正義のゆくえ 映画「ワンピースフィルム Zゼット」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:5/10
一言感想:アニメの出来は素晴らしいけど、細かいところがちょっと・・・
あらすじ
「NEO海軍」総帥であるゼットは、海軍から「ダイナ岩」と呼ばれる破壊兵器を奪取し、「新世界」の破壊を目論んでいた。
「麦わらのルフィ」率いる海賊団は、航海の途中でゼットと思われる漂流者を見つけるのだが・・・
*この感想は原作を30巻くらいまでしかちゃんと読んでいない人間が書いています。ワンピースファンの方にはごめんなさい。
超人気コミック「ONE PIECE」のアニメ映画作品です。
原作は現在65巻を超える長期連載作ですが、新しい巻が発売されるたびに日本の初版記録を塗り替えています。
「クローズアップ現代」に取り上げられたこともあり、ご年輩の方のファンも増えています。
もはや日本でこの作品をこの作品を知らない人はいないと言えるほど、老若男女に親しまれているのです。
そしてこの映画版も恐ろしいまでのヒットを記録しており、土日の2日間のみで観客動員数は114万を突破。これは「ヱヴァンゲリヲンQ」「ハウルの動く城」を超える今世紀邦画最高の記録です。
おかげで相対的に「ホビット」「フランケンウィニー」などの同時期公開の映画はガラガラという映画ファンにとってはわりと悲しい状況になってしまいました。いやしょうがないけど。
肝心の本編なのですが、これは劇場で観る価値があるアニメだと感じました。
絵はヌルヌルと動き、アクション満載、映画館ならではの音響も相まって迫力は満点です。
おなじみのメインキャラクターにはしっかりと見せ場が用意されており、ファンサービスも忘れてはいません。
原作を読んでいたほうが楽しめますが、全く知らなくてもストーリーはこの一本できれいに完結しているので十分理解できます。
多くの観客が観ることを想定した、スキのないつくりになっていると感じました。
個人的にはオープニングの格好良さにシビレました。
モノクロを基調にした背景に赤が映える画は一見の価値があります。
大好きだったのが、敵キャラクターの「ゼット」の描き方です。
来場者プレゼントの「千巻」(ネタバレ満載)にはゼットの設定が細かく描かれており、原作者にとって思い入れのあるキャラであることがわかります。
その姿には哀愁が漂っていました。悪役ながら、ゼットのことは多くの方が好きになれるでしょう。
ただ、本作には細かい欠点(ツッコミどころ)がとても多いです。
そのひとつひとつは致命的なものではありませんが、この数だとさすがに文句のひとつも言いたくなります。
脚本担当の鈴木おさむさんには申し訳ないですが、もう少し繊細な描写に気を配ってほしかった、というのが本音です。
余談ですが、本作には「北の国から」でおなじみの田中邦衛にそっくりなキャラが登場します。


子どもを連れてきた親御さんはこういうところを楽しむのよいでしょう。
ちなみに松田優作のそっくりさんも大活躍します。
お話のほうは大いに不満ですが、ワンピースファン、アニメファンには存分におすすめできます。
デートでもファミリーでも、ぜひ劇場へ。
個人的には前作の「ストロングワールド」よりも面白いと思いますよ。
以下、ネタバレで不満点をあげています 結末に思い切り触れているので鑑賞後にどうぞ↓
まずは「ストーリー上の細かいツッコミどころ」を一気にみていきます。
~残念だったこと~
・オープニングで「すべての海賊を叩き潰す」と言いながら海軍を倒しまくるゼット
そこでその台詞を言ってしまうと、目の前にいる海軍が海賊であると誤解を生むような・・・
あとなぜか自転車に乗って島の爆発を見ていたのは「クザン(青雉)」で間違いないよね?どこから見てるんだろう。
*クザンは海を渡るための自転車を持っているそうです
・「農薬」の意味は?
ウソップが船上で農薬をたいて仲間から非難されていましたが、これは伏線として全く回収されていません。おそらくこれは敵に植物を操る敵がいたためであり、それを倒すための伏線として準備されていたのでしょう。しかし結局使わないのであれば削るべきだったと思います。
*千巻にはギャグとして描いているとの記載があるそうです。
あと仲間に「この農薬は害虫にきくんだ、だったらお前らも害虫だ!」と言うウソップもすげー不快だった。ギャグとしても笑えません。
・なんでゼットはルフィを殺さないのか?
ワンピースは「殺す」ということをほとんどしない作風なのでツッコむのも野暮かもしれません。
しかしゼットは2度もルフィを圧倒しながらも、なぜか自ら退いています。「すべての海賊を叩き潰す」のがゼットの目的のはずなのに・・・
「せいぜい生き延びてみろ、海賊!」という台詞もあったので、「最後まであがいてみせろ」という意志があるようにも思えますが、少し説得力不足です。
*以下の意見もいただきました
> ゼットとの一回目の戦いのときにゼットがルフィの名前を聞いて
> 昔、同期で仲が良かったガープの孫だと知って殺さなかったのでは?
・海岸で戦っていたのに、何故か山の斜面にある街に行ってから火砕流から逃げるサンジ、ゾロ、ウソップ
なんで上に登る必要があるんだ・・・
・説明多すぎ
「『エンドポイント』というところを破壊すると新世界が滅亡」「ゼットは一般人を巻き込んでいる」という説明は作中で2~3回繰り返されます(海軍の「ガープ」とナミの台詞)。
どちらかひとつで十分だったように思えます。
銭湯での「クザン(青雉)」との会話も少し冗長に思えました。「氷の足」の秘密も語られませんし。
・「最強の武器」ってなんだったの?
終盤に、ゼットに破れた海賊たちの「最強の武器」を受け取る一同ですが、まったくこの武器の印象がありません。
また、ナミがかぶっていた帽子は「ガリ」という子どものものですが、その帽子を渡すシーンも印象に残らなかったのが残念です。
*倉庫にて最強装備を物色する時の一番初めに、ガリがナミに自分の帽子をかぶせているシーンがあったそうです。
・NEO海軍の船を吹き飛ばす一行
絶対死人がでるよね。
・荒れた大地で、植物をあやつる「モサモサの実」の能力を使う敵
まわりに植物ないじゃん!序盤でナミが「芝生の上にいちゃだめ」って言ったアドバイスはなんだったんだよ!
・「パシフィスタ」の登場が唐突
巨神兵のようにビームを出す敵ですが、とくに伏線がないので困惑します。「フランキー」のロボットがそれを迎え撃つ展開は好きだけど。
・海軍に包囲されていたはずなのに、あっさり島から脱出する麦わらの一味
クザンがルフィたちに「お前らは勝っても海軍にやられる」と言ってたのはなんだったんだ・・・
クザンは氷の壁を作りましたが、それだけで包囲から脱出できるようには見えません。
・ゼットの変化が見えにくい
ゼットが麦わら一味に出会ってどう変わったのかがあまりわかりません。
ラストのゼットの行動も「ただ気が済んだから」という浅いものに思えてしまいます。
~他にも気になったor好き嫌いがわかれそうなところ~
・若返る仲間たち
敵の「モドモドの実」の能力のおかげで、
20歳のナミ→8歳
17歳のチョッパー→5歳
30歳のロビン→ピチピチの18歳
90代のブルック→70代なので髪にツヤが!
この展開はすげー強引ですが、楽しいですよね。ナミがかわいいです。
サンジがそんなナミを見て「これからサナギが蝶になるのを見れるのか~」と、紫の上を育てる光源氏みたいなことを言ったのには笑いました。ゾロも言っていたけどマジキモい。
・「海列車」の見た目
まんま「千と千尋の神隠し」ですよね。
*原作にも海列車の描写があるようです。
・火砕流に飲み込まれる街の一般人の声優が、田中美保、西内まりや、佐々木希
キャラの名前も「ホーミー」「マリンばあちゃん」「ゾミノ」とそれぞれ名前をもじっています。
佐々木希は超棒読みでした。
ちなみに今回の敵キャラ2人は、香川照之さんと篠原涼子さんがゲスト声優をつとめています。こちらは上手かった。
・元の年齢に戻るときにセクシーな仲間たち
ナミとロビンが元に戻るとき、あえぎ声もあいまって大変エロかったです。
ブルックのお尻までもが強調されていたのは笑いました。
・ラストバトルでルフィとゼットの腕が黒くなる
これは「武装色の覇気」と呼ばれるものだそうですが、説明がないのでちょっと異様でした(ゼットは海軍にいたころに「黒腕のゼファー」と呼ばれていましたが)。
あんだけボコボコにされていたルフィが逆転した説得力が薄いのも残念です。
あと明らかに「あしたのジョーのクロスカウンター」があったよね。
・ラストシーンが唐突
これに至る伏線が、「コビー」の「なぜゼットと名乗っているのでしょうか」という質問に対しての、ガープの「さあな」という台詞だけなんですよね。(ルフィとの最終バトルの前にゼットが噛み砕いたのは、幼いときに持っていた「丸太の盾」?)→オープニングでは「薬」として使っていることから、心肺の薬の吸引機と考えるのが妥当のようです。
このラストシーン自体は大好きなのですが(後述)
~よかったところ~
やはりアクション描写!
特に終盤のゾロとサンジの戦いでは縦横無尽に駆けるライブ感を、バナナ型のボードに乗って滑走するシーンではそのコミカルさを楽しめました。
アクションのアイディア自体は「とりあえず技を出しとけ!」って感じでつまらなかったけど・・・
エンドロールで流れたのはアヴリル・ラヴィーンの「Bad Reputation」。
ノリノリの音楽に合わせ、原作の敵キャラや麦わら一味の幼少時の姿が見れて嬉しかったです。
~ゼットのキャラクター~
ゼットは悲劇により生まれた悪役です。
家族と多くの部下を殺され、その殺した海賊が海軍の「新七武海」という権力を有したのであれば、海賊を恨む気持ちも理解できます。
秀逸なのは、憎しみによりゼットの正義が歪んでいったという描写。
一般人を巻き込み、目的は新世界を滅ぼすものにまでなっています。
子どものころのゼットがヒーローを気取って「ゼッート!」と叫ぶラストシーンは、正義を貫きたかったゼットの想いが詰まっています。
それはゼットが死ぬ直前に見た、叶えたかった夢だったのでしょう。
そして映し出されるタイトル「Z」。
最高の幕切れだったと思います。
~子どものヒーロー~
作中には少年「ガリ」が、海賊のルフィを「ヒーロー」として憧れ、サンジに「お前にとってどいつもおんなじかよ」と言われるシーンがあります。
子どもは純粋に正義のヒーローを信じるだけでもよかったのです。
大人になってから、その正義を信じられなくなったのがゼットの姿なのでしょう。
ガリの信じた正義が正しいことを望みます。
~海導~
この主題歌は鈴木おさむさんが作詞を担当しました。
<歌詞はこちら>
海は見ている。世界の始まりも。
海は知っている。世界の終わりも。
だからいざなう。進むべき道へと。
だから導く。正しい世界へ。
この曲は作中でクザンが言ったとおり、死んでいった海兵たちへの鎮魂歌です。
ゼットは歪んだ正義を持ちながらも、死んでいった海兵たちへの敬意を忘れなかったのでしょう。
最期にゼットが命を捨て、海軍に向かって行ったときもこの曲は流れました。
このとき、オーケストラのように多くの声が聞こえました。
ゼットは孤独に戦ったように思えましたが、ここでは多数の仲間がゼットのために歌ってくれたように思えます。
まぁ原作ファンありきの映画ですねら。
この感想にも突っ込みどころが多いですね
>そこでその台詞を言ってしまうと誤解を生むような・・・
どういった誤解を生むのですか?
>あとなぜか自転車に乗って島の爆発を見ていたのは
>「クザン(青雉)」で間違いないよね?
>どこから見てるんだろう。
海を渡るためのクザン愛用の自転車を知らないのですか?
>・「農薬」の意味は?
これは千巻をよく読めば分かると思いますが
毎度お馴染みの尾田渾身のひどく寒いギャグです。
>「最強の武器」
これをフランキーが言ってるという事の意味を考えれば
おのずと分かるはずです。
>・島をわたるときの「海列車」
海列車は前から原作で前から取り上げてたのを
ここでさらに発達しましたよっていうのを描写しただけでしょうに。
海賊=いいやつ というのが作品の根源にあり、今回の敵のゼットも悪役ながら美化されているような作品ですからね。
そのような感想をもたれる方も多いと思います。
>風の谷の名無しさん
ご指摘ありがとうございます。
> >そこでその台詞を言ってしまうと誤解を生むような・・・
> どういった誤解を生むのですか?
目の前の海軍を海賊だと思ってしまわないかという誤解です。
いろいろ情報感謝です。
本当原作読んでいないとわからないことだらけなのですね・・・追記させてください。
いえ、こちらこそつい抗議ぎみになってすみませんでした。
今作は、Zの人物描写の不足を千巻で補足していたり、
肝心の七武海が誰なのかを敢えて謎にしていたり
色々とモヤッとする部分も多々ある作品ですので
今後原作とどう絡んでくるのかにかかっているのかなと僕は感じました。
残念ながら違うでしょう。オープニングにて何かを吸引すると筋肉が膨張?した事や黄猿との戦闘中に息が乱れる⇒薬っぽいもの吸引した事、チョッパーが診察した時"心臓と肺が弱っている"と言っていた事からおそらく心肺の薬の吸引機と思われます。何故それを壊したのかは個々人で違う結論出すでしょうが・・。
文句あり、です。
最初に30巻までしか読んでないので、とは断ってありますが、
だったら最後まで読んでから
映画の感想を言って欲しいです。
読んでていらいらしました。
申し訳ない。
けれど、これは
ファンを不快にさせるものでは?
書かない方がいいとおもいます。
えっと、今さらですが作中で描写あります。倉庫にて最強装備物色する時の一番初めに子供がナミに自分の帽子をかぶせています。
>*おそらく海軍の船を吹き飛ばしたのも「最強の武器」です。
ネオ海軍の軍艦を吹っ飛ばしたガオン砲の事でしたらアレはサニー号の固有装備で今のところ最強の武装です、他の海賊が残していったものではありません。
ゼットとの一回目の戦いのときにゼットがルフィの名前を聞いて
昔、同期で仲が良かったガープの孫だと知って殺さなかったのでは?
> 昔、同期で仲が良かったガープの孫だと知って殺さなかったのでは?
それもあるかもしれませんね、ありがとうございます、追記します。
クザンがヒエヒエの実の能力者なのはご存知ですか?
なので海を凍らせる事が可能なので、海の上から見ていたのではないでしょうか!
実際凍らしてロビンを導いた事がありました。
私が一番、疑問視したのは物語の初めらへんに、Zが何かを口にしてパワーアップ?した見たいなとこです!
薬物か何かわからないてわすが、それの説明がないまま終わったので、少し残念でした
> クザンがヒエヒエの実の能力者なのはご存知ですか?
> なので海を凍らせる事が可能なので、海の上から見ていたのではないでしょうか!
凍らせた海の上を渡っていたのですね。ご指摘感謝です
> 私が一番、疑問視したのは物語の初めらへんに、Zが何かを口にしてパワーアップ?した見たいなとこです!
> 薬物か何かわからないてわすが、それの説明がないまま終わったので、少し残念でした
そうそう、この説明がなかったんですよね。病気の治療薬と考えるのが妥当なのですが、すっきりしません。
ウソップの農薬エピソードについてですが
ウソップの植物系の武器を、どうやって補充しているのか
種明かし(アンサー)のエピソードなのですね。
ただ、それはそれとして
農薬にヤられる奴も害虫だ、と言ってしまう理屈は
実際に同じ問題で苦しめられている人も世の中にはたくさんいるので
不快に思う人が出てきて当然だと思いました
風下にいる方が悪いって・・・
人が食べたり飲んだりしている風上で農薬撒く方が、どう考えても、明らかに悪いです。
私も一応、全巻所有しているファンなのですけどね。