きみに会うために 「言の葉の庭」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
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個人的お気に入り度:7/10
一言感想:「雨」だけで終わらないアニメーション
あらすじ
15歳の高校生・タカオは、雨が降るといつも学校をさぼって、公園で靴のスケッチを描いていた。
ある日、タカオはいつもの場所でとある女性と出会う。
彼女は昼間から酒を飲み、タカオと同じように仕事をさぼっていると言った。
タカオはしだいにその女性に惹かれていくが・・・
「ほしのこえ」「秒速5センチメートル」の新海誠監督最新作です。
映画のソフト化というものは、通常は劇場公開から半年~1年弱を経てされるものです。
しかし、本作は公開された劇場のその場でソフトが買えていたりもしました。
さらに公開日の5月31日から1ヶ月もたたないうちに、一般の流通でも買えるようになっているのです。
この売り方は観る側としてはメリットが大きいので、良い戦略であると思います。
早くソフト化がなされた理由を考えるならば、「劇場で味わった感動をすぐに自宅でも楽しんでほしい」のほかにもうひとつあると思います。
それは、「今のこの季節にこそこの映画を観てほしい」ということです。
本作は「雨」のイメージがとても強く、なんと作中の8割が雨のシーンで構成されています。
こう言うと「梅雨の季節なのか、7~8月に見ちゃうとちょっと損だなあ」と思ってしまうかもしれませんが、そうでもありません。
本作には梅雨があけたあとの描写もあり、それが重要なファクターとして機能しているのです。
この映画はむしろ梅雨の季節が終わったあとに見るのもよいと思います。
あんなにじめじめ~として鬱陶しくて嫌だった梅雨が、作中の素敵なシーンを観ることで、なんとも愛おしく感じるかもしれません。今これ書いている時点では早く梅雨あけろと思うけど。
そして作品の最大の魅力と言ってもいいのが、そのアニメーションで描かれた「雨」の描写の美しさです。
作中に出てくる公園は新宿御苑をモデルとしているのですが、その風景は雨の表現もあいまって、ため息が出るほど綺麗です。
地面や水溜りに水滴が跳ね返る様子、CGを駆使して俯瞰図に奥行を持たせるなど、映像だけで楽しませる力があります。
こうしたファンタジー色の少ないアニメ作品だと「アニメでやる意味はあるのか」と問われることも多いのですが、本作は写実的ながらも、アニメでしかできない美しさを表現していると言っていいでしょう。
ストーリーもシンプルながらよかったです。
ヒロインは昼間っから酒を飲んでいる不思議ちゃんとして登場するのですが、実はある秘密を抱えた女性です。
彼女が主人公にあまり自分のことを「しゃべらない」こと、数少ないことばの端々に感じる「悩み」には意味があります。
この登場人物たちの悩みと成長は普遍的なもので、多くの人の共感を呼ぶでしょう。
上映時間はたったの46分ですし、「オタクっぽい」と敬遠せず、アニメになじみのない方にも観てほしい作品だと思います。
難点はナレーションで語ってしまう場面が多く、観客に想像の余地を持たせていないことでしょうか。
背景の美しさだけなく、細かい動作も気配りがされている作品だったので、ちょっともったいなく思います。
もうひとつ残念なのが、本作と同時上映されていた「だれかのまなざし」がソフト版に未収録であることです。
7分の短編ながらとても評判がよい作品なので、観れないのは悔しいところです。
そのうち「ピクサー・ショート・フィルム」のようにまとめて販売されるのでしょうか。それっていつになるのかなあ・・・
エンドロールのあとにも1シーンあるので、お見逃しなく。
以下、結末も含めて思い切りネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓
~ツッコミどころ~
作中でこちらが思ったツッコミどころを登場人物が先んじて言ってくれるのが面白かったですね。
・回想に登場するタカオの母親がめちゃくちゃ若い<こんな47歳がいるかよ!
見た目姉ちゃんでも通じそうなイケイケっぷりでした。
タカオの兄は「(彼氏を作ったということに対して)あの人若く見えるから」とツッコミどころを言ってくれました。
・やたらと目立つヒロインが飲んでいる「金麦」
これは何も言ってくれなかったwめっちゃ気になりました。
プロダクトプレイスメントっぽいですが、監督自身が実在の小道具を使用したいという意向からこうなりました。
しかし、作中の看板をよく見てみると、「アパ〇ンショップ」が「アンパンショップ」になっていたりしました。こっちは協賛していないんですね。
・雨の日なのに靴のセレクトが雨向きじゃない
モカシンはかなり濡れちゃうような・・・
・ユキノ(ヒロイン)は「おつまみ」として大量のチョコレートを見せてタカオがドン引きしたとき、「今ヤバい女と思ったでしょ」と言う
うん、思った。
・雨が降れば毎日仕事をさぼって公園に来ているユキノに対して、タカオは「よくクビになりませんよね」と言う
そう言うタカオも1限目をさぼっていたのであとで職員室に呼び出されていました。
しかし・・・ユキノがお酒とチョコレートを毎日あおっていたり、仕事を毎日さぼっていたのには、理由がありました。
~ユキノ~
彼女がチョコレートとアルコールをとっていたのは、味覚障害により、それしか味を感じることができなかったためでした。
梅雨があけ、夏が終わり、学校の新学期がはじまったとき―タカオは学校に来ていたユキノとすれ違います。
ユキノは古典の教師だったのです。
そして、生徒の執拗な嫌がらせのために、学校に行けなくなっていたのです。
タカオは、ユキノに嫌がらせをした生徒に食ってかかりますが、返り討ちにあってしまいます。
~タカオ~
タカオは靴職人を志していました。
「私、うまく歩けなくなっちゃた」というユキノに、タカオは靴を作ると言いました。
いつもの公園、彼女の足の寸法を、とても丁寧な所作で図るタカオ・・・・そこには「職人」と思える技工が垣間見えました。
タカオは「あの人が歩けるような靴を作りたい」と思います。
しかし、彼女の手にその靴が渡されることはありませんでした。
~わかり合えた2人~
タカオはユキノの部屋で、料理が苦手な彼女にかわってオムライスを作ります(これがまた美味しそう・・)。
タカオとユキノは、呼応したように「今まで生きてきた中で、一番幸せかもしれない」と思います。
タカオは「ユキノさんのことが、好きなんだと思います」と告白をしますが、ユキノの答えは「ユキノさんじゃなく、先生でしょ」と答えます。
さらに、ユキノは公園にいたときのことを「一人で歩ける練習をしていたの、靴がなくても」と言います。
これから四国の実家に戻るというユキノに対し、タカオは去っていきます。
そして・・・ユキノはこれまでタカオに投げかけられてきたたくさんの「言葉」を思いだし、彼を追いかけます。
再び出会ったタカオが言ったのは「さっきのは忘れてください、あなたのことが嫌いだった!」と言います。
それからタカオは、ユキノが「何も言わなかったこと」を立て続けになじります。
これに対して、ユキノは「毎日スーツを着たけど、結局学校に行くことはできなかった!」と自分の想いを吐露します。
そして、2人は抱き合いました。
2人はこれまでも公園で言葉を交わしていました。
しかし、ここではじめて「自分の弱さ」を言うことができます。
公園では少しの言葉のみでつながれていた2人が、自分の想いをこめた言葉により、心からわかりあえることができたのです。
しかも、タカオが言ったのは相手を責める「罵声」です。
それは普通はお互いの関係を悪くするものですが、この作品では2人の関係の修復の要(かなめ)になります。
そのことに、言葉というものの面白さを感じます。
~万葉集の短歌より~
ユキノは、はじめてタカオに会ったとき、万葉集の短歌を言い残します。
「鳴る神の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ 」
その意味は、「雷が鳴って雨でも降ってくれたら一緒にいれるのに」というものです。
終盤に、タカオはこの返し歌を彼女に告げます。
「鳴る神の 少し響みて 降らずとも 我は留まらむ 妹し留めば 」
その意味は、「雨なんか降らなくても、ここにいるよ」というものです。
これはタカオとユキノの関係そのものを示すものです。
中盤、梅雨があけたあとも、ユキノはタカオを待ち続けていました。
映画の最後、雪の降りしきるなか、いつもの公園でタカオはユキノからの手紙を読みます。
そして、ユキノのために作った靴を、そっとそこに置いて、こう思います。
「歩く練習をしていたのは、きっと俺も同じだと、今は思う。いつかもっと、もっと遠くまで歩けるようになったら、会いに行こう」
これは、ユキノが再び歩き出し、そしてタカオが彼女のために自分自身も遠くまで歩くと決心するまでの物語です。
万葉集の歌にあったように、たとえ雨が降っていなくても―2人はいつか、再会を果たすように思えます。
しかし新海監督のキャラクタはクールですね。
俺が15当時27の美人お姉さんの家に行ったらそらもう挙動不審になりますよ。
コーヒーなんて飲んだら腹下してトイレ借りてこれがお姉さんのトイレかぁと欲情もんですね。
しかしまさか新海監督の作品で「淫乱ババア」なんて言葉を聞くことになるとは・・・
最初はヒロインの声が可愛すぎる気がしたけど弱さを吐き出すシーンもあったし納得。
しかし新海監督のキャラクタはクールですね。
俺が15で27の美人お姉さんの家に行ったらそらもう挙動不審になりますよ。
コーヒーなんて飲んだら腹下してトイレ借りてこれがお姉さんのトイレかぁと欲情ですね。
しかしまさか新海監督の作品で「イン乱ババー」なんて言葉を聞くことになるとは驚きました。
聖人みたいに見えるユキノが影で下劣なことを言われてるのはまるでネットみたい。
とにかく雨の描写が美しかったですね。実写ではあんなに美しく撮れないでしょうから、その一点でアニメーションにした意味はありましたよね。
また、その雨とユキノの心情がリンクしていて、雨がストーリーの「語り部」としてうまく機能しているように感じました。ただ「映像がきれい」というだけで終わらないところは新海作品の大きな魅力の1つかなと思います。
ユキノの心の動きもすごい共感できたし、自分的にはかなり楽しめました!