっと・・・・いや、でも、やっぱり(悪趣味な方限定で)オススメ!映画館で是非!でもデートで観るんじゃないぞ!
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓
テーマによって書いているので、作中の時間軸とは異なっています。
~蓮実の過去~
映画は、蓮実の両親が「あの子は共感能力に乏しいと思っていたけれど・・・」「早くあの子を社会から隔離しないと!」「あの子はまだ14歳なのよ!」などと言い争っている画からはじまります。
14歳という年齢は、酒鬼薔薇事件の犯人がそのときに事件を起したことを踏まえ、そうしたのでしょう。
全裸のまま階段を上り、両親を惨殺した蓮実は、後のシーンで自身の腰をも包丁で刺して偽装までもしたことが明かされます。
この蓮実の「偽装」はクライマックスの惨殺の夜にも行われます。
~携帯によるカンニング~
カンニングを「Cheating」と職員会議の時に訂正しているのは、カンニングが和製英語であり正しい使い方ではないため(Cunnigはずる賢いという意味)でしょう。
もっとも浸透している用語なので、蓮実は「そのままでいいです」と言ったのだと思います。
携帯電話のメールをやりとりを、アマチュア無線部の顧問である釣井先生(吹越満)の妨害電波により防ぐ方法があると言う蓮実。
しかし電波法に抵触する恐れがあるので認可されず、別の方法を考える、と蓮実は結論づけました。
しかし、実際のテストでは妨害電波は出されており、しかもそれを出したのは釣井先生ではありませんでした。
このことは、カンニングの首謀者であった圭佑(染谷将太)に疑問を抱かされる結果になったのだと思います。
ちなみにここで原作者の貴志祐介さんが、「蓮見先生、頑張ってください」という台詞付きで教師役としてカメオ出演しています。
<貴志祐介-画像検索>
~梨奈~
梨奈の父はモンスターペアレントでした。
過剰なまでに激昂し、娘のためなら命をはれると豪語し、娘がいじめを受けていると言う父。
しかし実際には親子仲は悪く、いじめられているというよりも単にクラスで目立たない存在となっているだけのようでした。
彼は家の周りにある猫よけ用のペットボトルの中身が全部灯油にすり替えられ、自身のタバコの不始末が原因となり、焼死してしまいます。
どうやって入れ替えたねん(目立つだろ)とか、タバコの火を待つとか可能性低すぎだろとかツッコミたいのですが、プロバビリティーの犯罪でもある(?)ので気にしないことにしましょう。
皮肉なのは、文化祭の夜に梨奈が来て、「梨奈、復活だよ!」と励まされ、元気になっていたこと。
父親が焼死ことがきっかけで、同級生と打ち解けるほど明るくなったというのは、なんともやりきれません。
彼女の最期は、惨殺の日に手首を切ったことによる自殺でした(美術部の生徒・雅彦が殺されるシーン)。
~美彌(みや)~
万引きをしたことがきっかけで、体育教師の柴原 (山田孝之)に恒常的にセクハラを受けることになった生徒です。
彼女は蓮実に相談し、柴原に反対に脅す内容のメールを送ったことから、蓮実と肉体関係にまで及ぶようになります。
蓮実は惨殺の日、彼女を石のはいったビニールで殴り、パンツを脱がし、屋上から落とします。
さらに「遺書」も蓮実に偽造されているのです。
蓮実はドアノブに仕掛けをして排水溝にコードが吸い込まれるという、屋上を密室に見せかけるトリックも仕込んでいましたが、すんでのところで美彌を探しに来た女生徒に見つかり、その生徒をも首をひねって殺します。
美彌の存在は、この日の惨殺の引き金になったのです。
~蓼(たで)~
本名は蓼沼(たでぬま)。素行の悪い少年です。
圭佑が首謀の集団カンニングにも参加し、妨害電波によりそれができなかったときは圭佑を殴りました。
他にも学校の裏掲示板に誹謗中傷が書かれた時にも、激昂してクラス内で暴行をしました。
彼は、蓮実に「飲みに行くか」と約束を取りづいた後は一切映画に姿を見せません。
わかるのは
・美彌に蓼の携帯を持っていることを知られ、「飲みに行ったけど、あいつ弱くてさ」などと蓮実が言ったこと
・美彌に、蓼のことが好きな生徒の柚香に写メールを送らないように蓮実が言ったこと
くらいです。
蓮実と美彌が屋上でキスをしたときに、(真偽はわかりませんが)それを蓼に見られてしまっていました。
これにより、蓮実は蓼を邪魔と思い、『排除』したのでしょう。
~教師・久米と、雅彦~
久米は同性愛者であり、美術部の雅彦(林遣都)と肉体関係にありました。
蓮実は彼を「あなたの人生は私の手の内にある」などと脅迫し、悪趣味なオブジェのある部屋をまるごと借りてしまいます。
ひどいのは、自身も美彌とその部屋で肉体関係に及んでいるのに、「反社会的な行動は謹んでいただきたい」と自身を顧みず一方的に糾弾していること。
笑ってしまったのは、美彌に「(部屋を)誰に借りたの?」と聞かれ、蓮実が「ゲイ・・・術家?」と答えていたこと。
ダブルミーニングですね。
惨殺の日、久米は電話で呼び出され、撲殺。その後に猟銃自殺に見せかけられます。
雅彦には「久米に罪をなすりつけること」を明かした後に猟銃をうち放ち、その後ナイフで首を切り、殺します。
あまりにも、無慈悲です。
~教師・釣井と、圭佑~
釣井は、蓮実に興味を持った生徒の圭佑に、蓮実の過去を教えます。
しかし、蓮実はそれをコンセントに隠していた盗聴器で聞いていました。
釣井は、電車の中で石の入ったビニール袋で殴られ、つり革で首を吊るされて殺されてしまいます。
とりあえずツッコむけどそれは無理だろ。(誰かに見られそうなもんです)(殴った跡は不審に思われるんじゃないの?)
次の日、朝礼で釣井が死んだとしるといなや、圭佑は教室へ走ります。
そこに来る蓮実は、ナイフを持って対抗する圭佑をあっさりふん縛り、後に教室に来た怜花(二階堂ふみ)にも、涙を見せる演技を見せて退かせます。
その後、暗くした部屋の中で、ガムテープで巻かれ、芋虫のようになっている圭佑に、蓮実は尋問します。
「カンニングの首謀者はお前か」「カンニングに参加したのはこいつらか」「他に話した奴はいるか」「Tough Boy」 と・・・
結果、圭佑は「穴だらけ」になり殺されてしまいます。
蓮実は「素晴らしかったよ圭佑、仲間を決して売らなかった、いや、いなかったのかな」と独白します。
自身を調べていただけでも、簡単に『排除』する、蓮実の異常さが顕になりました。
~クレイ~
大学在学中の同級生であり、快楽殺人鬼です。
蓮実とともに、血と骨が入ったバケツを嬉々として運ぶ様はおぞましいものでした。
結果的にクレイは、焼身自殺に見せかけて殺されます。
蓮実は「殺人は快楽か?俺は違う」と言い放ちます。
蓮実にとって、殺人は快楽ではないー
それならば、本当に「自分にとって邪魔だから」。それだけなのかもしれません。
~モリタート~
三文オペラの劇中歌であり、『蓮実のテーマ曲』です。
「マック・ザ・ナイフ」という名で大ヒットをしていました。
劇中で流れていた原曲はこちらでも聞けます↓
<Mack The Knife (original) - YouTube>
その歌詞は劇中でも日本語訳で表示されました。こちらでもその歌詞が読めます↓
<マッキー・メッサー/マックザナイフ website design magictrain.biz weblog>
「サメには歯がある。
マッキー・メッサーはナイフを持ってる。
しかし、あんたにはナイフは見えない」という歌詞。
これは表面的には理想的な教師でありながら、本質は異常である主人公を表わしているようでした。
~惨劇の夜のはじまり~
それは生徒たちが泊まり込みで文化祭の準備をしているさなかー
美彌を転落させた後、蓮実は猟銃を手に次々と凶行を重ねます。
はじめは、体育教師の柴原のドラムの腕前を見た生徒3人を有無を言わさず撃ち殺します。
柴原はさすまたを構えて武装しますが、そんな彼に蓮実は美彌のパンツをほおり投げます。<女子高生のパンツの匂いを嗅ぐ山田孝之
その匂いを嗅いで「美彌か」と言った後即効で撃ち殺される柴原。
殺されるシーンで笑えるというのはこの上なく悪趣味ですね。ていうか匂いだけでわかるんか。
そして「学校に猟銃を持った不審者が侵入しました!一回に降りず、屋上へ避難してください!」と校内放送で告げる蓮実。
生徒の中には「蓮実は1階から放送しているのに、おかしくねえか」と異を唱えるものもいましたが、半分近くの生徒は屋上へ行き、開かない屋上の前で立ち往生をすることになります。
携帯は「妨害電波」により圏外になっています。
蓮実は、一階の公衆電話を借りようとした生徒、玄関から逃げようとした生徒をも殺します。
蓮実は、職員室で猟銃が「楽しくやろうぜ、相棒」などと話しかける幻覚を見ます。
そして、屋上の扉の前にいる生徒たちに、「モリタート」を口笛で吹きながら近づく蓮実・・・(こちらでも聞けます↓)
<モリタート 悪の教典ver - YouTube>
そして「マック・ザ・ナイフ」の陽気な音楽に合わせ、まるでカジノのルーレットで遊ぶかのように(後ろには学園祭で作ったルーレットのようなものが見える)次々と生徒を撃ち殺していく蓮実・・・<撃ったあとは、ちょっと「ニヤッ」と笑います
作中最恐のシーンでした。
後には蓮実が倒れていた宇宙飛行士の模型を直すシーン、殺した生徒の名簿の名前に赤線を引くシーンもありました。
~銃の入手先は?~
ここで疑問が。蓮実はどうやって猟銃を手にいれたのでしょうか。
ご存知のとおり日本は銃規制が厳しく、猟銃は免許制で認可されているとはいえ、厳しい査定もあります。
考えられるのは以下の2つです。
①久米先生から奪った
②クレイから奪った
個人的には①がしっくりくるかと思われます。
久米先生は序盤にクレー射撃を見せていましたし、蓮実は脅迫したことで猟銃を奪うことができたのではないのでしょうか。
「久米先生に罪をなすりつける」という目的においても、猟銃の持ち主が久米先生であることに必然性があります。
②ですが、クレイとの回想でも、蓮実は確かに猟銃を使っていました。
何らかの方法で密輸したことも考えられるかもしれません。
※以下の意見をいただきました。
久米教諭が雅彦と一緒にクレー射撃をしている場面があるので、蓮実が久米の弱みを握り密会場所を借りていたことから考えて、散弾銃も奪ったという想像が妥当かと思います。
~猟銃にあらわれた幻覚とは?~
もうひとつの疑問が、蓮実の持つ猟銃にあらわれた「楽しくやろうぜ、相棒」と言った幻覚の正体です。
これはクレイなのではないでしょうか。
クレイとの回想では「モリタート(マック・ザ・ナイフ)」について語っており、この幻覚も「マック・ザ・ナイフ」のことを言っていました。
後にも「時間がないようだぜ」と蓮実にアドバイスをする幻覚ー
それはかつて、蓮実とクレイがともに殺人を起こったときのなごりなのかもしれません。
~翔(かける)とさとみ~
翔はアーチェリー部の主将であり、さとみと翔は両思いです。
惨劇が起こる前、翔はライブ(?)のチケットを渡すため、部室に来るように約束していました。
翔は学校から離れ、バスを待っていた男性に惨劇を伝えることに成功します。
しかし翔は、さとみを救うため、学校へと引きかえします。
同じ頃、さとみは防火シャッターをおろし、バリケードを作った教室からロープを下ろして抜け出そうとしていました。
しかし、さとみは途中で落ちて、足が骨折(捻挫)してしまいます。
それを見つける蓮実。
蓮実に向かい、叫びながらアーチェリーを構える翔。
蓮実と翔は同時に、それぞれアーチェリーと猟銃を撃ちます。
結果はー
弓は弾の間をする抜けるも、外れ、散弾は翔に当たります。
続いて、さとみも猟銃で撃たれてしまいます。
ここでの決着はスローモーションのCGで描かれており、見ごたえがありました。
~健吾~
東京大学進学を目指す秀才ですが、他人をすぐに見下す、自己顕示欲が旺盛な生徒です。
彼の提案によりバリケードを作ることには成功しますが、さとみが降りていったロープを捨てることを忘れており、蓮実の侵入を許してしまいます。
(つーか蓮実が登っている途中、大チャンスだろ)
最後には「東・・・大・・・に行かなくなくちゃ」と蓮実の前で倒れながら言う健吾ですが、蓮実に「to die?」と聞き返されながらも撃たれてしまいます。
~雄一郎と怜花~
すでに蓮実に殺された圭佑の親友です。
彼らは避難用具である救助袋にほかの生徒の死体を通し、それを蓮実に撃たせることで、「死んだ」と思わせる偽装をします、。
「みんな、卒業おめでとう(Happy Graduation)!」と、教室の窓から乗り出しながら言う蓮実・・・
久米先生のしわざに見せかけるために自らを机に叩きつけた蓮実でしたが、生き残った2人のおかげでその犯行が明るみに出ることになります。
証拠となったのは、AEDでした。
序盤に、股間に取り付けて下品なことを言った生徒が、保険の先生に「録音されているわよ」と諭すシーンは伏線でした。
蓮実の「これは全部久米先生のしわざなんだよ」ということばが、そこに録音されていたのです。
~蓮実のことば~
警察に連行される蓮実。
最後に生き残りの2人に、圭佑を殺したことの謝罪と、
「これは全部神の意思だった。
頭の中に響いてきた、悪魔にみんなとりつかれていたんだ。
みんなの魂を救うためにしたんだよ」と、言い放ちます。
雄一郎は「狂っている」と言いますが、怜花は「違う、こいつは、新しいゲームを始めているんだ」と言います。
これに蓮実は、「Excellent」の上の表現である「Magnificent」と答えるのです。
蓮実は、刑法第39条にある「責任能力」を考えた上で、狂ったふりをしたのかもしれません。
そうすれば、責任能力を問われることがない、無罪となると・・・それを怜花が考えたからでこそ、蓮実はMagnificentと言ったのでしょう。
~続く?~
屋上から落ちた美彌が目を覚まし、「先生・・・」と口走るシーンで映画は幕を閉じます。
そして表示される「To be continued」の文字。
小説はこの映画で書かれたラストよりも先のことも少しだけ書かれていますが、それも映画にできるような長さのものではなく、続編になるような原作も発表されていません。
続編はあるのでしょうか・・・あるとしたら、精神病院に入れられた蓮実が逃げ出したり、美彌が第二の蓮実になるというストーリーになるのかもしれません。
文庫版のラストでは、三池監督自身が貴志祐介さんに続編を熱望したことがわかるそうです。
希望を含めて、そう表示したのかもしれません。
~小説から省かれたシーン~
映画では原作の以下のシーンが省かれていました
・美術教師の久米との関係のいくつか
・体育教師の柴原の描写
・圭介と保健室の先生のエピソード
・生物教師の猫山の存在(映画には一切登場しない)
・国語教師の堂島のエピソード(映画には登場するだけ)
・蓮見の「中学時代の家庭教師(同級生の女の子)」のエピソード
前にも書きましたが、数学教師・釣井のエピソードは「序章」のほうに収録されています。
クライマックスには、小説にしかないシーンが多くあります(原作のネタバレになるところは反転しています)。
・圭佑は学校に潜り込んでいた
・蓼もそこにいた
・「AEDで友達救おうとする」シーンがある
・蓮実がトラップを仕掛けるシーンがある
・蓮実が「トラップに引っ掛かる」シーンがある
・アーチェリーのシーンも全く違う
残念だったのが、その「トラップ」という描写がなかったこと。
惨劇の夜の蓮実の殺害方法は、ほぼ猟銃のみです。
こう言っては悪趣味ですが、殺し方にバリエーションがないと感じた方もいると思います。
生徒から反撃するシーンも、もう少し観たかったですね。
~フギンとムニン~
中盤、オーディンにつきそうワタリガラスのフギンとムニンの物語が紹介されます。
フギンとムニンは、神・オーディンへ様々な情報を伝える存在です。
本作のフギンとムニンは、以下のものに当てはまると思います。
①蓮実
蓮実が「裏掲示板」「盗聴器」などにより情報を集める様は、さながらフギンとムニンのようです。
②序盤に登場するカラス
蓮実が家の外にいるカラスに異様なまでの敵意を燃やし、電流により殺していたのも、自分の行動を「神に告げ口される」のを恐れていたからなのかもしれません。
③怜花
蓮実は最後に警察に連行されるとき、怜花に向かって「オーディンによろしく」と言っています。
これは「蓮実は本当に狂ったふりをしているか?それとも、神を信じているか?」という観客への疑問の投げかけなのでしょう。
さらに・・・このとき、怜花の片目はカラスのように真っ白になっています。
なぜ怜花の目がカラスのようになったのか・・・これは怜花が新たにフギンとムニンの役目を担うものになったからだと思います。
続編があるとしたら、怜花は蓮実(もしくは蓮実の意思を受け継ぐ者)の凶行を止めるのかもしれません。
その行為こそが「神に告げ口をする」フギンとムニンなのでしょう。
こう云う映画は、やはり銃規制の甘い国での話でないと、現実味がないような気がしてしまいました。
日本の銃規制の厳しさを考えると、何故、彼が銃を持てたのか?警察は、所有者の前歴には厳しく、保管状態・保管庫までチェックしますし・・・・
また、高校生が逃げてばかりいて、反撃しないのも割り切れませんでした。
東大生志望の高校生がいるという設定なら、私は何よりも、火災報知に気付いて、いろんな動き(アーチェリーを含む)があるのかと思い期待してました。
最初の方の、カラスの登場は良かったですね、暗示的で。
ただ、サイコパスの世界が良くわからないんで、絵空事の様に感じてしまいました。
あんな凄い廃屋・廃車に近い軽トラックの設定にしなければ、私は、もう少し面白思ったと思います。
そうか、そういうことが、サイコパスということ?
> 日本の銃規制の厳しさを考えると、何故、彼が銃を持てたのか?警察は、所有者の前歴には厳しく、保管状態・保管庫までチェックしますし・・・・
>
おっしゃるとおり、蓮実はよく猟銃を手にできたなあ、と。
調べてみると手続きもものすごくめんどくさそうでした
http://www.enoha.net/gun2.htm
生徒からの反撃シーンもあれば、もっとはらはらできたのになあ・・
そうすれば「殺人鬼のはずの蓮実を応援している!」という「サイコ(映画)」的な面白さもあったと思うのですが。
>あんな凄い廃屋・廃車に近い軽トラックの設定にしなければ、私は、もう少し面白思ったと思います。
>そうか、そういうことが、サイコパスということ?
あの家屋は単に異常性を示すものでしょうね。寒そうです(いつも裸だし)
ヒナタカさんが仰る通り「なぜ殺人をするのか分からない」ってのは怖いものですね。
私は『時計じかけのオレンジ』のアレックスに影響されている部分のあるキャラクターなのではないかと思いました。
蓮実が"モリタート"を口ずさみながら殺人を繰り返す姿は、アレックスが"雨に唄えば"を歌いながら強姦するシーンを彷彿とさせるような。
また銃規制云々については、久米教諭が雅彦と一緒にクレー射撃をしている場面があるので、蓮実が久米の弱みを握り密会場所を借りていたことから考えて、散弾銃も奪ったという想像が妥当かと思います。
それでも本編中に生徒に向けて一言「これ、犯人(久米)から借りたんだ」くらいの洒落があれば分かり易くなっていたかもしれませんね。
あの銃の入手経路が判りました、ありがとうございました。
実は、判りにくいのは、ここだけじゃなくて、あのペット・ボトルの入れ替えも!!
マア、こっちは不承不承ながら、意味はわかったのですが。
「時計仕掛け・・・」は、確かにそうかも知れませんね。
少し思い出しました。
私は、高校生側の反撃(アーチェリーの使用、火災報知機の使用)が、ほとんどなくて、ただ殺されてゆくのは、ナンカ、筋立てとして面白みに欠けていたと思いました。
それから、滞米中のエピソードは、とりわけ、退職を迫られる場面の前後は、私にはチョット判り難かったです。
10日午後の時間、結構、若いお客さんが入ってました。
銃の入手方法のことなんですが、
あの銃は殺人鬼のクレイのものではないのですか?
森の中?で猟銃を試し撃ちしているシーンもありましたし、
それに惨劇の最中に蓮見が見た
銃が「楽しくやろうぜ、相棒」と話しかける幻覚では、
銃に取り付いていたのはクレイだと思います。
それをどうにかして日本に持ち込んだのでは?
個人的な疑問は、
タデはホントに死んでいるのでしょうか?です。
死んでいるという可能性は高いですが、
タデの殺害シーンはなかったですよね?
それに、
タデの彼女?(名前は分からないのですが)らしき人が
蓮見に撃たれる前に、
「タデはもういないんでしょ?」というような質問を
蓮見にしたときに、蓮見は何も答えずに撃ってしまいましたよね?
なぜなにも答えなかったのか。
というのも、怜花が圭祐の生死について尋ねたときは、
「ごめん。」と答えたじゃないですか?
自分的にはそこがスッキリしない点です。
もう一つ疑問なのは、
最後に怜花の目が白くなったことです。
あの目はフギン(ムギン?)と同じですよね?
あれは、怜花とフギン(ムギン?)が何らかのつながりがあるという意味ですかね?
もしかしたら自分の記述に間違いがあるかもしれませんが、
分かる人がいたら、教えて頂きたいです。
アメリカでの射撃訓練(?)で使用していたのは、散弾銃のような殺傷力の小さなものだったのでしょうか?
散弾銃は至近距離では、凄い殺傷力を持つようですが?
それと、最後の方の、彼女の左目の方だと思ったのですが、あのシーンは異常でしたね。
何か、メッセージがあるのかも知りません?が、見当ももつきません。
みなさまの意見を受けて、少しだけ記事に追記いたしました。
拙い内容ですが、よろしければ再度ご確認ください。
原作を読んでいないので何とも…ですが
オーディンの眷属の2羽のカラスはやはり重要と思われます。
生き残った雄一郎と怜花が
2羽のカラス(フギンムニン)であるならば、
続編において、死を司る神オーディン(蓮見の意思を継ぐもの??)に蓮見の記憶を伝える役割を担うのは
この2人以外になく、
(蓮見の「オーディンによろしく」の台詞も納得できます。)
1羽電流で殺されてましたが、この線で行くと
続編で殺されるのは、蓮見をただの狂人とのみ見なし
その本質に気付いていなかった
雄一郎の方かと…
また、ミヤが息を吹き返したかのように見えた最終場面。
突飛ですが、ミヤの体にはすでに蓮見の…???
確か微かに「ハスミン…」て呟いてたようでしたし
これは蓮見への思いが断ち切れていないこと?
そんな深読み(妄想)も楽しい映画でした。
> 生き残った雄一郎と怜花が
> 2羽のカラス(フギンムニン)であるならば、
> 続編において、死を司る神オーディン(蓮見の意思を継ぐもの??)に蓮見の記憶を伝える役割を担うのは
> この2人以外になく、
> (蓮見の「オーディンによろしく」の台詞も納得できます。)
雄一郎もフギンとムニンの片割れなのかもしれませんね(目は白くなりませんでしたが)。
そういえば、蓮実は「オーディンによろしく」の前に何か言っていたのですが(たぶん「ムニン」)聞き取れませんでした。
> 1羽電流で殺されてましたが、この線で行くと
> 続編で殺されるのは、蓮見をただの狂人とのみ見なし
> その本質に気付いていなかった
> 雄一郎の方かと…
あの殺されたカラスが雄一郎の行く末を示しているというのは面白いですね。
> また、ミヤが息を吹き返したかのように見えた最終場面。
> 突飛ですが、ミヤの体にはすでに蓮見の…???
> 確か微かに「ハスミン…」て呟いてたようでしたし
> これは蓮見への思いが断ち切れていないこと?
そうか、子どもがいるのかもしれませんね(流産しそうだけど)。
> そんな深読み(妄想)も楽しい映画でした。
また見に来てください^^)/
梨奈のことなんですが…
劇中でリストカットして倒れているシーンがあったんですが、そこに雅彦がいたじゃないですか?
雅彦は文化祭の準備でもセンスある美術センスを光らせていたんですが、私は梨奈がリストカットしているようなメイクを施して生き延びらせてあげたような気がします。
蓮見も梨奈は猟銃で打っていないですし、生きている気がするんですが…どう思いますか?
ちょっと深読みしすぎですかね(笑)
> 雅彦は文化祭の準備でもセンスある美術センスを光らせていたんですが、私は梨奈がリストカットしているようなメイクを施して生き延びらせてあげたような気がします。
> 蓮見も梨奈は猟銃で打っていないですし、生きている気がするんですが…どう思いますか?
> ちょっと深読みしすぎですかね(笑)
それもあるかもしれませんね。一人だけ明確に死んだような描写がされていないのは確かに怪しいです。そのほうが、「美術部」「メイクをしていた」という伏線が生かせますもの。
十分ありうると思いますよ。
ボロ屋敷とボロハイゼットに関しては「やはり反社会的だからか」と思いました(後者はサイコパスでなくとも乗る人は乗るだろうからともかくとして前者はとても住める代物じゃないですし)。あと職員室のシーンで貴志先生と「新世界より」の単行本がおいてあったのは「おおっ」と思いました。
電車での件は自分も「幾ら少ないとは言えよく乗客が一人も気付かなかったな」と思いましたが殴った跡がつかないのはWikipediaの「サップ」の項を観る限りでは「棍棒や鉄パイプなどとは違って、ある程度の柔軟性を持ちながら衝撃が体内に浸透し、外傷が残りにくい」武器だからでしょう(それを知った時は「だから多用してたのか」と納得した記憶があります)。
タデとミヤに関しては前者は殺人描写が明確に描かれてないですし後者もラストの描写からもしかしたら生きてるんじゃないかなあと思います。ましてや「to be continued」ってなってましたし。
あと短絡的かもしれませんが銃はクレイから得てその後学校迄持ち運ぶよりかは合法的に持ってる人から奪う形で現地調達の方がリスクが少ないと思うので久米先生のものだと思います。
もし続編があるならそこで疑問回収してくれたらと思います。
> ボロ屋敷とボロハイゼットに関しては「やはり反社会的だからか」と思いました(後者はサイコパスでなくとも乗る人は乗るだろうからともかくとして前者はとても住める代物じゃないですし)。あと職員室のシーンで貴志先生と「新世界より」の単行本がおいてあったのは「おおっ」と思いました。
サイコパスというよりも、たしかにそんな気がします。
新世界よりの単行本があったんですね!全然気づかなかったです。
> 電車での件は自分も「幾ら少ないとは言えよく乗客が一人も気付かなかったな」と思いましたが殴った跡がつかないのはWikipediaの「サップ」の項を観る限りでは「棍棒や鉄パイプなどとは違って、ある程度の柔軟性を持ちながら衝撃が体内に浸透し、外傷が残りにくい」武器だからでしょう(それを知った時は「だから多用してたのか」と納得した記憶があります)。
それでも外傷のあとは残ると思うんですけどね。
> タデとミヤに関しては前者は殺人描写が明確に描かれてないですし後者もラストの描写からもしかしたら生きてるんじゃないかなあと思います。ましてや「to be continued」ってなってましたし。
続編で蓼が生きていた!な展開だったら面白いですね。
> あと短絡的かもしれませんが銃はクレイから得てその後学校迄持ち運ぶよりかは合法的に持ってる人から奪う形で現地調達の方がリスクが少ないと思うので久米先生のものだと思います。
やっぱり久米先生ですよね。原作読んでいたらわかるような気がします。
> もし続編があるならそこで疑問回収してくれたらと思います。