これでも一番マシ 映画「アルゴ」ネタバレなし感想+お気に入りシーン
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個人的お気に入り度:6/10
一言感想:地味かつ緊張感ありまくり
あらすじ
1979年のテヘランではイラン革命が激化していた。
その最中、アメリカ大使館を過激派グループが占拠し、52名のも人質がとられる事件が起きる。
そしてアメリカ人6名は大使館から逃げ出し、カナダ大使の自宅に潜伏する。
CIAエージェントのトニー・メンデス(ベン・アフレック)が6名を救い出すために選んだ作戦は「ニセ映画作り」だった・・・
自分は「人質を救う作戦ーそれはニセ映画作りだった」という事前情報を聞いて、現地でマジでセットを組んで映画撮影をする作品だと勘違いしていました。んなわけない。
そうではなく、これは人質を映画撮影のクルーになりすまさせて、怪しまれずに脱出しようとする作戦なのです。
「なぜ人質を救う作戦が映画制作なんだよ」と思われるところなんですが、作品を観てみると意外と納得できます。
まるでコメディのような設定ですが、本作の描写はとにかくシリアスかつリアリティを感じる作風になっています。
「もうちょっとで一巻の終わり」な状況が続くサスペンスフルな展開は、全く飽きさせません。
画作りや演出ももうこれ以上ないくらいに洗練されており、俳優出身にもかかわらずここまでの仕事を成し遂げたベン・アフレックの力は並大抵のものではないでしょう。
しかし、自分にはちょっと入り込めない部分もありました。
その理由が展開が少し地味なこと。劇的な展開ではなく、あくまで画や演出でひっぱっている印象だったのです。
これは本作が実話をもとにしているので言うのも野暮であるし、個人的な好みにほかならないのですが、自分は多少事実がねじ曲がっても「面白さ重視」の作品のほうが好きです。
ただし、ラストで起こるサスペンスは史実にはない映画オリジナルの描写です。
ここは映画ならではのスリルが描かれていて大興奮でした。
最後に最もハラハラしたシーンを持ってきてくれて嬉しかったです。
ちなみにタイトルの「Argo」とは作中のニセ映画の名前であり、ギリシャ神話のアルゴー船が元ネタです。
史実を知っていても楽しめるけど、知らなくても楽しめる優れた映画です。
地味な作品ではありますが、こういう監督の手腕が光る作品がアカデミー賞を取って嬉しい限り。おすすめします。
以下、ほんのちょっとだけネタバレです↓ 台詞に少し触れる程度なので、未見でも問題ないと思います。
人質の命を救うために主人公はあらゆる手を使います。
たとえば、人質たちに自分の役職を暗記させたり、本物の脚本家を起用したり、さらには絵コンテまでバッチリ作成したり・・・とにかく手が込んでいます。
それでも主人公の思惑通りにぜんぜんことは進みません。これが可哀想やら「そりゃそうだよな」やら。でもそこが面白いです。
個人的に大好きだったのが、「ニセ映画作り」が作中でほかに提案される作戦に比べたらまだまともだという描写。
「人質みんなを自転車で逃がす」とか話になりませんて(遠すぎ)。
そんな中、「映画制作は考えうるかぎりもっともマシで、ろくでもない作戦です」と言うことばが出てくるのです。
これってこの作品をもっとも体現している台詞だよなあ・・
あと作中で何回も出てくる「アルゴくそくらえ」って台詞、なんとなく言いたくなります(人前で言っちゃだめ)
本作は映画へのリスペクトもあります。
たとえば、はじめに表示される「ワーナー・ブラザーズ」のロゴは当時のものを再現していたりします。
そういえば、ワーナーのロゴは映画によっても違っていたりするんですよね。
ほかにも
物語そのものが黒澤明監督の「隠し砦の三悪人」とそっくりだったり、
「スター・ウォーズ」「スタートレック」についてもチラッとくすぐりを入れていたり、
イランの人々も「シュレッダーで細かくされた写真をもとに戻す」というモンタージュ(映画の技法)のようなことをしています。
本作は「ニセ映画」を題材としながらも、何よりも「映画らしい」作品だと思います。
おすすめ↓
考えうるかぎりもっともマシなろくでもない作戦『アルゴ』 - くりごはんが嫌い
中国嫁日記:2013年03月(3/31にアルゴを観ている漫画日記がある)
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