ロボットがあんまり活躍しない? 映画「機動警察パトレイバー THE MOVIE1&2」ネタバレなし感想+お気に入りシーン
8月9日に映画「パシフィック・リム」が公開されます。
秀作「パンズ・ラビリンス」のギレルモ・デル・トロ監督の最新作ということだけでわくわくが止まりません。
そしてこの映画は、日本人にとって必見と言える要素があります。
それは菊地凛子や芦田愛菜が出演しているということだけではありません。監督は日本の特撮やアニメが大好きなのです。
「パシフィック・リム」に登場する敵の名前が「Kaiju(怪獣)」というだけでも、そのリスペクト具合がわかるでしょう。
「ヘルボーイ ゴールデン・アーミー」にも「もののけ姫」「ルパン三世 カリオストロの城」っぽいシーンがあったもんなあ・・・本国での興行成績が芳しくないのは残念ですが、ぜひとも日本のオタクたちを引き込んでヒットしてほしいところです。
前置きが長くなりましたが、本日はそんなギルトモ・デル・トロ監督が「最高だね!」と絶賛しているアニメ作品「機動警察パトレイバー」(制作:1989年)をご紹介します。
個人的お気に入り度:7/10
一言感想:こんなに硬派とは思わなんだ
あらすじ
「レイバー」とはロボット技術を応用した歩行式の作業機械であり、警察にはレイバー専門の部署「特車二課」が設けられらた。そしてその特車二課の者たちが乗るのがパトロール・レイバー、通称「パトレイバー」である。
ある日、レイバーが暴走する事故が続発する。疑われたのはレイバーに組み込まれたOSの誤作動だった。
特車二課の遊馬(あすま)、泉、後藤は真相の究明に当たるべく行動するのだが・・・
「機動警察パトレイバー」とはアニメ、漫画、小説でメディアミックスがされている作品です。
この映画版は押井守監督の代表作であり、国内外で根強い人気を誇っています。
自分は勝手に「ロボットが荒唐無稽なアクションをしまくって悪い奴をやっつける!」というイメージを持っていましたが、全然違いました。
本作ではことばだけで状況を説明するシーンが多く、会話シーンが7割くらいを占めます。
そしてアクションよりも「黒幕はどこにいる?」「敵のねらいはなんだ?」ということを追い求めるサスペンスとしての要素が強いのです。
会話だらけで退屈するかといえばそんなことはなく、登場人物の鋭い推理、理路整然としたその内容に引き込まれます(若干無理があるのもあるけど)。
これこそ哲学的かつ小難しく、そして奥深くて面白い、押井守イズムなのだと思います。
この映画が作られたのは1989年ですが、OSやコンピュータウイルスなどの、時代の流れをいち早く物語に取り入れていることも面白いです。
「レイバー」はOSで制御されており、暴走をしてしまうレイバーは全て同種のOSのものだった・・・というところから推理をはじめるのは、当時としては斬新だったのではないでしょうか。
世界観も面白いです。
東京は地球温暖化により海面が上昇し、沈みかけています。
そのためにバビロンプロジェクトという東京湾全体を埋め立てて土地を作るという大プロジェクトがなされているのです。
巨大なロボットが出てくる点では近未来の印象を受けますが、作品の舞台は1990年第後半から2000年第前半になっています。
映画が作られてからわずか10年ほどの未来を描いているために、作中では携帯電話が登場せず(「2」には話題として出てくる)、VHSが映像の媒体として重宝され、昭和の香りを残した町並みも登場したりします。
まるで現代のパラレル・ワールドのような舞台を観るだけでも楽しめるでしょう。
↓以下は作中のシーンがほんの少しだけネタバレ、「2」も微ネタバレで紹介してみます。
個人的お気に入り度:7/10
一言感想:ロボアニメらしさ減少しまくり
あらすじ
国連平和維持活動に従事していた柘植(つげ)は戦闘に巻き込まれ、部下全員を失い、唯一生き残った彼はなぜか消息を絶った。
数年後、東京の巨大な橋に一発のミサイルが発射される。
特車二課の後藤にコンタクトをとった防衛庁の情報部員・荒川は、事件の背後に柘植の存在を疑うのだが・・・
こちらもめっちゃ会話シーンが多く、とことん硬派な人間ドラマが繰り広げられています。
そのためか、なんと「パトレイバー」はあんまり活躍しません(ていうか終盤のみ)。
もはやロボットアニメである必要性がないほどに押井監督らしさ全開なのです。
前作の主人公である泉と遊馬は出番がなさすぎだし・・・押井守監督は「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」でも好き勝手やっていたもんなあ(でも名作)。
「1」以上にとっつきづらく、かなり観る人を選ぶ作品のように思えます。
しかし本作は「1」と同じく、「見えない敵を追う」緊張感に溢れたサスペンスとして抜群に面白く仕上がっています。
そして描かれているテーマは「日本の防衛」の危うさです。
ビルや橋が壊される描写は9.11のテロを思わせるものでした。
<「ファイナル・ジャッジメント」がパクったシーン
語ろうとすれば軽く論文が書けるぐらい複雑で深いストーリー、切なくも美しさを感じれるラストは一度は観ておいて損はないでしょう。
余談ですが、渋滞でもすいすい進むことができる警察用の「ロードランナー」はかなり便利そうなので現実にもあってもよいんじゃないかと思いました。
<車高が高いので渋滞もスイスイ
「危険なので車のドアを開けないでください!」とアナウンスしているのも面白いですね。
ギレルモ・デル・トロ監督は愛するロボット10体にレイバーを選び、「パトレイバー」はリアルな戦術的感覚をもたらしてくれたと語っています。
監督の言うように(パト)レイバーの造形はカッチョイイし、単純にボコスカ戦うのではない奥深い「作戦」を楽しむことができるのは本作の優れたところでしょう。
ある意味「トランスフォーマー」のようなアホアホゴリ押しロボットアクション超大作とは対極にあります。個人的にはどっちも大好きです。あとは2014年公開予定の実写版のプロジェクトが色んな意味で怖いです。
参考↓
機動警察パトレイバーとは - ニコニコ大百科
機動警察パトレイバー/劇場版二作の全台詞(もちろん超ネタバレ)
秀作「パンズ・ラビリンス」のギレルモ・デル・トロ監督の最新作ということだけでわくわくが止まりません。
そしてこの映画は、日本人にとって必見と言える要素があります。
それは菊地凛子や芦田愛菜が出演しているということだけではありません。監督は日本の特撮やアニメが大好きなのです。
「パシフィック・リム」に登場する敵の名前が「Kaiju(怪獣)」というだけでも、そのリスペクト具合がわかるでしょう。
「ヘルボーイ ゴールデン・アーミー」にも「もののけ姫」「ルパン三世 カリオストロの城」っぽいシーンがあったもんなあ・・・本国での興行成績が芳しくないのは残念ですが、ぜひとも日本のオタクたちを引き込んでヒットしてほしいところです。
前置きが長くなりましたが、本日はそんなギルトモ・デル・トロ監督が「最高だね!」と絶賛しているアニメ作品「機動警察パトレイバー」(制作:1989年)をご紹介します。
![]() | 冨永みーな 5368円 powered by yasuikamo |
個人的お気に入り度:7/10
一言感想:こんなに硬派とは思わなんだ
あらすじ
「レイバー」とはロボット技術を応用した歩行式の作業機械であり、警察にはレイバー専門の部署「特車二課」が設けられらた。そしてその特車二課の者たちが乗るのがパトロール・レイバー、通称「パトレイバー」である。
ある日、レイバーが暴走する事故が続発する。疑われたのはレイバーに組み込まれたOSの誤作動だった。
特車二課の遊馬(あすま)、泉、後藤は真相の究明に当たるべく行動するのだが・・・
「機動警察パトレイバー」とはアニメ、漫画、小説でメディアミックスがされている作品です。
この映画版は押井守監督の代表作であり、国内外で根強い人気を誇っています。
自分は勝手に「ロボットが荒唐無稽なアクションをしまくって悪い奴をやっつける!」というイメージを持っていましたが、全然違いました。
本作ではことばだけで状況を説明するシーンが多く、会話シーンが7割くらいを占めます。
そしてアクションよりも「黒幕はどこにいる?」「敵のねらいはなんだ?」ということを追い求めるサスペンスとしての要素が強いのです。
会話だらけで退屈するかといえばそんなことはなく、登場人物の鋭い推理、理路整然としたその内容に引き込まれます(若干無理があるのもあるけど)。
これこそ哲学的かつ小難しく、そして奥深くて面白い、押井守イズムなのだと思います。
この映画が作られたのは1989年ですが、OSやコンピュータウイルスなどの、時代の流れをいち早く物語に取り入れていることも面白いです。
「レイバー」はOSで制御されており、暴走をしてしまうレイバーは全て同種のOSのものだった・・・というところから推理をはじめるのは、当時としては斬新だったのではないでしょうか。
世界観も面白いです。
東京は地球温暖化により海面が上昇し、沈みかけています。
そのためにバビロンプロジェクトという東京湾全体を埋め立てて土地を作るという大プロジェクトがなされているのです。
巨大なロボットが出てくる点では近未来の印象を受けますが、作品の舞台は1990年第後半から2000年第前半になっています。
映画が作られてからわずか10年ほどの未来を描いているために、作中では携帯電話が登場せず(「2」には話題として出てくる)、VHSが映像の媒体として重宝され、昭和の香りを残した町並みも登場したりします。
まるで現代のパラレル・ワールドのような舞台を観るだけでも楽しめるでしょう。
↓以下は作中のシーンがほんの少しだけネタバレ、「2」も微ネタバレで紹介してみます。
個人的に好きだったのが、2人の刑事が昭和のような町並みのようでも、廃墟のようでもある場所を歩くシーンです。
音楽も相まって、退廃的で不思議な世界観を堪能できました。
かなりクセの強い作品ですが、しっかり終盤にはアクションも用意されているし、キャラクターも表情豊か、序盤には簡単な舞台の説明もしてくれるので決して敷居が高い作品でもないでしょう。
ただお子さまには内容が難しいので、中学生以上推奨といった印象です。
本格的なロボットアニメよりも、政治色の強いサスペンスを求める方におすすめします。
そして続編である「機動警察パトレイバー2 The MOVIE」(制作:1993年)はさらに評価の高い作品になっています。
![]() | 冨永みーな 5400円 powered by yasuikamo |
個人的お気に入り度:7/10
一言感想:ロボアニメらしさ減少しまくり
あらすじ
国連平和維持活動に従事していた柘植(つげ)は戦闘に巻き込まれ、部下全員を失い、唯一生き残った彼はなぜか消息を絶った。
数年後、東京の巨大な橋に一発のミサイルが発射される。
特車二課の後藤にコンタクトをとった防衛庁の情報部員・荒川は、事件の背後に柘植の存在を疑うのだが・・・
こちらもめっちゃ会話シーンが多く、とことん硬派な人間ドラマが繰り広げられています。
そのためか、なんと「パトレイバー」はあんまり活躍しません(ていうか終盤のみ)。
もはやロボットアニメである必要性がないほどに押井監督らしさ全開なのです。
前作の主人公である泉と遊馬は出番がなさすぎだし・・・押井守監督は「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」でも好き勝手やっていたもんなあ(でも名作)。
「1」以上にとっつきづらく、かなり観る人を選ぶ作品のように思えます。
しかし本作は「1」と同じく、「見えない敵を追う」緊張感に溢れたサスペンスとして抜群に面白く仕上がっています。
そして描かれているテーマは「日本の防衛」の危うさです。
ビルや橋が壊される描写は9.11のテロを思わせるものでした。

語ろうとすれば軽く論文が書けるぐらい複雑で深いストーリー、切なくも美しさを感じれるラストは一度は観ておいて損はないでしょう。
余談ですが、渋滞でもすいすい進むことができる警察用の「ロードランナー」はかなり便利そうなので現実にもあってもよいんじゃないかと思いました。

「危険なので車のドアを開けないでください!」とアナウンスしているのも面白いですね。
ギレルモ・デル・トロ監督は愛するロボット10体にレイバーを選び、「パトレイバー」はリアルな戦術的感覚をもたらしてくれたと語っています。
監督の言うように(パト)レイバーの造形はカッチョイイし、単純にボコスカ戦うのではない奥深い「作戦」を楽しむことができるのは本作の優れたところでしょう。
ある意味「トランスフォーマー」のようなアホアホゴリ押しロボットアクション超大作とは対極にあります。個人的にはどっちも大好きです。あとは2014年公開予定の実写版のプロジェクトが色んな意味で怖いです。
参考↓
機動警察パトレイバーとは - ニコニコ大百科
機動警察パトレイバー/劇場版二作の全台詞(もちろん超ネタバレ)
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パトレイバー
懐かしいっすね。当時、夢中になってみたアニメでした。このアニメなにが凄いってレイバーがでてくるの五話に一回くらいなんですよね(笑)
しかも、政治色も強く警察内の足の引っ張りあいなんかも楽しめました。そういう意味では、映画版の1、2は原作を壊すことなく非常に楽しめました。実写版がどうなるのかはガクブルですが、またリアルに楽しませてくれることを祈ります。
しかも、政治色も強く警察内の足の引っ張りあいなんかも楽しめました。そういう意味では、映画版の1、2は原作を壊すことなく非常に楽しめました。実写版がどうなるのかはガクブルですが、またリアルに楽しませてくれることを祈ります。
2013-07-27 12:40 :
名無し URL :
編集
Re: パトレイバー
> このアニメなにが凄いってレイバーがでてくるの五話に一回くらいなんですよね(笑)
自分はこの映画版しか見ていないのですが、マジですか(笑)
> しかも、政治色も強く警察内の足の引っ張りあいなんかも楽しめました。そういう意味では、映画版の1、2は原作を壊すことなく非常に楽しめました。実写版がどうなるのかはガクブルですが、またリアルに楽しませてくれることを祈ります。
漫画(?)の原作のほうも政治色が濃いのですね。読んでみたくなりました。
自分は主人公の遊馬、泉が大好きになったのその活躍も見てみたいです。実写版は置いておいて。
自分はこの映画版しか見ていないのですが、マジですか(笑)
> しかも、政治色も強く警察内の足の引っ張りあいなんかも楽しめました。そういう意味では、映画版の1、2は原作を壊すことなく非常に楽しめました。実写版がどうなるのかはガクブルですが、またリアルに楽しませてくれることを祈ります。
漫画(?)の原作のほうも政治色が濃いのですね。読んでみたくなりました。
自分は主人公の遊馬、泉が大好きになったのその活躍も見てみたいです。実写版は置いておいて。
2013-07-27 16:28 :
ヒナタカ URL :
編集
今日公開
公開記念にスカパーで無料放送をやっていました。当時は組織の対立構造というものや政治的な知識がなかったので、大好きな1作目より理解できる部分が少なくつまらなくなっちゃったなと思っていたのですが、今見ると本当に面白くて怖い映画でした。
むしろその当時は監督著の小説のほうが人物の心情や起こっている事の説明が詳しくて(野明や遊馬も出番多め!)面白かったです。
実写のほうはCM見てる限りだとアニメ版に近い仲間、成長、明るさ重視になるのでしょうかね~
むしろその当時は監督著の小説のほうが人物の心情や起こっている事の説明が詳しくて(野明や遊馬も出番多め!)面白かったです。
実写のほうはCM見てる限りだとアニメ版に近い仲間、成長、明るさ重視になるのでしょうかね~
2014-04-05 22:57 :
koma URL :
編集
Re: 今日公開
> 公開記念にスカパーで無料放送をやっていました。当時は組織の対立構造というものや政治的な知識がなかったので、大好きな1作目より理解できる部分が少なくつまらなくなっちゃったなと思っていたのですが、今見ると本当に面白くて怖い映画でした。
自分も2作目がちょっと苦手だったりするのですが、もう一度観たくなりました。
> むしろその当時は監督著の小説のほうが人物の心情や起こっている事の説明が詳しくて(野明や遊馬も出番多め!)面白かったです。
> 実写のほうはCM見てる限りだとアニメ版に近い仲間、成長、明るさ重視になるのでしょうかね~
実写は「パトレイバー動かない」という評が多いですね(笑)。もともとそういう内容なのですが。
自分も2作目がちょっと苦手だったりするのですが、もう一度観たくなりました。
> むしろその当時は監督著の小説のほうが人物の心情や起こっている事の説明が詳しくて(野明や遊馬も出番多め!)面白かったです。
> 実写のほうはCM見てる限りだとアニメ版に近い仲間、成長、明るさ重視になるのでしょうかね~
実写は「パトレイバー動かない」という評が多いですね(笑)。もともとそういう内容なのですが。
2014-04-06 17:00 :
ヒナタカ URL :
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No title
パトレイバー、今の我々には他のロボットアニメよりも"夢のある"アニメだったと思います。
そもそもこのアニメの設定が作られたのはバブル絶頂期、
そのためアニメ上の98年でもバブル経済は終わっておらず、地価上昇と不動産需要のために東京の土地を増やすため東京湾埋め立てを行うという設定が生まれていました。
地球温暖化の話は初耳ですが、パトレイバーの日本には現代の日本や、他のアニメのどの国よりも活気があるように感じます。
今年の10月に新作のアニメがあるので期待したいです
そもそもこのアニメの設定が作られたのはバブル絶頂期、
そのためアニメ上の98年でもバブル経済は終わっておらず、地価上昇と不動産需要のために東京の土地を増やすため東京湾埋め立てを行うという設定が生まれていました。
地球温暖化の話は初耳ですが、パトレイバーの日本には現代の日本や、他のアニメのどの国よりも活気があるように感じます。
今年の10月に新作のアニメがあるので期待したいです
2016-08-05 02:28 :
URL :
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