民と国のために「王になった男」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:7/10
一言感想:まさかのコメディ×ビョンホン様すげえ・・・
あらすじ
李氏朝鮮の第15代国王である光海君(イ・ビョンホン)は日々毒殺の恐怖におびえ、替え玉を探し続けいていた。
ようやく見つけたのは道化師のハソン(イ・ビョンホン)だった。
国王のふりに四苦八苦するハソンだったが、徐々にその優しい性格が宮殿の者たちに影響を与えていく・・・
イ・ビョンホン主演最新作であり、韓国では歴史に残る大ヒットを記録している映画です。
「王様」と「平凡な男」が取り替えられ、平凡な男の優しさが周りの人間を変えていく・・・という内容をきけば、映画ファンの多くは傑作コメディ映画「デーヴ」を思い浮かべるでしょう。
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一方「王になった男」は公式ページの雰囲気や宣伝を観れば、多くの人は重圧なサスペンスでありお堅い時代劇という印象を持つでしょう。

ところが本編はそうではなく、「デーヴ」と同じく「取り変え」の面白さをとことん追求したコメディ映画ともとれる雰囲気になっているのです。
一人二役を演じるイ・ビョンホンの演技力は素晴らしいの一言。
冷酷な王と、はじめは王のふりをすることに戸惑うも徐々に皆を変えていく威厳を持つ男を見事に演じ分けています。
イケメンなビョンホン様ですが、本作で見せるその演技はかなり笑えます。
コミカルなシーンをきちんと演じているので嫌味なところがありません。ビョンホン様がいっそう好きになりました。
コメディシーンが多くあるおかげで、歴史ものが苦手な方でも楽しく観れます。
しかもコメディだけでなく、シリアスなシーンもとても面白く仕上がっています。
普遍的なメッセージ性もあり、登場人物の想いに感動できるスキのないつくりになっているのです。
韓国映画になじみがない人にこそおすすめしたい、優れた作品でした。
ただし本作にはけっこう気になることも多かったです。以下にあげてみます。
①展開に「えっ?」と思う変なところ&つっこみどころ&不満点が多い
②用語や登場人物になじみが多いのでとっつきづらい
①はわりと深刻で、作中あまりに変な展開に失笑してしまうところや、ドン引きしてしまうところもありました。
最終的にうまく生かされていない伏線も見受けられました。
②についてですが、本作の面白さは「王と優しい一般人が取り替えっこ」にあるため、用語の意味がわからなくても映画は十分に楽しめると思います。
しかし不親切感は否めません。
作中にちゃんと説明があったのは、光海君が成したとされる「大同法(土地の広さに応じて税を徴収する、今で言う所得税みたいなもの)」くらいなもので、あとは投げっぱなしでした。
公式ページで光海君の背景や、「妓生」「上奏」「龍顔(天子の顔)」「鞠問(罪を問いただすこと)」「明」のことは知っておいたほうがいいかもしれません。
光海君のことは以下のページでも知ることができます。
<「王になった男」Kstyle><韓国略史72>
そして登場人物の名前もちょっと覚えづらいですね。以下にあげてみます。








「都承旨」は(役職名なので仕方がないですが)字幕で漢字だけ表示されるので特に覚えづらいですね。カタカナ表記でもよかったとも思います。
ちなみに本作は「史実をもとにしたフィクション」で、光海君の日記に「15日間の空白」があったことからこの「替え玉」の物語がつくられたそうです。
参考→<光海 王になった男 | 韓国歴史ヒストリア>
フィクションとわりきって、誰もが楽しめるエンターテイメントに仕上げた作風は大好きです。
タイトルの「王になった男」も素晴らしいと思います。
英題は「masquerade(見せかけ、仮面舞踏会)」となっていますが、自分は邦題のほうが好きです。
昨年公開の韓国映画「サニー 永遠の仲間たち」「トガニ 幼き瞳の告発」ほどの完成度は感じませんでしたが、韓流好きのおばさまたちだけに独占させておくのは勿体ない、面白い映画です。
幅広い方におすすめします。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓ 野暮な不満点も書いています。
~コメディ描写~
本作のコメディ描写はいろいろ笑えましたが、ひとつだけドン引きしてしまう描写がありました。
それはウ〇コネタ。
王になっているハソンが大便をするたびに「おめでとうございます」と従士の女たちが言って、ハソンが「別におめだたくないよ」と言うあたりは笑えたのですが、その大便を部下がなめて健康状態を把握するシーンは怒涛の勢いで引いたよ。
韓国は冗談抜きでこういう文化があるようです。他の国に持っていってこれは受け入れられるのかな・・・自分は無理だと思います。
参考(汚ねえ話題なので閲覧注意)→<韓国の素晴らしい〇〇文化><嘗糞 - Wikipedia>
でもほかは本当に楽しい。
・ハソンが王の言葉を独り言で真似て部下に聞かれてしまって戸惑う
・王妃に顔を見られそうになって皆で隠れる
・ハソンの正体を知っている都承旨が上座に、ハソンがその反対側に座っていて、誰かが来たらあせってお互いの位置を入れ替える
・後にまたあせって位置を入れ替えるのだけど、間違えて位置がそのままだったのでもう一度位置を変える
あたりはクスクス笑わせてもらいました。
また王に怯える者たちが「殺してください!」「踏んでください!」というのも不謹慎ながら笑ってしまった。
王の「暴君」っぷりがわかるので必要な描写なんだけどね。
~えっ?な展開&回収されていなかった伏線~
びっくりしたのが終盤の出来事です。
ハソンの前に詰め寄る者たちは序盤と同じく「私たちを踏んでください!」と土下座しながら言います。
そこでハソンはいきなり王妃を連れて宮殿の外に逃亡しようとします。
それだけでも戸惑ったのに、なんとハソンはこのとき土下座した人たちを思い切り踏んづけて王妃を連れ出すのです。
いやーそれは心優しく、民を思いやるハソンのすることではないでしょ。
しかもこの後、別に宮殿の外に行かないんですよね。
急に王妃を連れ出した理由は「宮殿を捨ててでも王妃を守りたい」ということで、結局外に出なかったのは「王妃のそばにずっといると言った」ためなのですが・・・唐突だったので頭に「?」が出てきてしまう出来事でした。
「通行禁止の鐘を鳴らすのを忘れるな」という伏線は全くもって回収されていない。
これはいいかげんなハソンが忘れて大慌てする展開を期待していたんだけど・・・
はじめの「上奏の儀」で巻物が白紙になっていた理由も不明だ。
これは「代わりに読み上げる」だけで特にその後のストーリーに影響していないのです。
恐らく白紙だったのはハソンが間違えただけ(巻物を2本後ろに持つシーンがある)で、このシーンは「咽頭痛(ウソだけど)により喋れない」ことを見せたかったのでしょう。
でもハソンが「卿の意のままに」と言うほうが、後の成長がわかってよかったと思います。
残念だったのがハソンは「王妃の笑顔が見たい」と言って王妃を笑わせようとしていたのに、結局心からの笑顔を見ることが叶わなかったこと。
正確に言えば王妃がちょっぴり笑みを浮かべているシーンがあるのだけど、ハソンと王妃の関係が細やかに描かれたのにもかかわらず、王妃は最後の見送りもすることもありません。
この2人の「別れ」が描かれていないのは残念です。
また、意識が回復したはずの王がいつまでたっても宮殿に来ないのも違和感があった。
これは恐らく時系列を入れ替えており、最後のトリックよりもかなり前に「計画」が立てられてたと思うのだけど、映画では王の脅威を全く気にせず「最後の仕事」に勤しんでいるように思えるのでもどかしかったです。
~ト部将とハソン~
ハソンの過去はほとんど描かれることはありませんでしたが、「王としての成長」の描き方は見事でした。
ハソンは、はじめは都承旨のアドバイスそのままに王に「恐れながら申し上げます」と言い、「卿の意向のままに」していました。
しかしハソンは心優しく、宮殿の人たちを変えていきます。
自分の残した食事が女官に配られると聞くと率先して残し、
天涯孤独だったサウォルの話を聞き「私が王であるうちにそなた母を見つけてやる」と言い、
拷問をされていた王妃の兄の話を聞き、放免しました。
そして、王でないことを「腰の振り方」で見抜いたト部将は、王妃と話すハソンに向かって剣をつきつけます。
ハソンは王妃のほくろを見ていたおかげで無事でしたが、ト部将は自害(自殺)しようとします。
ハソンはト部将に「お前の罪はなんだ」と聞きます。
ト部将は「王を偽物であると疑ったこと」「王に剣をつきつけたこと」と言いますが、いずれも違いました。
ハソンはこう言います。
「お前の罪は自害しようとしたことだ、お前に刀を返す。その刀は余のためだけに使え。そちが生きてこそ私も生きる」と。
ト部将はむせび泣きます。
ト部将には刀を返したハソンですが、同じく自害をしようとした王妃には刀の刃を折って返していることもよかったです。
~王としての成長、しかし・・・~
さらに上奏の儀では、ハソンは富のあるものから多く税を徴収する大同法を認可します。
さらには明との外交を取りつぎ、争いを避けようとします。
そして、こう言うのです。
「何故民に死を与えようとするのだ!王たるものは物乞いをしてでも民のために尽くすべきだ!余にとってはこの国と民こそが何よりも大事である!」と・・・
このことばを聞き、都承旨とチョ内官は何かを思いつめたようでした。
きっと「本当の王」について、思うことがあったのでしょう。
しかし敵の策略により、毒を王の代わりに食べたサウォルが死に、ハソンは疑わしい男を拷問にかけてしまいます。
王妃の兄をも放免したハソンがこうしてしまうのは、あまりにも悲しいことでした。
結局ハソンはサウォルの復讐を果たすことはありませんでした(最後のテロップで捕まえた男が斬首されていると出る)。
でも、優しいハソンが人を殺すことなく逃亡することができたので、それでよかったのかもしれません。
~入れ替え~
都承旨は「本当の王になれ」と言い、その後に「王が偽物だ!」と信じて疑わない軍が押し寄せてきます。
敵は「本当の王なら胸に傷跡があるはずだ!」と言います。
しかし・・・王の胸には傷の跡がありました。本物の王だったのです。
王が本物だと言い放ったのは、ハソンを助けるためではなく自身のためでしょう(後にハソンを追うのは王の追っ手であった)。
ここで話は少し前に戻ります。
本物の王は、ハソンが15日間にしたことを読んでいました。
王は暴君でしたが、ハソンの行った政治に思うところもあったのかもしれません。
~別れ~
ト部将は、宮殿の外に逃げるハソンを助けようとします。
追ってに「あいつは本当の王ではない」と言われますが、ト武将は「私にとっては本当の王だ!」と答えます。
そしてト部将は追っ手と相打ちになり、ハソンはその死を看取りました。
映画は、都承旨がハソンを見送り、ハソンが涙を流すところで幕を閉じます。
この映画では「替え玉」こそが「光海君の功績である大同法をすすめていた」など、史実を大胆に解釈しているところがとてもユニークです。
結局暴君の光海君は人たちに何かを残した描写はありません。
あったのは替え玉のハソンが愛され、人を愛し、人と国をも変えた描写でした。
最後にハソンは逃亡しましたが、彼は確かに「王になった男」でした。
「ラスト・エンペラー」でも、似たようなシーンがありますが、皇帝の健康診断を兼てのシーンとしては,必要なことかもしれませんが、「事大の内容が、1ランクアップ」でした。
こんなスカトロ・シーンは、カットしても良かったのではと思います。
②音楽は、一切、所謂「朝鮮的なものは流れなず」、聞きやすかったです。
③馴染まない役所とか色々あったので、この映画は、吹き替えでやって、文字情報を増やしていたら、もう少し判りやすかったのかなと思いました。
拷問の上の掬門なんて言葉は初めて目にしました。
④明に事大していた頃の朝廷なのに、皇帝が深夜に暗い朝議の間や私室(?)で、側近と宦官の2名だけを交えて密議、アリエナイのが韓流か?
⑤公式文章が漢字だったのは、歴史的に正しくて、本当はハングル使いたかったのではと・・・
「ラスト・エンペラー」でも、似たようなシーンがありますが、皇帝の健康診断を兼てのシーンとしては,必要なことかもしれませんが、「事大の内容が、1ランクアップ」でした。
こんなスカトロ・シーンは、カットしても良かったのではと思います。
②音楽は、一切、所謂「朝鮮的なものは流れなず」、聞きやすかったです。
③馴染まない役所とか色々あったので、この映画は、吹き替えでやったら、もう少し判りやすかったのかなと思いました。
④明に事大していた頃の朝廷なのに、皇帝が深夜に暗い朝議の間や私室(?)で、側近と宦官の2名だけを交えて密議。
⑤公式文章が漢字だったのは、歴史的に正しくて、本当はハングル使いたかったのではと・・・
> 「ラスト・エンペラー」でも、似たようなシーンがありますが、皇帝の健康診断を兼てのシーンとしては,必要なことかもしれませんが、「事大の内容が、1ランクアップ」でした。
> こんなスカトロ・シーンは、カットしても良かったのではと思います。
イ・ビョンホン好きのおばさま方も眉をひそめそうですよね。
これが笑えるのが韓流なのかなあ・・・
私も最近この映画を見たのですが、最後のシーンで
ハソンに追っ手が来ますが、確か追っ手は王の命で来たと
言ったはずです。王は15日間の記録を読んで自分に憤りを感じ、
その矛先をハソンに向けたのではないでしょうか。
たぶん王が宮殿に戻る前に都承旨がハソンを逃がしたのだと思います
レビュー楽しく読ませてもらいました^^
王が自身を本物だと言い張ったのは、あくまで自身のためですよね。
訂正させていただきます。