10人目の男 映画「ワールド・ウォーZ ゼット」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:6/10
一言感想:大作グロなしゾンビ映画
あらすじ
元・国連捜査官のジェリー(ブラッド・ピット)とその家族は、渋滞にはまり車中で待つ途中、前方での思わぬ爆発、事故を目撃する。
彼らを襲ったのは、人間を凶暴化させるウイルスの「感染者」であった。
その技能と知識を国連に買われたジェリーは、ウイルスの感染原因を突き止めるよう依頼されるのだが・・・
「君のためなら千回でも」「007/慰めの報酬」のマーク・フォースター監督最新作です。
本作はゾンビ映画です。
おおよそ家族で観るようなジャンルではありません。
しかし、本作は大スターのブラット・ピットが主演、1億9000万ドルという巨費により制作されたこともあり、実に大作感が漂う作品になっています。
そしてゾンビ映画であることは全くアピールされず、パンデミック系の映画のようなプロモーションがされています。
公式ホームページのイントロダクションやその他の宣伝を見ても「ゾンビ」という単語は一切登場しません。
これは「ブラピ様」「夏の大作映画」「家族愛」ということを前面に押し出し、ファミリー層へも訴えた結果であるのでしょう。
肝心の本編は思い切り凶暴化したゾンビが襲ってくるシロモノなので、とても家族連れにオススメできるものではないのだけど・・・・
本作はそんなこともあり、直接的なグロ描写が一切ありません。
展開としては「痛い」シーンもしっかりあるのだけど、そこは撮さずに「想像におまかせ」な手法が取り入れられている。
自分は悪趣味なので「ゾンビ映画はグロ描写がなきゃ!」と思ってしまうほうなのですが、人によってはこれは長所でもあるでしょう。
ブラピファンの女性にとっても、安心して観られると思います。
原作はマックス・ブルックスによる同名の小説です。
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しかし小説の内容は映画とは全然違います。
オーラル・ヒストリー形式で様々な「ゾンビと戦った人々の記録」がまとめられており、登場人物の中には日本人もいたります。
おおよそ、そのまま映画にできるようなものではないでしょう。ちなみに同作者は「ゾンビサバイバルガイド」というやけにリアリティのある(?)ゾンビ対策の本を出版していたりします。
そんな原作を持つこの映画は、完成までにかなりの紆余屈折を経ています。
*参考→<ワールド・ウォーZ - Wikipedia>
そのためか本作には人物描写の浅さや、やや違和感のある唐突な展開があったりするなど、若干の違和感を感じます。
もともとの壮大なクライマックスも撮りなおなしになってしまったようですし、2部作の構想が練られたりと、その制作過程は初志貫徹できていません。
この随所に感じる「中途半端さ」が本作の弱点でしょう。
でも細かいことを気にしなければ問題なく楽しめるアクション大作です。
家族愛やらテーマ性やらは二の次で、とにかく「全速力で走るゾンビ」の怖さやアクションを主に描いているので退屈はしません。
ゾンビ映画は超低予算で撮られることも多いのですが、本作はとにかくお金をかけまくっていることが最大の長所でしょう。
主人公役のブラピ様はけっこうドジっ子な面も見せるので、ブラピ様に萌えたい方も必見です。
あとブラピ様は主人公補正のありえないラッキーさで窮地を乗り越えまくりますが、そこも含めて楽しんでしまうのが吉です。
またタイトルの「Z」ですが、これは「Zombie」の頭文字であり、またアルファベットの最後の文字ということもあり「終末」を表しているように思います。
2D字幕版で観ましたが、3Dで観たいと思わせる画はそれほどなかったので今回は2Dでもいいでしょう。
続編を匂わせている作品ではありますが、エンドロール後のオマケはありません。あしからず。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓
~薬局の男~
「感染者」が人間を噛み、そしてその人間がまた感染者になってしまう・・・その時間はわずか「12秒」です。序盤にラジオで聞こえる「駅までの時間」を数える可愛い女の子の声で、その時間を表現していることがユニークでした。
*次女の持っている人形の声だそうです<youtube>
後に訪れた薬局では、男が主人公の娘のために「ぜんそくの吸引器」を渡してくれます。
男は「喘息はいつか治る」と言っていました。
これはいつ収まるかわからない、治るかどうかわからない、今の感染者が溢れかえっている状況と対比するものです。
身近な病気には、いつか治るという希望がある。
しかし、世界中がパニックに陥り、警官までもが銃を持つ主人公に目もくれずスーパーの食べ物をあさる・・・・そんな無秩序な状況に希望があるか?
そう問いかけられているように思えます。
~難民の子どもを救う~
ジェリー(ブラピ様)は家族とともにアパートに訪れ、そこでスペイン語で話す家族と出会います。
その息子と思われる「トーマス」は夫婦の通訳をしてくれました。
アパートに残る夫婦とトーマスでしたが、その後に感染者に襲われてしまいます。
ジェリーはトーマスを引き連れて、屋上のヘリに乗って脱出を図りますが、ジェリーの口にも感染者の血が入ってしまいます。
ジェリーは「感染までの時間」を測りますが、感染者になることはありませんでした。
なぜジェリーがこのときに感染者ならなかったのかは語られませんでしたが、後にも「全人類の5%は罹患しない」ことも情報として出てきます。
ちなみにブラット・ピット自身も難民の子どもを養子に迎え入れています。
このシーンは、そんなブラピ様の人生の価値観があらわれているように思えます。
~あっさり死亡した学者~
びっくりしたのが、「自然は連続殺人鬼さ!でもどこかで捕まってその巧妙な手口を知らせたいとも思っているんだよ!」などと生意気に言っていた若造のウイルス学者「ファスバッハ」が、雨で滑って銃が暴発したために登場して数分で死ぬことです。
すごく重要キャラっぽい雰囲気だったのに!
ジェリーが「滑って死んだ」と言ったときはアメリカンなジョークかなと思った次第です。
その後も「ゾンビは音に反応する」ために一同がチャリでヘリに戻ろうとするのにも大笑い。
めっちゃキコキコ音が鳴っているんですけど?
さらに携帯電話の着信があったおかげで、あわてふためくジェリー!
軍人の一人が「携帯の電源はお切りください」と劇場マナーっぽく皮肉っているのも面白かったですね。
後に妻からの電話に対して「タイミングが悪かった」と全く責めないジェリーも優しくて好きです。
~イスラエルへ~
そこには感染者から身を守るための「壁」がありました。
コンタクトをとったのは「ユルゲン」と名乗る高官。彼は「ゾンビ」の存在を聞き「9人までが驚異を感じなくても、『10人目』は反論する義務がある」と言い、ジェリーはこれに「あなたが10人目だと?」と返します。
ユルゲンは他と異を唱えることで感染者の驚異を(一時的にでも)退いた男です。
このことは後の主人公の行動と似通っています。
そして祈りの歌を増幅させすぎたという理由により、「山なり」になって壁を乗り越えてくる感染者たち!<絶望的すぎる画
<バスを総出で横倒しにする!
「なだれ」のように押し寄せてくるゾンビたちの画は恐ろしく、いままで見たことのないものでした。
~飛行機へ~
数人のために着陸した飛行機にはしごをおろしてもらい、ジェリーはお礼も告げずに機長に「電話で話した場所に着陸しろ」と言います。勝手だなあ。
ジェリーは先ほど感染者に噛まれ手首を切断した「セガン」に消毒を施します。
セガンに「なぜ切り落とせば感染しないと?」と問われると、ジェリーは「わからない」と答えます。
ウイルスに対してすでに「免疫」を持っているジェリーは、直感でそれで判断したのかもしれません。
そして機内にもなぜか感染者がおり(本当なんで?)、パニックになる機内!
ジェリーは手榴弾を客席に投げて感染者を外に放り出します。無茶しすぎ。
*以下のご意見をいただきました
> 飛行機シーンですが、ブラピ様が搭乗する際の低空飛行でゾンビが貨物室に入り込んでいたんだと思います。
> で、チワワがうるさいのでCAが貨物室送りにしようと貨物室へのエレベータを稼働させたら、それに乗ってきたゾンビとご対面、という流れなんじゃないかな?
墜落した後、生存者はジェリーとセガンのみ(座席にベルトで縛られている感染者もいる)でした。
その後誰もいない街を練り歩いて、2人はWHOの研究所にたどり着きます。
なんで感染者が一人もいないの?と気になるところですが、まあ気にしないことにしましょう(めっちゃ気になるけど)。
~ゾンビに見つからない理由~
ジェリーは、今まで感染者に全く認識されなかった中年男性や、感染者が押し寄せる中でうずくまる少年のことを思い出します(序盤には酒を飲んでいる男も無視されていました)。
彼らが感染者に見つからなかった理由は「致死性の病気に罹患していたから」というものでした。
学者の一人は「動物も病気にかかった獲物には手を出さない」と言い、「わざと『死に至る病』になるのが治療なのか?」と至極まっとうな意見を言います。
しかしそのことを「ワクチン」として用いることで、「カモフラージュ」ができると主人公は主張します。
今までにも病気を感染者に用いることは提案されていましたが、感染していないものを病気にさせることは誰も考えなかったことです。
これはイスラエルで出会った高官と同じように、ジェリーが「10人目」として、今までと異なる主張をしたことなのです。
*「全員賛成の否定のために、一人あえて反対票を入れる」というのは「日本人とユダヤ人」にもあったそうです。
~メタルギア・ソリッド開始~
しかし、病気になるためのアンプルは「B棟」にあり、そこには元・研究者の感染者がはびこっていました。
ここから「音を立ててはいけない」というルールに則り、まるでゲームの「メタルギア ソリッド」のようなスニーキング・ミッションが幕を開けます。
ここでも缶を蹴って転がしてしまうブラピ様に萌えました。この人周りを危険にさらしすぎ。
しかし時にはわざと音をならして「おとり」にもなるジェリーはやっぱり格好良かったです。
最後は研究員の女性からの電話から暗証番号を聞き、アンプルの部屋にたどり着きますが、出口のドアの前には感染者が立ちはだかります。
薬を間違えたら死亡というさなか、ジェリーはカメラに向かって「家族に愛していると伝えてくれ」と掲げます。
そして時間が経ってからドアを開けると・・・感染者は襲ってこなくなりました。
このシーンは、電話の音めっちゃ鳴っていたけどいいのかとか、初めにどの薬なのか教えとけよとかツッコミたいですが、まあ気にしないことにしましょう(めっちゃ気になるけど)。
~最強が弱点に~
途中で悲惨すぎる死に方(笑)をした若きウイルス学者は「最強こそが弱点だ、やつら(自然、または感染者)は弱さを強さにしたがる。じつにやっかいだ」と言っていました。
感染者が病気になった者を見分けてそれを無視するのは防衛のための手段ですが、同時に弱点でした。
そして感染者が音に敏感に反応することも驚異でしたが、それもまた弱点でもあります。
ジェリーは缶を蹴って転がしてしまったために窮地に追いやられそうになっていましたが、感染者に無視されるようになった今、自動販売機を壊して缶を床にばら撒きます。
そして堂々と扉に向かうジェリーを尻目に、缶の音が聞こえた方向に行く感染者たち・・・
ジェリーはまさに、感染者の「強さ」を「弱さ」にして勝利したのです。
このシーンはジェリーがぶっ壊した自動販売機がペプシコーラで、ブラピ様がマウンテンデューを美味しそうに飲むので、ペプシの宣伝にしか見えないぞとツッコミたいですが、まあ気にしないことにしましょう(めっちゃ気になるけど)。
~打ち切りエンド?~
拍子抜けしたのが、ジェリーが家族と再会し、「戦うのなら戦おう、そして助け合おう、決して油断はするな。戦いはまだ続くのだ」とナレーションで語ったところで映画が終了したこと。
まるで「俺たちの戦いはこれからだ」的な漫画の打ち切りエンドのようです。
実は本当のクライマックスも別に用意されていて、撮影も開始されていたのにも関わらず「残酷すぎる」という理由からまるまるカットされてしまったようです。
*参考→<町山智浩映画解説 史上最大のゾンビ映画『ワールド・ウォーZ』>
「感染源はどこに?」というサスペンスも全てぶん投げっちゃっているしなあ・・・
とりあえずペプシがめっちゃ飲みたくなったので飲もうと思います。あの宣伝は大成功です(個人的に)。
字幕版では「口に血が入った」とのセリフがあったのですが、吹き替えでは違うのですかね?
随分と物語の解釈が変わってしまうので、色々と残念ですね。
劇中ではブラピ様が苦しんでしていたので「噛まれた」と思ったのですが、そういえばその台詞もありました。
噛まれたかどうかは定かではないですね、失礼しました、訂正します。
噛まれなければ、血が口に入っても大丈夫と判断したのでは?
だから、噛まれたらブラピは感染するのでラストに緊迫感が増すと思うのですが。
やっぱり噛まれてはなさそうですね、該当箇所を削除します。ありがとうございます。
あれは次女の持っている人形の声だそうです。
http://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=9-dV4lm5rtg&t=45
私も最初はラジオの声かと思ってましたが、某所で指摘されて知りました。
> あれは次女の持っている人形の声だそうです。
> http://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=9-dV4lm5rtg&t=45
そうなのですか!!訂正&追記します。ありがとうございます。
Zとは、ゾンビのZだったんですね?
初期のゾンビは、太陽光とか明るいもはダメとか云うルールがあったように思うのですが、昼夜大丈夫って云うゾンビは厄介者ですね。
「10番目の男」=全員賛成の否定のために、一人あえて反対票を入れるとか云うのは「ユダヤ人と日本人」にありました。
最後の対策が昔々の「アンドロメダ病原体」並みのチンケな手法だったので、苦笑いでした。
で、チワワがうるさいのでCAが貨物室送りにしようと貨物室へのエレベータを稼働させたら、それに乗ってきたゾンビとご対面、という流れなんじゃないかな?
> で、チワワがうるさいのでCAが貨物室送りにしようと貨物室へのエレベータを稼働させたら、それに乗ってきたゾンビとご対面、という流れなんじゃないかな?
なるほど、遅くなりましたが追記します。